ありがたいプレゼント

 

君にはこれが見えないのかね?

デスマスクは手の平に乗った小さな物体を凝視していた。

手の平を顔に近づけ、あまりにも小さすぎるそれを様々な角度でながめた。

君にはこれが見えないのかね?

デスマスクは先程言われた言葉を思い出した。

 

いつも通り居眠りしているシャカを無視して、処女宮を通りぬけようとしたデスマスクは、宮の主に声をかけられ振り返った。

「今日は君の誕生日だそうだな。ふっ、生まれて、たかが23年目など大してめでたくもないが、君のことは嫌いではない。だから、祝ってやろう!」

自分でも柄でもない事をしているいう自覚があるのだろう。シャカの顔は、真っ赤に染まっていた。

「物などなんの意味ももたんが、受け取るのだ。」

「おう、わりぃなぁ・・・・・。」

シャカを怒らすとあとが恐いので、デスマスクはとりあえずシャカの言葉にしたがった。

「どうしたのだね!!」

「いや。その・・・・・、どこにあるんだ?」

差し出されたシャカの手の平にデスマスクの戸惑いの言葉を発する。途端、シャカは更に顔を赤くした。

「なっ!!君にはこれが見えないのかね!!私の手の平に乗っているだろう。いいから受け取りたまえ!!!この私が君のために用意したのだ、感謝するのだ!!」

まくしたてられ、デスマスクは腰をかがめてシャカの手の平をみる。
そしてシャカの手の平の上に、シャカの額についている赤いビンドゥよりもさらに小さな米粒状のものを発見した。

その米粒状のものは、まさにそのもの、米粒だった。

シャカの手からそれを摘み上げたデスマスクは、しげしげと眺めてみたが、やはり米粒だった。

「お、おぅ、ありがとな、シャカ。で、これは食っていいのか・・・・?」

どう見ても米粒の使用用途が分からず、デスマスクは米粒を口に運ぼうとする。

「君は何を考えているのだ、デスマスク。やはり君にはこれが見えないのかね!?」

シャカはますます顔を赤くして怒りを顕にした。

「これか!?」

「私が君の為に、生誕の祝辞と絵をかいてやったのだ。黄金聖闘士ともあろう君が、この程度のものも判別できないのかね!?」

「そ、そうだったのか。すまねーな、シャカ。」

デスマスクは小宇宙を込めて、米粒を凝視する。そうして、白い楕円の表面に小さな黒点を発見し、それに意識を集中した。

 

「シャカ、お前は絵がうまいな。ありがとよ。」

シャカはデスマスクの言葉に満足し、唇を僅かに吊り上げ僅かに笑みを浮かべると、

「ふっ、私にとっては容易い事だ!」

と言い残し、再び瞑想を始めた。

 

君にはこれが見えないのかね?

米を目の前に、シャカの言葉が脳裏をかすめる。

デスマスクには、米に書かれた小さすぎる絵は見えなかった。

とっさにその場を繕いごまかしたが、やはりどう見ても小さな黒い点にしか見えない。

凝視してみる。

 

「・・・・・・」

更に凝視してみる。

 

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

もう一度小宇宙を燃やして凝視してみる。

 

「・・・・やっぱりただの点じゃねぇか!!!!」

デスマスクはシャカからもらった米粒を小宇宙を込めて弾き飛ばしたのであった。


End