MISSION IMPOSSIBLE(File.26262 明日があるさ)

 

『サガのおまけよ。山羊と蟹はしかと仕事をしておるかのぅ。様子を探って参れ。』

教皇は俺に、また命令しやがった。
シュラとデスマスクが仕事?あいつらに、教皇補佐以外の仕事なんてあるのかよ。俺は、ジーサンに二人が闘技場にいると言われて、渋々と闘技場へと向かった。

俺が闘技場の外まで来ると、中からデスマスクの巨大な声が聞こえた。
あいつ、本当に声がでかいな・・・。でなくても、闘技場なんて声が響くのに・・・。

闘技場にいたデスマスクとシュラの前には、聖衣を纏った聖闘士達が何人も並んでいた。
その中には何人か知った顔があった。こいつらは、確か白銀聖闘士・・・。

『いいか、おめぇら。今日からみっちりと訓練してやるからな。ありがたく思えよ!!』

『ふっ。お前達は弱すぎるからな。青銅のヒヨコにあっけなくやられてしまうなど、情けなさ過ぎる。覚悟を決めて、訓練に参加しろ!』

デスマスクが怒鳴り、その後をシュラが続けると、白銀達は視線を下にむけ沈黙した。
そういえば兄貴やミロが言っていたが、白銀聖闘士達は卑怯にも複数人で、青銅に挑んであっけなく負けたんだったな。←それを指示したのはサガであろう
・・・・。兄貴も、白銀があまりにも弱いのを知っていたから、青銅相手に何人もけしかけたのか?

『そういう俺たちも、青銅にあっけなく負けたんだけどな!!なぁ、シュラ!!ぐはははっ!』←笑い事ではない

デスマスクの笑い声が闘技場に木霊した。しかし、白銀達は笑うに笑えず、冷や汗を流している。

『おい、おめぇら。ここは笑うところだ!。っていうか、笑え!!』

デスマスクが凄みをきかせて言うと、闘技場にか細い渇いた笑い声が響いた。
あーあ、白銀共ってば、すっかりびびっちゃってるよ・・・・。デスマスクの奴は、声だけは迫力があるからな。←顔もなかなかの悪人面である
しかし、白銀共も聖衣に見放された奴に訓練されるなんて、可哀想にな。ってーか、青銅になんて負けた奴に訓練されるなんて、なんて哀れな。デスマスクもシュラも訓練うけたほうがいいんじゃないのか?
あの二人も超へっぽこだもんな。←そういうお前は闘うに値しないそうだな

俺は、闘技場のベンチに腰をかけてしばらく様子を見ることにした。

『いいか。お前達は武器に頼りすぎなんだ!武器に!!』

俺はシュラの言葉に目が粒になった。なに?白銀って武器つかってるのか?←武器ではない
超卑怯じゃん。武器って、天秤のジーサンしか持ってないんじゃなかったっけ?←その通り
あっ、でも、鶏の聖闘士アイオロスも使ってるよな。←一本しかない矢ではのぅ・・・
で、なんで白銀ごときが武器を持ってるんだよ。しかも、武器持ってて、青銅に負けたのか。マジでだせぇーな。

『お言葉ですが、これは武器ではありません。聖衣の一部です。決して武器では・・・!!』←その通り

白銀の一人が一歩前にでて抗議すると、口答えをするな!といって、蟹パンチをくらい鼻血を出してぶっ倒れた。←無闇に殴るでない
そして、シュラは白銀達で武器?を所有するものを前に呼ぶと、用意してあった箱に次々と入れさせた。

その武器の量といったら半端じゃない。
黄金の矢、イガイガの付いた鉄球、円盤?・・・・などなど。

『おい、ペルセウス!お前のもここに入れろ!』

シュラが長髪の男に顎でしゃくる。

『はい?私は武器など持ってはおりません。』

『お前の背中についている物を、俺達が知らない分けないだろう!』

『ですから、これは武器ではなく盾です!!』←その通り

『つべこべ言わずにさっさと入れねぇと、あの世に送るぞ!!』

業を煮やしたデスマスクが、凄みを利かせて言うと、ペルセウスは背中から盾を取り出して箱の中に入れた。
あ!これは、メデュウサの盾!!
確かにこれは防具っていうよりは、武器だよな。こいつは絶対にこの盾がなければ、へっぽこだ!←それでは話にならんのぅ

『キャンサー様、カプリコーン様、どうしましょう。ミスティの武器はこの美貌なんですけど・・・。』

今度は、蜥蜴座のオカマが髪をかきあげながら体をくねらせた。
デスマスクの目が点になったのを俺は見逃さなかった。
それでも、ミスティは腰をくねらせウィンクをしていた。こいつ、ミロに掘られて、教皇にも掘られたのに全然懲りてねぇな。←大馬鹿である

シュラは腰をくねくねさせているミスティの腕を掴むと、デスマスクの前に引きずりだした。
俺はてっきり、ミスティがシュラに掘られると思ったが、デスマスクがミスティの頭を蟹パンチを食らわせただけだった。

『だったら、てめぇはこの箱に入ってろ!!』

『えっ?』

『その体が武器なんだろう。だったら、この箱に入ってろ!』

『ほら、入れよ!』

デスマスクとシュラに睨まれたミスティは、硬直し、シュラに髪の毛を引っ張られ小さい箱に無理矢理入れられた。←ほうほう、なかなか洒落がきいてるのう
ミスティは、他の白銀達の武器と一緒に箱に体育座りをして入れられ、そのまま放置される事になった。
相変わらず馬鹿な奴だな。

