MISSION IMPOSSIBLE(File.2525 氷の女神 その1)

 

『サガのスペアーよ。山羊と蟹は、その後どうなっておるのじゃ?再び調べてまいれ!!』

 ジーサンはまた俺に命令した。おい、スペアーってなんだよ、スペアーって!←代用品という意味じゃ

それにしたって、またシュラの調査かよ。尻の穴がいくつあったって足りやしねー。何気にジーサンてば、シュラLAVE??←Loveであろう、綴りが違うぞ

 俺はその足で磨羯宮へと向かった。今回は楽勝だ。シュラにそのまま尋ねればいいのだから・・・・・。

 俺は磨羯宮で珍しい人間に出会った。カミュだ!
カミュは磨羯宮の女神像をジーッと見つめていた。おいおい、まさか女神像に欲情か!?

『カノン、この女神像はいつ見ても素晴らしいと思わないか??』

 カミュは俺に気がつくと、女神像から目を離さずに言った。なんだ、こいつは?確かに、磨羯宮の女神像は凄いが、俺は生身の女神のほうが好きだ!!カミュは俺のことなど構わずに女神像の周りを歩きながら、さまざまな角度から女神像を見ては、感歎の溜息を漏らした。

『そんなにこれがいいなら、お前の所にも女神像を置けばいいじゃん!』

『しかし、この様な素晴らしいものを一体どこで・・・・・・。』

 まっ、確かにそうだな。適当にそこら辺に転がっている訳でもないしな。女神神殿にある女神像でもいっちょパクってくるか??
・・・・・いや、あれはいくらなんでもデカ過ぎて宝瓶宮には入らないか・・・・。だったら解体して・・・・・おっと、それじゃ意味が無いな・・・・。←よからぬ事を考えぬように

『カミュ、俺がお前のために女神像を彫ってやろうか?』

 シュラは腕を組んで磨羯宮の柱に寄りかかったまま俺達に声をかけた。こいつ、いつのまにここに??まさか、ずーっとカミュのことを見てたんじゃないだろうな??

『ふっ、ここまで壮大な女神像は流石の俺でも難しいが、もっと小ぶりな女神像なら彫ってやるぞ。』

 シュラは自身満々に言った。確かに、こいつの彫刻の技術は素晴らしいものがあるが、この場合、女神像を彫るじゃなくて、カミュを掘るの間違いじゃねーのか?(笑)

『それは、本当か?シュラ。』

『当たり前だ。一緒に12宮を突破した仲じゃないか。遠慮などするな。』←突破できなかったがの。役立たずめ。

『ふむっ・・・・。折角だから、貴方の好意を素直に受けさせてもらおう。』

 シュラはカミュを私室へと案内した。カミュの奴、シュラの私室に上がりこむなんて、よっぽど女神像が気に入ったんだな。俺はカミュに誘われて一緒に2階へ上がった。さしずめ俺はカミュのボディーガードというところか・・・。

『カミュ。下にある女神像とまったく同じでいいのか?』

 シュラは女神像をスケッチしながらカミュに尋ねた。俺はそのスケッチを覗いて見たが、俺にはそれが下にある女神像には見えなかった。これはどう見ても裸のカミュだろう・・・。しかし、これはちょっと違うぞ。シュラは、カミュのは見たこと無いんだな。あとで教えてやろう。
シュラの向かいに座っていたカミュは、シュラがまじめにスケッチしているように見えたに違いない。カミュも意外に間抜けだ・・・・。

『カミュ。あれは、女神がエクスかリバーを授けてる像だ。お前のところにエクスかリバーというのもどうかと思うが・・・・。』

 シュラはスケッチの手を止めずにカミュに言った。カミュは別にそんなことを気にしてなどいなかったようで、シュラに言われて初めて気が付いたようで、眉を寄せて考え始めた。

『だったら、水瓶を持った乙女と女神っていうのはどうだ??美女二人でなかなかいいと思うけどな。』

『ふむっ・・・。それは素晴らしい・・・・・。』

『だろう?俺はこういうのは得意なんだよ。』

 シュラは嬉しそうに笑いながら言った。カミュはシュラの意外な才能に驚いて、シュラを見つめていた。
カミュ、お前は騙されているぞ!
しかし、そんな敬意を表した視線で見つめられているにも関わらず、シュラはカミュを見ながら相変わらずスケッチをしていた。

『シュラ、貴方の好意にもう一つ甘えたいのだが・・・・・。』

『ん?なんだ?俺にでも惚れたかぁ??何をして欲しい、言ってみろ!』

 シュラは目を輝かせて腰を浮かした。カミュに見つめられて、シュラはすっかりヤル気になっていたみたいだ。しかし、カミュは手を前に出すとシュラを押しとどめた。

『いや、そうではない。私は氷を操る聖闘士だ。だから是非、女神像を氷で作って欲しいのだ。』

『氷の女神像か・・・・・。』

『やはり駄目か??』

『いや、面白そうだな。やってみよう。』

 こうして、シュラはカミュの為に氷の女神像を彫ることになった。俺はどんな氷の水瓶の乙女ができるのか楽しみになった。もし、可愛い美人の像が出来たら、俺にも一体作ってもらおう♪

