ミロたんいっしょ(ミロたんとしっぽ その2)

 

ミロは泣く泣く天蠍宮を出ると、階段を上に上った。
ムウにネチネチと嫌味を言われ、なおかつシオンに怒られるよりも、素直に直接シオンに怒られるだけを選んだのであった。ミロたんにしては相当頭を使った賢い選択である。

 

教皇の執務室

ミロ「失礼します、教皇。」

シオン「ほう、蠍よ。何用じゃ?」

ミロ「あのぉ・・・・。」

シオン「なんじゃ?」

ミロ「そのぉ・・・・・。」

シオン「はっきりいたせ、蠍。」

ミロ「はい・・・・・・・・、なくしてしまったんです。」

シオン「何をじゃ?」

ミロ「その、あの・・・・・・・聖衣です。」

シオン「はぁ?聞こえぬのぅ?」

ミロ「だから、聖衣無くしちゃったんです。蠍座のヘッドがどーーーーしても見つからないんです!もうしわけありません。もう金輪際、床に投げつけませんので、どうにかしてください、教皇〜〜〜〜!」

肩をすくめ、固く目を瞑って飛んでくるであろうシオンの罵声に身構えた。

ミロ「(やば・・・・・・、呆れてものもいえないって奴か?)」

シオン「ムウのところへは行ったのか?」

ミロ「いえ・・・・・・。」

シオン「余の元に直接来たということは、それなりの覚悟があってのことであろうな?」

ミロ「はい。ちゃんと尻の穴は洗ってきました。」

シオン「よいよい。」

ミロ「で、俺・・・・私の聖衣のヘッドは?」

シオン「余が持っておる。」

ミロ「は?」

シオン「余が持っておると言うたのじゃ。」

ミロ「え?」

シオン「お前、先週の執務の際に、聖衣を着てきたであろう。その時に、執務室に忘れて帰ったのじゃ。いつ気が付いて取りに来るかと思うておったが・・・・・。」

ミロ「まじですか!?でも、サガやカミュに探してもらいましたが、発見できませんでしたよ。」

シオン「ほうほう、根性なしであるのぅ。」

ミロ「え?」

シオン「大方、二人ともお前と道づれになるのが嫌で、分からない振りをしたのであろう。まぁ、よい。では、早速お前の覚悟とやらを見せてもらおうかのう。蠍よ、ちこう♪」

ミロ「あきゅ〜〜〜〜〜。」

 

数時間後。

獅子宮

ミロは返してもらったヘッドパーツを持って、獅子宮に飛び込んだ。

ミロ「アッイオリア〜〜〜〜〜♪見て、見て!!」

アイオリア「もう見つかったのか、よかったなミロ。」

ミロ「ああ、教皇の所にあったんだよ。」

アイオリア「そうか、これに懲りてもう二度となくすなよ。だいたいお前は、聖闘士としての自覚が足りないんだ。
毎日、毎日その日暮らしで、カミュとイヤらしいことをすることしか考えてないだろう。教皇さまから出していただいた宿題ですら、ろくにやってないんじゃないのか?。
ちょっとからかうと、すぐに逆上してヘッドを床に投げつけるなんて、他の聖闘士が知ったらなんていうと思う?
お前は単細胞なんだから、もっと自分の行動に気をつけろよ。」

ミロ「ななななな、なんだと、アイオリア!?単細胞のお前に、単細胞なんて言われたくねーよ!」

アイオリア「なんだ、ミロは単細胞って知ってるのか?」

ミロ「く、くっそぉーーーーーーーー!!表出ろ、この野郎!!」

お約束で逆上したミロは、手に持ったヘッドパーツを床に投げつけた。

カッシャーーーーーーン。

途端、蠍の尻尾の1つ1つが床に散らばり、コロコロと獅子宮内を四方八方へと転がっていったのだ。

ミロ「うわーーーーー、ちょっとタイム!」

アイオリア「な、な、な、なんだこれは?」

ミロ「つべこべ言わずにお前も拾え!、アイオリア!」

 

数分後。

ミロ「アイオリア、お前いくつ拾った?」

アイオリア「えーーっと、1,2・・・・・5つだ」

ミロ「俺のが、6つだから・・・・・6,7,8,9,10,11・・・・・ひ、一つ足りない。」

アイオリア「一つくらいいいじゃないか。」

ミロ「いいわけないだろう!!。もっと真剣にさがせよ!」

アイオリア「しかし、宮内にはもうなかったぞ。」

ミロ「ちゃんと、くまなく隅々まで探したのかよっ!」

アイオリア「うちはお前のところと違って、ちゃんときれいに片付いているんだ。床に何かが転がっていればすぐに分かる!」

ミロ「ど、どうしよう。」

アイオリア「勢いあまって下に転がっていったかもな。」

ミロ「俺、ちょっと探してくる。」

アイオリア「待て、ミロ。玉をこれに入れていけよ。またなくすぞ。」

ミロ「おっ、サンキュ!、アイオリア。」

アイオリアから貰ったコンビニのナイロン袋に蠍の尻尾の玉を入れ、ミロは尻尾の無いヘッドを抱えて獅子宮と巨蟹宮の階段を探し回った。

 

