MISSION IMPOSSIBLE (File.13131 Seventy minutes in Tibet その1)

 

『ムウがジャミールに買い物に行くといったまま帰ってこんのじゃ。連れて帰って来い。』

俺とミロはジーサンに命令された。
なんだよ、そりゃ。場所が分かっているんだったら自分でいけよ。しかも、なんでミロと一緒なんだよ!!←いつも蠍と白羊宮でタダ飯を食うておるではないか

俺達は文句を言う暇もなく、ジーサンにムウのいるジャミールに飛ばされた。
うっ・・・勘弁してくれ、いきなりこんな標高の高いところに飛ばされたら死ぬってーの!海底に慣れている俺にとって、まさにここは地獄だ・・・。意識が朦朧してしてくる。俺の隣では既にミロがゲーゲーとリバースしていた。←情けない

俺達は小宇宙を高めて、なんとか高山病に耐えながらジャミールに入った。

それにしても、霧がすごくて先が見えない。ムウほ本当にこんなところにいるのか?
しばらく霧の中をあるいていると、突然視界がひろがった。
しかし、霧が晴れたと思った、こんどは白骨死体の山だ。床や壁は聖衣を着た白骨死体で覆い尽くされていた。
なんだここは?ムウも随分と趣味の悪い場所に住んでるんだな。←虫除けである

『ここが聖衣の墓場か・・・・。』

後ろにいたミロがつぶやいた。
聖衣の墓場?なんだよそれ。

『ジャミールに聖衣を直しに行った聖闘士は、だいたいここで力尽きるんだってよ。それにしても凄い光景だよな。俺、ますます気分悪くなりそう。』

ミロは白骨死体を足で除けながら俺に言った。
なるほどね。
しかし、これくらいの死体の量で気分なんて悪くなるなよ、情けねーな。←その通り

俺はそのまま白骨死体を踏み潰して先に進んだ。

『貴様、何処へ行く。ここから先はムウさまのゾーン!命がおしくばかえれ!!』

四方から声が聞こえてきた。

何が、ムウさまだ。こっちはカノンさまだ、ごらぁ!!!!出てきやがれ、俺が相手になってやる!!

咄嗟に俺とミロが身構えると、いきなり白骨死体が起きあがり、それは徐々に人の大きさよりも大きくなっていった。
俺とミロはすっかり巨大な骸骨に取り囲まれていた。

ひえぇぇぇ。なんだよここは・・・・・!。←情けない

『うわーー、これって幽霊ってやつかぁ!!』

俺の後ろでミロが声を震わせて呟いた。
ふっ、情けねーな。こいつは幽霊が怖いのか?馬鹿じゃねーの。←お前も恐がっていたではないか

ん??俺の尻を誰かが撫でている・・・。
ミロの奴、さっきは、幽霊を怖いと言っておきながら、いきなり欲情かよ!ふざけるな!!

『てめぇ、発情蠍!!人のケツ触ってるんじゃねーーー!』

『あ?俺は何もしてねーよ!!』

俺は怒鳴って振り向くと、俺の真後ろにいたミロが両手をあげてどなった。

あれ??俺の尻は誰が撫でてるんだ??俺は自分の尻を確認した。
ぎょえぇぇぇ!!!
空中で白骨の手がフワフワと浮きながら俺の尻を撫でていた。なんなんだよ、これは!!!!!!←骨である

『あっ、カミュ!!助けにきてくれたんだ!!!』

ミロが突然俺を突き飛ばし、前に走っていった。俺はその途端、落下する感覚に襲われた。
いや、実際に落下していたのだ。
鋭く切り立った無数の岩が目の前に迫ってくる、俺は咄嗟に身を翻し、足からの着地に成功した。俺の股間と岩の隙間は数cmしかなかった。俺、足ながーーーーい!♪

なるほど、あそこは一本道になっていたのか。一歩道を踏み外せば、俺みたいにここに落下し、櫛刺しという仕掛けか・・・。

俺は地面を蹴り、高くジャンプしミロの元へと戻った。

相変わらず霧が深く、幽霊もうようよしている。取り合えずまっすぐ歩けば大丈夫だよな。そういえばミロは何処に行ったんだ?下に落ちて櫛刺しにでもなったか?

