MISSION IMPOSSIBLE (File.64646 ミロたんといっしょ14 その1)

 

双児宮

カミュの留守をいいことに、ミロはカノンを追いまわしていた。
浮気である。

ミロ「ごら!愚弟!!ヤらせろーー!」

カノン「ぅるせーー!出て行け!」

カノンはミロに蹴りを入れて風呂の扉をバシャンと閉めた。

しかし5分後、ミロはいつも通り強行で風呂に侵入してきたが、風呂の扉を開けて、一歩踏み出した途端、足を滑らせガラス戸に頭を叩きつけてひっくり返った。

カノン「ぶははは!馬鹿め!このカノンさまに同じ手が何度も通用すると思っているのか!」

風呂の戸口にはたっぷりと石鹸が塗られていたのである。

ガラスの割れる音で、慌てて駆けつけたサガは、全裸で失神するミロを見て溜息をついた。

サガ「まったく・・・どうして黄金聖闘士が・・・ああ、情けない。」

カノン「二度と俺の風呂覗かないように囁いてやる。」

カノンは失神したミロの耳元にしゃがむと、サガがカノンの髪を掴んだ。

サガ「カノン、やめないか。どうしてお前はそうやって直ぐに囁くのだ!」

カノン「何だと?!兄貴は俺がこのエロ蠍に風呂を覗かれたあげく、犯されてもいいっていうのか?!」

サガ「お前も聖闘士なら自分の尻くらい自分で守ったらどうだ。」

カノン「偽善者ぶってんじゃねーぞ!兄貴だって風呂、覗かれて困ってるのは知ってるんだぞ!」

サガ「う゛!?」

カノン「囁いて何が悪い!」

サガ「しかしだなぁ・・・。」

カノン「しかしもカカシもねぇ!だったら、兄貴が囁け。こいつを兄貴の大好きな愛と正義の聖闘士になるよう囁けよ!」

サガ「だからだなぁ。」

カノン「やらないなら、俺がやる。」

サガ「・・・まて。お前がやるとミロが黒くなりかねん。私がやる。」

サガはカノンの髪から手を離し、腰をかがめ、ミロの耳元でささやいた。

サガ「ミロ、お前は愛と正義の聖闘士だ。真面目な聖闘士なんだ、いいな。」

 

天蠍宮

ベッドの上で目を覚ましたミロは、目をシュラにして驚いた。

ミロ「な!ななんだ、この汚い部屋は!!一体ここは何所なんだ?!?!?!」

慌ててベッドから飛び降りると、ゴミを掻き分け私室の外へとでる。そしてそこがよく見慣れた天蠍宮であることを知ると、更に驚いた。

ミロ「な、なんと?!俺の宮ではないか!!!空き巣か?!」

鉄壁を誇る十二宮に空き巣が入るはずもなく、ミロは何故か痛む頭を撫でながら、部屋の掃除をはじめた。

まず虫の沸いている台所を片付け、床に捨ててあるゴミを拾い、カビの生えている風呂場を綺麗に清掃する。すべて光速で行っても、半日以上かかってしまい、ようやく昼食をとろうとして、冷蔵庫を開けると、中にビールとジュースしかないのを見て、更に目をシュラにした。

ミロ「・・・・一体俺はどういう生活をしているんだ。」

首を横に振ると、まだ床に落ちている紙くずの一つをを見つけて広げる。そして、それが教皇執務補佐の当番表であることを知ると、あわてて皺を伸ばして、冷蔵庫に貼り付けた。

ミロ「ふぅ・・・危ない、危ない。明日は俺の当番日ではないか。こんな大切なものを捨てるなんて、どうかしているのか・・・。」

それに返事をしたのはミロの腹の虫であった。

とりあえず食事をしに外へ出ようとポケットに手を入れてみるが、財布どころか小銭すら入っていない。部屋を隈なく探しても財布は見つからず、通帳もカードも何もない。仕方ないので、十二宮をおりる途中で出くわした誰かに金を借りることにして、ミロは昼食に出かけた。

 

