MISSION IMPOSSIBLE(File.21212 ムーミン谷の春 その1)

 

 今日も貴鬼は12宮の玄関口である白羊宮の階段を掃除していた。貴鬼は、これも教皇になるための修行の一環として、毎日丹念に掃除をしている。

 そんなチリひとつ落ちていない白羊宮の入り口に一人の男が現れた。貴鬼が、その男が聖闘士ではないことを素早く察知できたのは、その男の出で立ちあまりにも聖闘士のそれとかけ離れていたからだろう。

冥界の三巨頭の一人、ミーノスはついにその姿を聖域に現したのだった。

貴鬼は、その姿を見るや否やテレポートでミーノスの前へと移動した。

「おい、お前!何者だ!!」

 貴鬼は竹箒を右手に構えミーノスの前に立ちはだかった。

「(これがラダマンティスの言っていた、白羊宮の麻呂眉(小)だな。)」

 ミーノスは突然自分の前に現れた貴鬼を見るとニヤリと笑い、羽根飾りのついたつば広のとんがり帽子を取り、仰々しくお辞儀をした。

「わたくしは、旅の操り人形師です。」

「操り人形師?」

貴鬼は無い眉毛をひそめ、首をかしげた。

「はい。世界中を旅して回っております、操り人形師でございます。どうぞ、是非わたくしの人形劇をご覧ください。」

ミーノスはそういうと、大きなトランクケースの中から50cmくらいの大きさの2体の人形を取り出した。
その人形を見て、貴鬼の目が輝いた。その精巧に作られた人形の顔には見覚えがあったからだ。

「冥界に単身乗り込んできたジェミニのカノンの前に立ちはだかったラダマンティス。その想いを遂げる事ができるのだろうか!?」

ミーノスが勢いをつけ、一気に言葉を吐くと、地に崩れ落ちるようにして横たわっていた2体の人形、ラダマンティスとカノンの人形が、まるで生命を吹き込まれたかのように起き上がった。

カノン人形「げっ!またお前か、ラダマンティス!そこをどけ!」
ラダ人形「カノン!ここを通すわけにはいかん。」
カノン人形「いますぐにどかなければ、ジェミニのカノン最大の技でお前を倒す!くらえ、ギャラクシアン・・・!」
ラダ人形「そうはいくか、グレイティスト・コーション!!」

貴鬼はその光景にますます目を輝かせた。ミーノスが操る人形は、まるで人形自体が声を発しているかのようだった。そして、ラダ人形が発した声にあわせて、カノン人形が吹っ飛び、倒れる。

カノン人形「やめろ、ラダマンティス。あぁ!!」
ラダ人形「ふふふっ、今すぐ俺が地獄に送ってやる。」

カノン人形の上にラダ人形が覆い被さり、その口を塞いだ。その途端、両者の人形の聖衣がはだけ、裸となった。もちろん、その裸も精巧に出来ている。

カノン人形「やめ・・・・いやぁ・・・・。」
ラダ人形「カ・・・カノン!」

ミーノスが操っているラダ人形は、カノン人形の上で卑猥に腰を動かしている。

「待て、ラダマンティス!」

ミーノスが、再び勢いよく発した言葉を合図に、トランクから違う2体の人形が飛び出てきた。

ミーノス人形「その獲物をよこせ。ラダマンティス!」
アイアコス人形「女神の聖闘士を独り占めするのは、ずるいぞ!」
ラダ人形「よせ。これは俺の獲物だ!!」
ミーノス人形「ラダのくせにうるさい!コズミック・マリオネーション!」
カノン人形「うあぁぁぁぁ!!」

カノン人形が悲鳴をあげて飛び起きると、その人形はやや微妙に曲がって手足を開き、プラーンとなった。

貴鬼は、途中でミーノスから貰ったキャンディをなめながら、目を輝かせてそれを眺めていた。その姿を見たミーノスは、密かにほくそえむ。

「おっ?小僧。なんだこいつは?」

「楽しそうなことしているな。」

そこに買い物から帰ってきたデスマスクとシュラが現われ、貴鬼は振り返った。

「あっ、蟹と山羊のおじさん。見て、見て。すごい楽しんだよ。」

デスマスクとシュラに、怪しいという視線で睨まれたミーノスは額に汗を浮かべながら、仰々しく挨拶した。

「あのね、カノンとラダマンティスの人形劇なんだよ。あとの2体は冥闘士みたい。」

貴鬼の言葉に興味をそそられた2人は、ミーノスの前に腰をおろすと、人形劇の続きを促した。

 

ラダ人形「やめろ!!カノンは俺のものだ!」
ミーノス人形「くくくっ、可愛い顔してるじゃないか。」
カノン人形「ああぁ!!」
アイアコス人形「ふっ。そしたら俺はこっちの口でしてもらおうか。」

