にぃちゃんといっしょ(兄ちゃんと宴会部長)

 

デスマスク「おうシャカ!場所借りるぞ。」

デスマスクは蓮華の台座の上に浮んでいるシャカに声をかけると、ワインとつまみを台座に置き、全員に声をかけた。

デスマスク「おう、おめぇら!いつも儀式行くぞ。」

デスマスクを始め、アイオリア、アイオロス、カノン、ミロ、カミュ、シュラ、アルデバランはシャカに跪き、一斉に拍手を打ち、手を組んで祈った。

デスマスク「おシャカさま、今晩も処女宮で、酒盛りさせて頂きます!」

シャカ「よかろう!」

全員に祈られて悦に入っているシャカは、こうして毎晩快く酒盛りの場所を提供してくれるのであった。

 

デスマスク「今日は、実家から送られてきたワインだ!」

デスマスクはワイングラスを人数分並べると、ワインを一気に注いだ。乱暴に注がれたワインはグラスから溢れ処女宮の床を汚した。

ミロ「おい、デスマスク。こぼれてる。もったいないぞ。」

デスマスク「心配するな。ワインは売るほどあっからよ!」

ミロはデスマスクが指差したほうを見ると、木箱に詰められたワインが大量に山積みになっていた。

デスマスク「それじゃ、かんぱーーい!」

皆は乾杯の音頭と共に、一気にワイングラスを開ける。そこからは、もう自由である。手酌で飲むもよし、酌をして回るもよし、ラッパで飲むもよし・・・・。

時が経つにつれ、瓶が空になるスピードが早まる。もちろん、シャカに酒を与えるのも忘れない。

デスマスク「おう、アルデバラン、飲んでっか?」

アルデバラン「おぉ、美味いなこのワイン。」

デスマスク「そうだろう、そうだろう。ところでお前、ムウとはどこまでいったんだ?」

デスマスクの質問に皆の視線がアルデバランに集中した。

アルデバラン「どこまでとはどういうことだ、デスマスク??」

デスマスク「おいおい、しっかりしてくれよ旦那。ムウとの関係だよ。」

アルデバラン「ムウとは友達だぞ。」

シュラ「隠さなくったっていいんだぞ、アルデバラン!!ムウはお前の奥さんだろ、おくさん!」

アルデバラン「シュラ、何を言っているんだ?!私とムウはそんな関係じゃない。」

アルデバランは酒のせいで既に赤い顔を、更に真っ赤にしてシュラを睨みつけた。

ミロ「でも、本当はそういう関係になりたいんだろう?」

アルデバランはミロの言葉に顔をうつむかせると、首を横に振った。

シュラ「お前、いいモノ持ってそうだもんな。きっとムウも大喜びだぜ!」

アルデバランは更に首を横に振った。

デスマスク「なんだ、アルデバランは意気地なしだな。さっさとヤっちまわないと、他の奴に取られるぜぇーー!!」

アルデバランは首が髪を振り乱しながら首を横に振った。

デスマスク「だったら、ムウをヤりたい奴、挙手!」

デスマスクの言葉に、ミロ、カミュ、シュラが元気良く手をあげる。

デスマスク「やっぱりな。おう、カノン。お前どうよ?」

カノン「は?」

デスマスク「ムウだよ、ムウ。」

カノン「俺は男になんて興味ねーよ。それにムウは怖いかあちゃんだからな。」

デスマスク「俺も同感だ!アイオロス、お前はどうだ?」

アイオロス「ムウか?私はムウは好きだぞ。しかし、デスマスク、お前も好きだからやきもちやくなよ。」

アイオロスはニッコリと笑うと言った。

デスマスク「おい、シュラ。アイオロスの酒が足りないようだ。もっと飲ませろぉ!!」

デスマスクはアイオロスの隣に座っていたシュラに言うと、ワインの瓶を投げ渡す。

シャカ「デスマスク!」

デスマスク「なんだシャカ?お前もムウが好きなのか?」

シャカ「そうではない。」

デスマスク「あ?あぁーーー、すまん、すまん。酒がもう無いのか。ほら。」

デスマスクは慣れた手つきでワインの栓を開けると、シャカに手渡した。

デスマスク「えーっと、他に言ってないやつは・・・・・・。」

デスマスクはアイオロスの隣に座ったアイオリアに視線を合わすと、ニヤリと笑った。

アイオリア「デスマスク。俺がムウのことが苦手なのを知っているだろう。」

デスマスク「おう、知ってるぜ。しかし、嫌よ嫌よも好きのうちって言うじゃねーか。」

アイオリア「なんだと??」

シュラ「そうだ、そうだ。早いとこムウに告白しちまえよ!!」

ミロ「本当はムウのことが好きで、好きでたまらないんだろう、アイオリアァ!」

アイオロス「なんだ、アイオリア。ムウのことが好きだったのか?だったら早く告白したほうがいいぞ。ムウは可愛いから、競争率が高そうだぞ。」

