★子羊といっしょ3(カニさんの初恋 その2)
翌日。
アイオロスはビービーと泣きじゃくるデスマスクに困り果てていた。
アイオロス「うるせーぞ。男なら泣くな!!」
デスマスク「だって、だって。ムウが男の子だったんだ・・・・。それで教皇が怒って・・・・。」
アイオロス「お前、知らなかったのか??」
聖域純正培養のアイオロスは、デスマスクが男を好きになったことに、何の疑問も抱いていなかったのである。
デスマスクは、アイオロスの言葉に泣きながら頷いた。シオンの寝室で起こったことは、あまりの恐怖ゆえデスマスクからその記憶を失わせ、覚えていたのは、プロポーズしたことと、ムウが男であることだけだった。
数日後。
初恋の失恋の傷が癒えないデスマスクに、2度目の恋が訪れた。
アイオロスが新しい聖闘士候補のアフロディーテを連れて闘技場に現れたのだ。
アイオロス「こいつが、ピスケス候補のアフロディーテだ。」
美しい水色の髪に大きな澄んだ瞳の少年は、高飛車な笑顔を浮かべていた。
デスマスク「か・・・・可愛い・・・。」
アフロディーテに一目ぼれをしたデスマスクは、早速行動にでた。1歳年下のアフロディーテは、シュラやデスマスクとは違う訓練を行っていたが、デスマスクはアフロディーテの気を引くために、必死に修行に励んだ。もちろん、声がでかいだけで中身は伴ってない。
デスマスク「アフロ!」
アフロディーテを発見したデスマスクは駆け寄ると、その両頬に挨拶のキスをする。
デスマスク「可愛いね、アフロ!」
アフロディーテ「ア・フ・ロ・ディ・ー・テ!」
デスマスク「え?」
アフロディーテ「気安くアフロなんて呼ばないで!」
デスマスク「あっ、ごめん。アフロディーテ。だってつい、君が可愛いから・・・。」
デスマスクは頬を染めて、もじもじしながらアフロディーテにいった。
アフロディーテ「アフロは男の子だよ。」
デスマスク「いやだなぁ、冗談きついよ。こんな可愛いのに男の子なわけないだろう。」
アフロディーテ「ううん。アフロは可愛い男の子だもん。」
デスマスク「そんな事言っても無駄だよ。僕は君を諦めないからね。」
屈託のない笑顔で微笑むデスマスクの胸倉を、アフロディーテが突然つかんだ。
アフロディーテ「しつこいんだよ、ゴラァ!。男だって言ってんだろう、このボケ!」
今まで可愛い顔ですましていたアフロディーテの表情が険しくなり、すごんだ声でデスマスクに言った。デスマスクがその姿に呆然としていると、アフロディーテは乱暴に手を放してスタスタと消えていった。
アイオロスはビービーと泣きじゃくるデスマスクに困り果てていた。
アイオロス「うるせーぞ。男なら泣くな!!」
デスマスク「だって、だって。アフロディーテが男の子だったんだ・・・・。」
アイオロス「またか・・・・・。」
サガ「どうしたんだ?」
数日振りに顔を出したサガがアイオロスに声をかけた。
アイオロス「サガ、久しぶりだな。」
サガはアイオロスに微笑んで頷くと、隣で泣きじゃくるデスマスクを心配そうに見つめる。
アイオロス「ほら。こいつ、キャンサー候補のガキ。つい最近、五老峰から帰ってきたんだけどさ・・・・。」
あまり聖域には顔をださないサガは、数回しか面識のないデスマスクの失恋の話しを聞いて、苦笑した。
サガ「ほら、デスマスク。男がそんなに泣いていてはみっともないだろう?」
サガはデスマスクの目線の高さまでかがむと、柔らかいネイビーブルーの髪をそっと撫でる。デスマスクは大きな瞳から涙をボロボロと零しながら顔あげた。
サガは、デスマスクの頬を伝う涙を優しく手で拭いながら微笑むと、デスマスクはサガに抱き着いてワンワンと泣き叫んだのであった。
数日後。
サガに慰めてもらい、もちろんサガに恋をしたデスマスクは、サガが闘技場に姿を見せると走って抱きついた。
デスマスク「サァガァ!!」
サガ「デスマスク。今日は元気だな。」
デスマスク「サガ、サガ、サガァ!!大好き♪」
サガ「私もお前のことが好きだよ。」
サガがにっこりと微笑むと、デスマスクは頬を赤らめる。
デスマスク「サガ、結婚してください!」
デスマスクはお得意の指パッチンで薔薇の花を取り出すと、サガの目の前に差し出した。サガの目が点になる。
サガ「ちょ・・・ちょっと、待って。お前は何を考えているんだ?」
デスマスク「僕は貴方が年上だなんて気にしません。だから結婚してください!」
サガ「私は男だよ、デスマスク。」
デスマスク「そんな嘘をついて僕を困らせないでください、サガ。僕は貴方よりも絶対に大きくなってみせますから、結婚してください!」
デスマスクはサガの手を取ると、その甲にキスをした。
アイオロス「おい、デスマスク。サガは男だぞ。」
デスマスクの行動を見たアイオロスが後ろから声をかけた。
デスマスク「そんなの嘘だ。アイオロスはサガが好きだから、僕に取られるのが嫌なんだろう!すぐに暴力をふるうアイオロスなんかに、サガを幸せになんてできないぞ!」
アイオロス「なんだと、こいつ!」
アイオロスが小生意気なデスマスクの頭を引っぱたく。
サガ「やめないか、アイオロス。デスマスク、よく聞きなさい。私は正真証明の男だ。」
サガに庇ってもらったデスマスクは、サガが真剣に言った言葉に、目に涙をため始める。
デスマスク「サガは、僕のことが嫌いなのか?」
サガ「そうじゃなくて・・・・・。」
デスマスク「いいか、デスマスク。よく見ろ!」
サガがどうしていいかわからずに困っていると、サガの後ろに屈みこんだアイオロスは、一気にサガのズボンとパンツを引き摺り下ろした。
アイオロス「いいか、デスマスク。これは俺のだ。手を出すな。分かったな!」
サガが突然の事に凍りついていると、アイオロスがサガの後ろ、腰の位置から顔を出し、サガの生尻をペチペチと叩きながら言った。
デスマスク「う、うわーーーーーーーーーーーーーん。」
サガの丸出しになった股間を見て、男と分かったデスマスクは泣きながら闘技場を出てゆく。
アイオロス「ったく、たかが6歳のガキが生意気いってんじゃねーよ。なぁ、サガァ!・・・・・・・うおっ!」
みっともなく股間を風にさらし顔を真っ赤に染めているサガの鉄拳が、アイオロスの顔面に直撃し、アイオロスは目を回してぶっ倒れた。
三度目の失恋に「もう恋なんてしない」、そう誓ったデスマスクは、次の日、また可愛い男の子を女の子と間違え、追いまわしていたのだった。