★白羊家の食卓 その1.5(お料理行進曲番外編)
次の日。
出張から帰って、久しぶりにゆっくりと家で寛いでいたサガを、アイオロスが訪ねて来た。
アイオロス「サガぁぁ、今日の夕飯なに?」
サガ「まだ決めてないが。何か食べたいものでもあるのか?」
アイオロス「サガが食べたい!!んーーー。」
サガ「やめないか!」
チュゥの形を唇に作って迫ってくるアイオロスの顔を、サガは手で押しのける。
ミロ「サガァ〜〜〜。ご飯食べさせて。」
そこへミロが現われた。
アイオロス「(ちっ、いい所だったのに。)おい、ミロ。まだカミュは帰ってきてないのか?」
ミロ「うん。まだ帰ってきてないんだよ。しかも白羊宮に行ったら、教皇に追い出されちゃった。で、今日のご飯何?」
サガ「まだ決めてない。」
ミロ「俺、コロッケパン食いたい。」
アイオロス「なんだ、気に入ったのか?」
ミロ「うん。あれめっちゃ美味いよ、コロッケパン。」
サガ「また、コロッケパンか。あんなもの何が美味いんだか・・・。」
ミロ「あれ?コロッケパン知ってるの?美味いじゃん!」
サガ「ああ。パンのコロッケだろ?」
アイオロス・ミロ「え?」
サガ「だから、パンを揚げたものだろ。昨日カノンが食べたいというから・・・。」
アイオロス「作ってみたのか?」
サガ「ああ。」
ミロ「パンのコロッケを?」
サガ「ああ。あんなもののどこが美味いんだ?パンにパン粉をつけて揚げるなど、愚の骨頂だ!」
アイオロス・ミロ「ぶははははははっぁーーーーーーーーーーーーーーー!!」
くだらないといった風にサガが言うと、アイオロスとミロは顔を見合わせ、腹を抱えて大爆笑した。
サガ「な、なんだ!何がおかしい!」
アイオロス「サガは可愛いなぁ。」
ミロ「馬鹿だよ、馬鹿!!」
サガ「お前達に馬鹿などと言われたくない!」
アイオロス「サガ、コロッケは知ってるよな?」
サガ「当たり前だ。馬鹿にするな!」
アイオロス「コロッケパンというのはな、パンにコロッケを挟んだやつだ。コロッケのサンドウィッチみたいなもんだな。」
まだ腹を抱えて爆笑しているミロの隣で、アイオロスが目に涙を溜め、笑いを堪えながら言った。
サガ「え?パンのコロッケじゃないのか?」
サガが顔を真っ赤にしていうと、二人は頷いた。
アイオロス「そうか、そうか。今日はコロッケパンにしような、サガ。ミートコロッケとキャベツの千切りを作ってくれ。後は私がやろう。」
程なくして、サガが作ったコロッケをアイオロスがパンに挟み、コロッケパンは完成した。
ミロ「うん。ムウのコロッケよりは味が落ちるけど、美味いぞ。」
サガ「そうか。これがコロッケパンか。」
ミロ「そういえば、カノンは?」
サガ「知らん。昨日から帰ってきてない。」
アイオロス「(だったら今夜泊まろうかなぁ・・・・。)」
そこに24時間ぶりにカノンが帰宅する。乱暴に玄関の扉を閉めると、すぐに自室へと入ってしまった。
サガ「カノン、夕飯が出来てるぞ。」
カノン「外で食ってきたからいらねーよ。」
サガ「そうか・・・。」
サガが部屋から出て行って、しばらく経つとミロが入ってきた。
ミロ「おい、愚弟!飯食わないの?コロッケパンだぞ。」
カノン「兄貴のやつ、またあれ作ったのか?」
ミロ「サガのコロッケパンも美味いぞ、ほら?」
ミロは食べかけのコロッケパンをカノンに見せる。
カノン「あ!なんだよそれ。」
ミロ「コロッケパンだぞ。パンのコロッケじゃないからな。ってお前は、分かってるのか。」
カノン「どうしたんだよ、兄貴が作ったのか?」
ミロ「そう、サガが作ったんだ。アイオロスから作りかた教えて貰ったんだよ。」
カノン「なんだと!!」
カノンは慌ててダイニングへと向かった。
カノン「兄貴、俺にも食わせろ!!」
アイオロス「すまんな、カノン。これが最後の一個だ。」
そういって、アイオロスが最後の一口のコロッケパンを口に運ぶ。
カノン「なんで、残してくれなかったんだよ!!」
サガ「お前が食事はいらないと言ったんだろう。」
カノン「コロッケパンだなんて一言も言ってなかったじゃないか!?」
サガ「お前が聞かなかったから、言わなかっただけだ。」
カノン「くっそぉ!!」
アイオロス「なんだ、そんなにコロッケパン食べたかったのか?」
ミロ「だったら、また作ってもらえばいいじゃん?」
ミロの言葉にカノンはサガを見るが、サガは真顔でカノンの視線に答えた。流石に、昨日のことがあっては、「作ってくれ。」とは言いにくかった。
ミロ「そんなに食いたいなら、俺がやるよ。夜食用にキープしといたんだ。」
ミロは冷蔵庫からラップに包まれたコロッケパンを取り出した。
カノン「あ!くれ、くれ!!」
ミロ「ただじゃやらないぞ。ヤらせろ!!」
カノン「ヤらせるか、ごらぁ!」」
ミロ「だったら、このコロッケパンは俺んだ!」
カノン「てめぇ、卑怯だぞ!!」
カノンは、ミロの胸倉を掴むと怒鳴る。
ミロ「なんだよ、俺とやろうってのか?ヘッポコのくせに!!」
アイオロス「(両方へっぽこだろう。)」
カノン「望むところだ!!」
アイオロス「お前達、喧嘩をするなら外でやれよ。」
カノン「うるせー、お前に言われなくたって分かってるよ。発情蠍、表でろ!!」
ミロ「望むところだ!」
カノンは手を放すと苛立ち気に私室の玄関を開け放ち、ミロと共に外へ出た。
その途端、背後でカチリと音がして振りかえる。
カノン「しまった!!」
ミロ「なんだ!?」
カノン「あの鶏野郎、謀ったな!」
アイオロスの手によって、再び同じ手口で双児宮から締め出されたカノンは、扉をドンドンと乱暴に叩いたが、もちろん中からの反応があるはずもなかった。
カノン「ごらぁ!鶏!!!あけろ!!あけやがれーーーー!!!」