巨蟹宮

巨蟹宮の通路でコレクションの顔のオブジェを磨いていたデスマスクに、ミロは声を掛けた。

ミロ「デスマスクぅーーー!」

デスマスク「っせーぞ、小僧。何の用だ?」

ミロ「俺の金玉知らないか?」

デスマスクは思わずこけそうになった。

デスマスク「き、きんたまぁ!?」

ミロ「そう、金玉。」

デスマスク「ぐははははっ!なんだ、小僧。ヤりすぎて、ついに種無しになっちまったのか?」

ミロ「は?ちっがうって、玉がないんだよ!。」

デスマスク「だから、種無しになったんだろう?」

ミロ「そうじゃないって、俺の金玉だよ。」

デスマスク「はぁぁ?」

ミロ「これだ、これ。」

デスマスク「ん?最近のコンビニは変ったものが売ってるんだな。なんだ、その金の玉は?」

ミロ「だから、俺の金玉。聖衣の尻尾がバラバラになったんだよ。」

デスマスク「ふーーん、大変だな。」

ミロ「で、こっちに転がってこなかったか?」

デスマスク「さぁ?みてねぇな。」

ミロ「そうか・・・・・・・・・・・・・・・・・。」

カシャーーーーン。

ミロががっくりと肩を落とした途端、ナイロン袋のそこが破けた。
尻尾の先端部分のトゲが、ナイロン袋を突き破ったのだ。

ミロ「うおぉーーーーーーーー、デスマスク、拾ってくれぇぇぇ。」

デスマスク「んあっ!?面倒くせーな。」

 

数分後。

ミロ「デスマスク、お前いくつ拾った?」

デスマスク「4つ。」

ミロ「俺のが7個だから、7,8,9,10,11・・・・・やっぱり1個足りない。」

デスマスク「もっと下のほうに転がっていったんじゃねぇのか?」

ミロ「下?」

デスマスク「双児宮の迷宮にはまってたりなっ!!」

ミロ「め、めいきゅうぅ!?ちょっと、サガのところ行って来る。」

デスマスク「ちょっと待て、小僧。また落とすといけねぇから、紙袋もっていけ。」

ミロ「おっ、サンキュ!!」

デスマスクから貰った紙袋に金の玉11個を入れて、ミロは双児宮に飛び込んだ。

 

双児宮

自宮の通路の掃き掃除をしていたサガに声を掛ける。

ミロ「俺の金玉しらない?」

サガは軽い眩暈を覚えた。

サガ「き、きん・・・・・・・・いや、睾丸がなくなったのか、ならば病院へいったほうがいい。」

ミロ「病院に行かなきゃならねぇのは、お前だろうが!!なくなったのは、金玉だ、金玉!!今度はちゃんと探してくれよ、俺の金玉。」

サガ「確かに病院へ行かねばならんのは私のようだ。」

ミロ「は?」

サガ「すまん、お前の言っていることが理解できん・・・・・・・、風呂に入ってくる。」

ミロ「待て、待て、待て!!俺の金玉探してくれよ。っていうか、ここに転がってこなかった?」

サガ「き、きん・・・睾丸がか!?」

ミロ「違うってば、これだよ、これ。」

サガ「なんだ、その紙袋は・・・・・・。」

ミロ「俺の聖衣のヘッドだよ。バラバラになっちゃったんだよ。」

サガ「・・・・・双児宮には転がって来なかったようだが。」

ミロ「本当だろうな?」

サガ「ああ。先程から掃き掃除をしているが、お前の尻尾はこなかった。」

ミロ「双児宮の迷宮に入れちゃったってことは?」

サガ「私がそのようなことをするはずなかろう。カノンではあるまいに・・・・。」

ミロ「じゃあ、愚弟が迷宮を作ったってことは?」

サガ「それもありえん。カノンが双児宮に迷宮を作れば、ここにいた私が気が付くはずだ。」

ミロ「じゃ、俺の金玉どこよ?」

サガ「知るか、馬鹿者!」

ミロ「頼むよ、サガァァァ。」

サガ「そもそも巨蟹宮は床にまで顔のオブジェがあるのだから、それをくぐりぬけて転がり、私の宮まで来る事は考えにくいだろう。」

ミロ「うん、確かにさっき巨蟹宮で落としたときは、顔のオブジェに引っかかって、あまり遠くまで転がらなかったもんな。」

サガ「であれば、巨蟹宮より上を探すのが筋であろう。」

ミロ「もう探したって。」

サガ「お前は昔から注意力が散漫ではないか。もっとよく探してみるのだな。ったく、ハァ・・・風呂。」

ミロ「あっ、サガ、何処にいくんだよ。」

サガ「風呂だ、風呂!!」

ミロ「うわーーーーーん、俺の金玉ぁぁぁ!」

 

その夜、教皇の執務室。

シオンは執務室のテラスから十二宮の階段でチラチラ光る明かりを見て、ケラケラと笑った。

巨蟹宮と獅子宮を結ぶ階段で、ミロが懐中電灯を片手に未だに金の玉を探しているのである。

シオン「アイオロスのボンドはよくつくのぅ。聖衣までくっつくとはのぅ。」

シオンは金色の針金のようなものをもてあそびながら、呟いた。

ミロの聖衣は他ならぬ、シオンが尻尾の芯を抜き、アイオロスからもらったタッ○ボンドでくっつけたのである。シオンが手に持っているものは、尻尾の芯であった。

しかし、アイオロスがシオンにあげたボンドは布用で、投げつけられた聖衣は当然バラバラになってしまったのだった。

ミロ「うわーーーーーーーーーん、俺の金玉ぁぁ!!」

夜風にのって届いたミロの泣き声にもう一度笑うと、シオンは窓を閉めた。

そして、ふと足にあったものを念動力で拾い上げ、小首をかしげる。

シオン「さて、これは何じゃったかのぅ?」

シオンは拾ったそれを執務室の机の引出しの中にしまった。

それが付け忘れた蠍の尻尾であることに気付くのは、しばらく先の事である。

 

ミロ「なーーーーい!俺の金玉ーーーー!なーーーーーい!!!!!!」


End