MISSION IMPOSSIBLE(File.34343 湯煙温泉殺人事件!愛か憎悪か、美人双子に迫る危機!スターヒルに消えたジェミニの謎! その1)

 

『サガの弟よ、今度は何をしたのじゃ。』

俺はいきなり呼び出しを食らった。
何をしたって言われても、俺は何もしていない!!

『とぼけるでない。またサガが行方不明じゃ。昨日の無断欠勤はお前が原因であろう?』

・・・・・、もうバレたか。←当然じゃ

仕方なく俺は報告書を書いた。

多分2週間くらい前。

その日も相変わらず兄貴は家にいた。そして何故かアイオロスも勝手に上がりこんで、兄貴に引っ付いていた。
いつものようにリビングで分厚い本を読んでいた兄貴は、何を思ったか、いきなり立ち上がり倉庫に入ってゴソゴソと何かを探し始めた。

突然の奇行にアイオロスが尋ねると、兄貴はちょっと探しものをしていると言って、夢中で何かを探していた。
まぁ、あの姿はどう見てもものを探している姿だ。いくらアイオロスが馬鹿で、間抜けで、アホで、クズで、へっぽこの変態でもそれくらいは分かるだろう。

『ああ、すまない。ちょっと本を探していてな。この本の続きを探しているんだ。確かここに仕舞っておいたのだが・・・・・。』

兄貴は先程読んでいた本を俺たちに見せた。その本は、『世界の温泉とその仕組み Vol.1』だった。←相変わらず風呂好きであるの
・・・・、そんな本をクソ真面目な顔をして読んでいたのか。
しかも、そんなに分厚いのに、2巻があるのか!?そんな本、一体どこで見つけてきたんだ・・・・。←図書館であろう

もちろん点数取りのアイオロスも兄貴の本探しを手伝い始めた。
兄貴とアイオロスは、たかがくっだらない温泉の本1冊を夢中で探し始めた。←整理整頓がなってないのぅ
兄貴がくっだらないことをしている間、俺は暇だったので、倉庫に何か楽しいものがないか探してみた。

『カ、カノン。お前まで私の為に?お前が誰かの為に何かをするなんて・・・・。』

兄貴は何を勘違いしたのか、突然号泣し始めた。←情緒不安定であるのぅ
どうやら、俺が兄貴の為に本を一緒になって探してやっていると、思っているらしい。28歳で、もう涙腺緩みっぱなしだな。←いかんのぅ
勘違いしたければ、勘違いしておくといい。相変わらず馬鹿な奴だ。

しかし、兄貴は奇妙な物を発見して、本を探すのを止めた。
それは、埃を被り、茶色く色あせた筒状に丸められた紙のようなものだった。開いてみると、聖域の古い地図だった。

ところどころに赤い点が記されている地図を、兄貴はしげしげと眺めていた。

『あっ、これってもしかして温泉の地図だったりして?俺さ、ジーサンから聖域に温泉が出るって前に聞いたことあるんだけど・・・。』←そうであったかのぅ?

俺の言葉にその場がシーンとなった。
しかし、兄貴はその地図を凝視したまま動かなかった。

『ふっ。馬鹿なことを言うんじゃない。くだらんっ!!』

兄貴はそう言って、地図を元の場所に戻すと、本を探すのも諦めて倉庫から出ていった。
いつもなら、温泉と聞いただけで目の色を変えるのに、つまらない奴だ。

その日の深夜、俺がリビングでゲームをしていると、兄貴の部屋のドアが開く音が聞こえた。←夜更しせぬで、早寝早起きを心がけるように
珍しく夜中に便所か!?と思い、俺はゲームを続けていたが、なかなか便所から帰ってこなかった。
夜に食った物にでもあたったか?ざまぁみろ!!

一応、念のため面倒くさいが様子を見に行くと、やっぱり兄貴の部屋はもぬけの殻で、便所にも兄貴はいなかった。ということは、悪い夢みて風呂っていうパターンだな。
だが、確認してみたが風呂の電気もついていなかった。

まさか徘徊!?

勘弁してくれよ。こんな夜中に面倒をかけないでくれ!!兄貴が面倒をおこしたら、俺の監督不行き届きとかって言って、絶対ジーサンは俺を怒るに決まってる。まじで、勘弁だぜ。←その通り
俺が双児宮内を探すと、兄貴はなんと倉庫にいたのだ。

やっぱりあの本を諦めてなかったのか?

