MISSION IMPASSIBLE(File.20,0000 帰ってきた仲良し調査)

 

『カノン、私が席をはずしている間に、私の皿に何をいれた?』

兄貴は自分の皿のパスタを一口食べると俺を睨んだ。

しらね−よ。
俺が兄貴に答えると、兄貴は立ちあがり俺の胸倉を掴んだ。

『知らないわけなかろう。なぜ塩の瓶が空になっている。お前がやったにきまってるだろう。食ってみろ。』

兄貴がキッチンに水を取りに行っている隙に俺が塩一瓶を入れた兄貴のパスタを、兄貴はフォークですくうと、それを俺の口元に持っていった。
んな、塩漬けのパスタなんて食えるか。兄貴の分なんだから自分で食いやがれ!!←進歩がないのぅ。それでも28歳か馬鹿者。

『この馬鹿。あれほど食べ物を粗末にしてはいけないと言っただろう。』←その通り

『だったら兄貴が全部食えばいいだろう。それは兄貴のパスタだ!』

『やっぱり仲が悪いのですね。サガとカノンは仲が悪いっと。』

俺達は、突然の声に振りかえった。見ると、リビングの入り口にムウが手にメモ帳を持って立っていた。
この麻呂、いつのまに俺の家に?←お前の家ではない

兄貴は俺の胸倉から手を離すとムウの元へ向かった。

『お邪魔しまします。貴方方の調査にきました。これが女神の命令書ですので、しばらくお世話になります。本題ですが、サガ×カノンなのですか?』

は?サガ×カノン?なんだそれ?←サガがお前の尻を掘っておるという事じゃ

『ええ、女神が「双子は絶対サガ×カノンよね!」と・・・。命令書にそう記されてます。』

女神・・・・マジか!?。
ていうか、またかよ・・・。←お年頃ゆえ、仕方あるまい

『ムウ。俺は兄貴のことが大嫌いだ。』

俺がムウに言うと、兄貴はうんうんと肯いた。

ムウが俺の言葉を持っていたメモ用紙に書きとめると、兄貴の顔を見つめるので、兄貴もムウに俺が嫌いだと言った。

『俺は兄貴のことが大嫌いだ。どれくらい嫌いかというとだな、今すぐ首を絞めてあの世に送ってみたり、スニオン岬に閉じ込めてやりたいくらい嫌いなんだ。ちゃんと書いておけよ、ムウ。』←ほうほう

『そんなこと、聖域の誰でも知っていますよ。女神が知りたいのは貴方達がデきているかという事です。』

それは無茶だ、女神!この世で一番憎い相手とどうやったらデキるんだ。しかも相手は同じ顔で、男だ。
ムウは不気味な紫の目で兄貴をチラっと見た。兄貴は明らかにうろたえていた。
ちょっと楽しい・・・・。

『私はホモではない。』←嘘をつくでない

おいおい兄貴、無茶言うな。兄貴は13年間男も女もはべらせていた、立派なホモだろうが。

『寝言は寝てから言いなさい。カノンはサガのことを監禁したいと言ってましたから、カノン×サガなのですか?』

兄貴は口をあんぐりとだらしなく開いた。兄貴の顔、間抜け過ぎる。

『何を根拠に私とカノンがデきているというのだ!』

そうだ兄貴、いいぞもっといえ!

『だって、サガはナルシストではありませんか。自分の裸にうっとりして「お前は美しい!」と鏡に向かって言っていたのは、ちゃんと調べがついているのです。カノンとは一卵性の双子なのですから、カノンを見てうっとりしている可能性も十分にあります。』←流石は余の愛弟子じゃ。

マジ!?え、俺って兄貴にハァハァされてるのか?

『ふざけるな!私はこんな貧相ではない!!!』

兄貴が額に青筋を立て怒鳴ると、ムウは兄貴と俺をじーっと見比べた。しかし視線は下を向いている。

『同じではありませんか。』

ムウがそういうと兄貴は顔を赤くして股間を手で隠した。あ、この麻呂眉!透視してたのか!!
同じなわけねぇだろう。俺様のほうが立派に決まってる!←ほうほう。では余が確認するかのぅ

『やめなさい、ムウ。そういう意味ではなく、私はこんな貧弱で惰弱な体ではないということだ。こんな、だらけたブヨブヨの体ではない。私はきちんと鍛えているからな。』

はぁ?!俺の筋肉は程よいいい加減なんだよ!←怠け者の体じゃ

『見ろ、この毎日酒ばかり飲んでだらけた腹!腕立て伏せも万単位しかできないだらけた腕!いつもごろごろ寝転がっているだらけた脚!だらけた背!だらけた尻!』←そうやって弟をだらけさせてる兄もいかんのじゃ

イテ!イデデデデデデ!!この鬱野郎!ふざけるな!
兄貴はいちいちだらけただらけた言いながら俺の体をつねりやがった!