 

 次の日、宝瓶宮へと行き、氷の女神像がどうなったか見に行った。宝瓶宮に入ると、シュラは巨大な氷の前でじーっとしていた。なんだ、寒さのあまり凍ったか??俺はシュラが目を閉じたまま動かないので、声をかけてみることにした。

『おう、カノンか。こうやって目を閉じてるとな、さまざまな構図が浮んでは消えていくんだ。』

 なんかシュラがおかしいぞ・・・・。絶倫山羊のシュラは一体どこへいったんだ!!
それよりも、とうの本人のカミュはどこいるのだ?もしかして、シュラにこんなことを頼んでおきながら、ミロとお楽しみ中か?シュラも可哀想にな・・・。

『おい、シュラ。カミュはここにはいないのか??』

『カミュには、出来あがりを楽しみにしてもらうために、私室に控えてもらってる。』

 おぉ、なんかシュラ、芸術家になってるぞ。

『うーーん、二人が寄り添っているのもいいなァ〜。』

 シュラは顎を撫でながら、呟いた。ほうほう、女神と美女が寄り添ってるのか・・・・むふふふっ。

『おい、カノン。ちょっとモデルになってくれないか?』

『おいおい、俺は美男子だが美女ではないぞ。』

『違う、違う、構図を練りたいんだ。』

 そういうと、シュラは俺の両手を握り締めて見つめた。キモイ・・・・・。だが、女神と美女が見つめ合うのはOKだな。

『うん、これも違うな・・・・・・。』

 どうやらこれは、シュラの感性には合わないらしい。俺には、まったく理解できない。シュラは次に両手を俺に回して抱きしめた。

『・・・・、このポーズもいまいち・・・・・・。』

 そう言いながらも、シュラは俺の尻をいやらしく撫で回した。

『シュラ、どーでもいいけど、何で俺のケツなでてんだぁ?』

『あっ、すまん。つい癖で・・・・・・。』

 俺はシュラにいろいろなポーズを取らされた。俺が後ろからシュラに抱き付いてみたり、抱きつかれたり、シュラの手にキスをする仕草もした。これって何かおかしくないか?もしかして俺はシュラに遊ばれてるのか・・・・?←そのとおり

 最終的に、俺はシュラの前に跪きシュラを見上げてるポーズを取らされた。そして、シュラは俺の頭に軽く手を置いたまま、目を閉じて考え事をした。早く、解放してくれ。こんな姿を誰かに・・・・兄貴にでも見られたら・・・・。

『よし、決まった。これでいこう!!』

 シュラはそういうと一気に氷を削り始めた。なるほど、女神に祈りをささげる乙女とそれを優しく見守る女神といところか・・・・・。

 ものの30分もしないうちに、女神像は完成した。は・・・・はえーぞ。

『ふっ。俺は、女神像は数え切れないほど彫ってきたからな。目をつぶってでも彫れるんだ。』

 俺は完成した女神像を見せてもらった。

 大理石の像を見なれた俺にとって、それはとても新鮮に見えた。氷の女神は、乙女が持っている水瓶から零れ落ちる水に手を触れながら、静かな笑みを浮かべている。その姿は凛として威厳を漂わせながらも、優しさをかもし出していた。そして、乙女の方はこれまたサラサラヘアーのナイスボディの美女だった。しかし、ちょっとカミュに似てる気がするが、気のせいか??

 そして、氷の独特の光で輝いた像は、芸術とかに興味の無い俺にも、とても綺麗に見えた。

 しかし、これは随分と小さい・・・・・。高さは50cmくらいしかないのでは・・・・。
この大きさで、この細かさ・・・。シュラって、器用だな。本当は凄い奴なのかも・・・・。

『さぁてと、本番と行きますか!!』

 シュラは、腕をぶんぶんと振り回しながら気合を入れ始めた。
なるほど、この小さいのは予行練習みたいなものか。ということは、この小さい女神像は不用なんだよな。俺が貰っても怒られないかな?

 シュラは、再び氷を削り始めた。俺は再び小さい氷の女神に視線を戻した。それにしても、この像は先ほど俺がとったポーズとは随分と違うようだが・・・・。ちくしょう、シュラのやつ。やっぱり俺で遊んでいやがたんだな!!

2時間後、ついに像は出来上がった。しかし、これは・・・・・・・・。流石、シュラだ!!

 シュラは完成した像に真っ白なシーツをかけ、像を覆うと私室にいるカミュを呼びにいった。
俺は、シーツをめくりその像を見たが、細部に渡るまで細かく綺麗に彫られていた。まるで今にも動き出しそうなくらい気迫に満ちた作品だった。


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