にいちゃんといっしょ(にいちゃんと年下の憂鬱)

 

デスマスク「大体いつも新品着させてもらえるアイオロスには、俺たちの気持ちなんてわかんねぇんだよ」

シュラ「そうですよ、こんなボロを着る気持ち分らないでしょうっ!」

アフロディーテ「新しい物のほうが、やる気でるのにさぁ」

アイオロス「バカヤロウ、ウチのアイオリアだって小さい頃は近所のお兄さんのおさがりのオムツしていたのに、文句一つ言わなかったぞ!」

デスマスク「オムツするガキが文句言えるわけねぇだろう!」

シュラ「やっぱりアイオロスには、お古を着る年下の気持ちなんて分らないんだ」

アフロディーテ「アイオロスはいつも新品着てるもんね」

デスマスク「一番年上はずるいよっ!!」

アイオロス「お前達だって黄金聖闘士になれば、新しいの着れると思うぞ……多分」

アフロディーテ「嘘だっ! 僕達が黄金聖闘士になったら、今アイオロスが着ている服がお下がりになるに決まってるっ!」

アイオロス「うっ……その可能性は否定できんが……、しかしこれは決まりだしな。聖域だって裕福なわけじゃないから……」

シュラ「だからって、いつも年下の俺たちがお下がりで我慢させられるなんて納得いかないです!」

デスマスク「アイオロスだってたまにはボロボロ継ぎはぎだらで染みだらけのお古着てみろってんだよっ!!」

アイオロス「だーーーっ、うるせーうるせーうるせーーーっ!! てめぇら、修行はサボって口ばっかり達者になりやがって。そういうことは一人前の聖闘士になってからいいやがれ!!」

シュラ「そうやってすぐ怒鳴ったって、俺たちは納得できません!!」

デスマスク「そうともよ! 俺たちの気持ちなんてこれっぽっちも理解してくれねぇくせによ!」

アフロディーテ「すぐに怒鳴って殴って、それでも黄金聖闘士っていえんの!!」

シュラ「だいたいお下がりってだけで、恥ずかしいんですよ!」

デスマスク「誰だっておニュウがいいに決まってんだろう!」

アフロディーテ「お下がりなんて、みっともなくて教皇の間にいけないもん!」

アイオロス「なんだとーーっ!! 俺がお前達の気持ちがわからねぇとでも思ってんのか!」

シュラ「分るわけないですよね? いつも新品おろしたてですもん!!」

デスマスク・アフロディーテ「そうだ、そうだ!!」

アイオロス「ばっきゃろーーっ! 俺だってお古ぐらいつかってらぁ!!」

デスマスク・シュラ・アフロディーテ「嘘だっ!! うそつき、うそつきアイオロスっ!!!」

アイオロス「うるせっつってんだろう! サガは教皇のお下がりなんだぞ!! 俺だってお下がり使ってんだ!」

デスマスク「サガが!?」

シュラ「教皇の?」

アフロディーテ「お・サガ・り??」

アイオロス「お下がりの何が悪いっていうんだ、いいじゃないか!! お下がりにはお下がりなりの味があるんだ。文句があるならお下がりは二度と着るなっ!、これから素っ裸で生活しろっ」

とうとうぶち切れたアイオロスは、ダンボール箱を乱暴にかき集めて抱えると教皇の間へ戻る。その時、年少組みをつれたサガが闘技場に現れた。

アイオロス「あっ、サガぁ。聞いてくれよ、こいつらったら口ばっかり達者でまいっちま――?? サガ? どうしたんだ、顔が真っ赤だぞ!? あっ、サガ!?」

光速で走り去っていくサガにアイオロスはポカーンとなった。

アイオロスとシュラたちの話を聞いてしまったサガの巻き毛の毛先が、ほんのりグレイになっていたことを誰も気がついていなかった。

 

 

執務室で仕事をしていたシオンは、突然飛び込んできたサガの顔を見てぎょっとなった。

サガは、唇を噛み千切らんばかりに歯を食いしばり、真っ赤に染まった顔は涙と鼻水と涎でぐちゃぐちゃなのである。

サガ「ぎょ、ごう゛だぁぁぁぁ!!!」

教皇シオン「サガや、どうしたのじゃ!!」

サガ「ウェ、ひぇ……っ、っっ、っ、っrhfjklklれがhるgjkぇ;ーーーーーーっ!!」

教皇シオン「どうした、しっかりせいっ!」

サガ「死、じゃぇ……」

教皇シオン「は?」

サガ「アイ……ロ、ス、死…ん、じゃえ……うぇっっっっっっっっっっっっ」

教皇シオン「??? 何を物騒なことを言うておるのじゃ。冗談でもそのようなことを言うものではないぞ」

サガ「あって、だっ……って、……っっっっっっっ」

アイオロスに『教皇のお下がり』呼ばわりされたサガは、ぶえぇぇぇぇぇぇとシオンの膝にすがり付いて泣きじゃくった。

 

しばらくして、今度はアイオロスが執務室に飛び込んできた。

アイオロス「教皇ーーーーっ!! サガ知りませんかっ!! 先ほどから気配消しちまって、どこに行ったか分らないんです!! ……って、教皇? 怖い顔してどうしたんですか?」

教皇シオン「サガなら余の寝室で寝ておるぞ」

アイオロス「なんだってーーーーーーーーっ!!」

顔を真っ青にさせたアイオロスが踵を返そうとしたが、彼の身体はシオンの超能力によってプカリと宙に浮き、足は空しく空を蹴った。

アイオロス「サガは今は俺のなんです、もう教皇のものじゃないんです!! だから変なことしないでくださいって何度も言ったのにっ!!!」

シオンはその頭に小宇宙をこめた拳骨を思いっきり振り下ろした。

教皇シオン「サガはお前に会いたくないとゆうておるぞ。しばらくはお前の顔も見とうないそうじゃ」

アイオロス「は!? 何でですか!? 俺が一体何をしたっていうんですかっ! 教皇がまたサガを玩具にするつもりで、適当な言い訳してんでしょう!」

教皇シオン「うろたえるな小僧ーーーーっ」

アイオロスはシオンの超必殺技「うろたえるな小僧!」で宙を飛んだ。

教皇シオン「世の中、たとえ真実でも言っていいこと悪いことがある。お前の口は軽率すぎじゃ」

アイオロス「だからなんでぇぇぇ!!」

教皇シオン「それが分るまでサガに会うてはならぬぞ。教皇命令じゃっ!!」

アイオロス「そ、そんなぁぁ」

教皇シオン「そうじゃ、サガから伝言じゃ。『やっぱり教皇さまが一番大好きです』だそうじゃぞ、ふふふふっ」

アイオロスはそれから半年ほどサガと口を利いてもらえない日が続いたのだった。

 


End