★俺の仕事(完結編その2)
「あーあ、また一気につっこまれちゃった。」
リビングでカードゲームに興じていたアフロディーテが呟いた。
「お前、こんなことしてしらねーぞ。」
デスマスクが新しいタバコに火をつけながら言う。
「知らないもん。私とサガの邪魔をするからいけないんだ。」
アフロディーテは手札を3枚交換しながら膨れた。
「アイオロス、大丈夫かなぁ・・・。」
シュラは手札を2枚交換し、グラスの酒を飲み干すといった。
「あ?大丈夫じゃねーの。そのうち、シャカにでも助けてもらうだろう。」
デスマスクは、交換した手札2枚を手にするとニヤリと笑って呟いた。デスマスクの手は、フルハウスであった。
容赦なく突き上げるサガ(黒)の攻めに、カノンは抵抗の叫び声をあげていた。既に自分で支えることのできない身体を、サガ(黒)に抱えられたままカノンはサガ(黒)に罵声を飛ばす。
「うおぉ、やめろ、この変態。死ね!!」
「黙れ!アレには遠く及ばない代用品が!!」
「ぐぎゃっ、痛てぇ、放せ!!」
「何を嫌がる?。13年前、私を呼び出したのはお前だろう。これがお前の望んだ兄の姿ではないのか?」
「うおぉぉぉーー。て、てめぇなんて兄貴じゃねー。」
「くくくっ、そうだな。私にとってもお前は、アレの代用品にすぎん。代用品らしくもっといい声を出せ!!」
サガ(黒)が根元まで一気に突き上げ激しく動くと、カノンは再び色気もへったくれもない雄たけびをあげる。あまりの激しさにだんだんと意識が遠のいていくカノンの耳に、サガの自分の名を呼ぶ懐かしい声が聞こえたような気がした。
やばい、幻聴まで聞こえる。カノンは、そろそろ落ちてしまうと自覚しはじめた。
その途端、後ろ髪を引っ張られたカノンは、仰け反った。間近にサガ(黒)の顔がある。
「ふっ、もう終わりか?この程度では話しならんぞ。姿形が似ているだけだから仕方あるまいか。」
カノンはサガ(黒)の馬鹿笑いを耳元で聞きながら意識を失った。
サガ(黒)が寝室から戻ると、デスマスク達はモノポリーを始めていた。
「デスマスク!またモノポリーか・・・・。」
鬱陶し気な口調でサガ(黒)が声をかけると、デスマスクはニヤリと笑った。
「ポーカーも飽きちまったからよ。」
「ところで、カノンはどうだったんだ、サガ?」
シュラが新しい物件を手に入れてガッツポーズをしながら聞いた。
「ああ。所詮はアレの代用品だ。もう飽きた。モノポリーはもういい!」
既に、モノポリーと同じレベルになったカノンであった。
「殺しちゃったの?」
アフロディーテが煙草に火をつけて、サガ(黒)の口に渡した。
「殺しはしない。愚弟はアレを苦しめるいい玩具だ。」
「ふーーん、なぶり殺しって奴か?可哀想になぁ。」
デスマスクはモノポリーを片付けると、新しいボードゲームを取り出した。
「なんだ、これは?」
「おう、これはな、人生ゲームだ。なかなか楽しいぜ!」
サガ(黒)は、アフロディーテに注がれた酒を飲み干して聞くと、デスマスクは数字の書かれたルーレットを回しながら答えた。
もちろん、使うお金は現金である。
カノンは意識を失い、中途半端に尻を出してベッドにうつ伏せになっていた。
その身体が急に持ち上げられても、カノンの意識は戻らなかった。
カノンを小脇に抱えたのは、聖衣を纏ったアイオロスである。アイオロスは、シャカに異次元から助けてもらうと、再び双児宮に向かった。今度は、静かに気配を消して・・・。寝室に来る前に、リビングを覗いてみたが4人はドンジャラに夢中で、アイオロスが進入したことに気がついていないようだった。寝室を出たアイオロスは大して長くもない廊下を光速で移動した。
