白羊家の食卓(実りの秋 その2)

 

ミロ「どうするよ?」

シュラ「ヤりはじめたら頂くか?」

ミロ「4Pか?」

シュラ「俺はどっちか一人でもいいぞ。」

ミロ「ムウは超能力で逃げる可能性があるからな。」

シュラ「だったら、ミロ、お前が愚弟を捕まえろ、俺は羊をおさえる。羊に逃げられたら林間学校だ。」

二人が茂みで妄想をめぐらせている間、川に入ったカノンはもちろん股間を洗っているわけもなく、小宇宙を燃やして魚をとっていた。素手で捕まえた魚を川原のムウに投げること数回、カノンは川から上がって、ムウの向に腰を下ろす。

魚とキノコの焼ける匂いが川原に広がり、何も食べずに山を上ってきたミロの腹の虫をくすぐった。

ぎゅるるるるるるるる・・・・。

ムウ「隠れていないで出てきなさい!」

今まで折角気配を殺していたのに、ミロの腹の音でバレてしまい、シュラは観念して茂みから姿をあらわした。シュラに頭を殴られたミロは頭を押さえてうずくまっている。

カノン「何やってんだ、ゴラ!」

シュラ「散歩していたら、いい匂いがしたのでな。」

ムウ「ふ、私の焼きキノコにつられてやってきたのですか。」

カノン「ゴラァ、羊!簡単に騙されてるんじゃねぇ!コイツがこんなところを散歩するわけねぇだろが!。」

ムウ「・・・・、このキノコは私のですからあげませんよ。」

ムウは洗ったキノコが詰まった篭を超能力で引き寄せると、自分の背中の後ろに隠す。

シュラ「俺が欲しいのはそのキノコじゃなくて、お前のキノコだ。」

ムウ「だから、これは私のです。しつこいですね。そんなに欲しければ焼いてあげますから、自分で採ってきなさい。」

シュラが問答無用ではなったエクスカリバーを紙一重でよけると、ムウはキノコ刈り用にもってきた鎌を念動力で取り出し、すばやく身構えた。

ムウ「なるほど、貴方の目当ては、私の股間についたキノコですか。」

シュラ「そういうことだ、おとなしく俺に食われろ。」

ムウ「ふっ、貴方のしめじもザックリ刈ってあげましょうか。」

シュラ「何を言っている、俺のはベニテングダケだぞ、ムウ。」

ムウ「あなたのエクスカリバーほどではないですが、私の鎌もよく斬れますよ、ふふふふ・・・・。」

シュラとムウが対峙してにらみ合っている隙に、カノンは一人で難を逃れようと、慌てて靴を履き、その場から逃げ出す。

ミロ「待て、ゴラ!お前はムウを見捨てるのか!!」

茂みの中から突然現れたミロに行く手を阻まれ、カノンは頬をひきつらせた。

カノン「知らねーよ!聖闘士なら自分の尻は自分で守れって、いつもお前ら言ってるだろうが!どうして、このカノンさまが麻呂なんぞを助けなきゃいけねーんだよ!。」

ミロ「そうか。だったら、お前も自分で守れよ!。うりゃぁ!」

ニヤニヤとやらしい笑いを浮かべながら、突進してくるミロにカノンはあっけなくタックルで押し倒された。うつ伏せに押さえつけられ、しかも跨られてしまい、カノンは川原の上で溺れたようにバタバタと暴れている。

