★兄貴といっしょ(男の悩み相談室 その2)
磨羯宮
シュラは、素肌にいつもの赤いガウンで新聞を読んでいた。
シュラ「あ、おはようございます、サガ。」
サガ「シュラ、頭を見せろ。」
シュラ「頭?」
サガ「いいから頭を見せろといっているのだ!」
問答無用でサガにヘッドロックをかけられたシュラは、短い悲鳴をあげて新聞を落とす。
サガはシュラの黒い髪を掻き分け頭皮をチェックすると、その手を離した。
サガ「・・・・すごい剛毛だな。」
シュラ「朝っぱらか何するんですか?!ヤって欲しいならヤって欲しいといってくれれば、今すぐヤるのにぃ。あ、アイオロスに内緒ですよ。」
ガウンを脱ごうとするシュラの頭をはたくと、サガは叩いた手をじっと見つめた。
サガ「・・・お前の髪が手に刺さった・・・・。」
シュラ「俺は剛毛ですからね。面白いのを見せてあげますよ。」
シュラは部屋から出ると、程なくして緑色のライムを持って戻ってきた。そして、ライムを自分の頭上へと持ち上げる。
シュラ「見ていてください、乗るんですよ、これ。」
サガ「またまたまたぁ〜〜。私をからかうのはよせ。」
シュラ「ほら!!!!」
サガはシュラの言葉どおり、頭髪の上に乗ったライムを見て目をひん剥いた。
サガ「な!なんだ!それはどういうトリックだ!」
シュラ「ただの剛毛です。」
サガ「うそだ!髪にそんな物がのるはずない!」
シュラ「ああ、サガは髪の毛柔らかそうですからね。黒髪は太くて丈夫なんですよ。」
サガ「・・・・・・、なんて羨ましい。」
シュラ「ところで、サガの頭皮はどうなんです?」
サガは不意をつかれて、シュラに前髪をかきあげられた。
シュラ「・・・・・、意外とデコ広いっすね。」
サガ「な、何だと?!」
シュラ「あ、そうか。教皇の真似して冠かぶってたから、蒸れてハゲたのか!」
サガ「ハゲてなどいない!」
シュラ「やっぱり神のような男でもハゲるんですねぇ。その額は危険ですよ。」
サガ「そういうお前こそ、天辺の頭皮が見えはじめているぞ。」
シュラ「な!!!!!」
サガ「お前は男性ホルモンが人一倍多そうだからな。ハゲあがるのも人一倍早いだろう。もみ上げと髭を残して頂点から禿げてゆくに違いない!」
シュラ「な!な!な!!!!!ハゲにハゲって言われたくありませんよ!」
サガ「私はまだハゲてはいない!」
シュラ「ハゲがうつるからさっさと出てって下さい!!」
サガ「私はハゲではなーーーーい!」
人馬宮
シュラに追い出されたサガはトボトボと階段を下りて、人馬宮の前で立ち止まった。
サガ「ふぅ・・・・、あいつは悩みなんてなさそうだからな。」
あいつとは他ならぬ人馬宮の主、アイオロスである。
外にサガの気配を感じたアイオロスは、鉄アレイを投げ捨てて、玄関へと走り出た。
アイオロス「サっガぁぁぁぁ〜〜〜〜♪お前が私のところへ来るなんて珍しいじゃないかっ。」
サガは両手を広げ抱きつこうとするアイオロスの鳩尾に、問答無用で鉄拳をぶちこむと、前かがみになった頭にヘッドロックをかけた。
アイオロス「きょ、今日のサガは積極的だなぁ・・・・・。でも、これはちょっと苦しいぞ。」
サガ「・・・・・ふむ、意外と髪が多いな・・・。」
アイオロスの栗色の髪をグチャグチャにかきまわして、頭皮のチェックを終えると、サガはアイオロスから手を離した。
アイオロス「髪って・・・ああ、私は最近まで死んでいたから、そんなに抜けていないしな。」
サガ「・・・・・・・・・。」
ものすごい形相で頬を引きつらせるサガをみて、アイオロスは自分の失言に慌てて口を押さえる。
アイオロス「あ、その、あの、えーーっと、気にするなよ、サガぁ。」
サガ「・・・・気にするな?そんなことできるか!!!」
アイオロス「あのときは、ついうっかりポックリ死んでしまったが、今はこうして生きているんだから、いいじゃないか。」
サガ「全然よくない!!!気にならなくなったら、それはもう抜ける毛がないということではないか!!!」
アイオロス「はぁぁ?抜ける毛???なに、サガは抜け毛を気にしてるのか?」
サガ「う゛!!!。」
すっかり逆切れしてしまい、つい口を滑らせてしまったサガは、プイとアイオロスから顔を背けた。
アイオロス「そんなこと気にするなよぉ、私の愛はサガがたとえツルっぱげになっても、変らないぞ!」
サガ「つつつつつつつつ!ツルっぱげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!?!?!」
アイオロス「サガがハゲようが、ジジィになろうが、私の愛は永久にかわらなからなぁっ!!」
サガ「私はまだハゲてはおらーーーーんん!!!!!」
小宇宙を込めた怒りの鉄拳をアイオロスの顔面に叩きつけ、サガは額に青筋を立てて人馬宮から出て行った。
処女宮
サガ「おのれ、アイオロス・・・・。私が禿げたら道連れにしてやる!!!」
サガは蓮華の台座の上で瞑想しているシャカをみつけ、シャカの長い金髪に手を触れた。
サガ「(ふむ・・・・綺麗な髪だ。毛先が少々痛んでいるようだな・・・)」
シャカ「サガ、そこで何をしているのだ。」
サガ「ん?!なんだ、起きていたのか。」
シャカ「寝てなどいない。」
サガ「ちょ・・・・・ちょっと、毛髪の調査をな・・・・・。」
シャカ「・・・・・・・。それで、成果はあったのかね?」
サガ「ああ、それなりにな。」
シャカ「ほう・・・・・・。」
サガ「アフロディーテは毎週美容院に行って手入れをしているそうだ。カミュは髪が細くて、ミロは無駄に髪が多かった。シュラは剛毛だが、天辺がそろそろ危険だったな。アイオロスは普通だと思う。」
シャカ「それで、君は?」
サガ「私か?・・・・・、見ての通りだ。」
シャカ「ふむ、ハゲてるのかね。」
サガ「目を開けてよく見ろ!!どこが禿げているというのだ!!」
シャカ「ふっ、そのようにいちいち怒っては、髪がポロリと抜けるぞ。」
サガ「・・・・・・・・う゛!!」
シャカ「何故に頭髪ごときにとらわれているのかね。修行が足りぬのだよ、修行が。」
サガ「ではお前はハゲても構わないというのか?」
シャカ「当然だ!」
サガ「・・・・・そうか、お前は仏様だからな。しかし、仏はパンチパーマではないのか?」
シャカ「あれは、パンチパーマではない。」
サガ「髪がなくなったら、パンチパーマもかけられんぞ。髪は大切にした方がいい。」
シャカ「・・・・パンチパーマではない。」
サガはトボトボと肩を落として処女宮から出て行った。