MISSION IMPOSSIBLE(File.熱中時代 その1)

 

『最近、水瓶が頻繁にシベリアに帰っておるようじゃのぅ。あやつの弟子馬鹿も困ったものじゃ。』

俺はいつものようにジーサンに呼び出された。謁見の間の大王椅子にドデーンと座ってブツブツと言っている。
ジーサンの弟子馬鹿に比べたら、カミュの弟子馬鹿なんてライトなんじゃないのかよ!?まぁ、あまりカミュの弟子のことをよくしらねぇけどな。そういえば、アイザックもカミュの弟子だったっけ?←余とムウはラブラブなのじゃ♪

『まぁ、よい。物はついでじゃ、お主、水瓶の弟子馬鹿がどれほどのものか、調べて参れ。』

やっぱり俺は命令された。
カミュの弟子馬鹿度なんて、どうやって調べればいいんだよ。って、書くとまた、『頭を使わぬか!』って赤を入れられるんだろうな。←その通り
ジーサンいちいちうるせんだよ。←口を慎まぬか

と言う事で、俺は考えた。兄貴におねだり作戦だ!!
兄貴に物を頼むなんて、プライドが許さないが仕事のためだ仕方ない。←よい心がけじゃ

まずは双児宮に帰って、兄貴のご機嫌を伺わなきゃな。一番いいタイミングは風呂上りのときだ。

俺が双児宮に帰るとカミュが来ていた。兄貴とリビングでコーヒーを飲みながら、今日は通称粗悪品・冥衣の話をしている。
なんてタイミングのいい奴なんだ!!俺は早速、兄貴とカミュの話に割り込んだ。

『なぁ、カミュ。今度、シベリア帰るときに、俺も連れてけよ。』

突然の俺の言葉に、兄貴とカミュは顔を見合わせた。

『俺さ、シベリアって一回行ってみたいんだよ。兄貴も一緒に行くからシベリア案内してくれ!』

カミュは兄貴という言葉に冷静な顔をしたまま、変な眉毛をピクリと動かした。

『そうですか、分かりました。早速行きましょう。今、帰る準備をしてきますから、1時間後に迎えにあがります、サガ。』

兄貴に有無を言わせずに早口で言うと、カミュはそそくさと出ていった。

状況が飲み込めない兄貴はカミュが出ていった後、眉間にシワを寄せて俺を睨んでいた。

『カノン。こんどは一体何を企んでいるんだ?どういうつもりだ、カノン!!!!』

『はぁっ?別に何も企んでないぜ。ただ、俺は海底と聖域しか行った事がないから、・・・・・・・。』

俺がちょっと寂しそうな顔をし、俯くと兄貴は簡単にひっかかり、すまなかったと謝って出かける準備を始めた。
兄貴チョロい!!!!←チョロすぎじゃのぅ
やったぜ、これでシベリアのカミュの所に潜入することが出来る。シベリアって、何が美味い食い物あるのか!?まぁ、とりあえずはウォッカかな・・・・。←観光ではないぞ

そうして、1時間後にカミュが迎えに来ると、俺たちは十二宮を下り、テレポートでシベリアへと向かった。

さぶい・・・・・・、俺は兄貴にテレポートで連れて行かれた途端、寒さで凍え死ぬかと思った。俺は必死に小宇宙を燃やした。←根性がないのぅ
っていうか、ここ本当にシベリアか!?テレビで見たシベリアって、もっと針葉樹とか植物が生えてたぞ。←東シベリアである
ここはどうみても北極だろう・・・・・。

『寒いでしょうから、これを着るといい。』

カミュから手渡された物は毛皮のコートだった。いや、正確にはコートではなく、毛皮だ。裏打ちもしてない、まんま皮。おそらく、白熊の毛皮だな、これは。

『今日は少し肌寒いな・・・・。』

俺はカミュの呟きを聞き逃さなかった。この寒さの何処が『少し』なんだよ。
カミュはいつもの白のノースリーブに、ジーパン、レッグウォーマのまま、サクサクと氷の上を歩いていった。あんな格好でも、寒さは少しなんだな。脳味噌も凍って寒さも感じないのかだろうか。←慣れじゃ

俺たちがカミュに案内され、氷の上を歩く事数分、氷の上にポツンと建つ家が見えてきた。どうやらアレがカミュの家らしい。
家の中は既に暖かく、俺たちは頭や体についた雪を玄関で払ってから、リビングへと通された。

『お帰りなさい、先生っ!!!』

俺たちがリビングに入ると、金髪のガキがカミュに駆け寄った。えっと、こいつはキグナスだったな。
カミュは無表情で『氷河』と言いいながら、氷河と抱き合って挨拶をしていた。←ほうほう、かわゆいのぅ
ああ、そういえば氷河なんて変な名前だったっけ。

『今日はお客さんを連れてきた。私の大事な客だ。失礼のないようにするんだ、氷河。お前も知っていると思うが、双子座のサガと、弟のカノンだ。』

『あっ、お久しぶりです。』

キグナスは俺たちを見て、日本人特有のペコペコとした挨拶をした。←ロシア人ではなかったかのぅ

『もてなしの準備は出来ているのか?、氷河?』

『はい。あと少しで出来ます。しかし今、先生がトマトが無かったといって、町まで買いに行っているところです。』

『・・・・、ふっ、買い忘れか?あいつもまだまだ修行が足らんな。』

先生?あいつ??
俺たちは、キグナスとカミュの謎の会話を聞きながら、カミュがくれたロシアンティを飲んでリビングで寛いだ。

そういえば、アイザックの姿がねぇな。あいつ、こいつらと一緒に暮らしてるんじゃないのか!?

