MISSION IMPOSSIBLE(file.595959 いい日旅立ち)

 

「はいはいはーーい!提案します!」

アフロディーテが起立した。こういうときだけは積極的だな。

「バリがいいと思いま〜〜す!バリなら仏像もあるし〜、海綺麗だし〜、スパもあるし〜、リゾート地だからご飯もそうそう不味くないだろうし〜、水着のおねーさんいるし〜、ペンギンはいないけど象に乗れるから我慢しなさい!」

象に乗るってーのは楽しそうだ。アフロディーテにしてはまともな意見だ。教皇の思惑に反して行き先決定?←バリはテロの危険性があるから不可である。可愛いムウがテロに巻き込まれたらどうするのじゃ。

だが、

「温泉でなければいかない」

と、兄貴が譲らなかった。超〜〜大人気ないぞ。俺はこいつの親戚かと思うと、死ぬほど恥ずかしい!←存在自体が恥ずかしい

「温泉がないとサガが可哀想じゃないか」

つーか、全然かわいそうじゃないし!アイオロスは黙ってろ!←そのとおり
俺は兄貴さえ地上にいなければ、世の中すべて丸く収まるものだとつくづく実感した。本気で兄貴いらねー、死ね死ね死ね!←サガが不要なら、お前も不要じゃ

「じゃあ、サガが探してよ。買い物が出来て、ペンギンがいて、白い砂のビーチがあって、女の子が沢山いて、仏像があって、ご飯とお酒が美味しくて、オーロラが見えて、グランドキャニオンがある温泉!」←無理じゃ

アフロディーテに言われて、兄貴は温泉の本から該当しそうな場所を探し始めた。ってーかグランドキャニオンとオーロラと仏像はどうひっくりかえしても同じ場所には存在しないだろう。

シュラが挙手した。

「なぁ、ラスベガスはどうだ?買い物できてスパもあるし、ストリップのショウもあるし、レストランもたくさんあるし、ペンギンはいないけどトラとフラミンゴはいるぞ」

シュラの意見にミロと中国のじーさんとアルデバランが猛烈に賛成した。俺もストリップには大賛成だ。

「そのラスベガスとやらには仏像はあるのかね?」

「仏像はないけど、おねーちゃんが裸で踊ってくれるんだぜ。な、見たいだろう!」←見たくない

ミロが鼻の下を伸ばして頷いたが、シャカは眉をひそめて、

「いかがわしい!!君達はそれでも黄金聖闘士かね!」←そのとおり

と、もっともらしいことを言った。まぁ、見たくなければ見なければいいだけの話だ。

「カミュ、男性ストリップもあるぞ」←ほうほう

シャカに同意していたカミュが口をつぐんで目を輝かせた。ホモ死ね!←よいではないか

「ムウ、ラスベガスには好きなだけ食べていいレストランが沢山あるんだぞ」

ムウが麻呂眉をぴくりと動かした。シュラが畳み掛けてこのままラスベガスで押し切りか?

「アイオロス、ラスベガスの近くにグランドキャニオンがあるんですよ。ロッククライミングしましょうよ。楽しいですよ。アイオリア、ロッククライミングだぞ、聖域の崖なんか目じゃないぞ」

いいぞ、シュラ。そのまま筋肉バカ兄弟を落とせ!

「たしか、ラスベガスの近くに温泉ありますよ。ガイドブックで見た気が……」

シュラくわしすぎ。つーかラスベガスで決定?
しかしシャカが、

「そんないかがわしい所、私は絶対に行かんぞ!」

と、断固反対した。これで振り出しにまた戻ったわけだ。

「このままじゃまとまらん。よし、具体的に場所をあげて考えるぞ。いま出てる候補は、ラスベガス、バリだ」

デスマスクが仕切りなおしたが、俺は絶対決まらないと思った。ムウもそう思ってるのか、茶菓子食ってて話に参加する気はなさそうだ。

「老師、具体的に行きたい所はありあますか?」

「具体的にか……アフリカでライオンと戦いたいのぅ」←動物愛護精神が足りぬ

おい、じじぃ、一番最初におねーちゃんがいるところって言ってたよな。サバンナにおねーちゃんがいるのか?!

「老師、サバンナには温泉がないからダメです」

兄貴うざい

「アイオロスは?サガが行きたい所じゃなくて具体的にだ」

「私はタヒチでクジラを釣りたい」←釣れるのか?

タヒチ?太平洋のどまんなかか?絶対温泉でねーよな。やっぱりアイオロスも温泉いきたくないんじゃん!

