新!俺の仕事 その1(只今引き篭もり中〜♪)

 

超ウザイ兄貴の観察から解放され、自分の生活を取り戻した俺は、再び教皇に呼び出された。

『おぬし、最近何をぷらぷらと遊びまわっておるのじゃ!サガの監視はいかが致した?』

は?兄貴の監視?
ちょっと待ってくれよ。兄貴の監視は、ジーサンが黒い兄貴を潰したから終わりだろう?←勝手に終わらす出ない
もう、兄貴が黒くなる心配もないんだから、俺の仕事は終わり、終わり!!

『何を勘違いしておるか知らぬが、おぬしの仕事はまだ終わってはおらぬ。実際、いまだにサガは執務の時は鬱であろう。』

そりゃ、ジーサンが兄貴にセクハラしてっからだろう。ジーサンが素行を改めれば、いいじゃないか!!←してはおらぬ

『つべこべ言わずに、サガの監視をせい。この馬鹿者が!!』

俺は、結局また兄貴の観察をする羽目になった。まじで、勘弁してくれよ。
もう、兄貴の観察はこりごりだ。

 

俺は取りあえず、双児宮に戻って、兄貴がリビングにいるのを確認し、約1ヶ月分の様子を大雑把にまとめてみた。

あの事件の翌日、また黒くなってしまったことをムウから聞いた兄貴は、相当なショックを受け、しばらくは暗い顔をし鬱だった。まっ、これはいつものことなんだが、今回はさらに深刻みたいで、口数まで少なくなった。これも、元々俺との間ではほとんど無いに等しいけどな。←つまり、いつもと何ら変わりないということではないか。

もちろん、飯もアイオロスが無理矢理食わさないと、ほとんど食わない。眉間のシワは、これが不思議と1本も生えてないんだが、ボケッと空中を凝視したまま時間を過ごす事が多くなった。心ここにあらずという感じだ。←元より、ちと抜けたところがあるからのう

ちなみに尻の痛みは直ぐに無くなったらしい。

行動範囲は寝室、風呂、便所だけだ。

このまま兄貴が衰弱していけば、俺が双子座の聖衣を手にするのも時間の問題だった。←甘い

しかし、兄貴のことを心配したアイオロスが、時間があれば双児宮に来て、兄貴を励まし、元気付けているようだった。
はっきりいって、余計なお世話だ。しかも、ウザイ!←二人の時間が邪魔なのであろう
さっきも書いたが、アイオロスはろくに飯を食おうとしない兄貴に、無理矢理飯を食わせたりもしている。しかし、こいつの作る飯も不味い!!兄貴の面倒をみる暇があったら、飯を作る勉強をしろよ!←ムウに何やら教わっているようであるがのう

そうそう、こいつは、随分と兄貴への接し方が変わったようだ。所構わず容赦なしという感じだ。今までは何か遠慮でもしていたのだろうか?黒い兄貴にアナザーディメンションで飛ばされた時に、頭でも打ったのか?←元からである
あいつは、毎朝勝手に双児宮に来ては、兄貴の名前を連呼し、兄貴に引っ付いている。兄貴が、調子が悪いと言って寝室に入っても、その後をくっついて、行く始末だ。
あいつは、ベッドの横に椅子を持ってきたり、ベッドに腰をかけて兄貴の心配ばかりしていた。はっきり言って邪魔ってやつなんじゃないか?

流石に風呂にまではついていかないが、俺は、こいつが兄貴と風呂に入る日も近いと思った。
よっぽど兄貴のことが好きなんだな。目が腐ってるな。キショイ!←ほうほう、嫉妬か?

