にぃちゃんといっしょ(兄ちゃんのなみだ その1)

 

デスマスク「おうシャカ!場所借りるぞ。」

デスマスクは蓮華の台座の上に浮んでいるシャカに声をかけると、ウォッカとつまみを台座に置き、全員に声をかけた。

デスマスク「おう、おめぇら!いつも儀式行くぞ。」

デスマスクを始め、アイオリア、アイオロス、カノン、ミロ、カミュ、シュラ、アルデバランはシャカに跪き、一斉に拍手を打ち、手を組んで祈った。

デスマスク「おシャカさま、今晩も処女宮で、酒盛りさせて頂きます!」

シャカ「よかろう!」

全員に祈られて悦に入っているシャカは、こうして毎晩快く酒盛りの場所を提供してくれるのであった。

 

翌朝。

昨晩の処女宮での宴は、つい1時間前に全員が酔いつぶれて終了した。
処女宮には、食い散らかしたつまみ、酒の空き瓶が転がっている。
ミロ、カミュ、アルデバラン、アイオロス、アイオリア、カノンはそのまま酔いつぶれて寝ていた。シャカはいつもの蓮華の台座の上で瞑想をしている。

デスマスク「おはようございます、教皇!!」

シュラ「カプリコーンのシュラ。キャンサーのデスマスク。本日の職務のため、処女宮にて教皇をお待ちしておりました!」

デスマスクとシュラはふらつきながら立ち上がると、敬礼をして白羊宮から教皇の間に向かうシオンに言った。

シオン「ほぅ、出迎えとはなかなか感心じゃの。しかも黄金聖闘士がここまでそろっておるとはのぅ。」

シオンは酔いつぶれている者を見ながら言った。

シオン「ふむ・・・・。久しぶりに皆で礼拝でも行うか。蟹と山羊よ。この者たちを起こすがよい。」

デスマスクとシュラは慌てて他の者を起こしにかかった。みな、何事かとふらつきながら目を覚ますと、目の前にいる教皇をみて慌ててひれ伏した。

シオンは、デスマスク、シュラ、シャカ、ミロ、カミュ、アルデバラン、アイオロス、アイオリア、カノンを従え、ゆっくりと12宮の階段を登っていった。

シオン「しかし、そなた達。ちと匂うのぅ。」

シオンに言われ、シャカ以外の全員が体の匂いをかいだ。しかし、すでに鼻が麻痺しいるため、誰もそれがわからなかった。

シュラ「はっ、そんなに匂いますか?」

シオン「酒とタバコの匂いをさせて礼拝とは、如何なものかと思うがのぅ。」

シオンは、自分はまったくそういうことを気にしていない風な口調で言った。

デスマスク「教皇、しばしお待ちください。いでよ、我が聖衣よ。そしてわが身を纏え!!」

デスマスクは足を止めると、天に指を向けて言い放ち、酒臭い私服を脱ぎ捨て、聖衣用のアンダーウェアと聖衣を纏った。
そして、それを全員が真似る。

カノン「俺、聖衣もってない・・・・。あれは兄貴のだし。」

聖衣を持っていないカノンの体は一層酒臭さが増したようだった。

 