しかし、俺は兄貴の姿を見て笑うしかなかった。
兄貴は倉庫で、昼間見つけた地図を広げて穴の空くほど眺めていたのだ。

やっぱり気になって、気になって眠れなかったんだな。

馬鹿な奴だ。←可愛いではないか

『やっぱり気になるのか!?っていうか、俺の言う事なんて信じないんじゃなかったのかよっ!?』

俺が声を掛けると、兄貴はハッと我に返ったようで、振り返えるとそのまま地図を戻して倉庫から出ていった。
どうやら俺に心の中を見透かされ、バツが悪かったらしい。←素直でないのぅ

兄貴が倉庫を出た後、俺はその地図をわざとリビングのテーブルの上に置いて寝ることにした。

 

次の昼、俺が目を覚ますと、案の定リビングの地図はなくなっていた。←早寝早起きを心がけよ
俺が書斎を覗いてみると、兄貴は机に地図を広げ、両脇に本を山積みにして唸り声を上げている。
あの地図をしばらく与えておけば、兄貴も大人しいだろう。今日は訓練もなし、口うるさい小言もなしだなっ!!←一人でも訓練に励むように

俺はダイニングで冷えた飯を食っていると、兄貴は昼飯を作り始め、黙々と飯を食い始めた。
しかも、いつもならダラダラと食っているくせに、今日は早い。さっさと飯を食い終わった兄貴は、部屋にもどり、なぜか着替えをして戻ってきた。
着ているのは珍しく訓練着だ。プロテクターにズボンを履いている。

もう、訓練か!?勘弁してくれよっ。

そう思ったのもつかの間、兄貴は片手に地図とミネラルウォーターを持って外に出かけていった。
俺も、慌てて昼飯をかっ込み兄貴についていく事にした。←冷えた朝食を食っていたのではなかったか?
今度こそ間違いない!徘徊だ。←着替えて徘徊はせぬであろう

兄貴は十二宮をおり、スターヒルが間近に見える山の麓まで走っていった。そして、地図を凝視したあと、いきなり地面に向かってお得意の小宇宙弾を撃ったのだ。

ドーーーーンという爆音とともに、空から土が降ってきた。

俺と兄貴はすっかり土を被り、真っ黒になってしまった。俺はまじでむかついたので、兄貴に怒鳴ろうとすると、兄貴はあいた穴の淵から中をずーーーーーーっと覗き込んだまま動かない。

これって、もしかして温泉掘り当てるつもりで、こんなことをしているのか??←そうであろうな

兄貴はしばらく穴を覗いていたが、首を傾げると、俺に言った。

『カノン。穴を埋めておいてくれ。頼んだぞ。』

はぁぁ??なんで俺がそんなことしなくちゃいけないんだ。てめぇで掘った穴はてめぇで埋めろ、ごらぁ!!←その通り

『よく聞くんだ、カノン。温泉だぞ、温泉。これで温泉が出れば、光熱費水道代を気にしないで、いつでも入れるんだ。温泉が出れば、今の双児宮の風呂をもっと大きくして、お前が望んだサウナを作る事が出来るんだぞ!!』←これ以上広げるでない

・・・・温泉とサウナか、確かに悪くない考えだ。
だが、絶対に温泉など出るわけがない。←ほうほう

兄貴はそういって、また地図を見ると数メートル先に移動して、再び小宇宙弾を放った。
再び轟音とともに土の雨が降った。

くそっ、いい加減にしろよ!!←まったくである

『カノーーン!!何をボケッっと突っ立っているんだ。ちゃんと土を埋めてくれといっただろう。それが終わったら今度はこっちの穴を埋めておいてくれ。これが出れば家にサウナだぞ、サウナ!!』

2つ目の穴堀が終わると、兄貴はそそくさと違う穴掘りへと消えていった。

俺は適当に足で土を運んで、適当に穴を埋めておいた。兄貴の姿が見えなくなったのを確認し、穴埋め作業をやめて、その辺に寝転がる事にした。←きちんと埋めておかぬか
俺が寝転がっていると、ドーーーン、ドーーーーンと懲りずに穴を掘りつづける音が響き、その度に周辺に土の雨が降った。

俺は傘を持ってこなかったことに後悔した。

穴を掘る音がしばらく続いた後、急にそれはやんだ。

ま、ま、まさか、本当に温泉が出たんじゃないだろうな!!

俺は慌てて兄貴を探した。兄貴を探すのは超簡単だった。兄貴があけた穴を辿っていけば、いいだけだ。
こともあろうに兄貴は、十数個も穴をあけた挙句、岩に座ってぼけっと休んでいたのだ。
持ってきた水を飲みながら、地図を眺めては溜息をついている。

こいつ、俺に穴埋めをさせておいて、一人で休憩かよ!!←サボっていたではないか
しかも自分だけ水を飲みやがって!!
俺は腹いせに、その水を奪い一気に全部飲み干してやった。←ほう、間接キスか?

はぁ・・・・、まじ美味い。

『ふむっ。なかなか思うように温泉とは出ぬものだな。また明日にするか。』←当然じゃ。そう簡単に出たら専門家はいらぬであろう

兄貴はがっくりと肩を落としながら、自分で掘った穴を埋め、家に帰っていった。


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