しばらくして、アイオロスの甲斐甲斐しい看病?の成果か、兄貴の行動範囲に書斎と病院が加わった。しかし、相変わらず、教皇の執務補佐の仕事の時以外は外に出ることを嫌っていた。
食事も大分取るようになり、口数も増えてきたし、眉間のシワも戻り、少し笑うようになったみたいだ。

そんなに、黒くなったことがショックなのか?
だったら黒くなんてなるんな。←元はといえば、お前が黒くしたのではないか

それから、先週くらいから、行動範囲に双児宮の裏庭とテラスが加わった。そこで筋トレをしているみたいだった。
アイオロスも兄貴が元気を取り戻したのを見て喜び、ますます兄貴にベタベタして引っ付いていた。兄貴が鬱陶しそうに払いのけても、懲りずにベタベタしていた。←いつものことである
あまりのしつこさに、兄貴に殴られる事もあったが、それでもめげづに兄貴の尻を追っかけている。←いつものことである

あいつは兄貴を襲う隙を窺っているに違いない。←その通り
兄貴のことをどういう風に見たら、そういう感覚に陥るのだろうか。謎だ。兄貴で欲情するなんて、終わってる。キショイ。←よいではないか
はっきり言って、暑苦しい。ウザイ!
しょっちゅう兄貴の名前を呼ぶ声が聞こえて、五月蝿くてたまらない。
早く出て行け、鶏男!!

 

11月2日(金)

俺がダイニングのテーブルで、報告書を書いていると、アイオロスがまた現れた。勝手に人の家にはいってくるんじゃない、この礼儀知らず!←お前も勝手に白羊宮に上がりこんでいるではないか
アイオロスは、俺に兄貴の居場所を聞くと、

『サーガ!サガッ、サガッ、サガッ!』

と手をパタパタとさせてリビングへと駆け込んで兄貴に抱きついた。
この男、毎日のように家に来ているが、他にやる事無いのか!?この暇人!

俺が、引き続き報告書を書いていると、コーヒーを入れに来た兄貴の動きが止まった。
電池切れか?
兄貴は俺の手元を見たまま、動かない。
やばい、俺は慌てて紙を裏返しにした。兄貴は俺が勉強でもしていると思って、驚いたようだ。←普段から勉強するように
そこに、なかなか戻ってこない兄貴を心配したアイオロスまでが、ダイニングに現れた。っていうか、それくらいで心配してるんじゃねぇよ。←そういうものである

『なんだ、カノン。勉強してるのか?偉いなぁ!!』

そういって、アイオロスは俺の頭を撫でやがった。
ふざけるな!!
俺はアイオロスの手を振り払って、書斎で続きを書く事にした。

アイオロスが兄貴に抱きついた回数:5回
アイオロスが兄貴に殴られた回数:3回
報告:兄貴は今日も引き篭もり中

 

11月3日(土)

今日も兄貴は引き篭もり中。リビングでコーヒーを飲みながら読書。
俺が、昼頃起きてきた時にはアイオロスは来てないようだ。俺は兄貴の作った昼飯を温めて食ってから、兄貴の観察をした。

といっても、相変わらず、ずーっと本を読んでいるだけで何の動きも無い。つまらん。たいくつだ・・・・・。
兄貴を苛めて遊ぶかな・・・・。
とりあえず、兄貴が本に夢中になっているのを確認してから、俺は残り少なくなったキッチンのコーヒーメーカに塩を大量に入れておくことにした。名づけてカノン特性塩コーヒー!!
試しにちょっと試飲してみたが、吐き気がするほど不味かった。←食べ物を粗末にするでない

そこへアイオロスが大量の荷持つを抱えて現れた。
兄貴の顔色が悪いので、栄養のあるものを食べさせるつもりで、朝から市場に買い物に行っていたらしい。しかし、その買い物の中身から、こいつが何を作ろうとしているのか、まったく想像もつかなかった。←精力のつく料理であろう

『栄養のある食材だけでは、美味いものは作れんぞ。』

そういって兄貴が、アイオロスに何を作るつもりなのかと訊ねた。アイオロスはこれから決めると言い出した。普通は、何を作るか決めてから買い物するんじゃないのか?
呆れた兄貴が、アイオロスの代わりにキッチンへと立った。
買い物の礼を言われながら、アイオロスはすまなさそうな顔してダイニングへと去っていった。

