MISSIONN IMPOSSIBLE(File.7000 白羊宮の老師 その1)

 

『最近、シャカの様子がおかしい。』

シャカの様子??今日、俺が処女宮を通ったときは、いつもの場所で寝ていたぞ。

『うむ。しかし余には分かるのじゃ。シャカの小宇宙が僅かに乱れておる。調べてまいれ。』

はぁ、また六道に落とされたらどうしよう。嫌だなぁ。あいつ、何を考えているかわからねーんだもん。大人しく寝ててくれればいいけどな。

俺は、その足で処女宮へと向かった。
シャカは、今朝と同じところで同じポーズで寝ていた。←瞑想であろう

『何かね?』

シャカが珍しく自分から声をかけてきた。これは確かに様子がおかしい。

『お前さ、最近変わったことない??っていうか、悩みとか・・・・・。』

『たかが28年という歳月しか生きていない君に、人の悩みを訊けるのかね?君に悩みを話す馬鹿がどこにいると思う?』←おらんだろう

訊くくらいだって俺にはできるぞ。訊いて、その悩みを更に大きくするのは大得意だぜ!←そうであろうな

『もしかして、シャカ。お前、悩みでもあるのか?』

『私に悩みなどない。』

そういうと思ったぜ。シャカは寝てればいいだけだから、悩みなんてあるわけないよな。ジーサンの思い過ごしだ。俺はとりあえずシャカに引っ付いてみることにした。

俺はシャカの目の前で寝転がりながらシャカを観察した。
シャカは、一日中座りながら寝ていた。俺が時たま話し掛けると、言葉を返す辺り、シャカの眠りは浅いのだと思う。ちゃんと熟睡しないと体に悪いぞ。←睡眠ではなく瞑想であろう

夕方、シャカは突然立ち上がると、庭のほうへ歩きだした。

『一輝!一輝!!』

シャカは庭を歩きながらフェニックスの名前を呼んだ。もしかして、夕方になると草花に話し掛けるのか??こいつ、危ないぞ。

『カノン、一輝を見なかったか?』

一輝?お前の足元にいるじゃねーか。

『その一輝ではない。小猿の一輝だ。ここしばらく姿が見えない。』

なるほど。一輝がいなくなって、何気に心配してるんだな。シャカも可愛いところがあるんだな。
そういえば、一輝はムウのところに引き取られたんだよな。こいつはもしかしてそのことを知らないのか?←白羊宮におるぞ

『なに?白羊宮だと?』

シャカの額から汗が流れた。流石のシャカもムウは苦手らしい。あんな事をされれば誰でも嫌いになるよな。←そのうち快感にかわるのじゃ

『カノン。君は暇だろう?私に付き合ってはくれないか?一輝を迎えに行く。』

『報酬は?』

『報酬だと?君は人が困っているのに、慈悲というものはないのか。』

お前に言われたくない。←その通り

『分かった。君がサガに次元の深いところに落とされた時に、助けてやろう。・・・・・3回でどうだ?』

3回か。少ないな。俺は、結局4回、異次元から助けてもらう約束をし、シャカと一緒に白羊宮へと向かった。
白羊宮では、夕飯の支度の真っ最中だった。

 

『一輝?なんのことですか?家には小猿の一輝などいませんよ。』

ムウは、すかした笑みを浮かべながら答えた。シャカが自分のところに来たのが嬉しいらしい。

あれ?あの小猿ってムウが連れて帰らなかったっけ?俺の記憶違いか?

『ムウさま。老師さまがお腹がすいてるみたい。ご飯まだ?』

貴鬼はそう言いながら、白羊宮に帰ってきた。老師がお腹がすいている??あの中国のジーサンが聖域に来てるのか??

『一輝!!』

貴鬼の姿を見て、シャカが言った。おい、シャカ。貴鬼が小猿に似ているからといって、いくらなんでもそれはないだろう。

『一輝、来るのだ!!』

シャカは再び一輝の名前を呼んだ。シャカ、ちゃんと目を開いてよく見ろ。これは貴鬼だ。変な眉毛をしているが、ちゃんとした人間の子どもだ(多分)。←おそらくな

『老師さま、いらっしゃい。』

ムウが俺たちの後ろで小さく呟いた。すると貴鬼の後ろから、金の首輪に、10センチくらいの金色の鎖を垂らした、白い小猿がムウへと飛びついた。
あっ!この小猿は一輝!?ムウの奴、また顔に飛びつかれるぞ。
しかし、小猿の一輝はムウの手の平に大人しく飛び乗った。

