ミロたんといっしょ(ミロたんとはじめてのお使い)

 

ミロは偽教皇がいる教皇の間を後にすると、スキップでカミュのいる宝瓶宮へと向かった。

ミロ「カミュ〜〜♪」

カミュ「どうしたミロ。ご機嫌だな。」

ミロ「聞いてくれよ。俺、やっと仕事が与えられたんだ!」

カミュ「その冗談は楽しいぞ。」

ミロ「本当だってば。来週、アンドロメダ島に行くんだよ。」

カミュ「アンドロメダ島??なんでまた・・・・。」

カミュは眉をひそめてミロを見つめた。

ミロ「なんでも、アンドロメダ島にいる聖闘士達が、教皇に反旗を翻したらしい。」

カミュ「そうなのか・・・、最近は教皇に不信感を持つ輩が多くなっているからな。」

ミロ「でさ。カミュに頼みがあるんだけど。」

カミュ「お前が頼まれた仕事だろう。ちゃんと一人でやってこい!」

ミロ「違うって!!たかが白銀相手に俺の素晴らしい技を使うのも、あれじゃん?」

カミュ「何を言ってるんだ、ミロ。今のお前の技でも十分だろう。」

ミロ「えーー。アンドロメダ島に聖闘士って何人いると思ってるんだよ。全員に15発ずつ打つの大変だろう。だから、こう見栄えがよくてかっこよくて、一気に敵を倒せる技、何かないかな?」

カミュ「・・・・・まったく。お前はいっつも、そうやって楽する事ばかり考えて。」

ミロ「えーーー!!俺だって仕事が出来るんだぞ!って教皇に見せるいいチャンスなんだよ。頼むよカミューー!!」

カミュ「全く、仕方の無い奴だな。分かった、二人で新しい技を考えるか・・・・。」

ミロ「やった!!だから好きだぜ、カミュ!」

ミロはカミュの首に手を回し、抱きついた。

ミロ「で、どうするんだ?」

カミュ「ちょっと待ってろ。」

カミュはそういうと部屋の奥へと消えていった。しばらくしてカミュが戻ってくると、ミロの目が粒になった。
戻ってきたカミュの格好は、もっこりレオタードに、毛皮のレッグウォーマーだったのだ。

ミロ「カミュ・・・・、何だよその格好は?」

カミュ「レオタードだ。」

ミロ「そりゃ分かるけどさ・・・。」

カミュ「ミロは見た目が華やかな技が欲しいのだろう?」

ミロ「ああ、そうだけど。だからってなんで?」

カミュ「・・・・まったく、そんなことも分からないのか。ミロ!!華やかな技とはなんだ?」

ミロ「はぁ?」

カミュ「答えろ、ミロ!華やかな技とはなんだ!」

ミロ「・・・・・わかんねぇよぉ!!」

カミュ「見た目が華やかな技といえば、ダンスだろう。」

ミロ「ダンス?」

カミュ「そうだ、ダンスだ。」

カミュはリモコンを手に取ると、オーディオのスイッチを入れる。そして、くるみ割人形が流れてくると、カミュはそれに合わせて踊り始めた。
その踊りっぷりはなかなかのものである。

ミロ「カミュ・・・。俺、お前にそんな趣味があったなんて知らなかったよ。」

カミュ「そうか?シベリアに修行に行っていたときにな、実はバレエにはまってしまったんだ。」

ミロ「バレエ?」

カミュ「ああ。修行を終えては、毎晩毎晩ボリショイ劇場に通ったもんだ。」

カミュは、もっこりレオタードのまま腕組みをし、ロシアバレエに思いを馳せた。

ミロ「そうなんだ・・・・。で、バレエと技と何が関係あるんだよ。」

カミュ「ふっ。ボリショイ劇場に通い詰めた私は、ついにバレエと技を組み合わせる事を考えついたのだ。そして、それを弟子の氷河に教えてみたのだ。」

ミロ「まじで?」

カミュ「ああ。これが、そのダンスだ。」

リモコンを再び構えると、CDをチェンジし氷河とマーマのテーマソング「氷原の貴公子」が部屋に流れる。
カミュはその曲に合わせて、ダイヤモンドダストの白鳥ダンスを踊り始めた。
その姿を見て、ミロは唖然となった。

