MISSION IMPOSSIBLE(File.27272 逆襲のシャカ! その1)

 

朝、教皇に呼び出された俺は、疲れた体を引きずって教皇の間に向かった。
はぁ、まじで勘弁してくれ。昨日は大変だったんだよ。←余は心配で一晩中起きていたのじゃ

『何故にムウがあのような所に泊まっておったのじゃ?』

ジーサンは不機嫌そうに言った。
俺はその場で、レポート用紙とペンを取り出し、報告書を書いた。

 

昨日、昼飯を食った俺は、いつものように処女宮の庭で昼寝をしていた。←仕事をせぬか
ここは、日当たりがいいし、うるさい兄貴もいないからいい!!シャカも相変わらず、蓮華の台座の上で寝ていた。

うーーん、今日も兄貴は鬱!俺は元気でいいかんじだ!!

俺がウトウトと寝転がっていると、珍しくシャカが庭に出てきた。

『一輝を踏むなと何度言ったら分かるのだね!』

あ?俺は植物をよけていたつもりだったが、どうやら踏んでいたらしい。なんだよ、フェニックスの一つや二つなぎ倒したくらいで、いちいち目くじらを立てるなよ。←植物も生物である

『今日は、君に折り入って相談があるのだ!来たまえ、カノン!』

シャカはそう言うと、スタスタと自宮へと戻って言った。
・・・、何が、『きたまえ!』だよ。それが人に相談を聞いてもらう奴の態度か!!俺は、シャカを無視して昼寝の続きをすることにした。←その通り

『来るのだ、カノン!!五感剥奪され、六道に落ちてもいいのかね!』

俺がついて来ないので、シャカが怒鳴る。
なんなんだよ、このくそ坊主!!俺が、しかたなく処女宮へと入ると、既に蓮華の台座の上でシャカは悦に入っていた。

『君は大層悪知恵が働くそうじゃないか。そこでだ、羊を捕獲したのだが、何かいい案はないかね?』

はぁ??んなもの、自分で考えろ!最も神に近い男なら、それくらい自分でやれよな。←まったくである
俺はクソ坊主になど付き合うほど、暇人ではないのだ!

『君は羊の醜態を見てみたいとは思わないのかね?』←醜態であろうとムウは可愛い

俺が馬鹿にしても、シャカは引き下がらなかった。もしかして、シャカはこの前ムウに騙されて、掘られた仕返しでもする気なのか??←そうであろうな

『ふっ。なんとでも言いたまえ。ムウ捕獲に協力するのかね?しないのかね?』

だから、それは人に協力してもらう態度じゃねぇだろうが。こいつに協力しても、なんのメリットもないしな。

『よかろう。今度君が、サガに追われているときに、3回まで六道に匿ってやろう!!』

たった3回か!?相変わらずおシャカさまはケチケチだな。
結局俺は、4回まで匿ってもらう約束をし、シャカにムウを捕獲するための知恵を与えてやった。

まず、俺が与えてやったのは、人質作戦だ。
貴鬼を人質にムウを捕獲するのだ。あのガキはチョロイから、適当に呼びだして捕獲し沙羅双樹の木に縛り上げる。ムウが、貴鬼を助けに来た所を捕獲するのだ。

『なるほど・・・・。』

シャカは納得し、まずは貴鬼を捕獲することにした。

『で、どうするのかね?』

おいおい、シャカ。そこまで俺に考えさせるのかよ。すこしは脳みそつかえや!!←脳がないのであろう
いつもの、神が言っている!って奴で、自分の神様に貴鬼を捕獲する方法を教えてもらえよ!!本当に、お前の神様は役にたたねぇな。
神にばっか、頼ってるからいけねぇんだ。←その通り

『・・・・ふむっ。神が・・・・、神が貴鬼を呼べと言っている。来るのだ、貴鬼!!』

いきなりシャカが叫んだ。でました、お得意のあてにならない神様の啓示!!
あのガキだって、いくらなんでも呼んだだけじゃこないだろう。俺があきれ返っていると、程なくして貴鬼が白羊宮から上がってきた。

『乙女のオジサン、呼んだ??オイラ忙しいんだから、用があるなら早く済ませてね。』

シャカはニヤリと唇を吊り上げると、貴鬼のボロ着の襟首を掴んで持ち上げた。
そして、状況が飲み込めずにキョトンとしている貴鬼を、そのまま庭へと連れて行き、沙羅双樹の1つに縛り上げた。

『オジサン。オイラはSMの趣味はないんだけど。オジサンには一輝がいるじゃないか。幼児虐待は、シオンさまと同じレベルだよ!』←無礼者め

『ふっ。そのようなことはどうでもいいのだ、子羊。早く、ムウに助けを求めよ!』

『ムウさまに助けを求める??そんな情けないことをしたら、オイラ、ムウさまに殺されちゃうよ。』

おいおい、たったそれだけでムウは貴鬼を殺すのかよ。羊は容赦ないな・・・。←殺しはせぬであろう。
せめて、スニオン岬に閉じ込めるとか、ボッコボコに殴るとか、異次元飛ばすとかにしろよ・・・。

シャカは一向に助けを求める気配のない貴鬼の目の前で瞑想を始めた。貴鬼が音を上げるまで、気長に待つらしい。
しかし、何時間立っても貴鬼は音をあげなかった。それどころか、あのガキは縛られているのに居眠りを始めやがった。

・・・・処女宮には眠くなる効果でもあるのか??

