MISSION IMPOSSIBLE(File.30000 巨蟹宮の怪 その2)

 

デスマスクはコーヒーを口にした途端、顔をゆがめた。どうやら不味かったらしい。デスマスクは、ペガサスが持っていたカップを奪うと、キッチンの流しにコーヒーを捨てた。

『お前、どういうコーヒーの入れ方したんだ!?俺が本場のイタリアンカッフェィを飲ませてやるから、待っていろ!!!』

ペガサスは何が不味かったのか分からないのか、首を傾げながらリビングのソファに腰をかけてコーヒーが出てくるのを待っていた。
コーヒーの香りが部屋に充満し、俺も飲みたくなった・・・・。あいつの入れるコーヒーはマジで美味いんだ。
・・・・・・、別に今回は秘密調査じゃないから隠れて様子を探ることもないんだよな・・・・。俺は、1回天井裏を出て、改めて私室に入っていった。

『おう、愚弟。コーヒーの香りに誘われたか?飲んでいけ!!』

おぉ、流石デスマスク!話がわかるぜ。

『あっ!!・・・・っと、その格好は、カノンさんだ!!』

ペガサスが振返った。
こいつ、服装で俺と兄貴を判断してやがるのか!?俺は、むかついたので、ペガサスの頬をつねり、かっこいいほうが俺だと教えてやった。まったく、どいつもこいつも俺と兄貴をいっしょにしやがって。兄貴は裏切り者で、俺は女神を守って、冥界で大活躍した英雄だってーの!!←愚かである事にかわりない。

ペガサスはデスマスクが入れたコーヒーを飲みながら、美味い!美味い!と言って目を輝かせた。
ガキにコーヒーの味が分かるのかよ。

『デスマスクさん。俺、デスマスクさんに頼みがあるんですけどぉ・・・・。』

へらへらとだらしない顔で笑いながらペガサスが言った。

『俺、一回積尸気に行ってみたいんですよ。積尸気!!冥界にも海底にも行った事あるんですけど、未だに積尸気は行った事ないんっすよぉ。』

このガキは馬鹿か!?あんな所にいって、どうするんだよ。

『おう、今日は特別だ。幽体で行くのと、生身で行くのどっちがいい?』

『幽体って、魂だけってことっすよね。俺、そっちがいいっす!!』

ペガサスが言うと、デスマスクはいきなり積尸気冥界波を唱えた。ペガサスは、白目を剥いてソファに倒れた。
どうやら、積尸気を観光しに行ったらしい。

『このガキ、楽しいな。なんか憎めないっていうか・・・・頭の悪い弟分って感じだな。』←犬のようであるからのぅ

デスマスクが煙草に火をつけながら、マジックを取り出し俺に渡した。俺はそのマジックを受け取り、ついでに煙草も貰った。ここは禁煙じゃないからいいんだよな♪←百害あって一利なし
俺とデスマスクは、白目を剥いているペガサスの顔に落書きしまくった。

先ずは低い鼻の頭を黒く塗る。その下に鼻毛を書いた。頬に渦巻きをかいて、アフロディーテほくろも書いてみた。デスマスクが、額に『馬鹿』というKANJIを書いた。←漢字
意味は、日本語で「バカ」という意味らしい。なるほど、こいつは馬だしな。

俺達が散々顔に落書きをしたあと、積尸気から連れ戻されたペガサスはむくりと起き上がって、目を輝かせた。

『あれが積尸気って奴ですね。沙織さんと紫龍、氷河が言ってた通りのところっすね。本当に何もなくてびっくりしましたよ。人っていうか幽霊みたいなのがいっぱい並んで、皆穴に落ちてくんっすね。あの穴に落ちたら冥界にいけるんっすよね?俺、ちょっと覗いたら落ちそうになってビックリしましたよ!!!』

どうやらペガサスはえらく積尸気を気に入ったらしい。落書きされた顔で、積尸気に行ってきた感動を熱く語り出した。←馬鹿じゃのぅ

『ふっふっふっ。そうかそうか、そんなに気に入ったなら、もっと詳しく教えてやろう。蟹座の散開星団プレセペは中国では積尸気とよばれててなぁ。積尸気ってのは、積み重ねた死体からたちのぼる鬼火の燐気のことを言うんだ。つまりプレセペは地上の霊魂が天へとのぼる穴なのだ。分かったか小僧!!』

デスマスクがノリノリでうんちくを垂れていたが、ペガサスにはそういう難しい話は理解できなかったらしい。やつは、鼻ちょうちんをプカプカとこさえながら、居眠りを始めてしまったのだ。←いかんのぅ

『ちっ、青銅のヒヨコには難しすぎたか。俺、荷造りに戻るわ・・・・。あっ、冷凍庫にジェラート入ってるから食っていいぞ。』

どうやらデスマスクは、また実家に帰るための準備をしていたらしい。俺は、ダイニングに戻ってコーヒーのおかわりを貰い、冷凍庫の中からジェラートを取り出した。
んだよ、これ、ジェラートっていうよりアイスじゃねぇか。冷えすぎてカチカチだ!!