ミロ「うわぁーーーー、だせーーーーーー!!!」

カミュ「ふっ。お前には芸術というものが分からんからな、仕方あるまい。」

ミロ「でもさぁ・・・・・。」

カミュ「これはこういうものなのだ、ミロ。このダンスを踊るとな、氷河のようなヒヨコでも小宇宙を最大限に高めることが出来るのだぞ。」

ミロ「ふーーーん、そうなんだ。」

ミロが納得したのを見て、カミュは白鳥ダンスを踊りながら悦に入った。

ミロ「でもさ。俺は、お前がダンスを踊りながら攻撃するのを見た事ないぜ。」

カミュ「当然だ。私はダンスなど踊らなくても、十分に小宇宙を高めることができるからな。」

ミロ「あっ、そうか。で、ダンスはもういいからさ。俺の華麗な技を考えてくれよ。」

カミュ「ふむっ。そうだったな。」

カミュは音楽を止めると、再び腕を組んで考え始めた。
ミロは、不安になりつつもその姿をジッとみつめた。

しばらくしてもカミュは目を閉じたまま動かなかった。ミロは、思わずその股間に視線を移し、取りあえず押し倒しておこうかなと、考え始める。

ミロ「(うーーーん、目を瞑ってるしキスでもしておくかなぁ〜。)」

ミロはカミュの前までくると、唇を突き出しキスをしようとする。

カミュ「よし、できた!!」

突然カミュが目を開け向きを変えたので、ミロはそのまま床に転がった。

カミュ「ミロ。床に転がっている場合じゃないぞ。」

ミロ「なんだよ。キスくらいさせろよ!!」

カミュ「今はそういう場合じゃないだろう。お前のために、私が一生懸命作ったダンスを見てくれ!」

ミロ「たかが10分で一生懸命かよ!!」

カミュ「つべこべいうな。音楽スタート!!」

再びカミュがリモコンを構えると、CDチェンジャーの中の3枚めのCDが回りだす。

←MIDIを再生してください

ミロは体制を立て直す暇もなく、頬を引きつらせた。
流れてきた曲は、明らかに変だ。ミロでも分かる、これは絶対にクラシックやバレエの曲ではない。

カミュ「いいか、まずはイントロでサソリのポーズだ!!」

そう言って、カミュは両手を羽のように広げると片足を後ろへ高く上げ、上半身を前へと倒した。

カミュ「そしてここでスカーレットニードルの1発目を打つ!そして次は、滑らかに左手を上にあげて2発目!」

ミロ「・・・・・・。」

カミュ「そして右回りに華麗に一回転して3発目!休むことなく、今度は三回転半を決めたら綺麗に止まって4発目!」

ミロ「(そんなに回ったら気持ち悪くなるって・・・。)」

カミュ「次は端から滑る様に走ってジャンプしながら5発目だ!着地と同時に振りかえって6発目!」

ミロ「(端ってどこだよ・・・。)」

カミュ「ここで右足を耳につくくらいあげて7発目。そして、再び一回転を決めてながら8発!」

ミロ「(俺、そんなに身体柔らかくないって・・・・。)」

カミュ「更に、上体を後ろに倒して9発。両手を頭の上で組み合わせ10発目。」

ミロ「(両手が上にあるのにどうやって打つんだよ。)」

カミュ「そして、こまのように限界まで回転しながら移動し、敵の目の前に綺麗とまる。ここでフラついてはいかんぞ。みっともないからな。そして11発目だ。」

ミロ「(すでに十分みっともないって!!)」

カミュ「次は、えびぞりになって右足を後ろにあげて12発目。さらにそのまま回転して13発目。」

ミロ「(回転するの好きだな。)」

カミュ「今度は足をかえて14発目だ!そしてその軸足で垂直にジャンプをし、そのまま上体をひねって空中で1回転して着地と同時に最後の15発目。いいか、けっして真央点はつくなよ!!」

ミロ「(カミュ・・・・なんだか遠い人になってるよ。)」

カミュ「そして最後に、最初のサソリポーズを決めて、フィニッシュだ!」

美○憲一のさそり座の女に合わせて、優雅に踊りながらスカーレットニードルを決めていくカミュの姿を、ミロは黙ってみている事しか出来なかった。

カミュ「どうだ、ミロ!!」

曲が終わると同時に最後のサソリポーズをビシッと決めたカミュは、真剣な顔でミロに振り返る。

ミロ「・・・どうって・・・。」

カミュ「だめか?」

ミロ「駄目もなにも、いちいち音楽流して攻撃するのかよ!!」

カミュ「そんな馬鹿なことするわけないだろう。音楽は覚えて、頭の中で反芻しながら踊るんだ!」

ミロ「・・・・あのな、カミュ。これだったら、普通に光速で15発打ったほうが早いだろうが!!」

カミュ「そうか?これを光速でやったらどうだ?」

ミロ「お前、それ本気で言ってるのか?」

カミュ「私はいつでも真剣だ。」

ミロ「はぁ・・・・。あのさ、俺は、パッーーーーーーーーと敵をやっつけられる技が欲しいんだってば!」

カミュ「そうか・・・・・。だったら、このダンスはどうだ?」

再びカミュはさそり座の女に合わせ、先ほどとは違うダンスを踊りだした。

 

アフロディーテは偽教皇に、ミロの様子を見て来いと言われて天蠍宮へと向かう途中、宝瓶宮を通りかかり、そのまま教皇の間へと引き返した。

アフロディーテ「教皇。先ほど、ミロに任命されました仕事の件についてですが・・・。」

偽教皇サガ(黒)「どうした?」

アフロディーテ「実は・・・・。」

サガ(黒)はアフロディーテからミロとカミュの話を聞いて、椅子から転げ落ちそうになった。

偽教皇サガ(黒)「愚か者めが・・・・。」

アフロディーテ「いかが致しましょうか?」

偽教皇サガ(黒)「よい。アフロディーテよ。あの馬鹿が失敗せぬよう、一緒について行け。」

こうして、ミロは一週間かけてサソリポーズをマスターし、アンドロメダ島へ向かいアルビオレ抹殺に見事に失敗するのであった。


end