MISSION IMPOSSIBLE(File.70000 兄弟の絆 その1)

 

ジーサンの夏期休暇の間、アイオロスが教皇代理ということで、兄貴が補佐をしているらしいが、その兄貴はここ数日、帰ってきてない。ということは、代理は兄貴とお楽しみ中ってわけだ。あーきしょい!←本当は羨ましいのであろう

っていうか、ジーサンが早く夏期休暇とやらから帰ってこないと、はっきり言って迷惑だ。どうせムウを監禁してエロいことしているだけなんだから、教皇の間でやれ、ごらぁ。←たまには心と股間のリフレッシュが必要なのじゃ♪

ジーサンの謁見の間を抜け、俺は執務室の天井裏に忍び込んだ。

アイオロスはクソ似合わない教皇ローブを着て、偉そうに執務椅子に座っていた。が、やっぱり仕事をしていなかった。ペンを持ったまま、なにやら兄貴と怒鳴りあいの喧嘩をしていた。←いかんのぅ

聴覚を研ぎ澄まし、会話に集中してみることにした。

 

『嫌だ。お前がここに座ってくれないのなら仕事はしない!』

アイオロスは教皇の執務椅子に腰をかけ、自分の膝を叩いていた。兄貴は顔をゆがめて怒っている。

『何を考えているんだ、お前は!ここは執務室だぞ。いいから早く仕事をしてくれ。』

『いいだろう。すこしくらい。』

『今は仕事中だ!はやく仕事をしろ!』

どうやら、アイオロスは兄貴に膝の上に座って欲しくてしかたないらしい。アホかこいつ。←馬鹿である

『なんだよ、教皇だってムウを膝の上に座らせてたじゃないか!』

『それはムウが小さいかったからだろう。』

『それは違うぞ。ムウは教皇の膝の上に座って挿されていたんだ。それに、今だって教皇の膝の上は、ムウの指定席だ!!だから、私の膝の上はお前の指定席なのだ!!』

おいおい、ジーサンはムウが小さい時から、挿していたのかよ。←当然じゃ
それにしても嫌な指定席だな。←よいではないか

『・・・・・・。だからって、なぜ私が・・・。』

『私の夢なんだ。執務室の椅子でエッチ!』

アイオロスが屈託のない笑顔で放った言葉に、兄貴は顔を真っ赤にして呆れかえった。っていうか、俺も呆れるしかなかった。
やはり器の小さい男は夢も小さい。グレートなこの俺みたいに、夢も大きくもたなくてはな!←夢がでかいだけであって、中身が伴っておらぬがのぅ

『あきれた奴だ。いい加減にしてくれないと、本気で怒るからな。』

『いやだ。』

『いいから、仕事してくれ。』

『いやだ。』

『昨日まではちゃんと仕事をしていたではないか。一体どうしたのだ!!いい加減にしろ!!』

『だって、サガはなかなか私に会ってはくれないじゃないか。いつも双児宮に閉じこもって本を読んだり、カノンの訓練ばかりでさ。
だいたい、いつもカノン、カノンって、カノンばかり構って、ちっとも私のことを見てくれないのは、お前だろうが!!』

『それは仕方ないだろう。カノンは私が見張っていないと、何をするか分からんのだ。』←その通り

はぁぁぁ?兄貴は俺を構っているんじゃなくて、俺を虐げて喜んでいるだけだ。←そうかものぅ

『それに、あいつだって、いつもなんだかんだ言ってサガに引っ付いていて、私の邪魔ばかりするではないか!!』←嫌われているのじゃから仕方あるまい

『別に邪魔をしているわけではなかろう。あいつも最近、少しは良心が目覚めてきたようなのだ。私にくっついて、聖闘士としての自覚を養っているのだ。』

そりゃ、兄貴の監視が俺の仕事だから、嫌々くっついているんだ。巨大な誤解して、なにを一人で怒っているんだ、馬鹿な奴め。←本当はサガと一緒にいられて嬉しいのであろう
っていうか、相変わらず兄貴は、そういう巨大な勘違いをしていたのか。
お似合いの馬鹿馬鹿コンビだな。

