ミロたんといっしょ(ミロたんの朝帰り その1)

今夜もミロはカノン、シュラ、デスマスクに連れられて夜遊びをしていた。今夜はいつになく大盛り上がりであったようでヘベレケの4人が聖域の12宮の入り口に付いた時には朝の5時半を回っていた。
既にミロは自分では歩くことすらままならなくカノンの肩を借り心地よい眠気の中でマッタリとしていた。

デスマスク「ぐははははっ。今回の店は当りだったなーー、うぃ〜」

シュラ「おーよ。もう最高だったぜ。Yehhhh!!」

カノン「今夜はどこ行くよ!?」

デスマスク「あと15時間も待ってられねーなぁ。ぐははははっ」

シュラ「おーーい、ミロ。生きてるかぁ??はははっ」

ミロ「・・・・う・・・う〜〜ん。らいじょうぶなのら。」

酒と栄養ドリンクと貫徹の相乗効果でハイテンションな4人は白羊宮、金牛宮を高速で通り抜け、双児宮への階段をダラダラと上っていた。

デスマスク「おぉ。カノン、お前ん家見えてきたぞ!!お前ん家で水をいっぱいくれやぁ〜〜〜。みぃずぅ!」

シュラ「カノン、ちゃんと出口まで連れてけよぉ。お前ん家は迷路になっててよくわかんねーんだよ!」

シュラ「おい!愚弟!ちゃんと俺の話きいてるのかぁ〜〜〜。」

デスマスク「おーーーーい、カァ〜ノォ〜ンちゃん!」

シュラ「カノンたんはオネムでしゅかね??」

しかし、デスマスクとシュラの後を歩いていたカノンの顔は血の気を失っていた。

シュラ「んあ?吐くならちゃんとミロたんにかけてやれよぉ〜〜〜」

デスマスク「ぷっはははははっ。そりゃいい!!やれやれ!!どーーーーんとかけてやれ!」

カノン「!!!!!」

シュラ「おいおい、まじで大丈夫かぁ??顔が青いぞ??」

しかし、カノンは双児宮を見据えたまま動こうとしない。いや、動けないのだ。

カノン「あ・・・・・・兄貴!!」

デスマスク・シュラ「なに!?」

カノンの視線の先を追うシュラとデスマスクには双子の黄金聖衣をまとい相変わらずの悲痛な面持ちのサガが双児宮から降りてくる姿が目に入った。

カノン「あ・・・・兄貴。今日は夜勤じゃなかったのか??」

サガ「お前達、今何時だと思っている。」

シュラ「ん〜?今かぁ?今はねぇ〜〜〜〜5時半!ご・じ・は・ん!」

シュラは頬にキスマークをつけた顔をサガに近づけ酒臭い息で答えた。

サガ「・・・・・・お前たち、こんな時間までどこで何をしていた。」

デスマスク「いやぁ〜、それがよぉ・・・・・エリーちゃんが『デッちゃん、今日は帰さないわぁ(はーと)』なーんて言ってなかなか帰してくれなかったんだよぉ」

カノン「なっ!!デスマスク、お前、エリーちゃんとそこまでいったのか!?」

シュラ「それでその後どうなった!答えろデスマスク!!」

デスマスク「ふっふっふっ、聞きたいか、お前ら。そんなに聞きたいなら教えてやろう・・・・」

シュラ・カノン「うん!うん!!」

サガは既に自分の質問など忘れた酔っ払い3人を目の前に、表情を強張らせ、怒りで肩が震えた。
ミロはカノンの足元で軽やかな寝息を立てている。

サガ「いい加減にしないか!!」

デスマスク「なっ、なんだよ。これからがいい所だったのに!!」

シュラ「あれ!?サガ!なに怒ってるんだ?」

カノン「はっはぁ〜〜〜〜ん。そっか、兄貴を誘わないで行ったから怒ってるんだろう!」

シュラ「そうなのか??なーんだ、誘って欲しいなら誘って欲しいって早く言えよ。」

酒臭い顔をサガに近づけニヤつく3人はサガの増大する小宇宙を感知し、動きを止めた。

サガ「私はそんなことを言っているんじゃない!
お前達には黄金聖闘士としての自覚があるのか!?毎晩、毎晩遊び歩いて、ろくに自分の宮にも帰ってないだろう。女神を守る聖闘士がそんなことでどうする!!
少しはムウやシャカを見習ったらどうだ!」

