俺の仕事(完結編その2)

 

「あーあ、また一気につっこまれちゃった。」

リビングでカードゲームに興じていたアフロディーテが呟いた。

「お前、こんなことしてしらねーぞ。」

デスマスクが新しいタバコに火をつけながら言う。

「知らないもん。私とサガの邪魔をするからいけないんだ。」

アフロディーテは手札を3枚交換しながら膨れた。

「アイオロス、大丈夫かなぁ・・・。」

シュラは手札を2枚交換し、グラスの酒を飲み干すといった。

「あ?大丈夫じゃねーの。そのうち、シャカにでも助けてもらうだろう。」

デスマスクは、交換した手札2枚を手にするとニヤリと笑って呟いた。デスマスクの手は、フルハウスであった。

 

容赦なく突き上げるサガ(黒)の攻めに、カノンは抵抗の叫び声をあげていた。既に自分で支えることのできない身体を、サガ(黒)に抱えられたままカノンはサガ(黒)に罵声を飛ばす。

「うおぉ、やめろ、この変態。死ね!!」

「黙れ!アレには遠く及ばない代用品が!!」

「ぐぎゃっ、痛てぇ、放せ!!」

「何を嫌がる?。13年前、私を呼び出したのはお前だろう。これがお前の望んだ兄の姿ではないのか?」

「うおぉぉぉーー。て、てめぇなんて兄貴じゃねー。」

「くくくっ、そうだな。私にとってもお前は、アレの代用品にすぎん。代用品らしくもっといい声を出せ!!」

サガ(黒)が根元まで一気に突き上げ激しく動くと、カノンは再び色気もへったくれもない雄たけびをあげる。あまりの激しさにだんだんと意識が遠のいていくカノンの耳に、サガの自分の名を呼ぶ懐かしい声が聞こえたような気がした。

やばい、幻聴まで聞こえる。カノンは、そろそろ落ちてしまうと自覚しはじめた。

その途端、後ろ髪を引っ張られたカノンは、仰け反った。間近にサガ(黒)の顔がある。

「ふっ、もう終わりか?この程度では話しならんぞ。姿形が似ているだけだから仕方あるまいか。」

カノンはサガ(黒)の馬鹿笑いを耳元で聞きながら意識を失った。

 

サガ(黒)が寝室から戻ると、デスマスク達はモノポリーを始めていた。

「デスマスク!またモノポリーか・・・・。」

鬱陶し気な口調でサガ(黒)が声をかけると、デスマスクはニヤリと笑った。

「ポーカーも飽きちまったからよ。」

「ところで、カノンはどうだったんだ、サガ?」

シュラが新しい物件を手に入れてガッツポーズをしながら聞いた。

「ああ。所詮はアレの代用品だ。もう飽きた。モノポリーはもういい!」

既に、モノポリーと同じレベルになったカノンであった。

「殺しちゃったの?」

アフロディーテが煙草に火をつけて、サガ(黒)の口に渡した。

「殺しはしない。愚弟はアレを苦しめるいい玩具だ。」

「ふーーん、なぶり殺しって奴か?可哀想になぁ。」

デスマスクはモノポリーを片付けると、新しいボードゲームを取り出した。

「なんだ、これは?」

「おう、これはな、人生ゲームだ。なかなか楽しいぜ!」

サガ(黒)は、アフロディーテに注がれた酒を飲み干して聞くと、デスマスクは数字の書かれたルーレットを回しながら答えた。
もちろん、使うお金は現金である。

 

カノンは意識を失い、中途半端に尻を出してベッドにうつ伏せになっていた。
その身体が急に持ち上げられても、カノンの意識は戻らなかった。
カノンを小脇に抱えたのは、聖衣を纏ったアイオロスである。アイオロスは、シャカに異次元から助けてもらうと、再び双児宮に向かった。今度は、静かに気配を消して・・・。寝室に来る前に、リビングを覗いてみたが4人はドンジャラに夢中で、アイオロスが進入したことに気がついていないようだった。