「まだ生きていたのか?」
アイオロスは突然声を掛けられ、振り向いて身構えた。その拍子にサジタリアスの聖衣の羽が反動で動き、意識を取り戻しかけたカノンの頭に激突し、再び気を失わせた。
「サガ。一体どうしたんだ・・・・。」
アイオロスの悲痛な声に、廊下に立ちはだかったサガ(黒)の馬鹿笑いが響く。
「どうした、かかってこないのか?」
「くっ・・・・。」
アイオロスは空いているほうの拳を握り締め、唇をかみ締めている。
「くっくっくっ・・・・、やはりな。私に本気で拳を向けることができないのだろう?そうすれば、アレの身体も傷つくことになるからな。」
「当たり前だ。サガ。どんなにお前が変わってしまっても、サガはサガだ。」
「甘いやつだ。吐き気がする。所詮、お前がどんなに求めても、アレはお前のものにはさせんぞ。もちろん、そこで情けなくケツを丸出してお前に抱えられている愚弟にもな!」
「くそっ!!」
すっかり自分に陶酔し馬鹿笑いをし始めたサガ(黒)の隙をついて、アイオロスは双児宮を逃げ出した。
カノンは自分の尻に違和感を感じ、意識を取り戻した。その途端、白羊宮にカノンの悲鳴が木霊する。
「おじさん、うるさいよ。大人しくしてくれないと薬がぬれないじゃないか!」
カノンは、貴鬼の小さい手にピシャリと尻を叩かれて我に返った。痛む腰には、ムウがヒーリングを施している最中だった。
目の前には、アルデバランがいた。アイオロスは聖衣の羽を鶏のようにバタつかせながら、心配そうにサガの名前を呼んで、落ち着きなくウロウロとしている。
確かに、自分は双児宮の兄の部屋にいたはずだが、そこは白羊宮のソファの上だった。
貴鬼がカノンの尻にクスリを塗っている間にも、激痛が尻を襲いカノンは身悶えた。「やっと目を覚ましたか。大丈夫か?」
心配そうな表情でアイオロスがカノンを覗き込む。
「あんたが俺を?」
「ああ。サガにお前を助けてくれと頼まれたからな。」
「兄貴に!?」
カノンは思わず身を起こしたが、その途端尻に激痛が走り顔を歪める。
「そんなことより一体どうしてサガは・・・・。」
カノンは、いままでの事を、数週間前からサガが黒くなりはじめた事、アフロディーテの事を全て話した。
「貴方は、サガに元にもどって欲しいのですか?」
ムウがカノンの背中から声をかける。
「あたりまえだ!あんなの兄貴じゃねー。俺の兄貴は・・・・。ちくしょう、尻が痛てぇーーー!」
カノンはソファに拳を打ち付けると、尻に激痛が走り顔をうつ伏せて身体を震わせた。
「ムウ。どうしたらいいのだろうか・・・。私にはサガを撃つことはできない。」
「しかし、ああなってしまっては、殺して差し上げたほうがサガの為です。」
「ムウ、お前なんてことを言うんだ!!」
アイオロスは、ムウの言葉に悲痛な表情を浮かべて怒鳴った。
「うるせぇ、うるせぇぇ、うるせぇぇーーー。早く兄貴を元にもどせーーー。兄貴をぶん殴って、この尻の痛いみを教えてやるまで、兄貴を殺させねーぞ。」
カノンがソファに顔を埋めたまま怒鳴った。その拍子に再び尻に激痛が走る。
「おや、カノンはやっぱりサガを掘りたいんですか?」
ムウは意地悪く笑う。アイオロスがキっとカノンを睨んだが、カノンは顔を埋めたまま返事をしなかった。
「サガの強さは半端ではないですからね・・・・。まぁ、なんとかしてみましょう。」
ムウはニヤリと笑うと、カノンの尻をピシャリと叩いてテレポートで消えていった。
再びカノンの尻に激痛が走り、悲鳴をあげて仰け反ったカノンの顔は涙に濡れていた。