うわっ。もう飼いならされていやがる、この小猿。

『お腹がすいたのですか?もう少しお待ちくださいね、老師さま。』

ムウはそういうと、手の平に乗った小猿にチュッ!チュッ!とキスをした。

『ムウ、やめないか!一輝にそういうことをしていいのは、私だけだ。』←ほうほう

シャカが声を荒げて言った。おいおい、シャカ。小猿のためにやきもちやいてどうするよ・・・・。

『この子は一輝ではありませんよ、シャカ。この子は老師さまです。』

『そうじゃ。太古の昔より、猿の名前は童虎と決まっておる。』

教皇の執務から帰ってきたジーサンが言った。

『まったく、余が仕事から帰ってきたというのに、出迎えがないと思うとったら、シャカが来ておったのか。』

『はい。珍しいお客様でしたので・・・。申し訳ありませんでした、シオンさま。』

ムウは、ジーサンに謝ったが、その姿からは申し訳ないなどいう態度は微塵も感じられなかった。

『童虎。一緒に風呂にはいるぞ。来い!』

ジーサンは小猿に言うと、小猿はムウの手の平からジーサンの肩へと飛び乗った。あちゃ、ジーサンにまで飼いならされてる。←当然である

『一輝!!』

シャカは再び小猿の名前を呼んだが、小猿は振り向きもしなかった。

『なんだ、シャカ。童虎と共に余と一緒に風呂に入るか?』

ジーサンは振り向くとシャカに言った。え?シャカとジーサンが風呂に??それは自殺行為だぞ、シャカ。←遠慮せずともよいものを

ジーサンは、シャカが黙ったまま首を横に振るのを見て、笑いながら風呂場に行った。結局、シャカと俺は白羊宮で夕飯を食べることになった。

小猿の食事はちゃんとテーブルに用意され、小猿も大人しく食事をしていた。俺は、この小猿が麻呂眉になる日も近いと思った。←ならぬわ
ムウはシャカを隣に座らせご機嫌だった。シャカはほとんど食事には手をつけないで、小猿のことを気にしていた。
すると、ムウがいきなりシャカの両頬を片手で掴むと、無理矢理口をこじ開けた。

『おや、シャカ。まったく手をつけてないではありませんか。はい、あーーーーん。』

ムウはそういうと、シャカのこじ開けた口に無理矢理飯を突っ込み、シャカの顎と頭を押さえ、無理矢理咀嚼させた。それは、あーーーん、じゃないだろう。やめろ、ムウ。シャカの目が開いたらどうするんだよ。なんで、他の奴らは止めないんだ!!
それを見ていた、アルデバランが

『ムウとシャカは相変わらず仲がいいなぁ!』

と、言い、ジーサンは、

『ムウは可愛いのぅ。』

と、言った。こいつら、目が腐ってるぜ。←眼科へ行くのはお前である。ムウは可愛い。

 

教皇は、食事を終えるとリビングでテレビを見ながら小猿と戯れていた。シャカはまだ小猿を諦めていないようで、リビングのソファーに腰を掛けて小猿の様子を伺っていた。
シャカって座禅以外の座り方もできるんだ・・・。
小猿は、教皇が口に咥えたピーナツを口で受け取ったり、教皇の頭の上で毛づくろいをして楽しんでいた。シャカは、その様子を目を閉じたまま、ずーっと見ていた。

『さてと。そろそろ寝るかのぅ。童虎、一緒に寝るぞ!』

教皇は小猿を呼ぶと立ち上がった。シャカは、再び小さな声で小猿の名前(一輝)を呼んだが、小猿はまったく反応をしめさなかった。
んな!?ジーサンは人間以外にも小猿と??やっぱり、妖怪は違うな。きっと穴があればなんでもいいんだ。←獣姦の趣味はない

『シャカ。そんなに童虎のことが気になるのなら、一緒に寝るか?』

教皇はニヤニヤと笑いながら、シャカに言った。教皇はシャカが首を横に振るの見ると寝室へと消えていった。←遠慮せずともよいものを

シャカは、この日の小猿救出を諦めて白羊家を出て行った。ムウは、残念そうにシャカを見送っていた。ムウが言うには、シャカなら白羊宮に泊まっても問題ないという教皇の許可を得ていたらしい。
なるほど、ムウを襲わないような奴なら白羊宮に泊まれるのか?って、俺だって襲わねーぞ!!←ほうほう、白羊宮に泊まりたいのか?。余の隣ならばかまわぬぞ。

 

兄貴は俺が連れてきた、珍しい客に驚いていた。シャカは白羊宮を出た後、俺の家に寄ったのだ。

シャカは、夜になったら小猿を取り戻しに行くと言い出し、それまで双児宮で時間を過ごすことになった。
ちょっとまて、夜に白羊宮に進入だと?それは自殺行為だぞシャカ。こいつは馬鹿なのか??←紙一重じゃ

『シャカ、夜中に白羊宮に忍び込むなど、正気の沙汰とは思えないが・・・。』

シャカにお茶を出しながら、兄貴が言った。そうだ、兄貴。もっと言え!
シャカは兄貴の静止に耳を傾けるどころか、益々意地になっているようだった。

『まったく。お前は昔から強情だからな。あまり無茶をするなよ。』

兄貴は、シャカの頭をグリグリと撫でるとリビングから出て行った。シャカは、眉を寄せて怒鳴った。

『サガ!いつまでも私を子ども扱いしないでくれたまえ!』

嫌な子どもだな・・・・・。はぁ、シャカはやっぱり、あそこに侵入する気なのか・・・。
勝手にやってくれ。俺はもう寝る。


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