ミロたんといっしょ21(にいちゃんとあそぼう!)

 

3時間後。

アイオロスは書斎でシュラとデスマスクが作った生まれて初めて見る料理みたいな物を食べながら、科学のテキストと格闘していた。

アイオロス「はぁ、眠い……」

シュラ「アイオロス。すみません……」

シュラが扉をそっと開いて部屋を覗き込んだ。

アイオロス「あ?今度はなんだ?」

シュラ「アイオリアとミロが寝てくれません」

アイオロス「そんなことでいちいち俺のところにくるなっ、自分でなんとかしろ!!」

シュラ「はい……」

シュラはしょんぼりしながら扉を閉めた。

さらに1時間後。

アイオロスが科学のテキストを頭に叩き込んでいると、今度はアイオリアが部屋に来た。アイオロスはテキストに視線を落としたまま、アイオリアにこたえた。

アイオリア「にいちゃん……」

アイオロス「あん?また何か用か?飯食ったらさっさと寝ろよ、アイオリア」

アイオリア「眠くない」

アイオロス「は?」

アイオリア「眠くないの」

アイオロス「お前なぁ、昼間修行して疲れてるんだろう?さっさと寝ないと明日起きれないぞ。にいちゃんは、今大事な勉強中なんだ。分かったら、さっさと寝ろ」

ミロ「あっ!リアずるいっ!一人でアイオロズに遊んでもらってんじゃん!!アイオロス、俺とも遊んでおくれ!!」

アイオロス「は?これが遊んでいるように見えるのか?」

アイオロスは手にした科学のテキストをふりふりした。

ミロ「いいから、あっそっぼっ!!」

アイオリア「にいちゃん、ボクも遊んでっ!!」

アイオロス「シュラ達に遊んでもらえ!」

ミロ「シュラ寝ただよ!デスマスクも寝たしアフロも寝てるべ!」

アイオロス「あ、あいつら……」

アイオロスは頬を引きつらせた。

アイオロス「だったらアイオリアと遊んでろ!」

ミロ「わかった。アイオリア、あそぼっ」

アイオリア「うん。何する?」

ミロ「追いかけっことか、どよ!」

アイオリア「ミロが鬼ね」

ミロ「オッッケ〜〜」

ドドドドドドドドドドドドドドッ!!

アイオリアが書斎の中を所狭しと走りまわると、ミロがそれを追いかけ始めた。

アイオロスはますます頬を引きつらせた。

アイオロス「お前等ぁぁぁぁ。やるなら外でやって来いっ!」

ミロ「やだっ」

アイオリア「にいちゃんといっしょがいい!!」

アイオロスはうんざりしながらため息をついた。

アイオロス「分かった。だったら静かに、本でも読んでろ!」

ミロ「やだっ!あそぶ!」

アイオリア「つまんない!眠くないよ、にぃちゃん」

アイオロスは本棚から「はじめての英語ABC」を取るとアイオリアに投げ、「ギリシャ語標準語発音」をミロに投げた。

アイオロス「ヤダじゃないっ!部屋の隅に座って、本を読めっ!!それができないなら、出て行け。分かったかっ!!」

ミロ・アイオリア「うん」

ミロとアイオリアは床にペタンと腰を下ろすと本を開いた。

二人が静かに本を読み出したので、アイオロスは席に戻って試験勉強を再開した。

 

しばらくして……。

ミロ「おでのなまえはアレグサンドリアでおま……」

アイオリア「あいあむあぺん」

ミロ「ちちとはかぁぢゃんはたらいてるべ」

アイオリア「ですいすあっぺる」

ミロ「このいぬはめんこい……かわいい?……めんこい!」

アイオリア「どーよーりけみけ?」

ミロ「おでのむらにめんこいひつじが5ひきおる」

アイオリア「あいりけばせばーる」

アイオロス「お前等、声に出して読むなっ!」

夢中になって本を読んでいたミロとアイオリアはビクッとなって顔を見合わせると、互いにしっーと人差し指を口にあてた。

アイオリア「あいあむあぺん

ミロ「ぷっ!!アイオリア、お前変じゃん?

アイオリア「??

ミロ「あっぺるじゃないくて、アップルゥだべ?

アイオリア「ミロのギリシャ語だっておかしいよ。『だべ』てなんだよ!

ミロ「むかっ!!アイオリアはペンなのか?I am a penておかしいじゃん!」

アイオリア「じゃんってなんだよ、じゃんって!」

ミロ「ドゥユーライクマイクだろう!」

アイオリア「むかっ!めんこいってなんだよ!

ミロ「うるさいっぺ!おでの村ではめんこいっていうだ!このペン!

アイオリア「なんだよ。ミロのほうこそギリシャ語しゃべれよ!

ミロ「なんだと、おでのギリシャ語は完璧だっぺ!

アイオリア「ミロ、うるさい。にいちゃんが怒るだろう

ミロ「アイオリアのほうがうるさいべ!

アイオリア「しずかにしろよ、ミロ!オレのにぃちゃんは怒ると怖いんだぞ!!

ミロ「んなこと、しってらい!

とうとうアイオリアとミロはつかみ合いの喧嘩をはじめた。

アイオロスは怒りの小宇宙を燃やした。

アイオロス「だったら静かにしやがれ、お前等!!

ミロ・アイオリア「あっ!?」

ミロとアイオリアは、直ぐそばで仁王立ちになっているアイオロスを見上げた。

アイオロス「ミロ。お前はこっちに座れ。それからこんどは大人しく静かに声に出さないでこれを読め」

ミロ「わかった」

ギリシャ神話の本を渡されてミロは、部屋の角っこに腰をおろした。

アイオロス「いいか、アイオリア。にいちゃんは怒ると怖い。わかってるな!」

アイオリア「うん……ごめんなさい」

アイオロス「お前は、そっちに座って、静かに黙ってこれを読んでろ」

アイオリア「はい」

ギリシャの偉人伝を渡されたアイオリアは、ミロと反対の部屋の角のトボトボと歩いた。

アイオロス「いいか、お前たち。俺は明日大切なテストがあるんだ。明日俺がテストで点数とれなくて、黄金聖闘士じゃなくなったら、お前達ともうあそんでやれないんだぞ。分かったな、静かにしろ!」

ミロ・アイオリア「うん」

アイオリアとミロは普通ではないアイオロスの様子に黙ったうなずいた。


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