『こうして、せっかく二人きりになったのに、仕事、仕事で。やっと二人きりになったんだから・・・・・。』←教皇代理であるから当然である

ブツブツと恨みがましく、捨てられた子犬のような目で訴えるアイオロスに、兄貴は溜息をついた。
やばい、あの目つきに兄貴は弱いんだ。←お前はいつもそうやってサガを騙しているのであろう

『分かった、分かった。ちゃんと仕事をしたら、なんでも言う事をきいてやるから、今は仕事をしてくれ。』

とうとう根負けした兄貴が、適当な約束をすると、アイオロスは真剣な顔で兄貴に人差し指をつきつけた。

『今の言葉本当だな!!嘘をつくなよ!!』

あーあ、兄貴のやつ墓穴掘って、尻掘られるのか。
相変わらず、愚か者だ。←馬鹿は死んでも治らぬのじゃ

『しかしだな。一日の仕事を一晩かかって、何とかやり遂げているお前が、この大量の書類を一人で片づけられると思っているのか?』

まぁ、この馬鹿男には無理だろうな。なるほど、兄貴は端っから、不可能だと思って約束したのか。さすが、偽善者だ。

『ふっ、この私を見くびるなよ、サガ。絶対にお前を、指定席に座らせてやるからな。』

もちろん兄貴はそんな言葉を信じるはずもなく、はいはいと適当に返事をすると、書棚から資料を取り出し仕事に戻った。

そして、俺はかつてないアイオロスの姿を目撃し、己の目を疑った。

あの馬鹿で、鶏で、変態で、脳味噌まで筋肉のアイオロスが、もの凄い早さで書類に目を通し、ドンドンとサインをしていったのだ。

その速さといったら、光速に近い。←黄金聖闘士であるからのぅ

暢気に資料を読んでいた兄貴も流石にその気配を感じ、振り返った。

『ア、アイオロス!?』

狐が豆鉄砲くらったような顔をして、兄貴がばさばさと資料を床に落としたが、←豆鉄砲を食らうのは狐ではなく鳩である

『サガ、ちょっと静かにしてくれ。邪魔をするな!』

と、手と目を休めずにアイオロスは兄貴を無視した。

やっぱりこれはアイオロスじゃない。アイオリアか!?いや、アイオリアもアイオロスと同じくらい馬鹿だ、馬鹿。
だったら、こいつは誰だ!?リュムナデス!?な、わけはないよな。

アイオロスは、兄貴が間抜け面で立ち尽くしている間にも、光速で仕事をこなし、山のようにあった書類は、1時間もしないうちになくなった。

『さぁ、サガ。今日の仕事は終わったぞ。約束、守ってくれるよな!!座ってくれ!!』

馬鹿なことを真剣な顔をして言うアイオロスに、兄貴はまだまだ硬直中だった。が、やっと放った言葉は、

『お前、まさか今まで馬鹿のふりをしていたのか!?』←振りではなく、正真正銘の馬鹿である。

兄貴は眉間に皺を寄せて、アイオロスに歩み寄った。

『サガ、何を言っているんだ?それより、ほら、約束!!座って、座って!!』

アイオロスはすっとぼけて、ヘラヘラと笑いながら兄貴の手を引っ張った。

『アイオロス。私の質問に答えるほうが、先だろう!!』

『駄目だ。サガが私の膝の上に座るほうが先だ。座ったら、答えてやる!!』

あーあ、やはり兄貴は天然の馬鹿だ。くっだらねぇ約束をしたばかりに、完璧にアイオロスに主導権を握られてしまった。

が、兄貴も負けていなかった。

『あっ、そういえば、今日は病院・・・・。』

『もうその手はくわないぞ。病院は、一昨日いったばかりだろう。さぁ、早く来てくれ、サガ!』

相変わらず兄貴は卑怯な奴だ。約束を適当にごまかそうとしていやがった。←卑怯も死んでも治らぬか

その後も兄貴は、今日は調子が悪いだの、風呂に入る時間だの、やりわすれた仕事だのと言い訳がましく、アイオロスに答えたが、どれもこれも効果はなかった。

終いには、

『あっ!!カノンが呼んでる!!』

などと訳の分からないことを言い出した。俺はここにいるってーの。誰が兄貴を呼ぶか、ごらぁ!!!


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