ミロたんといっしょ16(白羊宮の箱 その2)

 

その日、朝起きたシオンは風呂に入ろうとリビングを通ると、目が点になった。

シオン「ムウーーーーーーーーーーーッ!」

ムウ「どうしましたか、シオンさま?」

シオン「なんじゃこれは!」

シオンは無い眉をひそめ、リビングを埋め尽くす物を顎で指した。

ムウ「なにとは・・・・・。」

シオン「とぼけるでない。リビングを一体なんだと思うておるのじゃ。リビングは物置でもゴミ捨て場でもない!!」

ムウ「ゴミ捨て場とは失礼な。」

シオン「これがごみの山でなければ、一体何なのじゃ!」

ムウ「プレゼントですが・・・・。シオンさまが、ここに物を置くのを許してくださったではありませんか。」

シオン「お前は限度というものを知らんのか、この馬鹿者。昨晩は、ソファの上にまで物はのってはおらんかったぞ!」

ムウ「今朝、アルデバランがくれたのです。」

シオン「なんじゃと?」

ムウ「これも、あれも、それも、アルデバランがくれたのですよ。」

ムウはリビングの四方八方を指差した。

シオン「とにかく、余が風呂に入っている間に、さっさとこのごみを捨てよ。」

ムウ「ごみではありません。」

シオン「これはごみじゃ、ごみ。」

ムウ「ごみではありません!!」

シオン「では、これは一体なんじゃ?」

ムウ「それは・・・・。鏡です。手鏡。」

シオン「ほう、ではなぜ同じような手鏡が、34個もある。」

ムウ「正確には35個です。内5個は赤い淵の丸い鏡で、内9個はブルーの四角い手鏡です。8個は四角い携帯ようの鏡で、10個は楕円の犬のマスコットがついている鏡です。3個はこれはアニメキャラクターの鏡です。」

貴鬼「ポケモンだよ、ムウさま。」

ムウ「内3個はポケモンだそうです。」

シオン「・・・・・では、これはなんじゃ?」

ムウ「それは、ぬいぐるみです。もうおボケになられたのですか?」

シオン「馬鹿者!!なぜに、こんなにぬいぐるみがある。」

ムウ「それは、それだけ種類があるからではありませんか?」

シオン「ほう、余には、これとこれとそれと、あっちのそれも同じように見えるがな。」

貴鬼「顔が微妙に違うんだよ、シオンさま。」

シオン「・・・・、ほう、では、これはなんじゃ?」

ムウ「シオンさま・・・・・、スリッパもお分かりにならないくらい、お目が悪くなられましたか。」

シオン「ばっかもーーん!!余でもスリッパくらいは分かる。なぜ、一つもそろったスリッパがないのじゃ。どれもこれも、片方ばかりではないか!」

ムウ「片方しか取れなかったそうですよ。」

シオン「取れなかったじゃと?」

ムウ「ええ。なんでもアテネ市内に『巨大なゲーセン』というお店ができたようです。そこでは、お金を払いゲームをし、成功すると景品がもらえるようです。これがその景品だそうですよ。」