まぁ、いい。俺も取りあえず寝転がって昼寝をすることにした。
俺がウトウトとしていると、シャカの短い悲鳴が聞こえた。見ると、沙羅双樹の木に縛り上げられていた貴鬼が、いつのまにかシャカの目の前に立っていたのだ。

『オジサン。オイラ、そろそろ夕飯の手伝いをしなくちゃいけないから、帰るね。もうちょっと縛り方を勉強したほうがいいかもね。』

そう言って、貴鬼は小走りに処女宮を出ていった。
どうやらあのガキは、寝てると見せかけて、神経を集中し超能力で縄抜けをしたらしい。

『カノン!!これは一体どういうことだね!!』

シャカが俺に怒鳴った。
ったく、どうもこうも、ガキを甘くみていたお前が悪いんだろうが。←油断大敵である。
俺が帰ろうとすると、シャカは次の作戦を求めてきた。

ったく、仕方ないから俺は次の作戦を教えてやった。

今度の作戦は、餌だ!
ムウは甘い物には目がないからな。適当な菓子を餌に処女宮に誘いだし、捕獲すればいい。←無闇にムウに菓子を与えるでない。

『なるほど。そして、その餌に毒を盛ればよいのだな。』←情けない

シャカは再び唇を吊り上げて笑った。おいおい、毒を盛るのかよ。俺は、毒は持ってないぞ。毒キノコとかなら知ってるけどな。

『カノン。サガは睡眠薬を持っているそうだな。それを持ってきてくれないかね?私はムウの餌を調達してくるとしよう。』

シャカは一方的にそういうと、十二宮の階段を登っていった。
なるほど、睡眠薬を持ってグッスリになったムウをヤるのか。兄貴は、いつも悪夢を見るからって睡眠薬とか精神安定剤とか飲んでるもんな。なんでシャカがそんなことを知ってるんだ?←ほうほう

俺は双自宮の兄貴の寝室から睡眠薬をかっぱらい、処女宮に戻った。
シャカは、バケツかと思うくらいのデカイカップに入ったアイスクリームを持って、再びいやらしい笑みを浮かべた。
どうやら、宝瓶宮のカミュからアイスを丸ごと1個貰ってきたらしい。

なんか、美味そうなアイスだな・・・。
俺は、シャカに睡眠薬を手渡してから、カミュの所でおやつのアイスをご馳走になりにいった。

俺が宝瓶宮から戻ると、シャカはバケツアイスにスプーンを突っ込みジェラート状に練っていた。恐らく、あの中には睡眠薬が混入されているに違いない。

で、どうやってムウを呼び出すんだろうか・・・・。まさか、貴鬼と同じ手を使うんじゃないだろうな。いや、きっとシャカのことだから同じ手を使うに決まってる。かといって、ムウは貴鬼ほど馬鹿じゃないから、呼ばれても来ないだろう・・・。

案の定、睡眠薬入りアイスが完成したシャカは、ムウの小宇宙に直接語りかけ、ムウを呼んだ。

馬鹿だ・・・・。やっぱりシャカは馬鹿だ。

だが、俺はムウも馬鹿だと思う。あいつは、シャカに呼ばれて嬉しそうに処女宮へと上がってきたのだ。

『なんですか、シャカ?貴方が私を呼ぶなんて珍しい。』

ムウはニコニコ顔でシャカに言う。

『君にプレゼントがあるのだ。受け取りたまえ!!』

『おや?アイスですか?』

『カミュに貰ったのだが、私はこういったものを食べないのでね。』

『・・・・・。まさか毒など入っているのではないでしょうね?』

ムウは、目を細めるとシャカに言う。
うわっ、思いっきりバレバレだ。しかし、シャカは顔色一つ変えずに首を横に振った。

しかし、ムウは疑いの目でバケツアイスを見つめ、スプーンでグリグリと中をかき回した。
普通は、シャカにアイスなんて貰ったら疑うよな。しかも、ムウはシャカを無理矢理犯したばかりだしな。

ムウは、スプーンでアイスをすくいあげると、それをしげしげと眺める。そして、シャカの口元にそのスプーンを持っていくと、シャカの口に押し当てた。

『シャカ。何も入っていないというなら、貴方が先に食べてください。』

『・・・・・・。ムウ。私はこういう物が嫌いなのだ。』

『そうですか・・・。毒見をしてくれる方がいないのでしたら、私も食べるわけにはいきません。』←当然であるな

ムウがスカシた笑顔で笑うと、シャカの額から冷や汗が流れた。
二人はバケツアイスを目の前に、しばらく無言のまま見詰めあっていた。
正確にはシャカは目を瞑っているから、見詰め合っているわけじゃないけどな。

