ミロたんといっしょ22 (英雄○○を好む!)

 

アイオロスは隣に憮然と立つカノンに顎をしゃくる。

アイオロス「カノン、ちょっとここに座って俺と対面してくれ」

カノン「はぁ!?」

アイオロス「いいから、いいから。とっととこのくだらない話を終わらせるためにも、そこに座ってくれ」

カノンは渋々とアルデバランが座っていた椅子に座ると、アイオロスに身体を向ける。アイオロスはそのカノンの瞳をじーーーーーっと見つめた。

カノン「あん!? てめぇ、何見てんだよ、喧嘩売ってんのか、こら!」

アイオロス「やっぱりカノンにはなんの感情も起きんな。確かに顔はサガとちょっと似ているが、しかし表情や顔の動きがまるで違う。もちろん喋り方もこんなに違えば、欲情なんて出来るわけがない」

アイオロスが肩を竦めて見せると、シオンとムウは顔を見合わせ無い眉を片方だけ吊り上げた。

ムウ「カノン、ちょっとアイオロスと抱擁してくれませんか?」

カノン「はぁ? 冗談じゃねぇぞ、なんで俺がそんなことしなくちゃなんねぇんだ!」

ムウ「実験です。本当にアイオロスがカノンに欲情しないかどうかの実験です」

シオン「それならば膝の上に座ってハグのほうが強烈じゃのう」

カノン「いやいやいやいや、無理だから!」

シオン「襲われるのが怖いのか?」

アイオロス「襲いませんって!」

カノン「怖いわけねぇだろう!」

シオン「では乗るが良い。卑猥に腰を動かしてみても構わんぞ」

アイオロス「だから、直接股間を刺激されたら勃起しちゃいますって……もう。カノン、私の膝の上に座ってもいいぞ。安心しろ私は欲情しない」

カノン「ざけなんな、バカヤロウ!」

シオン「アイオロスがお前を襲いそうになったら、余が全力で助けてやるから安心せい」

アイオロス「全力はやめてください、私が死んでしまいます。ていうか、襲いませんし」

カノン「そんなこと信用できるか!」

ムウ「おや、カノンはアイオロスに襲われるほどへっぽこなんでしたっけ?」

カノン「ふっ、この俺様を誰だと思ってるんだ。アイオロスなんて屁でもない!」

ムウ「ならアイオロスの膝へどうぞ」

カノン「うっ!?」

アイオロス「安心しろ、ちょっとギュっと抱きしめるだけだから。お前になんて欲情しないって!」

カノン「はぁ? 冗談じゃない、きっしょい!」

アイオロス「分った、もし私が欲情してお前を襲うようなことがあったら射手座の聖闘士を引退し、次期教皇も辞退しよう」

シオン「そのような勝手は許さぬぞ」

ミロ「ちょっと、ちょっと。アイオロス、いくらなんでも賭けるものがでかすぎだよ」

アイオロス「カノンになんて欲情しないから平気だ」

アルデバラン「さぁ、カノン。アイオロスもああ言ってますし、是非アイオロスの膝の上へ」

ムウ「座ってください」

カノン「ちっ、マジで俺に欲情したら聖域から出て行けよ。それも条件に入れろ!」

アイオロス「うむ、分った」

カノンは渋々立ち上がるとアイオロスに背中を向け、その膝の上に腰を下ろした。すかさずアイオロスが後ろからカノンの腰に手を回しその身体をギュっと抱きしめる。

カノン「うぎゃっ!! よせ、やめろ!!」

ミロ「やっぱ、欲情してんじゃん!」

アイオロス「いや、してないぞ」

ミロ「カノン、どうよ? ケツにチン○あたってね?」

カノン「あたってない! 絶対にない! キショイことを言うな」

ミロ「えぇ、なんで!? 俺、カノンにこんなことされたら、俺の息子はカノンのズボンとパンツ突き破っちゃうよ!」

アイオロス「だから欲情なんてしないって言ってるだろう」

