MISSION IMPOSSIBLE(File.300,000 蛍の光・・・)

 

『ふむっ。気温が下がったのぅ。』

俺が兄貴の観察日記をジーさんに提出していると、ジーさんは日記に赤チェックを入れながら、超ドデカイ独り言を言った。
あーあ、老人は独り言が多くて、しかも声がデカイからいやだぜ。←余はピチピチの18歳である

俺はとっととジーさんチェックを終えて帰りたいのだ。

『サガのおまけよ。気温が下がったのぅ。』

『はぁ・・・。シベリアからカミュでも帰ってきたんだろう。』

っていうか、座ったままおもらしして身体でも冷えちまったか?←無礼者

『いや、水瓶にしては気温が高すぎる・・・。ふむ、サガは今ごろ氷浸けになっておるかもしれん。』

は??兄貴の氷浸け?氷柱兄貴か?
やべぇ、ジジーの奴、まじでボケやがった。もしかして今なら、ジーさん殺して俺が偽教皇になるチャンス!?←一生かかっても貴様には無理である
まったく、あの兄貴がそう簡単に氷浸けになんてなるわけないだろうが。くだらない。

『ふむ、双児宮が特に冷え切っておるのじゃ。ほうほう、サガの金魚の糞よ、サガが氷浸けになるまえに調査してこい。』

結局俺は、また命令されるはめになった。

 

俺は真っ赤になった兄貴観察日記を懐に入れ、渋々双児宮に帰ることにした。本当なら、今日はこのままシャカのところでカレー食って沙羅双樹の庭で昼寝して、ムウのところで飯食って・・・とかいろいろと予定を組んでいたのだが、全部兄貴のせいでぱぁだ!あのくそ兄貴、簡単に氷浸けになってるんじゃねぇよ。←白羊宮は食堂ではない
だいたい双児宮を冷やして、いったいどうするんだ。まさか宝瓶宮みたいに教皇の間の冷凍貯蔵庫化しようなんて、馬鹿なこと考えている奴がいるんじゃないだろうな。

巨蟹宮を出ると、上から見る双児宮はなんだかいつもより白い感じがした。なんか下から風に乗って冷気が吹き上げてくるきがする。そろそろ冬だし、最近めっきり寒くなってきたしな。

双児宮まで降りると、なんと通路に霜がおりていた。んでもって、吐く息が白い・・・って、ここはプチ宝瓶宮か!?
またカミュが兄貴のご機嫌伺いにでも来てるに違いない。だが、双児宮にはもっと性質の悪い奴だ来ていた。
カミュのところにいた、あの半透明のピカピカでツルツルの寸胴聖衣を着たシベリアのオヤジだ。←半透明ではなかろう
えっと、なんとかとかいう聖闘士だ。あーー、なんだっけ・・・・オヤジ聖闘士?
シベリア聖闘士・・・なんか近くなってきた気がする。

あっ!タルの聖闘士だ。タル型体系のタル座のタル聖闘士!!

んで、タル聖闘士が、いったい俺の宮に何のようだ?←クリスタル聖闘士であろう

まさかタル座VSふたご座か!?

先に私室から出てきた兄貴に視線を向けると、兄貴は寒そうに肩掛けをかけながら眉間に皺を寄せていた。
兄貴だけ肩掛けしやがって、卑怯者め!俺にも防寒具よこせ、ごら!←鱗衣でも纏っておれ

『おい、オッサン。ここはてめぇごときわけの分からない階級の聖闘士が気安く足を踏み入れていい場所じゃねぇぞ!』←白銀聖闘士である

兄貴が何にも言わないので俺がどなってやると、タルの聖闘士は俺を無視しやがった。まじむかつく。

『カノンの言う通り、宝瓶宮に用であれば主の署名を見せよ。教皇の間に用ならば、十二宮を通る必要はあるまい。』

おっ、兄貴の奴がめずらしくいいこと言った!!

『今日は貴方様に御用があって参りました。』

『ほう、・・・・というと、あだ討ちか?』

『は?』

兄貴の言葉に俺とオッサンは首をかしげた。

『君の気持ちはわからないでもない。私は、君にあだ討ちをされても仕方ないほど、君にひどいことをしてしまったのだからな。よかろう、この双子座のサガ、正々堂々受けてたとうぞ。』←自害せい

兄貴がそういっていきなり戦闘体勢にはいり、オッサンはマジビビリ入っていた。

そういえば、兄貴はオッサンに幻朧魔皇拳かけて殺したんだよな。そりゃ、あだ討ちされてもしかたない。
よしっ、いいぞ、オッサン。ぐさっっとやっちまえ!