『ミローーーー!』

俺はミロを呼ぶと、前方でミロの声が聞こえた。ミロはカミュの名前を呼びながら骸骨を抱きしめていた。
ミロはカミュの幻覚を見ているようだった。

『おい、それはカミュじゃないぞ。ミロ。』

『何を言ってるんだよ。カミュだよ、カミュ。俺がカミュのことを見間違えるわけねーじゃん。』←愚か者

その白骨がどうやったらカミュに見えるんだよ。俺が白骨を抱きしめているミロの背中に蹴りを入れると、ミロは骸骨に覆い被さるように倒れた。
その途端、ミロが悲鳴を上げて白骨から飛びのいた。ミロの顔は真っ青だった。
ぷっぷっ、もしかしてこいつ、ちびったんじゃねーのか??←そうであろうな

俺がケラケラとミロの醜態を笑っていると、俺達の隣を兄貴がスタスタと横切っていった。

兄貴?やばい俺も幻覚が見える。
幻覚の兄貴は立ち止まると、こんなところで遊んでないで行くぞ、と兄貴みたいなことを言い出した。
ちっ、幻覚の癖に生意気だ。俺はそのまま幻覚の兄貴に拳をつきだすと、幻覚は俺の拳を手で受けとめ、俺の腕をひねった。

『カノン。何をやっているんだ。早く行くぞ。ミロ、お前もいつまでもそこで座ってないで、立て。』

あれ?本物の兄貴か、これ?
兄貴の話しだと、教皇は俺とミロでは頼りにならないので後から兄貴をよこしたらしい。
なんだよ、だったら最初から兄貴に仕事を任せればいいだろうが!!!!
俺達は先に歩く兄貴の後を付いていった。
兄貴の周りには幽霊がウヨウヨとし、幽霊達は兄貴や俺たちにちょっかいを出してきたが、兄貴は平気でスタスタと歩いていた。

『なぁ、サガ。幽霊、怖くないのか?』

ミロが聞いた。やっぱり、こいつは幽霊が怖いんだな。

『私は自分のほうが怖い。』

そりゃそうだな。

 

霧の谷を抜けると、視界が開け目の間に奇妙な建物が立っていた。

建物は五重の塔のようで、入り口がない。

兄貴が突然空中に向かって喋り始めた。

『ムウ、でてこい。教皇が心配しておられるぞ。ムウ!!』

ムウなんてどこにもいないぞ。建物に話しかけるなら兎も角として、兄貴は明らかに何もないところに向かって話している。
やばいぞこれは・・・。帰ったら病院へ連れていかなくては・・・・。
ミロは、たしかにあれは怖いな・・・。と、さっきの兄貴の言葉に納得をしていた。

『ムウ、いい加減に出て来い!!』

兄貴のほうこそいい加減にしろよ。
俺達は、兄貴を放って建物を調べることにした。
しかし、建物の中にはムウはいなかった。俺達が建物の内部を調べ終わっても、兄貴は一人で喋っている。

すると、突然兄貴の目の前の空間が裂け、時空の中からムウが姿を現した。

『一体どうなさったんですか?』

ムウはいつものスカした顔で言った。それは俺達の台詞だっちゅーの。

『何でそんな所にいる。』

『趣味です。では、ごきげんよう。』

兄貴の質問に即答すると、ムウは再び姿を消そうとしたが、そうは問屋がおろさなかった。兄貴がムウの腕を掴んだ。

『俺達さ、教皇の命令で来たんだけど、お前のこと連れて帰らなきゃ行けないんだよ。だからさ、帰ろ。』

ミロがそういうと、ムウは静かに首を横に振った。
これって、買い物じゃなくて、家出だよな。大体どこに買い物するところがあるっていうんだよ。岩しかねーじゃん。←買い物である。家出など認めぬ。

『一体どうしたというのだ?。私で良ければ話を聞くぞ。』

兄貴がそう言っても、ムウはしばらく黙っていた。


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