アイオロスはカノンの髪の毛に顔を押し付けた。

カノン「なっ!?」

アイオロス「サガのほうが、髪の毛がふわふわな気がするなぁ」

次にさわさわとカノンの身体を触った。

カノン「ぎゃ! やめろ、キッショイ!」

アイオロス「ほら、触ったときの反応だって違う。サガは顔を赤らめモジモジさせながら困ったように怒るが、こいつは思いっきり身体を強張らせて逃げようとする」

カノン「あたりまえだろうが! 俺には野郎に触られて喜ぶ性癖はない!」

アイオロスはさらにカノンの背中に鼻を寄せた。

アイオロス「うん、香も全然違うしな。サガはもっといい香がする。なんっていうんだろう、石鹸と香油と――あっ、フェロモンだ……、あいつはすごいエロいフェロモンがムンムンでてて、たまらなくいい香なんだよなぁ」

ミロ「カノンは潮の香するもんなっ!」

ムウ「それで、どうですか、カノン?」

カノン「なにが!!」

ムウ「尻にアイオロスの何が当たってたりとかありませんか?」

カノン「ない!! まったくない!」

ミロ「もしかしてアイオロスってEDなの!?」

アイオロス「そんなわけはない。きちんとサガには勃起するし、誰彼構わず欲情するお前が可笑しいんだ」

カノン「そうだ、そうだ。鶏のことは嫌いだが、今日はお前の意見に賛同してやる」

アイオロス「カノンだって、恋愛感情抱いてない相手に欲情されても迷惑だしな?」

カノン「そうとも! というか、男って時点でありえねぇ」

アイオロス「しかもサガとカノンの見た目が似てるからって、カノンにも欲情するなんて失礼きわまり無いぞ、ミロ」

ミロ「それは間接的に教皇にも言ってるってこと?」

シオン「余は男の尻なら選り好みはせぬ」

ムウ「要するにミロは見てくれがよければなんでもよいということですよね?」

ミロ「うん。喘いでる顔がエロっぽいのがいいんだよね。だからさ、カノンでサガでも同じじゃん?」

カノン「違うって言ってんだろうが!!」

アイオロス「そうだぞ、ミロ。カノンはカノン、サガはサガ。それぞれ一人の人間なんだから、そこは尊重してやれ!」

ミロ「それは分ってるけどさぁ、でも見た目が……」

アイオロス「いい加減にしろ、ミロ。サガはサガ、カノンはカノンで欲情するならともかく、どちらも変わらないなんて、友達が言う台詞ではない!!」

カノン「そうだ、そうだ。鶏もっと言え! ていうか俺に欲情はするな!」

今までアイオロスのことを馬鹿にし嫌悪していたカノンは、唯一彼だけが自分とサガのことを完璧な別個人として認識してくれていることにほんのちょびっーーーーとだけアイオロスのことを見直した。

アイオロス「そうとも。大体サガとカノンじゃ性格も違うし、生きてきた歴史が違う。その歴史が表情や言葉や仕草、感情にも現れているんだ。そうやって接してれば、外見だって違う風に見えるはずだ」

カノン「おぉ、さすが暫定次期教皇だ、いいこと言うな!」

ミロ「うおっ、カノンがアイオロスを褒めたっ!?」

アイオロス「当たり前だろう、お前は将来の大事な義弟だからな!! 自分の伴侶以外の家族に欲情なんてするわけないだろう」

カノン「は!?」

カノンは露骨に顔を歪めると、その頭をアイオロスが優しく撫で、家族の愛情をこめてカノンの身体に回した手に力をこめてギュっと抱きしめる。

アイオロス「これからもヨロシク頼むよ、可愛い我が義弟よ!! 兄ちゃんたちの幸せを願ってくれな。サガのことは私に任せて、お前も幸せを掴めよ。兄ちゃん達はお前の幸せを全力で応援してやるからなっ!!」