『お待ちください、偽教皇っ!!』

『う゛っ!!』

オッサンの一言で、兄貴がうろたえた。いいぞ、そこで一発ボディブローだ!!!食らえ、タルマッハ拳!とか・・・タルブリザードっ!とか、タルフラッシュ!とか、タル玉とか、タル神拳、タルカッター・・・・。←漫画の読みすぎである

俺はオッサンの必殺技を見れると思い久しぶりにわくわくしたが、オッサンはいきなり頭を下げた。

『我が師カミュより、貴方さまの周りの世話をするよう託ってまいりました。』

今度は兄貴の目が点になった。俺の目もきっと点だ、点。
なんでわざわざカミュがオッサンに兄貴の世話を頼まなくてはいかんのだ。だいたい兄貴は世話してもらうっていう年齢じゃないだろうが。世話が必要なのは、もっと上にいるじじーと中国のじじーだ!←余の身の回りはムウに任せておる
それとも兄貴の病気の世話ということか?
カミュの奴、兄貴の病気がなんだか分かってんのか?
家族になんでも話せって医者に言われても俺になにも言えないような引きこもり野郎が、昔殺した男に回りの世話させられたら死ぬだろうが。←それはよいのぅ
もしかしてカミュというか、オッサンのねらいはそこか?!

『私は君に面倒を見てもらう言われも、カミュにそのようなことを頼んだ覚えもない。』

『しかし、太古の昔から弟子は師から学び、その師に心より敬意を込めて懇親的に世話するのが弟子の役目でございます。』←そのとおり

へぇ、そうなのか。生まれて初めてしったぜ。

『それはよい心構えだとは思うが、かといって、師の言うことを盲目的に信ずるのもいかがなものかと思う。たとえ師であるカミュの命令だとしても、私は迷惑だと・・・・』

なんか兄貴はいつになくベラベラとよく喋っていて、思い出すのも面倒くさくなっきたので省略。←略すでない

兄貴がうだうだと御託をならべて、オッサンを断ろうと必死になっていいたが、オッサンは一歩もゆずらなかった。

『お願いです、我が師の師!!』

は!?

俺と兄貴の目は粒になった。

兄貴はいつオッサンの師匠になったんだ?っていうか、どうみて兄貴よりもオッサンのほうが年上だろうが。
うちの兄貴はオッサンの弟子なんてもったおぼえないはずだが。と考えてると、俺はあることを思い出した。
それは前回のシベリア調査のときの、カミュが兄貴を師も同然とかいって、オッサンが兄貴のことを我が師の師、んでもってその弟子のアイザックとキグナスが兄貴のことを我が師の師の師とか言ってたな。
まさか、まさか、また我が師ごっこの続きをしようっていうんじゃないだろうな?←そのとおりであろう
奴らお得意の我が師ごっこはカミュや隻眼のヒヨコ達がいないと意味ないだろう。

『我が師の師よ。この水晶聖闘士・・・、あっけなく貴方様の幻朧魔皇拳にかかり、そしてあっけなく洗脳されたうえにシベリアに氷のピラミッドを作り、そして弟子の手にかかったこの私めに、是非我が師の師のために身の回りのお世話をさせてください。』

兄貴がよろっとよろめいたのを俺は見逃さなかった。しかも胃のあたりを手でおさえて柱にもたれかかった。

本当のことを言われて鬱モードか!?

オッサンはタルの聖闘士じゃなくて、クリスタルの聖闘士だったのか。そういえば、そうだった気がしないでもない。

『我が師の師と私は、我が師カミュの心の師匠とその弟子という間柄だけではなく、幻朧魔皇拳をかけかけられたの仲ではございませんか。どうぞこの水晶聖闘士に貴方様の身の回りのお世話をさせてください。』

なるほど、そうなると俺と兄貴は、「スニオン岬の岩牢に閉じ込められ閉じ込めた仲」、「悪を囁くのと囁かれる仲」、「聖衣を着たままボコルのとぼこられる仲」ってことだな。

『す・・・すまなかったな、水晶聖闘士よ・・・。君の気がすむまですきにするといい・・・』

兄貴は柱でよたる身体をなんとかささえてつぶやいた。
はぁ?本気か、このすっとこどっこい。
こんな全身タイツオヤジを俺の家にあげようってのか。冗談じゃないぞ。←お前の家ではない

『さすが我が師の師。我が師の教えどおり、本当は素晴らしいお方なのですね。』

ぱんっと手をうってオッサンは喜んだ。
オッサンは、俺ほどではないが、人をこき下ろしたり持ち上げたりするのがうまい奴だった。←いかんのぅ

『我が師の師よ。これは私めのほんの気持ちでございます。』

水晶のオッサンは、床でうずくまっていじけている兄貴の目の前に跪くと、四角い箱を兄貴の目の前に渡した。

再起不能の兄貴に代わって俺が受け取ってやることにした。

『で、なんだこれは?』

『ああ、貴方は我が師の師の弟御。これは我が師です。』

はぁ?カミュがこんな中に入ってるのか??

俺が怪訝そうな顔をしていると、水晶オヤジがしつこく我が師といってきた。

『ですから、我が師だけに我が師。ロシアで売っていた我が師ですが、味はなかなかいけるかと思います。それぞれこぶくろに入っておりまして、結構日持ちのいいものです。』←和菓子と我が師をかけたのであろう

俺は思わず、だいたい40センチ四方の箱に、小さい包みに包まったカミュを想像して、気分が悪くなった。

報告:双児宮の温度が下がったのは、カミュの弟子が来たせい。

提出物:こ袋にはいった日持ちのするカミュが詰まった箱

 


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