サガは顔を悲壮なまでにこわばらせ、その瞳からは今にも滝のような涕が流れ落ちそうであった。

シュラ「お・・・俺達にあんな世捨て人のような生活を送れというのか!?」

デスマスク「ふざけるな!!俺が夜遊びを止めたら世界中の女が悲しむじゃねーかよ!!」

カノン「俺は兄貴から奪われた13年分の人生を楽しんでいるだけだ!!」

デスマスク「おい!ミロ、起きろ!!お前からもこの石頭になにか言ってやれ!!」

デスマスクに頭をけとばされミロは心地よい眠りから現実の世界へと引き戻される。

ミロ「ふにゃ??あれ??サガじゃん。聖衣なんか着てどうしたの??教皇でも殺しにいくのかぁ?」

サガはついに瞳から滝のような涕を流し身構えた。

サガ「・・・・・・・お前達、どうやってもその行いを改めるつもりはない様だな。ならば仕方ない、しばらく夜遊びができないよう五感を剥奪してやろう。」

デスマスク・シュラ・カノン・ミロ「こ・・・・・・股間剥奪!?

4人は、サガの言葉をすっかり聞き間違え雷に打たれたような衝撃を覚え硬直する。そして、ミロが次の第一声を放つまでの数秒の間がとても長く感じられた。

ミロ「サッ・・・・・サガァ〜〜〜。それだけは勘弁してくれよぉ。」

パニックとなったミロは泣きながらサガの足にすがり付いた。そして酔いも手伝って連鎖的にパニックが他の3人に伝播する。

カノン「兄貴ぃ〜。俺を今すぐスニオン岬に閉じ込めてくれ。なっ、俺、何年でも入ってるからさ。だから股間剥奪だけは許してくれぇ〜」

デスマスク「サガ、少し冷静になれ!!お前も同じ男ならそんなことしたらどういう結果をもたらすか分かるだろう!!頼むから俺の楽しみをこれ以上とらないでくれぇ〜〜〜。」

シュラ「お前正気か!?俺から股間を剥奪したら後は何が残るっていうんだぁ〜〜。なっ、サガ、俺もスニオン岬に入るから・・・・・」

サガ「(ぷちっ)」

DooooooooooN!

デスマスク「ぎゃぴぃ!」

サガの足に泣きすがっていた4人は一瞬にしてサガの足元から双児宮の階段の途中まで吹き飛ばされていた。そして双児宮から邪悪な小宇宙を漂わせ、4人を投げ飛ばした黒サガが降りてくる。

シュラ「くっ・・・・・貴様は!?」

ミロ「黒サガ!!」

黒サガ「ふはははははっ。愚か者どもめ。黄金聖闘士が4人も揃ってその有り様か。余が今すぐ貴様らの股間を奪ってくれようぞぉ〜〜。」

DaaaaaaaaaN!!

カノン「ぐあぁぁぁ」

酔いとパニックと黒サガの一撃で弱った4人に再び黒サガの一撃が襲い、金牛宮の真裏まで吹っ飛ばされた。

アルデバラン「朝っぱらから人の宮の裏で何を騒いでいる!!」

そこには邪悪な小宇宙を自宮の裏で感じ目を覚ましたアルデバランが寝間着のまま立っていた。まさに地獄に仏とはこのことである、4人はヨロヨロとアルデバランの後ろに回り込んだ。

ミロ「たっ・・・・・助けてくれ、アルデバラン!」

カノン「兄貴が興奮して、大変なんだ」

デスマスク「頼む、あの男をなんとかしてくれぇ〜」

アルデバラン「なんだ、女神の聖闘士ともあろう者が4人も揃って情けない。」

シュラ「しかし、相手は黒サガなんだ!!」

アルデバラン「なに!?黒サガだと!?」

アルデバランは4人をかばう様にして立ち双児宮から降りてくる聖闘士と対峙するべく身構えた。
しかし、そこに現れたのは黒サガではなく、見慣れた普通のサガの姿であった。

シュラ・デスマスク・カノン・ミロ「!!!!!!!!」

サガ「アルデバラン、どうしたんだこんな朝早くに。着替えもしないでそんな所に突っ立ていると風邪を引くぞ。」

アルデバラン「あああ、サ・・・・サガ。ついさっき邪悪な小宇宙を感じたんで、出てきたのだが・・・・・。(気のせいだったのか?)」

サガ「そうか、私には感じられなかったが、悪い夢でも見てたんじゃないのか??(にっこり)」

アルデバラン「なら、いいのだが・・・・・」

サガ「ところでアルデバラン、君の後ろにいる4人をこちらに引き渡してはくれないかな?」

アルデバラン「しかし、この4人はいったいどうしたのだ??こんなに痛めつけられて、すっかり脅えているようだが・・・。」

サガ「ふぅ〜。どうしたもこうしたも、この4人は今まで夜遊びをして、帰ってきたと思ったらベロンベロンに酔っ払って双児宮の階段を踏み外し、ここまで転げ落ちたのだ。夜勤明けの私が駆けつけた時には既に階段の半分を落ちていて間に合わなかったんだ・・・。」