ミロ達は見る見るうちにカノンの顔が凶悪になっていくのを見た。

そしてカノンは思いっきり身体を前のめりにさせると反動をつけて、体ごと後ろにそらしてアイオロスに頭突きをかました。

アイオロスの手が緩んだ隙に、膝の上から飛び降りたカノンは思いっきりアイオロスの頬を殴る。

アイオロス「うおっ!!」

ムウ「!?」

ミロ「!?」

アルデバラン「!?」

カノン「てめぇ、いい気になんなよ! 俺が本気になればお前なんて簡単に伸してやるんだからなっ! 二度と俺に近づくな、この勘違い野郎っ!!!」

額に何本もの青筋を浮かべながらカノンは怒鳴ると、白羊宮から出て行った。

アイオロス「!?!?」

ミロ「もしかして、やっぱり勃起したんだ!?」

アイオロス「ない、絶対無い!!」

ムウ「どうだか……」

アルデバラン「実際カノンはあんなに怒ってましたし」

アイオロス「だからそれはないって!」

ミロ「まぁまぁ、無理すんなよ。アイオロスだって普通のホモってことでいいじゃん。サガに欲情するんだから、カノンにだって欲情するのは当然だって」

アイオロス「欲情してないっていってんだろうが!! ほれ、見てみろ! 私の股間はうんでもすんでもない!」

ムウ「カノンに殴られて萎びてしまいましたか?」

アイオロス「だから最初から勃起なんて……」

ミロ「はいはい、分った分った。サガには内緒にしといてやるから、強がるなよ!」

アイオロス「だから誤解だといってるだろう。きょ、教皇なんとか言ってやってくださいよぉ!」

シオン「うむ、お前もまだまだ詰めが甘いのう。もう少しで愚弟を懐柔できたのにのぉ」

アイオロス「どうゆうことですか!?」

シオン「さてのう」

カノンが突然怒り出した理由が分らないアイオロスはただただ首を捻ることしか出来なかった。

ムウ「しかし、アイオロスがカノンに欲情したということは、アイオロスは次期教皇辞退、射手座の聖衣返上のうえ聖域から出て行かなくてはいけませんね」

アルデバラン「そうだな、ムウ……、きっとサガは悲しむだろうな」

ムウ「アイオリアも悲しみますね……、それにシュラも。ミロがくだらないことばかり言うから、アイオロスも可哀相に」

ミロ「え!? 俺のせい?」

ムウ「そうですよ、決まってるではありませんか。貴方が無闇やたらと欲情するかこうなったのです。アイオロス可哀相に」

ミロ「アイオロス、聖域からいなくなっちゃうの!?」

アイオロス「ちょ、ちょっとまて、だから私は欲情なてしてないといっているだろう。あいつか勝手に怒って出て行っただけで……教皇、こいつらになんとか言ってくださいよ!!」

シオン「さてのう、勝手に約束したお前が悪い。自己責任じゃ」

アイオロス「そ、そんなっ!?」

ミロ「う、うわーーーん、アイオロスごめんよ。俺のせいで、聖域から追い出されるなんて!!」

ミロが涙を浮かべながらアイオロスの足に縋りついた。

アイオロス「こら、バカミロ。勝手なことを言うな。欲情なんてしてないから、そんな必要ないっていってんだろうが!!」

ミロ「ごめんよ、ごめんよ。俺、なんとかカノンに約束をなしにしてもらうように言ってくる!! サガにもカノンからお願いしてもらうよ!!」

ミロは涙をちょちょぎらせながら白羊宮から飛び出した。

ムウ「追いかけなくていいのですか?」

アイオロス「は?勝手にやらせておけ。バカらしい!」

ムウ「しかしミロはきっとサガに、事の経緯を話ますよ」

アイオロス「ああ、だからどうした。私は無実だ」

ムウ「ミロは、貴方がカノンに欲情したから〜と言いますよ。サガにカノンが許してくれるようにお願いするらしいですからね」

アルデバラン「……サガは、アイオロスがカノンに欲情しても怒らないんですか?」

アイオロス「あ゛っ!?」

シオン「バカじゃのう」

アイオロスは顔を真っ青にさせると、慌ててミロの後を追ったが、当然とき既に遅く、カノンに欲情したと思われたアイオロスは誤解を解くのに奔走したのであった。


end