××禁止条例

白羊宮でいつものように三時のおやつを食べていたカノンは、珍しくやってきたシュラに肩を叩かれた。

シュラ「おう、愚弟。良かったな!」

カノン「は? なにがだ!」

シュラ「新聞読んでないのか?」

アルデバラン「ああ! そういえば、今朝の新聞にのってましたね。よかってですね、カノン!」

カノン「はぁぁ?だから何がだ?」

ミロ「新聞ってなんだ!?」

アイオロス「ああ、もしかしてあれか、シュラ?」

シュラ「ええ、あれです」

アイオロス「そうっか、よかったなぁ〜、カノン。私は少し残念だがな」

カノン「おい麻呂(小)!新聞よこせ!」

貴鬼「はい、頭の悪いおじさん」

カノン「一体なんだっていうんだ。今朝の新聞になにかでてたか?」

カノン新聞をバサバサめくってみたが、わけが分からず首をかしげた。

シュラ「サガはさぞかし鬱だろうな」

アルデバラン「どうでしたか?、カノン」

カノン「そういえば、いつもより鬱だった気もするが、いつも鬱だから分からん」

ミロ「なぁ、一体なんなのよ?」

カノン「俺に吉報で兄貴が鬱になる記事なんて載ってないが」

ミロ「あっ!!!! これじゃん?」

脇から新聞を覗き込んでいたミロが指を指した記事を見て、カノンは首をかしげた。

ミロ「ポイ捨て禁止条例だってさ。良かったじゃんカノン」

カノン「は?」

シュラ「罰金最高額は産業廃棄物の不法投棄で9000ユーロらしいな。ギリシャ人はどこにでもゴミ捨てるからなぁ」

アイオロス「サガが捨てたら幾らくらい罰金がかかるんだろうな?」

アルデバラン「産業廃棄物よりたちが悪いですから、結構高いんじゃないんですか?」

ムウ「まぁ、何にしろ規則はバカみたいに守るサガですから、もう不法投棄することもないでしょう。よかったですね、カノン」

カノン「だからなにが!?」

ミロ「お前、まだわかんねぇの?ばかじゃん!」

カノン「バカにバカ呼ばわりされたくねーよ!」

シュラ「だから、これでもう二度とサガにポイ捨てされることがないってことだ」

カノン「だから兄貴が何をポイ捨てするんだよ」

アイオロス「お前だろう」

ミロ「13年前に捨てられたじゃん、ぽいっと」

アルデバラン「ぽいっというよりも、どっぽーんですけどね」

ムウ「はははっ、さすがアルデバラン」

シュラ「少なくとも今のサガに高額の罰金を払える甲斐性はないからなぁ。これで無闇にカノンも捨てられないってわけだ」

そういって皆は腹を抱えて笑った。明らかにカノンをからかっているのだ。
だが本人は眉根一つ動かさず、真剣な顔で何かを考えていた。

カノン「なるほど。ということは、俺が悪事を働いても、スニオン岬にポイ捨てされないってことか!」

シュラ「そういうことになるだろうな、よかったなぁ!ぶはははっ」

アイオロス「おいおい、カノン。なにをマジメに受け取っているんだ、ぶはははっ」

ミロ「お前、最近冗談分かるようになったじゃん、ぶはははっ」

カノン「うわーーーーはっはっはっ!!」

アルデバラン「ぶはははははっ!!よかったですね、カノン」

カノン「おうともよ!見ていろ双子座のサガ。この俺が再び世界を征服してやる!!」

カノンは高笑いを浮かべながら宣言すると白羊宮を飛び出し、アイオロス達の目を点にさせた。

ミロ「マジ?」

アイオロス「冗談だろ」

アルデバラン「でも、あの勝ち誇った顔はまんざらでも」

ムウ「むしろ、本気では?」

シュラ「あいつ、なんであんなに無意味にポジティブなんだろうな」

ミロ「バカだからだろう」

翌日、スニオン岬で人生何度目かの岩牢生活を送っているカノンが目撃されたのは言うまでもない。

 


カノン「だぜーーー!だしてくれーーー!」