大人の時間 その2

 

双児宮

アイオロス「サガァァァ!あのさ、アイオリアの誕生日がいつだか知っているか?」

サガ「アイオリアの?・・・・・・・・・・・・・8月じゃなかったか?」

アイオロス「そうそう、8月。で、8月のいつ?」

サガ「うーーーーん、覚えてないな。お前は弟の誕生日も覚えてないのか?」

アイオロス「ああ・・・・・ついこないだまで覚えていたんだが、忘れた。13年間死んでいた後遺症が、こういうところででたみたいだ。」

サガ「そうか・・・・・、すまなかったな。」

アイオロス「あっ、あっ!。お前をせめてるんじゃないんだぞ、気を悪くするなよぉ。」

サガ「いや、お前が馬鹿なのも、物覚えが悪いのも全部私のせいだ・・・・。」

カノン「(天然だろう。)」

アイオロス「あ゛ーーー、もう。私は気にしてないって言ってるだろう。」

カノン「あのさ、んなもん本人に聞けばいいじゃねぇか。」

アイオロス「あ、カノンいたのか。」

カノン「むかっ!いちいち兄貴を鬱にさせにくるんじゃねぇよ!。病院連れて行かなきゃなんねぇのは、俺なんだぞ。さっさっとアイオリアに誕生日を聞きにいけ!」

アイオロス「それがだな、アイオリアも自分の誕生日を覚えてないんだ。」

カノン「はぁぁぁ?俺ですら自分の誕生日、覚えてんのに?。やっぱ、お前達兄弟は脳味噌まで筋肉なんだな、うわっーーーはっはっはっはっ!!」

アイオロス「むかっ!あのな、アイオリアが自分の誕生日を覚えてないのは、13年間誰にも祝ってもらえなかったからだ。」

カノン「はぁ?」

アイオロス「あいつは、私のせいで逆賊の弟として生活をしていたから、誕生日や祝い事などができなかったんだ。」

サガ「う゛っ・・・・。」

カノン「そぉーーーーーれがどうした?。俺なんてなぁ、13年間どころか、生まれてこのかた、大勢に誕生日なんて祝ってもらった記憶なんて、まったくねぇぞ。」

アイオロス「それは可哀想だと思うが、お前は知られてはいけない存在だったのだから、仕方あるまい。しかしだなぁ、アイオリアは何も悪くないのだ。それなのに13年間、雑兵以下の生活をさせられていたんだぞ。」

サガ「う゛う゛っ・・・・。」

カノン「はぁぁぁぁぁぁっ!?。じゃぁ、なにか?、俺は生まれたこと自体が悪いっていうのかよ。ふざけんなよっ!。俺だって何も悪くねぇのに、雑兵以下どころか、この馬鹿兄貴と二人だけで暮していたんだぞっ!」

アイオロス「サガと二人きりなんて、幸せではないか!。アイオリアはな、13年間も自分を殺して生活していたんだぞ!」

サガ「う゛う゛う゛っ・・・・・・・・。」

カノン「はぁぁぁっぁぁぁぁぁぁ!?。
何、甘っちょろいこと言ってるんだ。俺なんてな、聖域に来てから、存在すら認めてもらえなかったんだぞ。それくらいで、ひねくれるなんざ甘いんだよっ!!」

アイオロス「馬鹿にするな。アイオリアは、たかがそれくらいでひねくれるほど、甘ちゃんじゃない。デキの悪い甘ったれなお前と一緒にするな!!」

サガ「すみませんでした・・・・・・」

カノン「はおあぁぁぁぁぁぁぁぁぁ???
俺のデキが悪いってーなら、アイオリアだって悪いだろうが!。それに、兄貴の正体を見抜けなかったうえに、シュラにやられるような、アイオロス!、お前も相当へっぽこだぜ!」

アイオロス「なんだと!?。私達はお前ほどデキは悪くは無い。だいたい、サガに悪を植え付けたのは、お前だそうじゃないか!根っからの悪人のお前が聖域で生活できた事自体、サガに感謝しろ!!」