俺がダイニングのテーブルで、カチカチのジェラートを食っていると、リビングからペガサスの声が聞こえた。

『や、やめてくださいデスマスクさん。』

ん??デスマスクの奴、ペガサスに悪戯か?←それは勇気王であるのぅ

『あうっ、デスマスクさん。重いですよ。どいてください。うおっ・・・、そ、そんなところ触らないでください・・・・・。』

なに!?デスマスクの奴、ペガサスの上に乗ってるのか??やっぱりあいつもホモだったのか!?子供専門ホモ?←子供は柔らかくてよいぞ♪

『や、やめてください・・・。尻はやめてください!!ぅお・・・俺にはミホちゃんという心に決めた人がぁぁぁ。』

俺は思わずダイニングを飛び出して、リビングへと向かった。

俺がリビングへ入ろうとすると、廊下の向かいからデスマスクが飛び出してきた。
あれ?なんでデスマスクが?
デスマスクは今、ペガサスを襲っているんじゃないのか?

俺はリビングに入ると、いやなものを見てしまった。

ソファに寝ているペガサスの上に、白い半透明の人型が乗っていたのだ。これって、まさか・・・・。

『あれ?デスマスクさん、カノンさん。なんで??えっ?えっ???じゃ、俺の上に乗ってるのなに?』

俺とデスマスクの姿を見たペガサスはすっかりパニックだ。しかし、あの顔でパニックになっても、笑えるだけだ。

『ちっ・・・、積尸気から帰ってくるときに連れてきちまったようだな。』

デスマスクはそういうと、白い半透明人の襟首らしきところを掴むと、ポイッと投げ飛ばした。するとそれは跡形もなく消えてしまった。

積尸気から連れてきたってことは・・・・やっぱり幽霊ってやつか。←そうであろうな

『デデデデデ、デスマスクさ〜〜〜〜〜〜ん!!今のって、幽霊っすか!?』

幽霊から解放されたペガサスが震えた声でいった。あの顔で怯えても、おもしろいだけだ。
デスマスクが頷いたのを見て、ペガサスの目が輝いた。

『すっげぇぇぇぇ!!俺、初めて幽霊見ましたよ。しかも、幽霊に襲われちゃいました。で、今の幽霊どこいったんっすか?』

『積尸気に送り返してやっただけだ。』

『すっげぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇ!!!デスマスクさんって、そんなことも出きるんっすね。かっこいい!!!!』

『そ、そうか?』

ペガサスに絶賛されたデスマスクは、鼻たかだかだった。

『じゃ、あれもできるんですか!?俺、お願いがあるんです。城戸のジーサン降ろしてくださいよ。降霊術って奴でしたっけ?あのジーサンに俺、言いたいこと山ほどあって。』←女神の養父であるな

『すまねぇな。そっち方面は、俺はやったことねぇんだ。もう既に穴に落ちたたら益々お手上げだぜ。』

『えぇーーーー。だったら、沙織さんとか降ろしてくださいよ。生きている人も降ろせるんでしょ?』

『そりゃ、インチキって奴だろう。そうだな、そういうことならムウに頼んでみろ。あいつの技で冥界送りにしてもらえ。そしたら、その城戸のなんとかってーのに会えるかもしれねぇぞ。』

『えっ・・・・ムウに冥界まで・・・。それはちょっと・・・・。』

ペガサスはかわいた笑い声を上げながら、カチカチのジェラートを食べ始めた。どうやら、冥界にはあまり行きたくなかったらしい。
ペガサスはその後、4つもジェラートを食って腹をくだし、トイレへと消えていった。

 

報告:ペガサスの挙動不信は天然。心配なし!

ペガサスは青銅とはいえ、落ち着きがなさ過ぎるのぅ。
捕獲して調教再特訓を命じるとしよう。

教皇 シオン


End