『うげっ!!』

ダイニングからアイオロスの短い悲鳴が聞こえて、俺は様子を見に行った。アイオロスは手に持ったコーヒーカップの中を眉間にシワをよせて見つめていた。

あっ、こいつ、俺が兄貴の為につくった塩コーヒー飲みやがったな!!勝手に人ん家のコーヒーを飲むな!!←普通のコーヒーをサガにいれてやらぬか

『どうしたんだ。それ、兄貴がいれたコーヒーだぜ。不味かったのか!?』

俺が言うと、アイオロスは首を横に振って、一気にそのコーヒーを飲み干した。うげっ・・・・、あんな不味いものよく飲めるな。味覚おかしいんじゃないのか、こいつ。←サガのためならなんでもするのであろう

アイオロスはその後、

『サガァ。お前のいれてくれたコーヒー美味かったぞ。』

といいながら、キッチンで飯を作っていた兄貴に後ろから抱きついた。
美味かった!?やっぱりこいつの味覚はおかしい・・・。

『鬱陶しいぞ、アイオロス。』

『照れるなよ、サガ。』

『私が包丁を持っている事を忘れるな。』

『大丈夫、手を切ったら、私が舐めて直してやる。』

そんなやり取りをしながら、アイオロスは兄貴の腰に手を回して抱きついて、肩の顎を乗せたまま離れなかった。まじで鬱陶しいぞ、この2人。←暑苦しいのぅ

しかし、あまりのしつこさにとうとう兄貴に肘鉄を食らったアイオロスは、渋々とキッチンから去って夕方のマラソンに出かけた。

ちなみに、出てきた夕飯は、牛肉たっぷりビーフシチュー。うまかった!

アイオロスが兄貴に抱きついた回数:3回
アイオロスが兄貴に殴られた回数:1回
報告:アイオロスは味覚音痴らしい。

 

11月4日(日)

朝からアイオロスが勝手に家に上がりこんできた。
朝の抱擁と挨拶のキスを兄貴してご機嫌のアイオロスは、目が覚めて部屋から出てきた俺にまで、キスをしやがった。
俺は奴の鳩尾に一発くらわして、頬が赤くなるまで洗った。キショイ、キショイ。馬鹿が染る。←既に充分馬鹿である

ダイニングに戻ると兄貴と朝飯を食っていた。
何で朝から、こいつの顔を見なくちゃいけないんだ・・・。
俺は、キッチンから飯を持ってアイオロスと兄貴の向かいに腰をかけて、飯を食った。

『サガ。頬にソースが付いてるぞ。』

アイオロスはいきなり兄貴の頬を嬉しそうにペロペロと舐め始めた。
ぎゃーーー、兄貴の顔舐めた。汚ねぇーーーー!!←一日中風呂に入っているのだから、綺麗であろう
ちなみに、兄貴は顔にソースがつくような食べ方はしないし、俺には兄貴の顔のどこにソースが付いているのか分からなかった。

『もういい。そういうことは自分でやるから・・・。』

しつこく頬を舐めるというよりは、唇を這わすアイオロスの顔を、眉間にシワを寄せながら押しのけた兄貴だったが、俺は耳が赤くなっているのを見逃さなかった。
男に舐められて、赤くなるなんて兄貴のやつ壊れたのか?←恥ずかしいのであろう

その後も、アイオロスは兄貴が洗濯していると時に後ろから抱きついた。洗濯物を干している時にも抱きついて、掃除をしている時にも抱きついていた。昼飯を作っている時にも抱きついていた。

キショイんだよ、お前ら!!←妬くでない

アイオロスが兄貴に抱きついた回数:7回
アイオロスが兄貴に殴られた回数:4回
報告:キショイ!アイオロスは発情期に突入。今日も兄貴は引き篭もり!やっぱり兄貴とアイオロスの関係は怪しい。

明日は教皇への報告の日だ。兄貴はずーーっと家にいるので観察する必要はありません。だから、俺の仕事は終わりです。

 

アイオロスの観察をしてどうする!サガの様子を報告せぬか、馬鹿者が。アイオロスの監視を命じた覚えはない。
サガが引きこもっておるのなら、朝夕に散歩に連れてゆく事くらいせい。
アイオロスが邪魔ならば、追い出すがよい。アイオロスは人馬宮を守護することも仕事である。

教皇 シオン