ラダマンティスの十二宮突破(金牛宮編)

 

ムウの逆鱗に触れ、眉毛、胸毛、股間の毛を失ったラダマンティスは、夕飯の買い物に行くからという、所帯じみた理由でクリスタルネットから解放された。
分解された冥衣を再び身にまとってみたものの、体毛とアンダーウエアーがない為か、いまいち着心地が悪い。しかし、今ここで引き返しては、折角先に進めるチャンスが水の泡である。ラダマンティスは白羊宮を通り抜け、金牛宮を目指した。

ラダマンティス「たのもーーーーう!!」

聖衣をまとって現れたアルデバランの巨体を見て、ラダマンティスは胸をなでおろした。今度の聖闘士はまともそうだ。

アルデバラン「見るからに怪しい奴め。何用だ?」

ラダマンティス「俺様はカノンに会いにきたのだ。戦いに来たのではない。よってここを通させろ。」

アルデバラン「サガならともかくカノンに会いに来たとは、笑止!!。貴様、怪しすぎるぞ。」

眉毛のないラダマンティスは、元から悪い人相を更に悪化させていた。どう見て悪の化身である。

アルデバラン「それに、そのおかしな冥衣・・・、貴様!ムウに何をした!!」

ワイバーンの冥衣はムウによって、誰が見ても変だと思われる、愉快な形に変えられていた。着心地が悪いのはその為である。

ラダマンティス「だから何でそうなるんだ!俺様はあの麻呂眉の被害者だ!!」

アルデバラン「ムウが貴様のような、見るからに悪人を通すわけがない!。貴様・・・よくもムウを・・・・。」

ラダマンティス「あーー、もう、ムウムウムウムウうるせぇぞ、ゴラァァァ!。俺様が麻呂眉のケツにイチモツを突っ込んでヒィヒィ言わせてやったとでもいうのか?!ふざけるな、俺様はあんな女みたいな顔の奴は趣味じゃねぇ!!!」

アルデバラン「な、なにぃぃぃぃ!やはりイタズラ目的かぁぁ!!」

ラダマンティスの下品な言葉に驚愕し、アルデバランは最後まで話を聞いていなかった。

アルデバラン「まさか、淑やかで清く華のように可憐で気品あふれるムウが、こんな凶悪犯のような男に強姦されたとは・・・・・絶対に絶対に許さんぞ!!!」

ラダマンティス「貴様の目は節穴か!!あの悪魔がどうやったらそう見えるんだ!!イタズラらされたのは俺様のほうだーーーーーーーー!!!」

アルデバラン「問答無用!グレートホーーーーーーン!」

怒りに震えるアルデバランの一撃を、ラダマンティスは両手を交差させで受け止めた。が、その衝撃で冥衣はいとも簡単に吹き飛び、金属音をたてて床に落ちる。あまりにもあっけなく壊れた冥衣に流石のアルデバランも驚いた。そして誰より驚いたのは、もちろんラダマンティスである。突然股間の風通しがよくなったので、自分の体を見ると、なんと全裸ではないか!。何故かヘッドパーツはきちんと頭にのっている。ムウが適当に改造した冥衣は、まったく耐久性に優れていなかったのだ。
余りにもあんまりな自分の姿に、ラダマンティスは倒れこんでしまった。

アルデバラン「一体どうしたというのだ?!」

ラダマンティス「・・・・うううう、だからイタズラされたのは俺のほうだと言っただろう・・・。」

アルデバラン「うーむ・・・・確かにその程度のモノで、あのムウが・・・その・・・ヒィヒィとは・・・到底思えんな。」

ラダマンティス「そ、その程度?!?!!・・・お、俺のでは満足させられないというのか・・・・。」

全裸にされた挙句、自慢の息子をその程度呼ばわりされ、ラダマンティスは硬直した。

アルデバラン「しかし、その中途半端にむしられた胸毛といい、寒そうな股間といい・・・・。」

ラダマンティス「だーーかーーらーーー、あの麻呂眉の悪魔にイタズラされたのだ!」

アルデバラン「ああみえても、ムウはおちゃめな所があるからな。」

ラダマンティス「これが、おちゃめなイタズラか?!抵抗できない俺の一文字眉毛を全部毛抜きやがって・・・しかもガムテープで胸毛をむしって、挙句の果てには・・・挙句の果てには・・・・ヨヨヨヨ。」

アルデバラン「おいおい、泣くことはないだろう。それは、抵抗しないほうが悪いのだ。命が助かっただけでも有難いと思え。」

ラダマンティス「・・・やっていいことと悪いことがあるだろうが!!ああ・・・俺の毛・・・・・。」

涙に暮れるラダマンティスに呆れて、アルデバランは拳をおさめる。

アルデバラン「いつまでも全裸で泣いていては風邪を引くぞ。武士の情けだ、私のアンダーウエアーを貸してやろう。」

アルデバランはそう言うと、私室から未使用のアンダーウエアーを持ってきて、ラダマンティスに手渡す。
ラダマンティスはアルデバランの情の深さに、男泣きせずにはいられなかった。

 

ラダマンティスは再び冥衣をまとい、身なりを整えた。

ラダマンティス「・・・世話になったな。」

アルデバラン「おい、お前。その格好でどこへ行くつもりだ?」

ラダマンティス「決まっているだろう。愛しいカノンを迎えに双児宮へ行くのだ。」

アルデバラン「悪いことは言わん。出直して来い。」

ラダマンティス「カノンはすぐそこにいるというのに、どうして引き返すことが出来ようか!」

アルデバラン「そのセリフ、鏡を見てからもう一度言うのだな。」

金牛宮の私室に通されたラダマンティスは、鏡を見て愕然とした。
ワイバーンの羽は四方八方滅茶苦茶に広がっており、おまけに羽の一枚一枚に「眉なし参上」と彫られている。ショルダーパーツは左右食い違っており、とどめに、アルデバランから借りたアンダーウエアーは、当然だがサイズが合っていないため、レッグパーツからだらしなく飛び出ている。それより何より、眉毛のない顔は、アルデバランに強姦魔と間違われたのを、自分でも納得してしまうくらい凶悪であった。

ラダマンティス「・・・・おのれぇぇぇぇぇ、麻呂眉めぇぇぇ・・・・・・。」

アルデバランに見送られ、ラダマンティスは血の涙を流しながら、冥界へ戻っていった。


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