白羊宮

結局誰にも会わなかったミロは、白羊宮を覗いてみた。

ミロ「誰かいる?」

ムウ「昼食ですか?おやつですか?」

ミロ「ん、実は、大変恥ずかしい話なのだが・・・金を持ち合わせていないのだ。」

ムウ「うちは食堂ではありませんよ。」

ミロ「当たり前だろう。ここは十二宮だ。」

いつもならば、開口一番「メシくわせろー!」のミロが、奇妙な事を口走っていることに気付き、ムウはない眉をしかめた。

アルデバラン「どうしたんだ、ミロ。もう昼食なら終わったぞ。」

ミロ「あ、アルデバラン。済まないが金を貸してくれないか。どういうわけか、無一文なのだ。」

アルデバラン「どうもこうも、お前はいつも無一文だろう。」

ミロ「はぁ?なんで俺が無一文なのだ?」

アルデバラン「無駄遣いばかりしているからだろう。5000GRDあれば足りるか?。」

ミロ「済まないな。次の給料日に返すから。」

アルデバラン「・・・またまたまた〜〜。それは新手の冗談か?お前、借りた金を返したことなんてないだろう。」

ミロ「何だと?!俺が信用できないというのか?!じゃあ今ここで借用書をかいてやる。ムウ、紙とペンを貸してくれ!」

ミロは貴鬼から紙とペンを受け取ると、汚い字で借用書を書き、指を噛み切って血判をおす。そしてそれをアルデバランに押し付けると、白羊宮から出て行ってしまった。

ムウ「随分変わったミロですねぇ。暑さで頭がおかしくなったんでしょうか・・・。」

アルデバラン「蠍座のミロには間違いないのだが・・・確かに変だな。」

ミロの変化に気付かない筈もなく、ムウとアルデバランはミロの消えたほうを見て、小首をかしげた。

 

アルデバランから金を借りたミロは、市場で買い物をしていた。

ミロ「・・・・、これと、あれと、それと、あっちを買って・・・・。うーん、分からん。」

と、商品を目の前に、計算が出来ず悩んでいた。

何度計算しても、すべて答えが違うのだ。

店のおばちゃん「ミロちゃん、さっきから何しかめっつらしてるんだい。またお金がないのかい?」

威勢のいい店のオバチャンに声をかけられると、周囲のオバチャンがミロを見てゲラゲラと笑う。

ミロ「またぁぁ??いや、金はあるんだが・・・・。これと、あれと、それと、あっちを買って、500GRDで足りるかなぁと思って・・・。」

店のおばちゃん「ちょいと足りないねぇ。」

おばちゃんA「ミロちゃんは相変わらず足し算が出来ないのかい?」

おばちゃんB「ミロちゃんにそんな難しいこと言っちゃ駄目だよ。」

おばちゃんたちに笑われて、ミロは顔を真っ赤にし俯いていると、店のオバチャンがミロの注文したものを紙袋に入れてくれた。

店のおばちゃん「ミロちゃんにはおまけしておいてあげるよ。500GRDでいいからさ。」

ミロ「・・・ど、どうもすみません。」

お釣りと商品を受け取ると、ミロは光速で市場を後にした。

 

双児宮

ミロは天蠍宮の冷蔵庫に買ってきた食料を詰めると、双児宮になだれ込んだ。

ミロ「サガ、実は相談したいことがあるんだ。」

かつて見たことないほど真剣な顔をミロに、思わずサガはコーヒーを吹き出した。

ミロ「人の顔見て吹き出さないでくれよ!」

サガ「す、すまなかったな。で、何だ?金がないのか?」

ミロ「金はアルデバランから借りた。そうじゃなくて、その、非常に恥ずかしいのだが・・・。」

サガ「今更何を恥ずかしがっているのだ。」

ミロ「そのだな、実は俺は頭が悪いのだ。」

サガは鳩が豆鉄砲を食らったような顔で、再びコーヒーを吹き出した。

ミロ「・・・汚いなぁ。そのだなぁ、部屋を掃除していたら、算数ドリルや、子供の英会話の本が床から出てきたので、不思議に思っていたのだが・・・。市場に行ったら足し算が出来なくて、オバチャンに笑われてしまったんだ。それで、部屋にあった算数ドリルをやってみたら・・・・、できなかったのだ。・・・このままでは黄金聖闘士として恥ずかしくて生きたいけない!!」

ミロの熱血告白にサガは滝のような涙を流して、ミロを抱きしめた。

サガ「そうか、ようやく自分が馬鹿であることに気付いたのか!私は嬉しいぞ・・・・。今からでも遅くない、勉強しよう。」


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