シオン「ゲーセン?」

貴鬼「シオンさま、ゲーセンもしらないの?オイラ、日本に行ったとき星矢に連れて行ってもらったけど、すごい楽しかったよ。」

ムウ「だそうですよ。アルデバランが言うには、娯楽施設のようなもの、だそうです。」

シオン「ほう、金を払ってごみを貰うのか。なんと愚かな・・・。ん?、これはなんじゃ?」

ムウ「貯金箱です。」

シオン「お前は貯金するような金は持ってなかろう。これはなんじゃ?」

ムウ「パジャマのズボンです。私には小さ過ぎますし、貴鬼には大きすぎるのです。シオンさま、いかがですか?」

シオン「この馬鹿!お前が入らんのに、この余が入る分けなかろう。それにこれはどう見ても、女物にしか見えぬが・・・、これでも余の目が悪いというか?」

ムウ「いえ、それは正真正銘女性用でしょう。」

シオン「では、なぜにここにある。」

ムウ「ズボンしか取れなかったようですよ。本当はナイトキャップ、スリッパ、上着の4つで全部そろうとか・・・。」

シオン「そいう問題ではなかろう・・・・・。」

シオンが大きなため息をついた途端、リビングにすさまじい雑音が流れた。

シオン「な、な、な、なんじゃこれは!?」

貴鬼「ムウさま、ぴったり7時に鳴ったね。」

ムウ「そうですね。」

シオン「や、やかましい。この雑音をどうにかせい、なんなのじゃ!」

ムウ「目覚まし時計です。」

シオン「め、目覚まし時計?」

貴鬼「昨日数を得たら、52個もあったんだ。どんな音が鳴るのか気になって、オイラ昨日の夜にこっそりセットしたんだよ。」

シオン「ばっっっっっっかもーーーーーーーーーーーん。はやく止めよ、ムウ。」

ムウ「はい、はい。」

ムウは瞳を閉じると、未開封のまま7時の時を奏でる目覚まし時計たちのスイッチを切った。

シオン「お前たち、いい加減にせよ。ん?んんんん?、なんじゃこれは?」

疲れたように、どさっとソファに腰を下ろしたシオンは手をついた瞬間触ったものを摘み上げた。それは白いレースであった。

ムウ「さぁ?、なんでしょう。」

貴鬼「あっ、それ、オイラが蟹のおじさんから貰ったんだよ。なんだかよく分からなかったから、そこにおいておいたんだ。」

シオン「ほう・・・・。」

シオンは嘆息し、それを広げて絶句した。レースはTの字になっていた。明らかに女性用のパンティである。見る見るこわばっていくのシオンの顔に中小羊も流石に冷や汗を流した。

シオン「捨てよ。今すぐ、捨てよ。」

ムウ「し、しかし。」

シオン「しかしもかかしもない。今すぐ、捨てよ。命令である。」

貴鬼「そんな、物は大切にしないと駄目だって、いつもシオンさまが・・・・・。」

シオンにギロリと睨まれ、貴鬼は脚が竦んでそれ以上何もいえなくなった。

シオン「よかろう。ではの、今すぐこれらのガラクタを日本の女神のところへお渡しする。」

貴鬼「沙織さんの?」

シオン「そうじゃ。女神のところでは、慈善事業の一環として、孤児や恵まれない子供達、そいういった施設などを助けておるからのぅ。これならばよかろう?」

貴鬼は黙って頷くことしかできなかった。その貴鬼を見て、シオンが頷くと、リビングに山のようにつまれたガラクタは一瞬のうちに消え去ったのであった。

ようやく元の形を取り戻したリビングを見回し、シオンが満足感に浸っていると、邪魔者が白羊宮にあらわれ、またまた不機嫌な顔に戻ってしまう。

アルデバラン「おはようございます、教皇。」

シオン「うむ。」

短く答えたシオンは、アルデバランが持っている物を見て顔をゆがめた。

シオン「牛っ!、手に持っておる物はなんじゃ?」

アルデバラン「はい。ぬいぐるみです。」

シオン「見れば分かる。余を馬鹿にするでない。なぜに、20歳にもなった男が朝から4つものぬいぐるみを抱えておる。おぬし、そういう趣味があるのか?」

アルデバラン「いいえ、滅相もございません。これは貴鬼とムウにプレゼントです。昨日あげたら喜んだので、もっとあげようと思いまして・・・。」

シオン「ほう、またガラクタを金を払って買ってきたか。」

アルデバラン「教皇。買うのではなく、取るのです。UFOキャッチャーというゲーム機が・・・・。」

シオン「御託はよい。」

シオンは手を上げてアルデバランを静止すると、大きく息を吐いた。途端に目の前に聖衣ボックスほどのダンボール箱が現れる。シオンは超能力でさらにマジックを取り出すと、側面に『いらない物入れ』と誰が見ても分かるはっきりとした字を書いた。

シオン「ここに入れよ。」

アルデバラン「いえ、これはいらないものでは・・・。」

シオン「毎日毎日、お前らが取ったくだらぬガラクタをムウに押し付けるでない。さっさと入れよ。命令である。」

アルデバラン「はい。」

しぶしぶとアルデバランは高さ40センチ強あるクマの○ーさんのぬいぐるみ4つを、ダンボール箱の中に入れた。

シオン「ではのぅ。この箱を白羊宮の私室の扉の外においてこい。」

アルデバラン「へ?」

シオン「それでのぅ、これからは、お前らが不要だからといってムウや貴鬼にやっていたガラクタは、この箱の中にいれるのじゃ。分かったか?」

アルデバラン「し、しかし、捨てるのはもったいないと思うのですが。」

シオン「ほうっ、ついに本音がでたな、牛よ。捨てるのがもったいないから、ガラクタをムウに押し付けていいという理由にはならん。」

言いながら、シオンは更に、『ご自由にお持ち帰りください。』と文字を増やした。

シオン「これならば、まこと欲しい者の手に渡り、ガラクタたちも本望であろう。余ったものは、日本の女神の元に送るのじゃ。分かったら、さっさと箱を玄関にもっていけ。」

アルデバランはあらぬ誤解を受けたまま、シュンと肩を落として箱を抱えて出ていった。

こうして、デスマスクやシュラ、アルデバランがプライズゲームで取ってきた景品群は、白羊宮の玄関口にある箱に放り込まれることになった。

しばらくして、箱がいっぱいになり、日本にそれらを送ったはよかったが、彼らが陶器や機械類など一切合財いれてしまい、半分が壊れて日本に届いてしまった為、箱は割れるもの、割れないものの二つに分類されることとなった。


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