嫌がるラダ人形を押しのけ、ミーノス人形は四つん這いになったカノン人形の後ろへと周り、卑猥に腰を動かした。アイアコス人形は、カノン人形の顔の前に立ち、これまた卑猥に腰を動かす。

その途端、デスマスクとシュラの笑い声が響いた。

「おいおい、カノンは突っ込まれても、『ああぁ!!』なんて言わないよな、デスマスク。」

「そうそう、カノンは『ぎゃーーーー!』『やめろ、変態!』とかだよな。」

「だって、旅の人形師のオジサン。まだまだ修行が足りないみたいだね。」

デスマスクとシュラの言葉を聞いた貴鬼が、ミーノスを見上げた。ミーノスは思わず唸り声を上げ、その場に固まった。

「おら、早く続きやれよ!!ちゃんと、カノンはギャー!だぞ、ぎゃー!!」

デスマスクの罵声を浴びながら、ミーノスはさらに人形劇を続けた。

カノン人形「た・・・・助けて兄さん。あ・・・ぎゃーーーーーーー!」

カノン人形が再び悶えながら放った言葉に、貴鬼達は思わず吹き出した。
そして、カノン人形の助けを合図に、再びトランクから1体の人形が現われた。それは、どうみてもカノン人形だった。

サガ人形「やめろ。私の可愛い弟に何をする!!」
カノン人形「に・・・・兄さん。助けてぇ」

カノン人形がアイアコス人形とミーノス人形に犯されているところを助けにきたのは、サガ人形であった。サガ人形は、きちんと冥界バージョンの聖衣を纏っていた。

それを見て、再び貴鬼達が腹を抱えて笑い始め、ミーノスは人形劇を中断した。

「ぎゃははははっ。カノンは、『たすけて、兄さん。』は絶対に言わないよな。」

「おかしすぎる。サガがカノンを『私の可愛い弟』だって・・・・。」

「頭のいいほうのオジサンは、『やめないか!』とか、『なにをしている、お前達!』だよぉ」

ミーノスは、転げまわって笑っている三人を見て、唖然となった。

「お前、おもしろい奴だな。早く続きをやってくれ。」

デスマスクに促され、ミーノスは首を傾げながら渋々と人形劇を続けた。

ミーノス人形「お前が、カノンの兄か。ちょうどいい、二人まとめて料理してやる。コズミック・マリオネーション!」
サガ人形「うわぁぁーー!!」

サガ人形の聖衣がはだけ、先ほどのカノン人形のように、手足を微妙に曲げながらプラーンとなった。

「ぐははっはははっ。そりゃサガ弱すぎだな。いくらなんでも弱すぎだ!!そりゃ、もうサガじゃねぇだろう!!」

「カノンだ!カノン!カノンが二体だな!!」

これまたデスマスクとシュラが大喜びした。

カノン人形「兄さんになにをする。」
アイアコス人形「ふっ。兄の心配をする前に、自分の心配をしたらどうだ。」
カノン人形「あ・・・・ぎゃーーーーーーーー!」
ラダ人形「やめろアイアコス!!」
アイアコス人形「ラダマンティス。仕方ない、お前に、カノンを譲ってやる。」
カノン人形「やめろ、ラダマンティス。ぎゃーーーーーーーーー!」

ミーノス人形「どうだ。自分の目の前で弟が犯されているのを見るのは?」
サガ人形「やめてくれ。カノン!!」
ミーノス人形「ふふふっ。お前も同じめに合わせてやる!」
サガ人形「ぎゃーーーーーーーーー!」

カノン人形が輪姦されている隣で、今度は、サガ人形がミーノス人形に犯され始めた。

「オジサン。多分、頭のいいほうのオジサンは『ぎゃーー。』って言わないよ。」

「頭のいいほうのオジサン?」

貴鬼に声を掛けられ、ミーノスは人形劇を中断し、首を傾げた。

「シオンさまが、頭のいいほうのオジサンは、我慢しながら、いい声出すって言ってたもん。」

「そうそう。サガはいい声だすんだって、アイオロスがいつも嬉しそうに言ってるぞ。必至に声を殺すんだけど、声が出るらしいぜ。」

ミーノスは、貴鬼とシュラの言葉に茫然となった。何故に、こうも他人の痴態をしっているのか不思議でしかたないのだ。しかも、こんな幼い子供まで、知っているのだ。一体、聖域の風紀はどうなっているのか・・・。

「あーー、でもよぉ。俺にはよく分からないけどさ、冥闘士のヘボチンじゃ声もでないのかもよ?」

デスマスクが放った言葉に、貴鬼とシュラは大爆笑して転げまわった。

「(くそっ!これが終わったら殺してやる!)」

「オジサンどうしたの?怒ってるの??」

「ははははっ。なんで私が怒るのかな、坊や?」

ミーノスは乾いた笑い声を上げながら、サガ人形を喘がせて、卑猥な人形劇を続けたのであった。

 


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