MISSION IMPOSSIBLE(File.4444 家政夫カミュ その1)

 

『今朝、蠍が水瓶が行方不明だと泣きついてきおった。水瓶を探してまいれ。』

教皇は俺に命令した。ミロの奴、ジーサンに泣きつくなんて、よっぽど尻が寂しいんだな・・・・。

俺はその場で、紙とペンを取り出すと報告書を作成した。

 

1週間前。

『サガにはいつもミロともども世話になってるから、たまにはお礼がしたい。』

 カミュはエプロン持参で双児宮に現れると、俺達に有無を言わせず家に上がりこんだ。
そして、カミュは勝手に家事を始めた。

『まったく、そんなことを気にすることもないのに・・・・。』

 兄貴は小さく呟いた。しかし、兄貴はカミュの好意に心を打たれたらしく、嬉しそうに笑った。

 俺達はカミュの作ったロシア風パスタを食べた。どこがロシア風なのかは、俺にはよくわからなかったがうまかった。

 カミュは、兄貴が午前中に洗濯した洗濯物を取り込んでいた。
こいつも、なかなか甲斐甲斐しいところがあるな・・・・。
 俺は、テラスに出た。カミュは慣れた手つきで、洗濯物をとりこんでいるところだった。しかし、俺は見てしまった。カミュが俺のパンツをズボンのポケットに突っ込むところを・・・・。←洗った下着では意味がないではないか

『おい、カミュ。俺のパンツを勝手に盗むなよ!』

 カミュは俺に後ろから声をかけられ、振り向いた。

『そうか、これは貴方のだったのか。それはすまなかったな。』

 カミュは表情一つ変えないで言うと、ポケットから俺のパンツを取り出し俺に渡した。カミュは別にパンツを盗んだことなど詫びる風もなく、洗濯籠に乾いた洗濯物を入れて部屋へと消えていった。カミュの奴、俺のパンツを持って帰ってどうするつもりだったんだ。俺のパンツは高く売れるのか?←売れるわけなかろう

怪しい・・・・・・・・。あいつ、一体何を考えているのだろうか・・・・。

 カミュはリビングで兄貴と話しながら洗濯物を畳んでいた。兄貴は下着くらいは自分で畳むと言い、俺のパンツが欲しいであろうカミュの目論見は失敗に終わった。兄貴、偉い!!

 カミュは今度は兄貴の部屋を片付け始めた。もちろん兄貴はカミュを止めたが、カミュは勝手に兄貴の部屋へ入っていった。

カミュは、全く散らかっていない兄貴の部屋に入ると、あちこちと物色し始めた。ほとんど家捜し状態だ。あいつは一体何を探しているんだ?
カミュは本棚から兄貴の日記を見つけた。だが、兄貴の日記は鍵付きの日記だ。どうやって読むのだろうか。カミュは必死でその中身を見ようと、日記をあらゆる角度から眺めまわし、結局鍵に手をかけた。鍵を壊して日記を見るつもりなのだろうか??兄貴にバレたら大変だぞ。
流石にカミュもそこまで馬鹿じゃないのか、鍵にかけた手を離すと日記を元の場所へと戻した。

 次にカミュが取った行動も、これまた奇妙だった。
カミュは兄貴のベッドに腰を掛けると、兄貴の枕に顔を埋めた。しばらく顔を埋めていたカミュは顔を横に向け、兄貴の枕から何かを摘み上げた。
あまりよくは見えなかったが、あの手つきからして、多分兄貴の抜け毛だろう。
カミュが探していたものは、兄貴の髪の毛か?あいつ、兄貴に呪いでもかけるつもりなのか?

『誰だ!』

 カミュはドアの影に隠れていた俺に向かって叫んだ。おい、人の家に来ておいて、誰だ!はないだろう・・・・。

『なんだ、カノンか。』

『カミュ、お前、兄貴の部屋で何をしていた?』

 俺はカミュに聞いてみた。

『部屋の片付けだ。』

『兄貴の部屋は綺麗だろう。次は俺の部屋を頼む。』←自分で片付けよ

『自分の部屋は自分で片付けてくれ。私はサガの部屋を片付けるので手一杯だ。』

 ちらかってねえだろう!!

『兄貴の部屋は十分綺麗だろう?俺の・・・・。』

 カミュは俺の言葉などほとんど聞いてないようで、ベッドから立ち上がると、いきなり俺の首筋に顔を近づけた。
なんなんだよ、こいつは!!

『やはり双子でも匂いは違うんだな・・・・。』

 カミュは俺から顔をはなすと、眉を寄せて呟き、兄貴の部屋から出ていった。
一体なんなんだ??
俺・・・・臭いかな?俺は思わず自分の匂いをかいでみた。臭くないぞ。
ついでに兄貴の匂いと同じだ。海底生活が長かったから、ちょっと磯臭いのかな・・・。

俺は、カミュが夕飯の買い物に行っている間に、兄貴にカミュの奇行の数々を話した。

『放っておけ・・・・。』

 兄貴は肩眉を僅かに吊り上げると、俺に言った。
放っておけって・・・・・・。いつもだったら、カミュはそんなことはしない、俺が嘘をついているとかって言うくせに。さすが神のような男と言われた兄貴だ、何を考えているかよく分からん・・・。それともカミュには甘いのか・・・・。

 

 カミュが作ってくれた料理は、ボルシチスープとライスコロッケ(トマトソース)だった。俺と兄貴はテーブルにつくと、カミュが夕飯を給仕してくれた。
やっぱり、カミュの飯はうまい。

『兄貴、飯を食ったなら、とっとと風呂に入ってくれよ。』

 俺は飯を食った後に兄貴に言った。兄貴の風呂の時は異常に長いから、早く入ってもらわないと困る・・・。

『私はそろそろお暇します。また明日来ます。おやすみなさい。』

 キッチンの片付けが終わったカミュは、俺達に挨拶をすると自宮へと戻っていった。おい、明日も俺のパンツを盗みに来るのかよ。勘弁してくれ!

 


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