『お前達、何をしている?』

そこに運悪く、兄貴が通りかかった。俺は、ムウとシャカの唇が邪悪に釣りあがったのを見逃さなかった。

ムウは兄貴に何処へ行くのかと訊ねると、兄貴は、

『いや・・・・。ちょっと上の方に用があってな。ところでお前達こそ、何をしているのだ?』←人馬宮に私用であろうな

と逆に聞き返す。その質問に、待ってましたとばかりにムウがスプーンを突き出した。

『いつもシオンさまに好きな物を食べさせてもらえない私に、シャカがアイスをくれたのです。先日の、お風呂のお礼だそうです。サガも一口如何ですか??』←ムウの為である

ムウは嘘臭い笑顔を兄貴に向け、スプーンを兄貴の唇に押し当てた。咄嗟に兄貴は口を開くと、そのアイスを食べる。

その様子を穴があくほど眺め、兄貴の喉が動いて飲み込んだのを確認したムウは、兄貴に何かおかしな事はないかと訊ねた。
睡眠薬入りのアイスを食べ、異常がなかった兄貴が処女宮を去っていくと、ムウは疑った事をシャカに謝り、アイスを食べ始める。
しばらく、夢中でアイスを頬張っていたムウであったが、突然その動きを止めた。

ヤバイ、クスリ入りってばれたのか?

『シャカ。折角ですか、食べさせてくれませんか?あーーーーん。』

ムウはバケツアイスとスプーンを手渡すと、シャカに向かって口を開けた。
どうしていいか分からずに、しばらく固まっていたシャカだったが、これもムウに仕返しをする為と思ってか、渋々とムウにアイスを食べさせてやる。
しかし、流石にシャカも性格が悪い。
シャカがスプーンですくったアイスの量は、ムウの口に入る量ではなかった。スプーンに限界まで盛られたアイスを、シャカはムウの口に無理矢理突っ込んだ。

ムウが、うぐっ!っと短い悲鳴をあげてアイスを口に頬張るが、その半分はムウの口の周りにベットリとつき、溶けたアイスが首筋へと流れ落ちた。
きたねぇーな。ありゃ、ベトベトになって気持ち悪いだろうな。

『ん・・・・冷たい。』

ムウが喉を鳴らしながらアイスを食べると、首筋から上半身へと伝ったであろうアイスの冷たさに震えた。
あいつでも、冷たいとか寒いとかっていう感覚があるんだ。←ムウは感じやすいのじゃ♪

ムウは顔中をアイスでベトベトにしながら、最後までバケツアイスを食べきってしまった。そして、ムウはガタガタと震え始めたのを見て、俺は声を殺して笑った。
ムウの奴、バケツアイスを食べたせいで体が冷えて、寒くなったらしい。その唇は寒さで紫だ。←大馬鹿である

そして、ムウは睡眠薬が効き始めたのか、そのまま空になったバケツアイスを抱えて倒れた。その姿を見て、シャカがまたニヤリと笑うと、ムウの服に手を掛け始める。

やっぱりムウを犯す気なのか?教皇にバレたら殺されっぞ!流石に恐いもの知らずだな。

『ちょっと待て、ここでヤるのか、おシャカさま!!!』

俺は思わず声に出して言ってしまった。すると、シャカはそのままムウの髪の毛を引っ張り、俺のほうを向いた。

『何がいかんのかね?』

『そこでヤったらみんなに見られるぞ。』

『それがどうかしたのかね?』

『いやぁ、気にしないならいいんだけどさ。少なくとも兄貴は帰るときにここを通るぞ。見つかったら騒がれるぞ、殴られるぞ、異次元に飛ばされるならいいけど、スニオン岬に閉じ込められたら、いくらおシャカさまでも出れねぇと思うぞ。』←サガは顔を赤くして逃げ出すだけであろう

『・・・・、よかろう。』

よかろうじゃねぇだろうよ、おシャカさま。

シャカはプルプルと振るえて白目を剥いているムウの髪をつかんだまま、私室へと連れこんだ。

あいつ、あんな状態のムウをヤるつもりか、おシャカさまは噂通り本当に慈悲がねぇなぁ。←死体愛好癖があるとはのぅ

俺は気になったのでシャカの私室を覗いてみると、デカイ仏像ばっかで驚いた。見渡す限り、仏像だ。寝ている仏像、女の仏像、デカイ仏像、小さい仏像。壁には、派手な円形模様のタペストリー。←曼荼羅であろう

なんだよ、この部屋?!インドに帰るたびパクってきてんじゃねぇだろうな?
これで、どうやって生活してるんだ?生活する場所ないぞ。
あっ!こいつは、いつも表の台座の上で寝てるから関係ないのか・・・。←寝る場所が無いから台座の上にいるのやもしれぬのぅ

シャカは仏像の間で青くなったムウの服を剥いて、薄ら笑いを浮べながらお楽しみ中だった。
つぅか、マジでヤってるよ?!おシャカさま!流石おシャカさま、最も神に近い男!何考えてるのかわかんねぇな・・・。

『なんだね。君も混ざりたいのかね?』

シャカは俺を見てニヤリと笑った。ちょっと待ってくれよ・・・それは勘弁。←やはりサガでなくてはいやか?
俺はそのまま双児宮に戻ることにした。


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