兄貴といっしょ(男の悩み相談室 その2)

 

磨羯宮

シュラは、素肌にいつもの赤いガウンで新聞を読んでいた。

シュラ「あ、おはようございます、サガ。」

サガ「シュラ、頭を見せろ。」

シュラ「頭?」

サガ「いいから頭を見せろといっているのだ!」

問答無用でサガにヘッドロックをかけられたシュラは、短い悲鳴をあげて新聞を落とす。

サガはシュラの黒い髪を掻き分け頭皮をチェックすると、その手を離した。

サガ「・・・・すごい剛毛だな。」

シュラ「朝っぱらか何するんですか?!ヤって欲しいならヤって欲しいといってくれれば、今すぐヤるのにぃ。あ、アイオロスに内緒ですよ。」

ガウンを脱ごうとするシュラの頭をはたくと、サガは叩いた手をじっと見つめた。

サガ「・・・お前の髪が手に刺さった・・・・。」

シュラ「俺は剛毛ですからね。面白いのを見せてあげますよ。」

シュラは部屋から出ると、程なくして緑色のライムを持って戻ってきた。そして、ライムを自分の頭上へと持ち上げる。

シュラ「見ていてください、乗るんですよ、これ。」

サガ「またまたまたぁ〜〜。私をからかうのはよせ。」

シュラ「ほら!!!!」

サガはシュラの言葉どおり、頭髪の上に乗ったライムを見て目をひん剥いた。

サガ「な!なんだ!それはどういうトリックだ!」

シュラ「ただの剛毛です。」

サガ「うそだ!髪にそんな物がのるはずない!」

シュラ「ああ、サガは髪の毛柔らかそうですからね。黒髪は太くて丈夫なんですよ。」

サガ「・・・・・・、なんて羨ましい。」

シュラ「ところで、サガの頭皮はどうなんです?」

サガは不意をつかれて、シュラに前髪をかきあげられた。

シュラ「・・・・・、意外とデコ広いっすね。」

サガ「な、何だと?!」

シュラ「あ、そうか。教皇の真似して冠かぶってたから、蒸れてハゲたのか!」

サガ「ハゲてなどいない!」

シュラ「やっぱり神のような男でもハゲるんですねぇ。その額は危険ですよ。」

サガ「そういうお前こそ、天辺の頭皮が見えはじめているぞ。」

シュラ「な!!!!!」

サガ「お前は男性ホルモンが人一倍多そうだからな。ハゲあがるのも人一倍早いだろう。もみ上げと髭を残して頂点から禿げてゆくに違いない!」

シュラ「な!な!な!!!!!ハゲにハゲって言われたくありませんよ!」

サガ「私はまだハゲてはいない!」

シュラ「ハゲがうつるからさっさと出てって下さい!!」

サガ「私はハゲではなーーーーい!」

 

人馬宮

シュラに追い出されたサガはトボトボと階段を下りて、人馬宮の前で立ち止まった。

サガ「ふぅ・・・・、あいつは悩みなんてなさそうだからな。」

あいつとは他ならぬ人馬宮の主、アイオロスである。

外にサガの気配を感じたアイオロスは、鉄アレイを投げ捨てて、玄関へと走り出た。

アイオロス「サっガぁぁぁぁ〜〜〜〜♪お前が私のところへ来るなんて珍しいじゃないかっ。」

サガは両手を広げ抱きつこうとするアイオロスの鳩尾に、問答無用で鉄拳をぶちこむと、前かがみになった頭にヘッドロックをかけた。

アイオロス「きょ、今日のサガは積極的だなぁ・・・・・。でも、これはちょっと苦しいぞ。」

サガ「・・・・・ふむ、意外と髪が多いな・・・。」

アイオロスの栗色の髪をグチャグチャにかきまわして、頭皮のチェックを終えると、サガはアイオロスから手を離した。

アイオロス「髪って・・・ああ、私は最近まで死んでいたから、そんなに抜けていないしな。」

サガ「・・・・・・・・・。」

ものすごい形相で頬を引きつらせるサガをみて、アイオロスは自分の失言に慌てて口を押さえる。

アイオロス「あ、その、あの、えーーっと、気にするなよ、サガぁ。」

サガ「・・・・気にするな?そんなことできるか!!!」

アイオロス「あのときは、ついうっかりポックリ死んでしまったが、今はこうして生きているんだから、いいじゃないか。」

サガ「全然よくない!!!気にならなくなったら、それはもう抜ける毛がないということではないか!!!」

アイオロス「はぁぁ?抜ける毛???なに、サガは抜け毛を気にしてるのか?」

サガ「う゛!!!。」

すっかり逆切れしてしまい、つい口を滑らせてしまったサガは、プイとアイオロスから顔を背けた。

アイオロス「そんなこと気にするなよぉ、私の愛はサガがたとえツルっぱげになっても、変らないぞ!」

サガ「つつつつつつつつ!ツルっぱげぇぇぇぇぇぇぇぇぇ?!?!?!」

アイオロス「サガがハゲようが、ジジィになろうが、私の愛は永久にかわらなからなぁっ!!」

サガ「私はまだハゲてはおらーーーーんん!!!!!」

小宇宙を込めた怒りの鉄拳をアイオロスの顔面に叩きつけ、サガは額に青筋を立てて人馬宮から出て行った。

 

処女宮

サガ「おのれ、アイオロス・・・・。私が禿げたら道連れにしてやる!!!」

サガは蓮華の台座の上で瞑想しているシャカをみつけ、シャカの長い金髪に手を触れた。

サガ「(ふむ・・・・綺麗な髪だ。毛先が少々痛んでいるようだな・・・)」

シャカ「サガ、そこで何をしているのだ。」

サガ「ん?!なんだ、起きていたのか。」

シャカ「寝てなどいない。」

サガ「ちょ・・・・・ちょっと、毛髪の調査をな・・・・・。」

シャカ「・・・・・・・。それで、成果はあったのかね?」

サガ「ああ、それなりにな。」

シャカ「ほう・・・・・・。」

サガ「アフロディーテは毎週美容院に行って手入れをしているそうだ。カミュは髪が細くて、ミロは無駄に髪が多かった。シュラは剛毛だが、天辺がそろそろ危険だったな。アイオロスは普通だと思う。」

シャカ「それで、君は?」

サガ「私か?・・・・・、見ての通りだ。」

シャカ「ふむ、ハゲてるのかね。」

サガ「目を開けてよく見ろ!!どこが禿げているというのだ!!」

シャカ「ふっ、そのようにいちいち怒っては、髪がポロリと抜けるぞ。」

サガ「・・・・・・・・う゛!!」

シャカ「何故に頭髪ごときにとらわれているのかね。修行が足りぬのだよ、修行が。」

サガ「ではお前はハゲても構わないというのか?」

シャカ「当然だ!」

サガ「・・・・・そうか、お前は仏様だからな。しかし、仏はパンチパーマではないのか?」

シャカ「あれは、パンチパーマではない。」

サガ「髪がなくなったら、パンチパーマもかけられんぞ。髪は大切にした方がいい。」

シャカ「・・・・パンチパーマではない。」

サガはトボトボと肩を落として処女宮から出て行った。


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