カノン「(兄貴!兄貴!!これから礼拝なんだ。俺の服を持ってきてくれよ。頼むよ。今、着ているのは酒とタバコ臭いんだ。でないと、俺、教皇に怒られちまう。)」

カノンはサガの小宇宙に直接語りかけた。

サガは、カノンの服を持って渋々と12宮の階段を登ると、教皇が聖衣を着た黄金聖闘士を従えているを見て驚いた。

サガ「こ・・・・これは、一体!?」

カノン「あっ!兄貴、悪いな。兄貴、大好きだぜぇ〜!ハァーーー。」

酔っ払いカノンはサガの手から服を奪うと、サガの顔に息を吹きかけた。

サガ「うっ・・・・酒臭い息を私に掛けるな、この馬鹿!!」

カノン「うっ・・・・・・。」

サガが顔をしかめ、カノンの鳩尾に軽く突きいれた瞬間、カノンはそのまま胃の中の物をサガに向けて吐き出した。

サガ「・・・・・・・・・・・。この馬鹿!何をする!!」

カノン「あ・・・・兄貴が殴るからいけないんだ。俺・・・・もう駄目。」

シオン「サガの弟よ、厳重処分じゃ。よいな。サガよ、折角じゃ。そなたも礼拝に参加するがよい。」

シオンは冷たく言うと、カノンはシオンに片手を上げ「了解しました」と合図を送り。その場にうずくまった。
サガは汚れた上着を脱ぐと、聖衣を呼び出し、纏った。

 

アフロディーテは自分の宮に近づく小宇宙に驚き、慌てて双児宮を飛び出した。

アフロディーテ「一体、いかがなされたのですか、教皇!?」

シオン「礼拝じゃ。」

アフロディーテ「は?礼拝ですか?」

シオン「魚よ、そなたも参加するがよい。」

アフロディーテは状況が飲み込めず、とりあえず皆にならって聖衣を纏いサガの後ろをついていった。

アフロディーテ「サガァ。一体何があったの?なんか、皆具合悪そうぉ。」

サガ「酔っ払いだ、ほうっておけ。」

アフロディーテ「あぁ、なるほどね。」

サガは眉間にシワを寄せ、アフロディーテに答えた。

シオン「ふむ。折角じゃ、ムウも呼ぶかのう。」

シオンはムウの小宇宙に直接語りかけた。

シオン「(ムウよ、聖衣を纏って余の元に来るがよい。全員で礼拝じゃ!)」

ムウもシオンに呼ばれ、渋々と教皇の間に姿を現した。

 

シオンは礼拝堂の一番前に12人を並べると、祭壇の前に立った。

シオン「さて、本日は珍しく黄金聖闘士が全員揃っておる。正確には1人欠けておるが、まぁ、よい。そこの者。」

シオンの近くにいた神官は、シオンに呼ばれ一歩前にでた。

神官「はい。」

シオン「あれは今でも全て鳴るのか?」

神官「はい、もちろんでございます。」

シオン「そうか。では、本日の礼拝は盛大に行うとするかのぅ。一番長いヤツを頼むぞ。よいな。」

神官「はい、かしこまりました。」

神官は数人の部下を呼び集め、なにやら話すとイソイソと礼拝堂から消えていった。

ムウ、サガ、シャカ、アフロディーテはその神官の姿を確認すると、右手に抱えた聖衣のヘッドを頭に被った。

別の神官が祭壇の脇に姿を現した。手に持っているのは、定刻を知らせるベルである。

チリリーーーーーン♪

9時を知らせるベルの音とともに、礼拝堂に大音響のパイプオルガンの音が響き渡った。
合計4つのパイプオルガンの大音量は、容赦なく酔っ払いの耳をつんざく。

その瞬間、ヘッドパーツに耳を守ってもらえないデスマスクとミロが倒れた。
アイオリア、アイオロス、カミュはヘッドパーツが耳を守ってくれていた為、デスマスクの二の舞を避けることができた。

アルデバランとシュラは咄嗟にヘッドパーツを被りそれを回避する。

シュラ「ふぅ〜。あれって4つ全部なるんだ。いつも1つしか鳴らさないからな・・・。危なかったぜ。」

長いパイプオルガンの演奏が終わるとシオンが口を開いた。

シオン「蟹、蠍。厳重処分じゃ!下がれ!」

デスマスクとミロは神官に支えられ、礼拝堂を出て行った。

デスマスク「あ・・・・・・頭が割れる・・・・・。」

カノン「あれ凄いな。こんな分厚いドア越しにも聞こえてきたぞ。」

ミロ「死ぬ・・・。」

礼拝堂を出た廊下のソファでは、カノンがぐったりとしている。デスマスクとミロもそのソファに倒れこんだ。


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