ミロ「うっ、嘘つくんじゃねーゴラァ!」

シュラ「全部てめぇーの仕業だろうが!!!」

4人のことを哀れんだ瞳で語るサガの言葉を遮るようにミロとシュラがアルデバランの後ろから顔を出し叫んだ。
アルデバランはぴったりと後ろにくっ付いた4人が放つ酒臭に気が付いた。

アルデバラン「サガよ、こいつらはこう言ってるが・・・・・」

サガはアルデバランの瞳をまっすぐ見て肩をすくめる。

アルデバラン「しかし、ミロやカノンはともかくとして、シュラやデスマスクまでこんなに脅えてるではないか。」

眉間にしわを寄せ悲痛な面持ちで瞼を伏せたサガの瞳から一筋の涙が零れ落ちるのをアルデバランは見逃さなかった。

サガ「アルデバラン、君は私の言うことと酔っ払いの言うこと、どっちを信じるんだ。はぁ、やっぱり私は女神のお許しを得ても、まだ君たちには信用されていないのか・・・・・」

アルデバラン「うっ・・・・・サガ、何も泣かなくても・・・・。」

カノン「アルデバラン、涙にだまされるな!こいつは俺達がいつも接しているサガじゃない!!」

サガの様子が黒でもなく普通でもないことに気がついたカノンの言葉にアルデバランはどちらを信じていいのか分からなくなった。

サガ「そうか、どうあっても渡してはくれないのだな?私は毎朝、金牛宮を汚している犯人を知っているんだが、君はその犯人を知りたくはないのか??」

アルデバランは最近、朝起きると自分の宮が何者かによって汚され、それを掃除していたのである。

アルデバラン「サガ、貴方は犯人を知っているのか?」

サガ「ああ、犯人は君が後ろに匿っているミロだ。」

アルデバラン「なに!?」

サガ「そうだ、この4人は毎晩毎晩飲んで遊んで帰ってくる。こいつらは毎朝、ムウとシオン教皇が寝ている白羊宮を酔ったまま光速で走りぬけ、君の金牛宮につく頃にはミロはすっかり気分を悪くし・・・・・」

アルデバラン「吐くというわけか・・・・・ミロ?」

水玉の寝間着とそれとおそろいのナイトキャップを被ったままのアルデバランは怒りの小宇宙を増大させ後ろを振り返った。しかし、酔っ払っているミロにはそんなことを思い出せるはずもなくキョトンとしている。

再びサガの方に振り返ったアルデバランの両手にはカノン・サガ・デスマスク・シュラが後ろ襟を捕まれぶら下がっていた。

デスマスク「くそっ!放しやがれ、この寝ぼけ牛!!」

ミロ「俺じゃねーよ。」

アルデバラン「サガよ、こいつらの始末は任せた。二度と夜遊びなどせぬように熱い灸を据えてくれ。」

アルデバランは4人の襟首から手を放し、怒りに拳を震わせ必殺の一撃を放った。

アルデバラン「グレートホーーーーーーン」

ドッカーーーーーーン!!

ミロ「おーれーじゃーねーよぉーーーーーーー」

アルデバラン「後はよろしく頼んだぞ。私はもう一寝入りするとしよう・・・・」


4人は双児宮の入り口まで吹っ飛んだ。

シュラ「・・・・・・・・くっ・・・・・・くっそぉ。牛め、覚えてろよぉ」

デスマスク「ちっ・・・ちくしょう、さっきのサガはなんだ?新しい人格化か・・・・・?」

黒サガ「ふっふっふっ・・・・・・アルデバランを騙すことなど簡単なことだ。」

ミロ「サ・・・・・サガ!!!」

カノン「くそっ、もう来やがったのか・・・・」

黒サガ「はっはっはっーーーー・・・・・これで逃げられると思ったら大間違いだぞ、大馬鹿どもぉ〜〜〜」

サガは再び黒サガとなり双児宮の階段を上ってくる。しかし、アルデバランの怒りの一撃を食らった4人には立つことがやっとだ。

黒サガ「今度こそ貴様らの股間を剥奪してくれるわ、くらえ!!」

DWOOOOOOOOON!!!!

デスマスク・カノン・シュラ・ミロ「うぎゃぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」


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