ミロたんといっしょ(ミロたんとないしょばなしその2)

 

その頃、獅子宮。

遊びに来た魔鈴が見たのは、昔のように思いつめた顔のアイオリアだった。

魔鈴「なぁ、アイオリア。ミロが泣きながら走ってたけど、喧嘩でもしたのかい?」

アイオリア「なんだ、ミロに会ったのか。」

魔鈴「どうしたんだい、深刻な顔して。大喧嘩になっちまったのかい?」

アイオリア「いや、喧嘩したわけじゃないんだ。」

魔鈴「なんだい?この紙は??」

机の上に置かれた紙を魔鈴はアイオリアが隠すよりも先に取り上げた。そして紙に書かれた図を見たが、もちろん何のことやらさっぱりわからなかったが、女の勘は鋭かった。

アイオリア「そ、それは・・・なんでもない。」

魔鈴「水臭いじゃないか、あんたと私の間に隠し事はナシだよ。」

魔鈴と自分が何か特別な関係のような錯覚をして、ついうっかりアイオリアはミロから聞いた話をすべて漏らしてしまった。

アイオリア「つまり、貴鬼は、教皇が自分の子供であるムウに産ませた子供らしいんだ。」

仮面の下で魔鈴の目は点になっていた。

アイオリア「こんな秘密を知って、俺はどうしたらいいんだ・・・・。」

魔鈴「どうするもこうするも、あんたには関係のない話だろう。」

アイオリア「関係ないといっても、黄金聖闘士として顔を合わせることもあるし・・・。」

魔鈴「あんたは何も聞かなかったことにすればいいんだよ。」

アイオリア「しかし、仲間が苦しんでいるのを見過ごすわけにはいかないだろう。」

魔鈴「誰だって知られたくない過去の一つや二つあるもんさ。むしろ、あんたが過去を知ってるって事がムウにばれたら、それこそ傷つくんじゃないのか?。」

アイオリア「そうかもしれん。」

魔鈴「今まで通り接するのが一番だよ。私ならそうする。」

魔鈴の声はとても力強かた。アイオリアは魔鈴が真剣に自分の為にアドバイスしてくれたことがとても嬉しかった。だが、それは魔鈴が今にも笑いそうになるのを必死こらえた結果であることをアイオリアは知らなかった。

アイオリア「有り難う魔鈴。君に相談してよかったよ。」

魔鈴「礼には及ばないよ。おっと、用事を思い出したから、今日は帰らせてもらうよ。」

アイオリアに片手を上げて挨拶すると、魔鈴は足早に十二宮を降りていった。

 

涙を拭きながらミロは天蠍宮への階段を上っていた。巨蟹を通り過ぎようとしたその時、デスマスクが行く手を阻んだ。

デスマスク「おいおい、黙って通り過ぎるつもりか?」

ミロ「そうだけど。」

デスマスク「巨蟹宮(ひとんち)を泣きながら光速で走り抜けておいて、それはねぇだろう。」

ミロ「そ、それは・・・・。」

デスマスク「なんだ?女に振られたのか??」

ミロ「それは違う。」

デスマスク「じゃぁ、何だって言うんだ?え?」

ミロ「絶対誰にも言うなよ。実はなぁ・・・・・。」

ミロはデスマスクにカノンから聞いた話を耳打ちした。当然デスマスクは爆笑する。ミロはデスマスクの不謹慎な態度に本気で立腹した。

ミロ「おい!いくらムウが嫌いでも笑うことないだろう!貴様それでも血の通った人間か?!」

デスマスク「ぎゃははは・・・いや、すまん。あまりにもすごい内容だったんでな。そうか、ムウにはそんな過去があったのか。いや、失敬失敬。そういえば、俺もそんな噂を聞いたことがあるぞ。」

ミロ「お前、ムウが可哀相だと思わないのか?!え?!」

カノンや自分の話を鵜呑みにしているミロが可笑しくて、デスマスクは再度爆笑しそうになったが、これ以上笑うとスカーレットニードルをぶち込まれかねないので、一所懸命真剣な表情を作ってみた。

デスマスク「いやいや、ムウはそんな苛酷な環境の中でがんばっているんだから、むしろ同情なんて失礼に値するだろう。俺も影ながらムウを応援することにしよう。」

今晩の酒の肴はこれに決まりだなと、デスマスクは心の中で呟いた。

 

 

十二宮から降りると、魔鈴は女聖闘士達の溜まり場に直行した。シャイナの姿を見つけると、問答無用で肩をつかみ、グイと自分に引き寄せる。

シャオナ「何だ、魔鈴、私に喧嘩を売ろうっていうのか?」

魔鈴「ぷぷぷぷぷ。」

魔鈴は思わず思い出し笑いをしてしまう。たとえ仮面とはいえ、顔を見て笑われたシャイナは当然怒りだす。

シャイナ「今日こそ決着つけてやろうじゃないの!」

魔鈴「ごめんよ、シャイナ。つい思い出し笑いしちまってね。それくらい面白い話があるんだよ!。」

シャイナは構えをといて首をかしげた。

シャイナ「一体何だっていうんだい。」

魔鈴「実はさっきアイオリアの所に行ってきたんだけどさ。」

シャイナ「あんたののろけ話を聞いてるほど私は暇じゃないよ!」

魔鈴「まぁ、ききなって。あ、あんたたちも。すっげぇ楽しい話があるんだよ!」

魔鈴はそういうと周囲の知った女聖闘士たちにも声をかけ、アイオリアから聞いた話をケラケラと笑いながら話し始めた。

魔鈴「・・・ってな噂を、アイオリアとミロはマジで信じているのさ!。信じるか普通?!」

シャイナ「黄金聖闘士にもボウヤちゃんがいらっしゃるっわけだねぇ・・・はははは!」

魔鈴「もしかしてあいつら、手をつないだら子供が産まれるとか、赤ちゃんはコウノトリが運んでくるとか思っているかもな。」

シャイナ「あはははは、きっとキャベツ畑で産まれると思ってるんだよ。はぁぁぁ、おっかしぃ。」

魔鈴「あ、もちろんだけど、これはここだけの話だよ。って、こんな馬鹿ばかしい話し、どうでもいいけどね。」

しかし魔鈴が思うよりも、ここだけの笑い話で済ますことができない夢見る乙女が多かったのか、噂話は迅速に四方八方に広まっていった。

 

 


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