ミロたんといっしょ(CATS その2)

 

ミロの髪を無理矢理梳かしたアフロディーテは、ミロを風呂に入れた満足感に浸っていた。シオンの席である大理石で出来た豪華な座椅子にふんぞり返ってこたつに入っている。ミロは既にこたつの中だ。

アフロディーテ「あ゛〜〜〜〜、これはあったかいわ〜〜〜〜」

ミロと同じくすっかりこたつが気に入ってしまったアフロディーテは、ムウがいるにもかかわらず、帰るのを忘れてこたつ布団に包まってぬくぬくしていた。

貴鬼「おじさん、ムウさまが昼食いるかって?」

アフロディーテ「何?ご飯出るの?」

貴鬼「ラーメンだよ」

アフロディーテ「ラーメン?」

貴鬼「中国のスープパスタだよ」

アフロディーテ「食べる、食べる。あ、小僧。紅茶入れなさい、紅茶。お客様にお茶くらい入れなさいよね」

貴鬼「えー、自分で入れなよ!」

アフロディーテ「こら、小僧。アフロさまはミロたんを風呂に入れて疲れているんだ。いいから紅茶を入れろ」

貴鬼「やだよ」

アフロディーテ「後で小遣やるから、さっさと紅茶を入れる!」

貴鬼「ちぇーっ。本当にくれよなー」

 

貴鬼が嫌々入れたお茶を飲んでいると、童虎とカノンという珍しい組み合わせが白羊宮にやってきた。

カノン「あ、カマ野郎。こんな所で何してやがる?!」

アフロディーテ「あんたこそ何しに来たのよ。あ、わかった。サガに相手にされないからって、ムウか?教皇にチクってやる」

カノン「キショキショ!お前らと一緒にするな!俺はホモじゃねぇ!!」

アフロディーテ「じゃあ何しにきたんだよ!」

カノン「メシだ、メシ!」

靴を脱ぎ捨てカノンがコタツに入ると、アフロディーテは柳眉を寄せた。

アフロディーテ「ちょっと、臭くなるから入らないでよ!」

カノン「はぁぁ?」

アフロディーテ「腐った魚があったまったら、変な匂いが出るでしょう!!入るんじゃないわよ!」

カノン「魚はてめぇだろうが!この発酵魚の缶詰め!」

アフロディーテ「なんだと!海闘士の分際で生意気な!!」

童虎「お前たち、下らんことで喧嘩するでない」

あまりにも低レベルな言い争いに、童虎は苦笑いを浮かべて仲裁に入った。

アフロディーテ「老師!海闘士が聖域に紛れ込んでいます!さっさとつまみ出してください!」

カノン「おい、じじぃ!裏切り者がのさばってるぞ。さっさと粛清しろ!」

ムウ「二人とも裏切り者じゃないですか……」

台所からどんぶりを持ってきたムウがつぶやくと、リビングは静まり返った。

ムウ「喧嘩するなら外でやってください。五月蝿いですよ」

アフロディーテ「おい、海闘士。ムウがうるさいから出て行けって言ってるぞ。さっさと海に帰れ!」

カノン「うるさいのはテメーの方だろうが!」

童虎「いい加減いせぬか馬鹿者!」

アフロディーテとカノンは童虎に鉄拳で頭を殴られると、ブーブー文句を言いながらフォークでラーメンを食べ始めた。

ムウ「ミロ、食事ですよ」

そう言ってムウが床にラーメンのどんぶりを置いたのを見て、アフロディーテは小首を傾げた。すると、コタツ布団の中からミロがひょっこり顔を出し、そのままラーメンを食べ始めたのである。

アフロディーテ「ちょっとミロ、食事くらいテーブルでしなさいよ」

ミロ「やだよ、寒いし。中で食べてないだけいいだろう」

貴鬼「蠍のオジサン、コタツ掃除するの大変だから中でお菓子食べちゃダメだよ」

ミロ「だから食ってないって」

アフロディーテ「ちょっと、ムウ〜〜〜。一体ミロにどういう躾してるのよ!」

ムウ「しりませんよ……ミロは私の弟子ではありません」

ミロ「ムウ〜〜〜、おかわりないの?おかわり!」

ムウ「アフロディーテが食べてますからありません」

ミロ「だったらそれ俺の分じゃねーかよ!ラーメンかえせ!!」

コタツの中から上半身を伸ばし、ミロはアフロディーテにネコパンチを繰り出したが、その手をアフロディーテにフォークで刺され、悲鳴をあげる。

ミロ「いてぇな!何すんだよ!!」

アフロディーテ「ミロ!あんたはネコじゃないんだから、ちゃんとテーブルで食事しなさいよ」

ミロ「うるさい!俺のラーメンよこせ!」

アフロディーテ「これは私の食事なの!あんたの餌と一緒にしないで頂戴!」

もう一度フォークで手を刺され、ミロは悲鳴を上げると、渋々コタツの中へと引き下がっていった。

アフロディーテ「ごらぁぁぁ、この馬鹿ネコぉぉぉぉ!!!」

と突然アフロディーテが図太い声で叫び、布団を捲りコタツの中のミロを光速で何度も踏みつけた。

ムウ「五月蝿いですよ」

アフロディーテ「バカミロが私の脚を噛んだんだ!死ね、このバカ蠍!」

ミロ「フォークで刺してきたのはお前じゃないかよ!」

ムウ「ミロ、コタツの中で悪戯するのなら出て行きなさい」

ミロ「ちっ、わかったよ」

ふてくされてコタツの中にすっぽり隠れたミロを見て、『やっぱりミロの躾は私がしなきゃダメね!』と思ったアフロディーテであった。


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