シュラとデスマスクに冗談が通じないと思った白銀共は、冷や汗を垂らしながらミスティに哀れみの視線を送っていた。こんなアホな同僚を持った白銀共のほうが、俺は哀れだと思うけどな。

シュラとデスマスクは、腹筋5万回、腕立て5万回、闘技場1万周の走りこみをさせると、フラフラになった白銀達を再び並ばせた。
あいつら、こんなんでヘロヘロになっちまうなんて、なってないな。←ほうほう、ではお前も同じメニューをこなすがよい
よくそれで、白銀聖衣をものに出来たもんだぜ。はっきりいって、平和ボケして訓練を怠けていたとしか思えないな。

俺は、白銀聖闘士にクールダウンさせているシュラに、ミスティを掘らないのかと聞いてみたが、意外な答えが返ってきた。

『俺は、公私混同はしない主義でな。』

なるほど、仕事の時はたとえ相手が誘ってきても乗らないということか。意外にしっかりしてるじゃん!!←当然である

『でもさ、この訓練が終わったらミスティをヤるんだろう?』

『ふっ!あたりまえだ!!』

俺が聞くと、シュラは斜に構えて頷いた。
やっぱりな・・・。まぁ、今回は自分で腰をクネらせたオカマが悪い!!
っていうか、あいつはいつもこういうことしているから掘られちまうのに、学習能力なさすぎだな。

『お前ら。こんなことで、へこんでるんじゃねぇぞ!!次ぎいくぞ、次ぎ!!』

白銀達は今度は、闘技場の真中に集められた。そして、俺はとんでもない物を見てしまった。

デスマスクが、いきなり積尸気冥界波を白銀達に向かって放ったのだ。
白銀達はその場にパタパタと倒れたのを見て、デスマスクは心底嬉しそうに笑い声を上げ、本人も積尸気へと消えていった。

おいおい、いくらなんでも殺しちゃまずいんじゃねぇーの?また、巨蟹宮の顔が増えるぞ!!←無益な殺人はいかんのぅ

しばらくして、デスマスクが積尸気から戻ってきたが、倒れた白銀達はピクリとも動かなかった。
俺は、一応念のためデスマスクに事情を聞いてみた。

どうやら、これは白銀達が自力で積尸気から戻ってくる訓練らしい。
積尸気って自力で戻って来れるようなものなのか?今までに、自力で戻ってきた奴っているのかよ?←気合で戻れる

『大丈夫だ!!あいつらも聖闘士のはしくれだ。しかも聖衣も着てるしな。ちょっとのことじゃ死なねぇだろう!!』

デスマスクは爽やかに笑い声を上げると、シュラも笑う。取りあえず、俺も一緒に笑っておくことにした。←馬鹿であろう

すると、闘技場の隅に放置された、箱入りミスティが泣き叫びはじめた。
仲間が全員死んでしまったと思ったらしいミスティは、あまりの恐怖にギリシャ語になっていない言葉で訳の分からないことを言っている。
あーあ、すっかりパニックだな。情けない奴め。←根性が足らぬ

『さてと、今日の訓練は終わりだな。俺は、あいつを持って帰えるとするよ。』

『おう、そうか。俺はもうしばらく、ここにいるわ。一番最初に帰ってきた奴と飲みにでもいくかな。』

泣き叫ぶミスティを引きずってシュラが闘技場を出て行くのを見送ると、デスマスクはベンチに座って暢気に鼻歌を歌いはじめた。
戻ってくる見込みってあるのかよ・・・・。俺が疑問に思っていると、デスマスクは『ない!』と即答して笑った。

そして、訓練終了予定時間の夕方の5時になっても、白銀達は起き上がることがなかった。

『ったく、本当に情けない奴らだな!!』

デスマスクは、大袈裟に肩をすくめて言うと、白銀達を積尸気から連れ戻すことなく、巨蟹宮へと帰っていった。
もちろん、俺もその日の調査は終了したので、帰ることにした。

翌日。
昼頃目が覚めた俺は、取りあえず闘技場に行ってみた。シュラとデスマスクは、仕事だからと言って、朝から闘技場に顔をだしてるようだった。
しかし、俺の予想通り、白銀達はまだまだそこに倒れていて、誰も積尸気から戻ってきてないようだ。

デスマスクは俺に、

『朝さ、積尸気に様子を見に行ったらな。あいつら青い顔して、出してくれ!!助けてくれ!!って泣きついてきやがってよ!!本当に情けない奴らだよな!!』←その通り

と、心底嬉しそうに笑いながら言った。

『おい、デスマスク。白銀達は大丈夫なのか?』

『あ?穴に落ちなければ大丈夫だ。』

『そうか。』

一応心配したシュラは、デスマスクの返事にあっさりと納得してしまった。
そうなのか、穴に落ちなければ大丈夫なのか・・・・。本当か!?←本当である
まぁ、俺には関係ないからいいか。

で、シュラにお持ち帰りされちゃったミスティはどうなったかというと、磨羯宮のベッドで身動きが取れなくなっているらしい。
シュラに立てなくなるまで、掘られたのか?あの堅いベッドの上で一晩中か・・・・。そりゃ立てなくなるわな・・・。ご愁傷様。
まぁ、積尸気に送られちゃうよりはいいのかもしれないな。あのオカマは掘られなれてるしな!!

そして、今日もピクリとも動かない白銀達を、トランプをしながら5時まで観察したデスマスクとシュラは、自宮へと戻っていった。←遊ぶでない

報告:白銀の訓練は多分、順調。ミスティは、シュラに特別訓練中。

随分と手抜きな訓練ではあるが、積尸気に行く機会などあまりないであろうから、よい経験になったかも知れぬ。
勤務態度不良は厳重注意であるな。

教皇 シオン


end