寝室を出たアイオロスは大して長くもない廊下を光速で移動した。

「まだ生きていたのか?」

アイオロスは突然声を掛けられ、振り向いて身構えた。その拍子にサジタリアスの聖衣の羽が反動で動き、意識を取り戻しかけたカノンの頭に激突し、再び気を失わせた。

「サガ。一体どうしたんだ・・・・。」

アイオロスの悲痛な声に、廊下に立ちはだかったサガ(黒)の馬鹿笑いが響く。

「どうした、かかってこないのか?」

「くっ・・・・。」

アイオロスは空いているほうの拳を握り締め、唇をかみ締めている。

「くっくっくっ・・・・、やはりな。私に本気で拳を向けることができないのだろう?そうすれば、アレの身体も傷つくことになるからな。」

「当たり前だ。サガ。どんなにお前が変わってしまっても、サガはサガだ。」

「甘いやつだ。吐き気がする。所詮、お前がどんなに求めても、アレはお前のものにはさせんぞ。もちろん、そこで情けなくケツを丸出してお前に抱えられている愚弟にもな!」

「くそっ!!」

すっかり自分に陶酔し馬鹿笑いをし始めたサガ(黒)の隙をついて、アイオロスは双児宮を逃げ出した。

 

カノンは自分の尻に違和感を感じ、意識を取り戻した。その途端、白羊宮にカノンの悲鳴が木霊する。

「おじさん、うるさいよ。大人しくしてくれないと薬がぬれないじゃないか!」

カノンは、貴鬼の小さい手にピシャリと尻を叩かれて我に返った。痛む腰には、ムウがヒーリングを施している最中だった。
目の前には、アルデバランがいた。アイオロスは聖衣の羽を鶏のようにバタつかせながら、心配そうにサガの名前を呼んで、落ち着きなくウロウロとしている。
確かに、自分は双児宮の兄の部屋にいたはずだが、そこは白羊宮のソファの上だった。
貴鬼がカノンの尻にクスリを塗っている間にも、激痛が尻を襲いカノンは身悶えた。

「やっと目を覚ましたか。大丈夫か?」

心配そうな表情でアイオロスがカノンを覗き込む。

「あんたが俺を?」

「ああ。サガにお前を助けてくれと頼まれたからな。」

「兄貴に!?」

カノンは思わず身を起こしたが、その途端尻に激痛が走り顔を歪める。

「そんなことより一体どうしてサガは・・・・。」

カノンは、いままでの事を、数週間前からサガが黒くなりはじめた事、アフロディーテの事を全て話した。

「貴方は、サガに元にもどって欲しいのですか?」

ムウがカノンの背中から声をかける。

「あたりまえだ!あんなの兄貴じゃねー。俺の兄貴は・・・・。ちくしょう、尻が痛てぇーーー!」

カノンはソファに拳を打ち付けると、尻に激痛が走り顔をうつ伏せて身体を震わせた。

「ムウ。どうしたらいいのだろうか・・・。私にはサガを撃つことはできない。」

「しかし、ああなってしまっては、殺して差し上げたほうがサガの為です。」

「ムウ、お前なんてことを言うんだ!!」

アイオロスは、ムウの言葉に悲痛な表情を浮かべて怒鳴った。

「うるせぇ、うるせぇぇ、うるせぇぇーーー。早く兄貴を元にもどせーーー。兄貴をぶん殴って、この尻の痛いみを教えてやるまで、兄貴を殺させねーぞ。」

カノンがソファに顔を埋めたまま怒鳴った。その拍子に再び尻に激痛が走る。

「おや、カノンはやっぱりサガを掘りたいんですか?」

ムウは意地悪く笑う。アイオロスがキっとカノンを睨んだが、カノンは顔を埋めたまま返事をしなかった。

「サガの強さは半端ではないですからね・・・・。まぁ、なんとかしてみましょう。」

ムウはニヤリと笑うと、カノンの尻をピシャリと叩いてテレポートで消えていった。

再びカノンの尻に激痛が走り、悲鳴をあげて仰け反ったカノンの顔は涙に濡れていた。

 


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