★大人の時間 その2
双児宮
アイオロス「サガァァァ!あのさ、アイオリアの誕生日がいつだか知っているか?」
サガ「アイオリアの?・・・・・・・・・・・・・8月じゃなかったか?」
アイオロス「そうそう、8月。で、8月のいつ?」
サガ「うーーーーん、覚えてないな。お前は弟の誕生日も覚えてないのか?」
アイオロス「ああ・・・・・ついこないだまで覚えていたんだが、忘れた。13年間死んでいた後遺症が、こういうところででたみたいだ。」
サガ「そうか・・・・・、すまなかったな。」
アイオロス「あっ、あっ!。お前をせめてるんじゃないんだぞ、気を悪くするなよぉ。」
サガ「いや、お前が馬鹿なのも、物覚えが悪いのも全部私のせいだ・・・・。」
カノン「(天然だろう。)」
アイオロス「あ゛ーーー、もう。私は気にしてないって言ってるだろう。」
カノン「あのさ、んなもん本人に聞けばいいじゃねぇか。」
アイオロス「あ、カノンいたのか。」
カノン「むかっ!いちいち兄貴を鬱にさせにくるんじゃねぇよ!。病院連れて行かなきゃなんねぇのは、俺なんだぞ。さっさっとアイオリアに誕生日を聞きにいけ!」
アイオロス「それがだな、アイオリアも自分の誕生日を覚えてないんだ。」
カノン「はぁぁぁ?俺ですら自分の誕生日、覚えてんのに?。やっぱ、お前達兄弟は脳味噌まで筋肉なんだな、うわっーーーはっはっはっはっ!!」
アイオロス「むかっ!あのな、アイオリアが自分の誕生日を覚えてないのは、13年間誰にも祝ってもらえなかったからだ。」
カノン「はぁ?」
アイオロス「あいつは、私のせいで逆賊の弟として生活をしていたから、誕生日や祝い事などができなかったんだ。」
サガ「う゛っ・・・・。」
カノン「そぉーーーーーれがどうした?。俺なんてなぁ、13年間どころか、生まれてこのかた、大勢に誕生日なんて祝ってもらった記憶なんて、まったくねぇぞ。」
アイオロス「それは可哀想だと思うが、お前は知られてはいけない存在だったのだから、仕方あるまい。しかしだなぁ、アイオリアは何も悪くないのだ。それなのに13年間、雑兵以下の生活をさせられていたんだぞ。」
サガ「う゛う゛っ・・・・。」
カノン「はぁぁぁぁぁぁっ!?。じゃぁ、なにか?、俺は生まれたこと自体が悪いっていうのかよ。ふざけんなよっ!。俺だって何も悪くねぇのに、雑兵以下どころか、この馬鹿兄貴と二人だけで暮していたんだぞっ!」
アイオロス「サガと二人きりなんて、幸せではないか!。アイオリアはな、13年間も自分を殺して生活していたんだぞ!」
サガ「う゛う゛う゛っ・・・・・・・・。」
カノン「はぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!?。
何、甘っちょろいこと言ってるんだ。俺なんてな、聖域に来てから、存在すら認めてもらえなかったんだぞ。それくらいで、ひねくれるなんざ甘いんだよっ!!」アイオロス「馬鹿にするな。アイオリアは、たかがそれくらいでひねくれるほど、甘ちゃんじゃない。デキの悪い甘ったれなお前と一緒にするな!!」
サガ「すみませんでした・・・・・・」
カノン「はおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???