アイオロスはシュラにわんこソバ状態で酒を注がれ、かなり饒舌になっていた。

デスマスク「そうだ、そうだ。今すぐ、白羊宮に行ってこーーーーーーい!」

アイオリア「誰が行くか!!」

アイオロス「アイオリア、それじゃ男として情けないぞ。兄ちゃんは悲しい。」

ミロ「ほらほら、今すぐムウを襲いに行けよ、アイオリアーーーーーー!!」

デスマスク「襲いに行ってこーーーーい!!」

デスマスクの言葉に皆が声を合わせて囃したてる。

アイオロス「ほら、皆も応援してるんだ。早く白羊宮に行って来い、アイオリア!」

アイオリア「何を言ってるんだよ、兄さん。」

アイオロス「なんだ、アイオリアはムウを襲う勇気もないのか??」

アイオリア「なんだって?だったら兄さんの方こそどうなんだよ。」

アイオロス「うおっ?兄ちゃんか??兄ちゃんはな、そういう趣味はないんだ。兄ちゃんはな、サガがいいんだ!」

アイオロスはサガの名前を口にすると、ニンマリとした。酒に酔っているアイオロスは既に自分の言っていることが矛盾していることも分かっていないようだった。

デスマスク「おう、今度はサガか。よし、サガを襲いたい奴、挙手!」

もちろん手を上げたのはシュラ、ミロ、カミュ、アイオロスである。

デスマスク「よーし、この中で今から双児宮へと行く勇気のある奴は起立!!!」

すると、カミュが静かに立ち上がった。もちろんカミュも酒に酔っている。

カミュ「アクエリアスのカミュ。これより双児宮へ行ってまいります。」

カミュは一礼すると、赤い髪をなびかせて双児宮へと下りていった。

デスマスク「おお、さすがカミュだ!!で、アイオリア。白羊宮に行く気になったか?」

アイオリア「行かないと言っているだろう!!」

シュラ「カミュが双児宮に行ったんだ。お前も白羊宮に行って来い!」

デスマスク「行ってこーーーーーい!!」

シャカ「ふっ。星になったな。愚かな・・・・・。」

シャカがワインの瓶を片手に呟いた言葉をデスマスクは聞くと、笑いながらはしゃいだ。

デスマスク「やったぁ!!カミュが散ったぞ。異次元行きかぁーーーー??」

シュラ「本日の最初の脱落者、カミュにかんぱーーーーーい!」

全員がグラスを高く上げて、サガのアナザーディメンションで異次元に飛ばされたカミュに献杯した。

デスマスク「で、アイオリア。白羊宮に行く気になったか?」

アイオロス「なんだ、まだ行かないのか??」

アイオリア「兄さんこそカミュに先を越されたじゃないか!!」

アイオロス「兄ちゃんを甘く見るなよ。サジタリウスのアイオロス!只今から、愛しのサガの元へ行ってきまーす!」

アイオロスは敬礼をすると、手をパタパタとさせて双児宮へと向かった。

デスマスク「本日2番目の脱落者、アイオロスに乾杯だぁ!!」

シュラ「で、アイオリア。白羊宮に行く気になったか!?」

アイオリア「行かないと言っているだろう!!」

カノン「なんで行かないんだよ。お前の兄貴だってカミュだって双児宮に行ったんだ。お前も行ってこーーーーい!」

アイオリアはワイングラスを片手に、機嫌悪そうな顔をして首を横に振った。

アイオロス「サジタリウスのアイオロス、ただいま双児宮から無事に帰還しましたぁーーーーー!!サガの寝顔はとっても可愛かったでーーーーーす!!」

双児宮から戻ったアイオロスは頬に青たんを作り、鼻血を垂らしながらニンマリとして敬礼した。

ミロ「おぉーーーーー!流石、英雄アイオロスだ!!」

デスマスク「英雄アイオロスにかんぱーーーーーーーい!」

皆はアイオロスを囲んで更に酒を呷った。

デスマスク「で、アイオリア。行く気になったか??」

アイオロス「なんだ、アイオリア、まだ行けずにウジウジしてるのか??」

シュラ「そうだぞ、アイオロスだって行ってきたんだ。さっさと行けよ。」

ミロ「そうだ!そうだ!早く行って来いよ!アイオリア!!」

カノン「行って来い!アイオリア!!アイオリア♪アイオリア♪」

カノンがアイオリアの名前を連呼すると、皆、手拍子を添えてアイオリアの名前を連呼した。

しかし、アイオリアは顔をうつむけ、眉間にシワを寄せながら首を横に振った。

アイオロス「なんだ、アイオリアは意気地なしだな。お前は本当に兄ちゃんの弟か!?」

シュラ「そうだ、アイオリア!!」

デスマスク「アイオリアァァ!!お前のような奴は、男としてみとめーーーーーーーーん!!」

男としてみとめーーーーーーーーーーーーん!!

