白羊の食卓

 

日中の執務のせいで鬱MAXの青白い顔をしたサガは、裸にガウンを纏った姿のアイオロスに眉間の皺を更に増やした。

サガ「なんだその格好は!」

アイオロス「ムウのところで風呂に入ったら着替えが無くてな、寒いからサガのところで暖をとって、服を借りようと思ってさ。それよりも、ほら猫連れてきたんだぞ」

サガ「ねこ?」

アイオロス「アニマルセラピーになるかと思ってな。この前の天井裏の猫は全部引き取られちゃっただろう」

アイオロスは懐からタオルに包まった猫を取り出すと、サガの眉間の皺が二本減った。サガは以前からアイオロスの肩に乗る猫を羨ましく思っていたのである。

アイオロス「ほら、可愛いだろう」

サガ「猫……」

アイオロス「”アイオロス”って名前なんだ」

サガ「アイオロス!?」

アイオロス「本当は”肩”って名前だったんだが、白羊宮で飯を貰っていたら、いつの間にか名前が変わっていた。私が飼っている猫だから略してアイオロスらしい。でも名前を呼ぶと、肩にのって甘えて来るんだぞ。それに一緒に寝てもくれるぞ、暖かくて気持ちいいぞぉ、アイオロスは!」

サガの眉間から皺が更に3本消え、ニヘラとだらしなく頬が緩む。

サガ「”アイオロス”、おいで」

アイオロス「行って来い、”アイオロス”」

アイオロスが巻いていたタオルをはずすと、サガは両手を伸ばして猫を抱き上げ顔を寄せる。が、その瞬間、サガの悲鳴が双児宮に響き渡った。

猫がフギャーと鳴きながらサガに飛びつき、バリバリバリと顔を引っかいたのである。

サガ「ア、アイオロス……これは何かの嫌がらせか!!」

アイオロス「ち、ちがう!」

サガ「これの何が違うのだ!」

猫は毛を逆立ててサガに威嚇をしている。アイオロスはあばばばとうろたえた。

サガ「さっさと猫を連れて出て行ってくれ!」

アイオロス「サ、サガぁ〜〜」

サガ「どうせ私は猫にも嫌われているんだ!お前の顔なんて見たくないっ!出て行け!」

猫をだしにサガと懇ろになろうと思っていたアイオロスであったが、結局大雪の中、白羊宮に戻っていった。

 

すぐに戻ってきたアイオロスが泣きっ面なのを見て、シオンは思わず鼻で笑ってしまった。

アイオロス「教皇、この猫もらってください……」

シオン「無責任なことを言うな」

アイオロス「こいつのせいでサガに嫌われちゃったんです」

アフロディーテ「猫のせいじゃなくて、あんたは最初からサガに嫌われているの。殺されたくせにまだ気づかないのぉ?」

シオン「ふむ、サガを引っ掻いたか」

アイオロスが頷いたのを見て、シオンは笑い声をあげ、猫を受け取った。

シオン「よく出来た猫じゃ。褒めてつかわす。ムウやアイオロスに暖かいミルクを与えよ」

ムウ「どっちのですか?」

シオン「猫じゃ。こっちのバカは放っておけ」

シオンは猫をシュラに渡すと、席を立って風呂場へ向かった。寝しなに風呂に入り、体が温まっているうちに寝るのである。

1時間ほどして、風呂から出てきたシオンは自分を威嚇する猫を見て首をかしげた。

シオン「どうしたのじゃ、アイオロスよ」

アイオロス「どうしたもこうしたも……どうして私の恋は上手くいかないのでしょうか」

シオン「お前ではない、猫じゃ」

アフロディーテ「教皇が自分の事を風呂に入れるんだと勘違いしているんじゃないんですか?」

シオン「ふむ、風呂がそれほどまでに嫌いか?」

シオンが語りかけると、猫は「フシャー!」と威嚇して返事をした。

シオン「なるほどのぅ。では、一生サガには懐かぬのぅ」

アイオロス「ああ!もしかしてサガをひっかいたのも……」

アフロディーテ「サガは風呂の匂いがするからね。そうか〜〜アイオロスはサガが嫌いなんだぁ」

シュラ「アイオロスがサガを嫌っていたのか。なるほど」

アイオロス「嫌いなわけないだろう!何とかしてください、教皇!」

ムウ「きちんと面倒見ないアイオロスが悪いのではありませんか。優しく風呂に入れてあげれば風呂好きになったかもしれないのに」

アフロディーテ「やっぱり、わざとだ!サガにチクってやる!」

シュラ「アイオロス、この猫いらないなら俺にください。超可愛がってやりますから!アイオロスの”肩”〜〜磨羯宮で俺と暮らそう!」

シオン「その猫はアイオロスが責任を持って飼うとゆうたのじゃ。手放すことは許さぬ」

アイオロス「ええええ、そんなぁぁぁ。肩がいたらサガが人馬宮に来てくれないじゃないですか」

シオン「きちんと躾しなおせばよかろう。ペットを気軽な気持ちで飼うでない、馬鹿者め」

シオンに殴られたアイオロスは恨みがましい目で猫を見たが、猫は知らん顔をしてコタツの中へと戻っていった。


End