Kanon's Birthday!

 

翌朝。

例年にない高波に襲われたエーゲ海のニュースは、世界中を駆け回った。

昨晩のパーティは午後の早い時間に終わったものの、サガが閉じ込められたという物珍しさから、全員が夜遅くまで岬に残り、サガを肴に酒を飲んだ。

特にカノンは事あるごとに岩牢前に行っては、サガの様子を観察し、サガをからかった。

アイオロスは未だに波に飲まれたまま、帰ってこない。

 

そんな中、カノンは超ご機嫌でスニオン岬に立っていた。

カノンは珍しく早朝に起床し、そそくさと岩牢前に陣取る。召集してもいないのに、他の仲間たちもサガの出所を見物に来ていた。

しかし、岩牢を覗いてみたがサガの姿はなかった。恐らく、相変わらずの高波により、岩牢の奥でプカプカと浮いているのだろう。
カノンはその姿を想像して、邪悪な笑みを浮かべた。

そろそろサガがスニオン岬に入って24時間経とうとしていた。

ムウ「そろそろですね。」

カノン「あと1分だ。」

デスマスク「本当に1日で出られるのか?」

カノン「さぁ?」

ミロ「女神のことだ、茶目っ気をおこして、あと1週間とかになったりしてな!!」

カノン「おっ、あと10秒」

ムウ「9」

アルデバラン「8」

シャカ「7」

ミロ「6」

デスマスク「5」

カミュ「4」

シュラ「3」

貴鬼「2」

アフロディーテ「1」

カノン「ゼロォォォーーーーーーーーーーーー♪」

カノンの絶叫と同時に、岩牢の鉄格子が忽然と消えた。
そして数分の後、髪はボサボサで顔は真っ青のサガが、肩でゼーハーと息をしながら岩牢からはい出てきた。

カノンはジャブジャブと海の中に入ると、サガを迎えに行く。

カノン「どうだった、岩牢の中は?」

サガ「・・・・・・。」

眉間にシワをよせ、真っ青な顔に恐怖とも、絶望とも、怒りとも取れる炎を瞳に宿し、カノンをキッと睨み据える。

が、フラフラと出てきたサガは、小波に足をとられカノンに倒れかかった。咄嗟にカノンはその体を抱き支えた。

カノン「なっ?、凄かったろ?」

サガの腰に手を回し、震える体を支えながら耳元で囁く。

サガ「・・・・・、こ・・・・。」

カノン「ん?」

サガ「こ、こんな所にお前を・・・・。」

サガはカノンの肩に顔を預けて、掠れた声で呟いた。

サガ「こ、こんな所にお前を閉じ込めて済まなかった・・・・・。」

カノン「分かってくれればいいよ、兄さん。」

サガ「カノン・・・・・・。」

カノンは震えるサガに手を回すと、サガは涙を流してカノンを抱き締めた。

黄金聖闘士達は、サガとカノンがお互いに熱い深い抱擁を交わしたのを、初めて目にする事になった。
双子和解か!?と、その情景に、黄金聖闘士達は、ムウやシャカですら号泣したのであった。

ムウ「さてと、誕生日パーティ、やりなおしましょうか。」

デスマスク「おう、そうだな。異例の2連チャン誕生日だ。」

サガ「・・・・・ど、どういうことだ?」

カノンの肩を借りて歩いていたサガが、潮まみれの顔をあげた。

シュラ「昨日はカノンの誕生日パーティで、今日はサガとカノンの誕生日パーティですよ。」

カノン「なに?2回もやってくれるのか!?」

カミュ「勘違いしないでくれ。今日はサガの誕生日のほうがメインだ。」

サガ「そうか・・・・、皆ありがとう。」

13年間皆を欺き、辛い思いをさせたにも関わらず、仲間達の熱い友情にサガは涙をながした。

サガ「し、しかし・・・・・。」

カノン「どうした、兄貴?」

サガ「わ、私は風呂に入りたい・・・・。」

カノン「また風呂か・・・・。」

そして5時間後、入浴を終えたサガはすっきりとした顔で、皆からの祝福を受けることが出来た。

デスマスク「ということで、昨日よりは小規模だが、改めて誕生日おめでとう、サガ!!」

こうして一日遅れで、双子の誕生日は無事に終了したのであった。

 

翌日。

貴鬼「ムウさまぁぁぁぁぁぁ!!!」

ムウ「なんですか、騒々しい。」

貴鬼「これ、海岸で拾っちゃった。家で飼ってもいい?」

ムウ「なんでもかんでも拾ってくるのではない。」

貴鬼「駄目?」

ムウ「駄目です。すぐに元の場所に捨ててきなさい。」

貴鬼「はーーーーーーい・・・・。」

ふてくされて返事をした貴鬼は、海岸で拾ったモノを再びズルズルと引きずりながら白羊宮の階段を降りていった。

それは、波に飲まれ、弟のアイオリアにすら忘れられたアイオロスだった。

 


End