★忘年会(その2)
しばらくして戻ってきたアフロディーテとカミュの姿に、これまた一同は唖然となった。
カミュは髪の毛をきれいに縦ロールにし、ちゃっちぃ銀のティアラをつけ、真っ赤なドレスを纏い、ドーラン、チーク、シャドウ、つけまつげ、口紅のばっちり宝塚メイクで決めていた。
その後ろから現れたアフロディーテは更にすごかった。髪の毛をオールバックに撫でつけ、怪しげな派手派手キラキラな軍服とマントをまとい、これまた宝塚メイクだ。しかも水色の頭髪に似合わず鼻の下にカイザル髭を書くという用意周到ぶりであった。
てっきり何かの劇が始まるのかと思っていたが、なぜかバレエの音楽を楽師たちに奏でさせ、バレエを踊り始めたのであった。最後はびしっと決めポーズを決め、踊り終わった二人はどうだと言わんばかりに輝いた笑顔をたたえていた。
アフロディーテ「いかがでしたでしょうか。教皇?」
シオン「ちと、化粧が濃いのぅ。」
カミュ「え?だめだったでしょうか?ちゃんとアルデバランみたいに、ドレスの胸元から胸毛も出いてませんし、髭もちゃんときれいにそってきましたし、さらにその上からドーランも塗りました!!!」
つけまつげをバッサバッサと瞬かせながら、カミュはシオンに力説した。
シオン「ほう、それは凄いとは思うがのぅ・・・しかし、お前の胸毛はどこにいったのじゃ?」
カミュ「よくご覧ください、教皇。全身肌色レオタードを着ているのです!」
アフロディーテ「シュラとアルデバランのなんかよりも、数倍よろしかったと思いますが。」
シオン「ふむっ、あれに比べれればよいのぅ。」
アフロディーテとカミュはガッツポーズをした。
童虎「だめじゃ。」
アフロディーテ「な!?どうしてですか?」
童虎「おぬしら、シュラとアルデバランとネタがかぶっておる。つまらん。」
カミュ「しかし、私達のはあの二人のよりも美しかったはずです。」
童虎「美しいだけじゃろう。笑いがないのじゃ。」
アフロディーテ・カミュ「笑い!?」
シオン「そうかのぅ?魚のこの髭は笑えると思うがのぅ。」
童虎「笑えるのは、そこだけじゃろう。」
アフロディーテ「(がーーーん。笑い所じゃないのに・・・・。)」
童虎「もうよい。下がれ。おぬし達の芸はよく分かった。」
アフロディーテ「お、おまちください!老師!このアフロディーテ、ここまで言われて黙ってはおれません。カミュと組んだのが間違いでした。」
童虎「ほう?」
カミュ「なっ!?」
アフロディーテ「魚座のアフロディーテ。脱ぎます!!」
アフロディーテはパチンと指先をならすと、楽師たちは怪しげな音楽をかなで始め、それにあわせてスケスケの布を取り出すと、体に巻き、怪しげな軍服を一枚一枚脱ぎ始めた。
アフロディーテ「ちょっとだけよぉ〜〜〜〜〜。うふっ。」
妖艶に腰をくねらせ、アフロディーテは一枚一枚布を剥ぎ取ってついに全裸になると、シオンやシュラ達から歓声が沸き起こった。
童虎「アフロディーテよ!!!楽しかったぞ!!」
童虎は手を叩いて大爆笑していた。なぜならアフロディーテはオールバックにカイザルヒゲという男役宝塚化粧のままヌードショウをやってしまったのである。
それにまったく気がつかずヌードショウに陶酔していたアフロディーテは、童虎やシオンにほめられて意気揚々と席に戻ったのであった。
童虎「他には誰かおらぬのか!」
カノン「はいっ。俺にやらせてください。」
童虎「ほう、サガか。」
カノン「サガじゃねーよ!!俺は弟のカノンだ!!!」
童虎「ほうほう。弟のほうか。双子芸というのはなしじゃぞ。どっちがサガでしょう♪なんて、そんなくだらぬことをしたら、五老峰の滝つぼに落としてやるからのぅ!」
カノン「そんなちんけな芸するか、ぼけ!見てろ!!」
カノンはずかずかと皆が見える場所へと歩いていった。
童虎「ほう、サガよ。おぬしは準備はしなくてよいのか?」
カノン「だから、サガじゃねーって言ってるだろうがっ!!いいから見てろ!!」
童虎「ほうほう。」
カノン「双子座のカノン!サガのまねしまーーーーすっ!!」
右手を上げた瞬間、案の定全員からブーイングが起こった。
シュラ「ふざけるなっ、いっつもやってるだろうが!」
デスマスク「そうだそうだ。てめぇは、すでに生まれたときからサガのまねなんだから、いまさら何いってやがる。」
ミロ「だいたいお前は海闘士だろうがっ!!」
カミュ「いつから、双子座になったのだ!」
カノンは仲間達からおしぼりりやらフォークやらを投げつけられ、額に青筋を何本も浮かべながら涙をちょちょぎらせた。
童虎「やめんか、馬鹿者!これしか芸がないものを苛めてはいかん!」
カノン「がーーーん!」
シオン「よいよい、おまけよ。お前のたった一つの芸とやらを見せてみるがよい。」
カノン「くそっ、てめぇら見て驚くなよ!!!」
全員を睨み付けながら、大きく息を吐くと右手を高々とあげた。
カノン「ここにきて、纏えわが聖衣よ!!」
カノンが叫ぶと、着ていたスニオン服がドォォォォォォンと破けた。
その光景に、大食堂はシーーーーンと静まりかえる。
カノンは悦に入ったまま唇を吊り上げ、ピカチュウパンツ一丁で仁王立ちをしたままだった。カノンの芸がこれで終わりだと気がついた仲間達から、いっせいにフォークやナイフ、皿が飛んできた。
デスマスク「ふざけんなっ、サガの真似ならパンツも脱げぇぇ!!」
ミロ「聖衣はどうした!聖衣は!!聖衣こないじゃないかよっ!!!」
アフロディーテ「ひっこめ、三流サガっ!!」
シュラ「ほらっ、どうした。サガなら、ドォォォンと脱げ。」
大食堂は脱げ脱げコールの嵐に包まれた。カノンは思わず冷や汗を流した。
シオン「ほれ、どうした。愚弟よ。脱がぬか。」
カノン「それは無理!」
シオン「ならば、海に戻れ。」
カノン「う、うみぃーーーーー!?」
童虎「シオンや。海に帰すのはいくらなんでも可哀想じゃろう。サガよ、早く席に戻るのじゃ。」
カノンはショボンとしながら席に戻ると、隣のサガに馬鹿馬鹿と罵られ続けた。
童虎「他に何かやるものはおれんのか?」
ムウ「はいっ!」
今まで夢中で料理を食べていたムウが、手を上げた。
シオン「ほう、ムウか。お前は何をやるのじゃ?」
ムウ「はい。大食い!一分間でホールケーキ100個以上を・・・・・・・。」
シオン「馬鹿もの!」
ムウは光速で走ってきたシオンに頭をはたかれた。
童虎「・・・・で、次は誰じゃ。」
ムウ「はいっ!」
ムウは頭を撫でながら手をあげた。
シオン「ほう、ムウ。馬鹿なことはするでないぞ。」
ムウ「もちろんです、シオンさま。」
シオン「して、何をやるのじゃ?」
ムウ「はい。早食い!一分間でホールケーキ100個以上を・・・・・。」
シオン「もう、お前は黙っておれ!!」
ムウは光速で走ってきたシオンに再び頭を叩かれ、膨れたのであった。