ミロ「弱い!弱すぎるぞ、海将軍!ぶははははっはは!!」

カノン「貴様それでも聖闘士か!下半身のために聖闘士の力を使うんじゃねぇ!」

ミロ「今日こそ、お前の尻を頂くぞ!ここじゃぁ、サガを呼んでも来ないからな!」

パンツを引き摺り下ろされ、尻にひんやりとした空気が当たり、尻に史上最大の危機を感じたカノンは必死に小宇宙を高めた。

カノン「ここへ来て、まとえ我が鱗衣よぉぉぉうぉ?!」

しかし、鱗衣を呼ぼうと声を出したはいいが、ミロに股間を握られ、気合が抜ける。掘られてたまるかと、大臀筋に力を入れても、今度は竿をこすられ、カノンは脱力した。

カノン「ぅおーーーー!助けろーーー兄貴ぃぃーーーーー!!」

シュラとミロは都合のいいサガの登場に身構えたが、カノンの叫びは川の流れる音に掻き消された。

ミロ「サガなら今ごろ、風呂だ、風呂!!」

カノン「おーのーーれーーーーー、馬鹿兄貴ぃぃぃぃぃぃぃ!!!。ヤメロ変態!俺は俺はホモじゃねぇ!!」

ミロ「カノンちゃんのお尻、いっただっきまーーーーす!。」

ミロはベルトをはずすと、パンツごとズボンを下ろし、既に準備万端の股間を手にとる。

カノン「ぅお?!やめろ!それどころじゃねぇ!?」

ミロ「何だ、今更命乞い、じゃなくて尻乞いか?」

カノン「火事だ!火事!火事だ馬鹿!」

ミロ「火事????」

ミロは嗅覚を研ぎ澄まし、眉を寄せる。確かに魚を焼くにしては煙の匂いが強すぎるのだ。

ムウ「シュラ、ミロ。森でタバコを吸いましたね。あなた達、タバコくさいですよ。」

ミロ「何だと?!お前こそ、森でキノコを焼いてたんじゃねぇのか?!」

ムウ「私はここで焼いてるんです!」

シュラ「おい、それどころじゃねぇ。こりゃやべぇぞ!!」

空を見上げると、真っ黒な煙が山の下へと流れている。風上にいたため、気付くのが遅れたらしい。

シュラ「おい、火消すぞ!このままじゃ全部燃えちまう!」

シュラはカノンの上に跨ったミロの首根っこを掴むと、光速で森の中の火災現場へ急行する。予想以上に広範囲に火が広がっているのを目にしたシュラは、これ以上火事が広がらないように、エクスカリバーで周囲の木々をなぎ倒し始めた。

ムウ「おや・・・・焼き栗がいっぱいですね。」

カノン「焼きキノコもいっぱいだぜ。」

シュラ「暢気な事言ってないで手伝え!。」

ミロ「そうだ、カノン!波おこせ!波!波で消せ!!」

シュラ「おう!その手があったか!!」

カノン「はぁぁ?!馬鹿かお前ら?!海がないのにどうやって波をおこすんだよ!」

カノンは焼きキノコをもぎゅもぎゅ食べながら、鼻で笑った。

ミロ「何だと、この役立たず!!こうなったら、スカーレット・タイフーンで吹き消したやるぜ!」

ムウ「何ですか?それ?」

ミロ「今、命名した、これだ!とぉーーー!」

ミロは両手を開き片足を高々と天にむけて上げると、ミロのまわりから竜巻が発生した。アンドロメダ島でアルビオレの抹殺に失敗した技である。

しかし、火は吹き消すどころか、風にあおられ、どんどん山に広がっていた。

ムウ「・・・・、火の粉が飛んでますねぇ。」

カノン「これは山火事を広げてるだけだな。」

シュラ「うぉ!火の勢いが止まらん!!!お前ら食ってないで手伝え!!」

カノン「てめぇらのタバコの不始末を俺に押し付けるんじゃねぇーよ!」

ミロ「お前もタバコ吸うだろが!」

カノン「ばーか!麻呂がうるせぇから、今日はすってねーよーーーー!」

ムウ「あーーーーあ、これはシオンさまに怒られますねぇ。」

ジャミール服のストールをはずし、その中に山火事で焼けた栗をあつめながら、ムウはスカして笑う。

カノン「あー、俺もうだめ、目がいてぇ。ちゃんと火の始末しとけよ!!」

ムウ「私もたくさん拾ったので帰ります。」

シュラ「バカヤロウ!お前達それでも聖闘士か!!!」

カノン「俺、海闘士!!」

ムウ「仕方ないですねぇ。この貸は高いですよ。」

長い睫の瞼を閉じて、ムウが小宇宙を燃やし始めると、ミロとシュラは何かが起きることに期待し、息を飲む。ムウは瞼をぱちりと開けると空を指差した。

ムウ「雨が降りますよ。」

シュラ「雨?」

ムウ「雨雲を念動力でここへ移動させました。もうすぐ雨が降るでしょう。」

ミロ「あ、なるほどね。」

ムウ「私とキノコとカノンは先に帰ります。さようなら。」

ムウがそう言い終わる寸前、焼きキノコを咥えていたカノンとムウ、そして川原に置かれた大量のキノコ、焼き魚、キノコのホイル焼きは姿を消した。

 

程なく土砂降りの雨が山を覆い、山火事は広がることなく無事鎮火した。

シュラとミロは誰かに見つかる前にこっそり山を下りたが、そうは問屋がおろさなかった。

雑兵と供に鎮火の確認に来たカミュが、エクスカリバーで切り倒された木々を発見したのである。

翌日、スニオン岬の岩牢の中で、ミロとシュラの叫び声が響いたのであった。

シュラ、ミロ「だせーーーーー!!!」


End