サガ「ごめんなさい・・・・・・・・。」

カノン「っざけんなよっ!!!なんで兄貴に、感謝なんかしなくちゃなんねぇんだよ!」

サガ「死なせてください・・・・・・・。」

アイオロス「んっ!?」

カノン「げっ!!」

サガが滝涙、滝鼻水をたらしながら、嗚咽をもらし泣き崩れているのを見て、二人はぎょっとなった。

アイオロス「しまった・・・・・・。」

サガ「ア゛イ゛オ゛ロ゛ズぅぅぅ〜〜〜。すべてはこの私の責任なのだ、許してくれ。アイオリアには死んで詫びを・・・・。」

カノン「あー、死ね、死ね!」

アイオロス「うわぁぁぁぁぁぁぁ、待て待て!待ってくれ、サガぁ。私のほうこそ、すまなかった。お前をせめるつもりはなかったんだ、つい売り言葉に買い言葉で・・・・。」

サガ「いや、もう生きている自体が罪だ。死なせてくれ。」

カノン「さっさと死ね!」

アイオロス「だーーーーーーーっ!!ちょっと待ってくれ。だったら、アイオリアの誕生日が判明してからにしよう。なっ、サガ。」

右手を左胸にあてがい、お得意の自害をはかって逃げようとするサガの腕を、アイオロスは掴みあげた。

サガ「・・・・・。」

アイオロス「なっ、私一人じゃ調べられないんだ。だからお前の助けが必要なんだよ、サガ。」

サガ「・・・・・・・・。し、しかし。」

アイオロス「アイオリアの誕生日を調べて、誕生日をやってやりたいんだよ。」

サガ「アイオリアの誕生日?」

アイオロス「そうだ。アイオリアの誕生日だ。皆でパーッと祝ってやろうじゃないか。お前も、アイオリアにすまないと思うなら、手伝ってくれ。なっ、サガ。(そんで、このことは忘れろ!)」

サガはしばらく鼻水をたらしたまま考えていたが、すっくと立ち上がり鼻をすすった。

サガ「分かった。いくぞ、アイオロスッ!!」

アイオロス「なっ、ちょっ、ちょっと何処に行くんだよ!?」

サガ「教皇庁だ!」

突然双児宮を飛び出したサガに、アイオロスは慌ててついていった。

 

磨羯宮

シュラ「あっ、丁度いいところに上がってきましたね。」

サガ「お前こそ丁度いい。これから調べなければならないことがある、付き合ってくれ。」

シュラ「調べ物って、住民課ですか?」

サガ「ん?そうだが、どうしてしっているのだ。」

シュラ「アイオリアの誕生日を調べにいくんっすね?」

サガ「ああ。」

シュラ「あいにく、住民課にはアイオリアの出生記録はないっすよ。」

サガ「なに!?。そんなはずはない。」

シュラ「それが大有りなんですよ。さっきアイオロスからアイオリアの誕生日を聞かれて、俺も気になったんで、調べてみたんですよ。
俺たち外部者と違って、アイオロス達は生粋の聖域ッ子ですからね、出生記録とかがあると思ったんですけど・・・。」

アイオロス「なかったのか?」

シュラ「ええ。アイオリアの記録どころか、アイオロスの記録までないっすよ。」

シュラは肩をすくめ、首を横にふり、お手上げという仕草をしてみせる。

アイオロス「どうしてだ?」

シュラ「サガですよ、サガ!」

サガ「なに!?」

シュラ「流石、悪の化身・黒サガですね。アイオロス・アイオリアの記録を全部抹消したみたいです。存在すら認めないってやつですか。」

サガ「う゛っ・・・・・・・。」

アイオロス「やばっ!」

シュラ「アイオリアを殺さなかったのが不思・・・・。」

アイオロス「まて、まて。もう分かったから、それ以上言うな。」

サガ「やっぱり死なせてくれ・・・。」

アイオロス「死ぬのは、まだ早いぞサガ。」

シュラ「また、死んで逃げようって魂胆ですか?、サガ。」

アイオロスは、ブツブツと独り言を言い始めたサガの肩に手を回し、自殺をはからないように頭を抑え込む。

シュラ「で、どうするんですか?二人は、アイオリアの誕生日をやってやりたいんでしょう?」

アイオロス「ああ、そうなんだが。」

シュラ「本人も知らないようだし、もうお手上げじゃないですか?」

サガ「あっ!!」

アイオロス「どうした、サガ?、新しい自殺の方法でも思いついたのか?」

サガ「違うっ!。シュラ、聖衣を着ろ!」

シュラ「へっ?」

サガ「いいから、聖衣を着て来い、命令だ。」

シュラ「は、はい。」

サガも聖衣を呼び出し、纏う。いきなり全裸になったのでアイオロスは思わず、股間を元気にさせたが、聖衣を着たサガは光速で上へと走って行った。
慌ててアイオロスとシュラも後を追う。

 

宝瓶宮

サガ「カミューーーーーーーーーーーーッ!」

カミュ「な、なんですか?」

サガ「お前の力を借りたい。今すぐ、聖衣を着ろ!」

カミュ「分かりました。」

久しぶりに超強気なサガを見て、カミュがドキドキしながら聖衣を纏うと、遅れてシュラとアイオロスが合流する。

サガ「よしっ、揃ったな。いざとなったら、アイオロス!、お前の力も借りるからな。」

アイオロス「えっ、ああ。分かった。」

サガ「行くぞっ!!」

すっかり元気を取り戻したどころか、異様に勢いづいたサガはカノンそっくりだ。また謀反を起こしかねないサガを、いざとなったらアイオロスと3人で止めねばと、シュラとカミュはお互い目くばせをした。


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