デスマスクの言葉を皆、笑いながら復唱すると、アイオリアは顔を上げ、立ち上がった。

アイオリア「なんだと!!俺は男だ!!!」

デスマスク「おぉ、やっと行く気になったか。流石アイオロスの弟だ!!」

シュラ「アイオリアの健闘を祈って、拍手で見送ってやろう!!」

おおぉーーーーー!!

皆、歓声を上げながらアイオリアに拍手を送った。

アイオロス「ほら、アイオリア。皆、お前が男になることを喜んでるぞ。ぼけっと突っ立ってないで、早く白羊宮へ行って来い。こんなこと、兄ちゃんに手伝わせる気か??」

アイオロスはそういうと、つい頭に来て立ち上がってしまったアイオリアの背中を押し、処女宮の入り口の階段まで導いた。

アイオロス「頑張れよ、アイオリア。男になるまで帰ってくるなよ。」

デスマスク「早く男になって来ーーーーーーーーーーーーーーーーーーい!!」

その声にあわせて、後ろをついてきたデスマスクがアイオリアの背中にけりを入れた。アイオリアはそのまま階段を勢いよく駆け下りる形になった。

 

白羊宮に忍び込んだアイオリアは、寝巻きにショールを纏ったムウを発見し、そのままリビングのソファに押し倒した。

アイオリア「ム・・・・・ムウ。」

ムウ「あなた、何を考えているんですか??・・・・・。お酒を飲んでますね。」

ムウはアイオリアから匂う酒臭に顔をしかめた。

アイオリア「ムウ、すまん。これも俺が男になるためだ・・・・。お前を襲わないと俺は・・・・・。」

アイオリアはそういうと、ムウの寝巻きの上半身を捲り上げた。ムウは無表情のまま、アイオリアの成すがままになっていた。

アイオリア「ムウ、すまん!!!!」

アイオリアはムウに謝ると、ムウの体に覆い被さった。その瞬間、何者かがアイオリアの後ろ髪を引っつかみ、アイオリアは後ろにのけぞった。
眉間に皺を寄せたシオンと目があうと、アイオリアはようやく自分の愚行に気づき、硬直した。

シオン「アイオロスの弟よ。お主、何をしておるのだ?」

ムウ「シオンさま・・・、私はアイオリアに襲われているようです。」

ムウは乱れた寝巻きをゆっくりと直すとシオンとアイオリアから目をそむけた。

シオン「ほう・・・流石アイオロスの弟よのぅ。余の足元でムウを襲うとは、その勇気誉めて遣わすぞ。どれ、褒美でもくれてやるか。」

シオンはアイオリアの髪の毛を掴む手に力を込めて、そのままアイオリアを引きずり自室へと消えた。

そして、ムウとアイオリアの溝はますます深まったのであった。

 

シュラ「おい、アイオリアの奴、もう1時間以上も経つのに帰ってこないぞ。」

ミロ「シャカ。アイオリアの奴、星になったのか??」

シャカはミロに言われ、ワインのビンを片手に何かを考えるように、すこし顔を上げた。

シャカ「いや!彼はまだ白羊宮にいる!」

デスマスク「やった!!獅子座のアイオリアが、ついに男になったぞぉーーーーー!!」

カノン「男になったアイオリアにかんぱーーーーーーーい!!」

皆、再び歓声を上げると酒を呷った。

シャカ「デスマスク!」

デスマスク「なんだ、シャカ。酒がなくなったか?」

シャカ「そこをあけろ!カミュが落ちてくるぞ。」

デスマスクが慌ててその場から数歩退いた途端、彼が座っていた所の頭上の空間が開き、カミュが現れた。

カミュ「シャカ、すまなかった。感謝する。」

シャカ「・・・・・・。」

カミュ「あれ?アイオリアは?」

アイオロス「カミューーーー!聞いてくれ。アイオリアはな、ついに男になったんだ。兄としてこんなに嬉しいことはない!!」

アイオロスは涙を流して、カミュに酒をついだ。

ミロ「さぁ、お前も祝杯をあげろ!!カミュ。アイオリアは男だ!!」

カミュ「あいつ、本当に白羊宮に行ったのか?」

シュラ「そうとも!!あいつは男だ!!」

カミュ「男だな、アイオリア・・・・。」

しかし、白羊宮の事情をよく知るアルデバランとカノンは、アイオリアが女になっていたことを知っていたが、あえて口にはしなかった。

その夜、アイオリアが男になったことを祝い、朝まで酒盛りは続いた。


end