『なるほど、そうやってカノンにセクハラをしているわけですね・・・。』←ムウの指摘は鋭いのぅ

ムウはそう言うと、メモを書き始めた。まじで?これってセクハラなわけ。ということは、兄貴訴えて賠償金とか聖闘士をクビとかにできるわけ?←できぬわ
兄貴はそれを慌てて止め、誤解だと連発した。
そりゃそうだ、大罪人の極悪人の病気持ちでホモなうえ、弟にまで手を出しているなんて女神にしれたら、兄貴の面目丸つぶれだもんな。
こりゃ、楽しくなりそうだぜ♪

しかしジーサン、よく白羊宮からムウを出したよな。俺がムウに聞くと、ジーサンも女神命令には逆らえないらしい。っていうかさ、なんで麻呂なんだよ。←白羊宮が手前にあるからである
もっとちゃんと調査能力のある有能な奴を派遣してくれよ。例えば、俺とか!←それは新手のギャグか?

兄貴は眉間にシワを寄せながら、冷めてしまった塩漬けパスタと俺のパスタを片付けると、ムウの分と合わせて3人分の新しいパスタを作って持ってきた。
俺と兄貴は向かい合わせに座り、ムウは兄貴の横に座って夕飯となった。

 

『不味い・・・。』

ムウはパスタを一口食べて言った。いいぞ、もっと言え!

『不味いなら食べなくて結構だ。』

『開き直る前に、改善する努力をしたらどうですか。カノンにこんな不味い食事を与えて虐待しているのですね。』←その通り

ムウがメモを書き出すと、兄貴はそのメモを奪い取ろうとしたが、ムウの超能力で消えてしまった。
そうそう♪可哀想な俺様は意地悪な兄貴に虐げられているのだ♪←嬉しそうじゃのぅ。虐げられて喜んでおるのか?

『サガは、どうしてカノンの好きなものを作ってあげないのですか?』

『私はコックではない。なぜ私がカノンの好きなものをつくてやらねばならんのだ!文句があるなら自炊すればよいではないか。』

何だと?!こっちは毎日不味い飯に付き合ってやってるんだぞ!?←本当は兄の料理が好きなのであろう

『では、私がカノンの好きなものを作ってあげても怒りませんね?』←ムウは優しいのぅ

『はぁ?何故、怒らければいかんのだ。勝手にしろ!』

ムウは超能力でエプロンを取り出すと、勝手に台所に入ってゆき、料理をはじめた。

30分もしないうちに、うちは白羊宮みたいになった。こってりとした中華料理がドーンドーンドーンとテーブルの上を占拠したのだ。しかも、ピーマンなしだ!

俺が『うまい、うまい』と言いながら食べると、兄貴の顔はますます不機嫌になった。本当にうまいんだから仕方ねぇよな。それに、怒らないって言ったのは自分だし。

『こっちも食べてください。はい、あーん。』←いかんのぅ

ふーふーと冷ました魚のあんかけが乗ったスプーンを、ムウが俺の口元に持ってきた。ムウの奴、いったい何のつもりだ。そういうことは旦那とやれ。←ムウに旦那などおらぬ
ムウを睨むと、ムウはキショイ笑顔を浮かべて俺の口元にスプーンを押し付けやがった。←本当はムウのかわゆい笑顔にうっとりしたのであろう
なるほど、俺とムウがラブラブに見せかけて、兄貴の反応をうかがう作戦か?
俺がそのままムウのフォークから食べると、兄貴の眉がピクリと動いた!
つーか、兄貴・・・マジで嫉妬か?!俺Loba?!←ロバとはなんじゃ?!Loveであろう

兄貴は不味いパスタを平らげると、さっさと台所に引きこもり、それからいつも通りに風呂に直行しようとした。

『もうお風呂ですか?カノンと一緒に入らないのですか?』

麻呂中も麻呂小と同じことをききやがった。←基本である

ムウの一言に兄貴の足が止まった。兄貴は自分は一人でゆっくりと風呂に入るのが好きだと説明した。しかしムウは、

『私がいるからといって、遠慮しなくてもいいのですよ。本当は毎日カノンとお風呂に入っているのでしょう。』

と、鼻で笑った。

『は?入るわけがなかろう。いったいお前の脳みそはどうなっているのだ。』

脳みそも麻呂だろ、麻呂!←余のことで一杯である

『またまたまたぁ、本当は毎日カノンとお風呂に入って、カノンの裸をうっとりと眺めているのでしょう。カノンの体をいやらしい手つきで洗ってあげたりしてるのではないのですか?』

ちょっと待て、ムウ。それはキショイからやめてくれ。想像するだけで寒気がする。←ほうほう、思い出して興奮中であるか?

『ムウ、よーくききなさい。私達は兄弟だ。兄弟同士でそういうことをするはずなかろう。』

そうだ、そうだ。

『そんなこと関係ないです。サガはナルシストですから、カノンの体に惹かれてしまう可能性は十二分にあります。それに、ずっと離れていたのですから、片時も離れたくないのではありませんか?だから、お風呂も一緒に入るのでしょう。』←流石はムウである

いや、ずっと離れていたから、いまさら一緒にいるほうがウザイんですが。そうか、ムウは自分のパターンと俺達を被せてるのか?ということは、ムウはずっとジーさんと死別してたから、今は片時も離れたくないとか、・・・・・・・・・ということは絶対にないだろうな。←その通りじゃ

『私は一人で風呂に入るのが好きなのだ!例え弟といえでも一緒に風呂など入らん!』

『では、私がカノンと一緒に風呂に入っても怒りませんね?』←いかんのぅ

なるほど、なるほど、そうきたか!
兄貴は「好きにしろ!」と怒鳴ると、脱衣所のドアを勢いよく閉めた。


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