俺のデキが悪いってーなら、アイオリアだって悪いだろうが!。それに、兄貴の正体を見抜けなかったうえに、シュラにやられるような、アイオロス!、お前も相当へっぽこだぜ!」アイオロス「なんだと!?。私達はお前ほどデキは悪くは無い。だいたい、サガに悪を植え付けたのは、お前だそうじゃないか!根っからの悪人のお前が聖域で生活できた事自体、サガに感謝しろ!!」
サガ「ごめんなさい・・・・・・・・。」
カノン「っざけんなよっ!!!なんで兄貴に、感謝なんかしなくちゃなんねぇんだよ!」
サガ「死なせてください・・・・・・・。」
アイオロス「んっ!?」
カノン「げっ!!」
サガが滝涙、滝鼻水をたらしながら、嗚咽をもらし泣き崩れているのを見て、二人はぎょっとなった。
アイオロス「しまった・・・・・・。」
サガ「ア゛イ゛オ゛ロ゛ズぅぅぅ〜〜〜。すべてはこの私の責任なのだ、許してくれ。アイオリアには死んで詫びを・・・・。」
カノン「あー、死ね、死ね!」
アイオロス「うわぁぁぁぁぁぁぁ、待て待て!待ってくれ、サガぁ。私のほうこそ、すまなかった。お前をせめるつもりはなかったんだ、つい売り言葉に買い言葉で・・・・。」
サガ「いや、もう生きている自体が罪だ。死なせてくれ。」
カノン「さっさと死ね!」
アイオロス「だーーーーーーーっ!!ちょっと待ってくれ。だったら、アイオリアの誕生日が判明してからにしよう。なっ、サガ。」
右手を左胸にあてがい、お得意の自害をはかって逃げようとするサガの腕を、アイオロスは掴みあげた。
サガ「・・・・・。」
アイオロス「なっ、私一人じゃ調べられないんだ。だからお前の助けが必要なんだよ、サガ。」
サガ「・・・・・・・・。し、しかし。」
アイオロス「アイオリアの誕生日を調べて、誕生日をやってやりたいんだよ。」
サガ「アイオリアの誕生日?」
アイオロス「そうだ。アイオリアの誕生日だ。皆でパーッと祝ってやろうじゃないか。お前も、アイオリアにすまないと思うなら、手伝ってくれ。なっ、サガ。(そんで、このことは忘れろ!)」
サガはしばらく鼻水をたらしたまま考えていたが、すっくと立ち上がり鼻をすすった。
サガ「分かった。いくぞ、アイオロスッ!!」
アイオロス「なっ、ちょっ、ちょっと何処に行くんだよ!?」
サガ「教皇庁だ!」
突然双児宮を飛び出したサガに、アイオロスは慌ててついていった。
磨羯宮
シュラ「あっ、丁度いいところに上がってきましたね。」
サガ「お前こそ丁度いい。これから調べなければならないことがある、付き合ってくれ。」
シュラ「調べ物って、住民課ですか?」
サガ「ん?そうだが、どうしてしっているのだ。」
シュラ「アイオリアの誕生日を調べにいくんっすね?」
サガ「ああ。」
シュラ「あいにく、住民課にはアイオリアの出生記録はないっすよ。」
サガ「なに!?。そんなはずはない。」
シュラ「それが大有りなんですよ。さっきアイオロスからアイオリアの誕生日を聞かれて、俺も気になったんで、調べてみたんですよ。
俺たち外部者と違って、アイオロス達は生粋の聖域ッ子ですからね、出生記録とかがあると思ったんですけど・・・。」アイオロス「なかったのか?」
シュラ「ええ。アイオリアの記録どころか、アイオロスの記録までないっすよ。」
シュラは肩をすくめ、首を横にふり、お手上げという仕草をしてみせる。
アイオロス「どうしてだ?」
シュラ「サガですよ、サガ!」
サガ「なに!?」
シュラ「流石、悪の化身・黒サガですね。アイオロス・アイオリアの記録を全部抹消したみたいです。存在すら認めないってやつですか。」
サガ「う゛っ・・・・・・・。」
アイオロス「やばっ!」
シュラ「アイオリアを殺さなかったのが不思・・・・。」
アイオロス「まて、まて。もう分かったから、それ以上言うな。」
サガ「やっぱり死なせてくれ・・・。」
アイオロス「死ぬのは、まだ早いぞサガ。」
シュラ「また、死んで逃げようって魂胆ですか?、サガ。」
アイオロスは、ブツブツと独り言を言い始めたサガの肩に手を回し、自殺をはからないように頭を抑え込む。
シュラ「で、どうするんですか?二人は、アイオリアの誕生日をやってやりたいんでしょう?」
アイオロス「ああ、そうなんだが。」
シュラ「本人も知らないようだし、もうお手上げじゃないですか?」
サガ「あっ!!」
アイオロス「どうした、サガ?、新しい自殺の方法でも思いついたのか?」
サガ「違うっ!。シュラ、聖衣を着ろ!」
シュラ「へっ?」
サガ「いいから、聖衣を着て来い、命令だ。」
シュラ「は、はい。」
サガも聖衣を呼び出し、纏う。いきなり全裸になったのでアイオロスは思わず、股間を元気にさせたが、聖衣を着たサガは光速で上へと走って行った。
慌ててアイオロスとシュラも後を追う。
宝瓶宮
サガ「カミューーーーーーーーーーーーッ!」
カミュ「な、なんですか?」
サガ「お前の力を借りたい。今すぐ、聖衣を着ろ!」
カミュ「分かりました。」
久しぶりに超強気なサガを見て、カミュがドキドキしながら聖衣を纏うと、遅れてシュラとアイオロスが合流する。
サガ「よしっ、揃ったな。いざとなったら、アイオロス!、お前の力も借りるからな。」
アイオロス「えっ、ああ。分かった。」
サガ「行くぞっ!!」
すっかり元気を取り戻したどころか、異様に勢いづいたサガはカノンそっくりだ。また謀反を起こしかねないサガを、いざとなったらアイオロスと3人で止めねばと、シュラとカミュはお互い目くばせをした。