『ああ、そうだ、氷河。そろそろアイザックを呼んでこい。今日は私の弟子達を、サガに紹介したいんだ。ついでに、カノンにここら辺りを案内してやってくれ。』

カミュに言われ、キグナスは元気よく返事をすると、こいつもまた青いノースリーブ、白のジーンズ、レッグウォーマーのまま俺の手を取って、外に飛び出した。
俺は再び凍え死にそうになり、慌ててカミュの家に引き返し、兄貴の分の毛皮と、俺の分の毛皮の二枚を被ってキグナスの元に戻った。←気合いが足らぬのじゃ

この寒さの中、顔色一つ変えないとは、さすがカミュの弟子というところか・・・・。

キグナスは、俺にシベリア内を案内してくれたが、やはりどうみてもここはシベリアじゃねぇ。北極だ!←シベリアという名の北極かもしれぬのぅ。
キグナスが案内してくれたのは、

アイザックと修行した洞窟、先生と修行した氷山、アイザックとお弁当を食べた氷原、ダイヤモンド・ダストが始めて決まった氷壁、おまるキグナスの聖衣が埋まっていた氷壁、マーマの船が沈んでいた場所、3日前にクマを捕獲した場所・・・・・・等など、

俺にとってはどうでもいいような所ばかりだ。←氷しかないからのぅ

そして最後に案内された場所は、かなり謎な場所だった。
そこには、数本の三角の赤い旗が雪に晒されて立っている。キグナスは、その中の一つに近づくと、いきなり足元に向かって拳を放ったのだ。
キグナスの一撃で氷の地面に穴が空き、そこから13年間慣れ親しんだ懐かしい香が漂ってきた。そう、潮の香だ。
なるほど、ここら辺一帯は、海なのか・・・・。

俺が納得している間も、キグナスの奇行は続いた。

奴は、自分の空けた穴の淵にしゃがみ込むと、右手でその穴の淵の地面をゴンゴンと拳で叩いたのだ。
穴を、海面を覗き込みながら、キグナスは5分間も地面を叩いていた。

なるほど、氷を叩いた振動で、海の下に生息する魚を気絶さて、魚を捕獲するんだな。ということは、今晩は魚料理だな♪←ほうほう

キグナスは、首を傾げるとそのポイントを諦め、違う旗のところへと行く。
そして、またまた拳で氷に穴をあけると、その淵を叩き始めた。そして、またまたしばらく叩きつづけたが、首を傾げると、他のポイントへと移る。
なんだ、魚が取れないのか、仕方ない奴だな・・・・。ここは一丁、海の男の出番かな!??←根性なしのくせに海に飛び込むのか?

『おっかしいな、昨日は1回であたったのに・・・・。』

キグナスは、またまた首をかしげて他のポイントに移った。そうして、7つ目のポイントでも、地面を叩きながら穴を覗いて独り言を言っている。

『おーーーい、アイザーーーーック!!』

キグナスはコンコンコン、と地面をノックする。

『おーーーい、アイザーーーーックってば!!!!!!』

コンコンコン。再び叩いた。

『おぉーーーーーーい、アイザックぅぅーーーーーーーー!!』

キグナスが、地面を三度叩いた時、氷の穴からのぞく海面が、ぶくぶくと泡だった。
そして、海底から黒い影がうごめき、それはドンドンと近づいてくる。

まさか・・・・・。

『なんだ氷河、もう飯か!?』

・・・・・・、やっぱり。
海面から顔を出したのは、アイザックだったのだ。こいつ、海底に住んでいるのかよ。
キグナスの後ろに立っていた俺と目が合うと、アイザックは露骨に顔を歪めた。

『おい、氷河!!なんでシードラゴンがいるんだ!?』

『ああ、そういえば知り合いだったよな。カノンさんは先生のお客さんなんだ。』

『先生のっ!?』

信じられないと言った風な表情をしながら、アイザックは俺を睨みつけてきやがった。
アイザックは、カミュの客が俺なのに納得いかないようで、ブツブツと文句を言いながら、海の中から出てきた。俺はその姿に度肝を抜かれた。てっきりクラーケンの鱗衣でも纏っているのかと思ったが、こいつもこれまた、ノースリーブ、ジーパン、レッグウォーマだ。

『ポセイドンもいないのに、何でお前、海底に住んでんだよ?まさか、他の連中も未だに海底に住んでるんじゃないだろうな?』

『貴方のせいで、海底はめちゃくちゃになったんだ。柱の修理や、神殿の修理だって未だに終わってないんだぞ!!』

あーー、なるほど。だから未だに海底に住んでるのか。ご苦労なことで・・・・。
俺はアイザックの答えに納得し、シベリアの案内をまだしようとするキグナスを止めて、カミュの家に帰ることにした。
こんな何も無いところを案内されても、つまらん!!!

 


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