「アイオロス、タヒチに温泉が出るなんてきいたことないぞ」

兄貴マジうざい

「サガはゲップでシュラがベガスで、アフロがバリで、俺はカリブでバカンスがいい」

「デスマスク、ゲップじゃない、ベップだ」

兄貴はデスマスクに本を突き出した。つーかゲップもベップも大してかわらないだろう。本気でウザイ

「アルデバラン、どこ行きたい?」

「私は、タイでトムヤンクンが食べたいです」

「トムヤンクンならきっと日本でも食べられるぞ。だから日本にしよう」

兄貴超ウザイ!!

「私、日本は嫌です。女神がしゃしゃり出てきますから」←いかんのぅ

ようやく喋ったと思ったら、ムウは暴言をはいた。こいつ不敬罪で殺しておけよ。

「まぁ、確かに女神がおっては休みにならんのぅ。自ら危険に飛び込んで助けを求めるのがお好きじゃからのぅ、あのお方は。休暇中にまでやられたらたまらんわい」←けしからん

中国のじいさんの意見に全員が頷いたのを俺は見逃さなかった。まったくそのとおりだが不敬罪で全員死ね。そして聖衣は全部俺のものだ。←お前のものにはならぬ

「大丈夫だ、女神のお相手は教皇にしていただこう。日本だ、日本以外ありえん!」←論外

え?じーさんもいくのか?それはマジ勘弁だ。兄貴の教皇という言葉に会議室がざわめいた。教皇と旅行に行きたい奴なんて一人もいないからな。←そのようなことはない

「そんなに日本に行きたいのでしたら、個人的にシオン様と二人で行ってきたらどうですか?今はみんなで行く場所を決めてるのですよ」←余はムウと二人がよいのぅ

ムウがいいことを言った。アイオロス以外がそうだそうだと口をそろえて兄貴を非難した。
兄貴は年甲斐もなく目に涙をためはじめ、やっぱり滝涙を流したが誰にも相手にされなかった。もうその手は通用しないってーの。

「日本でなければ私は行かない!」

だからって逆切れかよ。が、デスマスクに

「あ?おめーは行かなくても『病人を連れていくわけにはいきません』で済むから安心しろ」←確かに

と鼻で笑われた。旅行先まで俺は兄貴に面倒なんかみたくねーもん。兄貴は病院にぶち込んでおくに限る。←きちんと監視せよ
兄貴は椅子から立ち上がると、床に座りこんで手足をバタバタさせて「ベップにいきたいーー」とダダをこねたが、さらりと無視された。←みっともない
聖闘士に同じ手は通用しないってーの。

「こんなにサガがゲップに行きたいって言ってるんだ。ゲップでいいじゃないか。サガがいかないなら私もいかないぞ」

アイオロスが言うと、全員が一斉に口を開き、

「お前が旅行に行くって言い出したんだろう!」

と非難された。兄貴も鶏もバカすぎる。←大馬鹿じゃ

「大体みんな仲悪いし、ジコチューばっかり集まって団体旅行なんて無理なのよ!行き先一つ決まりやしないじゃない」←ジコチュー?

アフロディーテがテーブルを叩いて文句を言った。無理なのは最初からわかってることなんじゃないのか。

「別に行きたい所があれば、自分で勝手に行くからのぅ、皆で旅行などする必要もあるまいに」←そういうことじゃ

中国のじーさんの言うとおりだ。ていうか、旅行したいって言った超本人がいかないって言い出したんだから、もうこの話は終わりだろう。
デスマスクはじーさんと目を合わせると、頷いて言った。

「よし、じゃぁ決をとる。たとえタダであっても、みんなで旅行に行きたくない奴は挙手!」

手を上げたのは、ムウ、デスマスク、アイオリア、シャカ、じーさん、カミュ、アフロディーテ、俺、貴鬼と過半数を超えた。←お前と貴鬼は数に入れる必要ない

「これじゃ団体旅行する意味ねーな。ギリシャらしく民主主義にのっとり、多数決で旅行はナシってことで、本日は解散!」

デスマスクの号令で全員席をたって会議室から出て行ったが、兄貴はダダをこねつづけていた。

報告  黄金聖闘士に団体旅行は無理!

 

そもそも全員で旅行に行く必然性がない。
黄金聖闘士にも有給休暇を取得する権利は与えておるのじゃから、個人的に旅行にいけばよいのじゃ。
しかし、ここまで馬鹿ぞろいのうえに、仲が悪いとは。
もう少し仲良うできぬものかのう。これでは先が思いやられるわ

教皇シオン


End