MISSION IMPOSSIBLE(File.3000 牛追い祭 その1)

 

『牛を追い出したい。』

 は?俺は教皇の命令が理解できなかった。

『白羊宮にずーっといる、あの牛を追い出す口実を探るのじゃ!!』

 なるほど、白羊宮で半同棲生活状態のアルデバランが邪魔でしかたないのだな。んなもん、自分で追い出せよ。

『それは既に一度試みておる。ムウは余が牛を追い出したら、口を利いてくれなくなったのじゃ。だから、あいつの弱みを握るのじゃ!!』

・・・・・おいおい、秘密調査の次は、秘密工作かよ。まじで勘弁してくれよ。俺を一体なんだと思っていやがる、あのジーサンは。 

 俺は双児宮へと帰ると荷物をまとめて白羊宮へと向かった。

 俺が白羊宮につくと、ムウと貴鬼とアルデバランが昼食をとっていた。ナイス・タイミング!!
俺はムウの作った昼飯を食べながら、ムウに事情を話した。今回の潜入工作の理由はこうだ!

『俺はあまり家で家事をしないから、たまには兄貴に楽させてやろうと思って、いろいろムウに教わりたいのだ。だからしばらくここで世話になりたいのだが・・・。』←無茶な嘘をつくでない

 俺がはにかみながら言うと、貴鬼が口の中のものを噴出して笑った。アルデバランは口の中のものをゴクリと音をたてて飲みこむと、目を丸くして俺のことを見ていた。
ムウは冷めた目で俺のことをじーっと見つめている。やばい、嘘だってばれたか。貴鬼が噴出すくらいだから、ムウにはバレバレか・・・・・・。この作戦は失敗に終わると俺が思ったとき、ムウが口を開いた。

『それはよい心がけですね。私が貴方に家事をみっちりと仕込んであげましょう。』

 ふふふっ。ムウも以外にチョロいな。
俺は白羊宮の潜入に成功した。

 俺が飯を食った後、どうやってアルデバランを追い出すか考えていると、アルデバランに声をかけられ、ビクッとした。

『カノン。食事をした後は後片付けだ。家事を覚えたいのなら、まずは後片付けを手伝うといいと思うぞ。』

 そう言ったアルデバランは、俺たちが使った汚れた食器を山のように持ってキッチンへと消えていった。んだよ、めんどうくせーな。
しかし、目の前でムウと貴鬼がお茶を飲みながら俺のことを見つめていたので、俺は渋々アルデバランの言葉に従い食器を持ってキッチンへと向かった。ここでムウに疑われては、元も子もない。

 俺は広いキッチンでアルデバランと肩を並べて食器を洗い始めた。普段はアルデバランとムウで一緒に片づけをするらしいが、今回は俺がムウの代わりを務めた。しかし、なんでスプーンはこんなに水が飛び散るんだ!!むかつく、スプーンめ!!

まっ、皿洗いはウザイが、アルデバランと二人きりなれたから丁度いい。俺はアルデバランに、なんでこんなことをするのか聞いた。

『人の家で飯をご馳走になったなら、片づけをするのは当たり前だろう。作ってくれた人に感謝の気持ちを込めて洗うのだ。いくらサガが自分の兄であっても、いつも作ってばかり貰っているのなら、片付けくらいはしてやらないとサガが大変だと思わないか?』

はぁ・・・・・別に兄貴が大変だろうが、なんだろうが俺には関係ないんだけどな・・・・。しかし、ムウはいい旦那を持ったもんだ。俺はついでにアルデバランに聞いてみた。←ムウを嫁にやった覚えはない!ムウは余のものである。

『教皇はこういうことはしないのか?』

『教皇さまがか??教皇さまにこんなことをさせるわけにはいかんだろう?』←当然だ

『そうだけどさ、教皇が自ら手伝うってことは??』

『あるわけないだろう。教皇さまはいつも食事をした後もお茶を召し上がられながらドーーーーーンと構えていらっしゃる。それが教皇というものだろう??』←その通り

なんだ、ジーサンは何もしないんだ・・・・。ムウも大変だな。だからアルデバランが手伝っているのか??

