にぃちゃんといっしょ(兄ちゃんと昔話 その2)

 

ムウ!アリエスのムウ!今すぐ処女宮に来てくれ!!

突然巨大なテレパシーを送りつけられ、ムウは否応なしに目を覚ました。

今すぐ来てくれッたら、来てくれ!たのむよーーー!

ムウはシオンが目を覚まさないように、静かにベッドから抜け出ると、床に散らかった寝間着をまとって処女宮へテレポートした。

 

ムウ「一体、こんな夜中に何用ですか・・・・。」

アイオロス「おう!ムウ!お前に聞きたいことがあるんだ!!。」

ミロとカミュに両腕をつかまれ、ムウは無理矢理アルデバランの隣に座らされた。

アイオロス「ムウ、教皇の間の寝室のカーテン。あれは何色だ?」

ムウ「緑ですよ。まさか、そんな下らないことで私を呼びつけたのですか?」

ミロ「ほら!緑じゃないか!!!」

アイオロス「今のじゃなくて、昔のだ!。えーと、お前がガキの頃のカーテンの色だ。」

ムウ「赤ですよ。それがどうかしたのですか。」

アイオロス「ほらみろ、赤じゃないか!な、サガ!俺は間違ってなかったぞ!。」

サガは顔を真っ赤にして、アイオロスから、プイと顔を背けた。

アイオロス「おまえ、寝室の窓のところにあった椅子に座ってたよな。ジーーーっと動かないでさぁ。」

ムウ「大人しく座っていろとの、シオンさまのご命令でしたから。」

シュラ「なぁ、ムウ。俺のこと、教皇の寝室で見たことあるか?」

ムウ「はい、ありますよ。」

シュラ「よっしゃーーーーーー!!!!!」

シュラは大げさにガッツポーズをとると、グラスに残っていた酒を一気に飲み干した。

カノン「・・・シュラ、お前さぁ、教皇に掘られたのが嬉しいのか?」

シュラ「いや、この歳で教皇に初めて食われたんじゃ、流石に恥ずかしいからな。ガキの頃に食われてたなら、問題ない。」

カノン「そういう問題じゃないと思うけどな・・・。」

アフロディーテ「ねぇぇ、ムウぅ。アフロの事は見たことあるぅ?」

ムウ「アフロディーテ、私は人形ではありませんよ。ですから、いくらシオンさまに駄々をこねても、あなたのものにはなりません。」

アフロディーテ「なんでムウが知ってるの・・・・。」

ムウ「あなた、いつも私の頭に薔薇さしていきましたよね。教皇様の寝室で。」

アフロディーテ「・・・・・ごめん・・・・サガ・・・・私、あなたがはじめての人じゃなかった・・・・。えーーーーーん。」

アフロディーテはピーピー泣きながら、日本酒をチビチビとと啜った。

 

カノン「なぁ、ムウ。デスマスクの事は見たことあるのか?」

デスマスクは顔を青くしてカノンを睨みつけた。手にしたグラスの中で、酒が波を打っている。

ムウ「デスマスクですか・・・・・。どうでしたかねぇ。」

サガ「そんな昔のこと覚えているはずないだろう。ムウ、お前の思い違いだ。」

ムウ「覚えてますよ。私は13年間ジャミールで隠遁生活していましたから、皆さんと違って青春が少ない分、忘れていないのです。」

ムウのスカした微笑に、サガは顔を青くした。

デスマスク「あ、思い出した。初めてお前と会ったのは五老峰だよな!五老峰。『せきちきー』って、俺の真似してたよな!」

ムウ「違いますよ。教皇の執務室です。私、あなたがイタリアから来た日の事を覚えてます。」

デスマスクが家出してきたのは5歳のときである。当時2歳のムウが自分の事を覚えているはずなどない、とデスマスクは心の中で自分に言い聞かせた。

デウマスク「そうともよ!俺はマフィアになるのが嫌で家出してきたんだ。」

ムウ「そのあと、お父様がイタリアから迎えにいらして、執務室で大暴れしましたよね。」

デスマスクは自分と恐らくシオンしかしらないであろう自分の過去を、ムウにばらされ絶句した。

カノン「で、デスマスクも妖怪教皇に掘られちゃったの?」

デスマスク「頼む!ムウ!それ以上何も喋らないでくれ!。俺がこうしてお前に頭を下げて頼んだことが一度でもあったか?ないだろう?な、だから、何も喋らないでくれ。俺は何も知らないまま墓に入る。俺はそれでいい!頼む、この通りだ!。」

デスマスクはムウに何度も土下座して頭をさげた。

 

カノン「なぁ、ムウ。俺は見たことないよな。」

サガ「当たり前だぞ、カノン。お前は教皇の事を何も覚えていないだろう。」

サガは身を乗り出して、ムウとカノンの間を塞いだ。

カノン「え、一応聞いておこうと思ってさぁ。」

ムウ「見たことないと思いますよ。」

サガ「そうだぞ、ムウ。お前は何も見ていない。」

ムウ「ただ・・・・サガ、私のことをじーっと見てましたか?」

サガ「見てた、見てた。君が全然動かないから、不思議で見てたんだ。」

ムウ「私に気を取られて、シオンさまが来たのに気づかず、首根っこつかまれて、ギャーって悲鳴あげてましたよね。」

アイオロス「ん?何言ってるんだ、ムウ。サガはギャーとは泣かないぞ。シクシク泣くんだ。これがまた、とんでもなく可愛いんだな。むはぁ・・・・サガぁぁぁ。」

アイオロスの周りには既に空になった一升瓶が、何本も散らばっていた。隣に座ったシュラが、アイオロスの口をもっと軽くしようと、わんこソバ状態で、酒を注いでいるのである。

サガ「わわわわわ私だって驚けば、ギャーというぞ!。」

ムウ「シオンさまの膝に乗せられて、ギャーギャー悲鳴あげてましたよね。アイオロスでしたっけ?」

アイオロス「俺が教皇に掘られて悲鳴あげてたときには、お前は生まれてないはずだぞ。」

サガ「そうだぞ、ムウ。お前と私たちとでは8歳も違うんだ。」

ムウ「寝てると、ギャーギャーとうるさくて、よく目を覚ましたんですよ・・・・。髪が青い男の子だった気がします。」

サガ「ではきっと私だ。教皇様は容赦のない方だからな。」

アイオロス「お前は、ギャーギャーと泣かないだろう。こう、シーツを抱えてさぁ、体をくねらせてシクシク泣いてたじゃないか。」

サガ「私も子供だったからな、痛ければギャーというぞ。」

カノン「もしかしてさぁ、それって俺?」

ムウ「さぁ・・・・。」

サガ「何を言ってるんだ、カノン。お前は兄さんと二人で暮らしてたじゃないか。」

カノン「そうだよな。」

サガ「カノンは兄さんと二人で暮らしてたんだ。二人だけだったんだぞ、二人でずーっと暮らしていたんだ。二人きりだった、そうだろう。」

サガはカノンの両肩をしっかりと掴み、カノンの目をじっと見つめて何度も語りかけた。

ミロ「おいおい、サガが自分で『兄さん』とか言ってるぞ。」

カミュ「あれは幻朧魔皇拳だな。カノンは・・・・・黒だ。」

カノン「あ、そうだ、そうだ。俺は兄さんと二人きりだった。だって俺、ジーサンのことしらねーもん。」

サガはそれでも手を離さず、一所懸命カノンの目を見て語り続けた。

 


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