 俺は慣れない皿洗いのため服がびしょ濡れになってしまった。さて、食後の昼寝かな。俺が白羊宮のテラスで昼寝をしようすると、ムウと貴鬼の視線に気がついた。やばい、あいつら又俺をジーッと見ていやがる。今度は一体なんだ?アルデバランが俺に言った。

『カノン。昼寝などしている場合ではないぞ。これから、夕飯の買出しに街までいくのだ。』

へ?夕飯の買出し??

『そうですよ、人数が一人増えたのですから貴方も買い物に付き合うのです。』

 ムウは俺にそういうと俺の手を掴んだ。もう片方の手はアルデバランが握っていた。
これがジーサンのいう、手をつないで仲良くお買い物というやつか・・・・・。しかし何でまた、俺の手まで繋ぐのだろうか。←手など繋ぐ必要はない!!

『いいですか、精神を統一しなさい。』

 ムウがそう言った瞬間、俺たちは白羊宮から街の入り口へとテレポートした。なるほど、手を繋ぐのはテレポートの為か。いつも一緒にいるアルデバランは兎も角として、俺までテレポートが苦手なのがバレていたのか・・・・・・・・・・・・・。

俺はムウが食材を選んでいる間、再びアルデバランに聞いた。

『お前はいつもムウの買い物にくっついて行くのか??』

『暇なときはな・・・・。ムウのところには育ち盛りの子供がいるからな。それに恥ずかしいが、私が結構な量を食べてしまうので、買い物の時に荷物くらい持ってやらないとな・・・・。』

『それで、教皇とかは一緒に買い物をしないのか?』

『教皇さまが??教皇さまが町まで下りていったら、大変なことになるだろう??皆、仕事どころではなくなってしまうではないか。』←その通り

『そんなんさ、仮面外して行けば分からないだろう?』

『しかし、教皇さまに荷物を持っていただくなどとうい無礼はできまい。』←当たり前だ

『そっか、あのジーサンがついていっても邪魔なだけだもんな・・・・。』

『カノン、そんな失礼なことを・・・・・!』

 俺たちは、ムウに呼ばれて会話を止めた。ムウは大きなダンボール箱二つ分の買い物をしていた。アルデバランは当然のように1箱を肩に担ぎ上げた。俺がもう一つの箱を持てばいいのだな。俺が箱に手をかけようとすると、アルデバランが横から手をだし、もう片方の肩にそれを担ぎ上げてしまった。

『貴方にはそれを持つのは無理でしょうから、こちらを持って下さい。』

 ムウは俺にそう言うと、オレンジがこぼれ落ちそうなほど入った大きな紙袋を渡した。そして、ムウは俺たちの背中に手を回すと、俺たちは再びテレポートで白羊宮へと戻った。

しかし、今のところアルデバランを追い出す口実が見つからない。ふふふっ、無ければ作ればいいのだ。

俺は居間で貴鬼とくつろいでいた、アルデバランに言った。

『おい、アルデバラン。お前、最近太ったんじゃないか??毎日、毎日ムウの所で美味いものを食っているから、そんな体系になるんだぞ。』←その通り

アルデバランは俺の言葉に反応し、自分の腹を摩りながら首を傾げた。

『そんなにデブるとムウに嫌われるぞ。少しはムウの所で飯を食うのは控えたほうがいいんじゃないのか?』

 俺が駄目押しにそういうと、アルデバランがたちあがった。なんだ、やるのか??かかってこい、望むところだ!!ここで大暴れすれば、ムウは俺たちに「出て行け!」と言うだろう。←お前が大怪我をするだけだ

『そっか、実は私も最近気にはしていたんだが・・・・。やはりトレーニングの時間をもう少し増やすか。たまには、一緒にトレーニングをしないか?』

 へ?なんで俺がお前となんかトレーニングしなくちゃいけないんだ。しかし、俺はまた後ろからの視線に気がつき振り返った。やはりそこには、ムウと貴鬼が俺のことをジーっと見ていた。

『いや、俺はムウに家事をいろいろと教えてもらわないと・・・・・・・。』

 俺がそう言うとムウが口を挟んだ。

『今の所、とくに仕事はないですから、一緒にトレーニングに行ってはどうですか?』

 俺は結局アルデバランと共にトレーニングをする羽目になった。おやつのアップルパイを楽しみにしていたのに・・・。ちくしょう、アルデバランのやつめ、本当に追い出してやるぞ!!←その意気である


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