白羊宮の箱 番外編

 

カノンがミロに連れ去られてから数分後、夕方の筋トレから戻り、白羊宮を抜けようとしたアイオロスは脚を止めた。

アイオリア「兄さん、どうしたんだい?」

アイオロス「箱が増えてる。」

アイオリア「箱?・・・・・あっ、本当だ。・・・・、さ、『サガ専用』って書いてあるけど・・・。」

アイオロス「『サガ専用』だと!?どういう意味だ?」

アイオリア「さ、さぁ?」

アイオロス「お前、今日は先に帰ってろ。ちょっとムウに聞いてくる。」

 

白羊宮

アイオロス「おい、ムウ。」

ムウ「なんですか?」

アイオロス「あの箱はなんだ?『サガ専用』って、まさか教皇と組んでまたサガに悪さしようとしているんじゃないだろうな。」

ムウ「はぁ?失礼なこと言わないでください。あれは、サガが自分で置いていったんです。」

アイオロス「サガが?」

ムウ「そうですよ。あそこに風呂関係のものを入れておくと、サガが持って帰ってくれるんです。」

アイオロス「本当か?本当に、本当に、本当に、本当だな?」

ムウ「本当ですよ。女神に誓ってもいです。」

アイオロス「そうか・・・。」

アイオロスは不敵な笑顔を浮かべると、白羊宮から出て行った。

 

30分後

一度人馬宮に戻り、ちゃんと風呂に入って身を清めたアイオロスは、再び白羊宮に戻ってきた。

アイオロス「おいっ、ムウ!」

ムウ「まだ何か用ですか?今日は、貴方の分の食事は用意していませんよ。」

アイオロス「ああ、そのことなら気にしないでくれ。今日の夕飯はサガを食べるから。」

ムウ「はぁ、そうですか。」

アイオロス「でさ、箱ないか?箱。」

ムウ「箱ですか?」

アイオロス「そう、箱。」

貴鬼「ジャガイモの箱ならあるよ、ムウさま。」

ムウ「だそうですが。」

アイオロス「おぉ、それでいい。持ってきてくれ。」

貴鬼「はい。」

超能力でさっきまでジャガイモが入っていたダンボールが目の前に現れる。

アイオロスはそれをいろいろな角度から眺め、首を捻った。

アイオロス「これじゃ、小さいな。もっと大きいのは無いのか?」

貴鬼「えっー、我侭言わないでよ。これしかないよ。」

ムウ「でしたら、二つ繋げればいいのでは?」

と同時に、今度はレタスが入っているダンボールが現れた。ムウは、中に入っているレタスを全部とると、今度はガムテープを出してアイオロスに渡す。

ムウ「あとはご自分でどうぞ。二つをつなげて大きな箱にすればいいのですよ。」

アイオロス「おぉ、そうか。」

5分後

二つのダンボール箱を器用に一つの箱にしたアイオロスは、満足げに頷き、ガッツポーズをとった。

アイオロス「よしっ。」

貴鬼「おじさん、一体それに何を入れるの?」

アイオロス「子供には関係ないことだ。大人のやることに口を出しちゃいかんぞ。」

アイオロスは見上げる貴鬼の頭をくしゃと撫でた。

アイオロス「そうそう、あとこれ、処分しておいてくれ。」

貴鬼がアイオロスから受け取ったものは、ぼろぼろに破けたダンボール箱だった。

 

その夜、執務を終え白羊宮に戻ったシオンは、玄関先の箱の中身に無い眉を寄せた。

シオン「アイオロスよ。お前、そこでなにをしている。」

アイオロス「何って・・・・。サガを待っているんです。」

シオン「サガをっ?・・・・・・・・、箱に入ってか?」

アイオロス「はいっ、この箱はサガ専用なんです。だから、ここに入っていれば、サガが持って帰ってくれるんですよ。」

屈託の無い笑顔でそういうアイオロスは、「いらない物いれ『サガ専用』」と自分で書いた、先ほど自作したダンボールの中で体育座りをしていた。

シオン「その手に持っておるものは何じゃ?」

アイオロス「ああ、これですか。これは、前の箱に入っていた、風呂桶ですよ。誰かがサガにあげるために、入れたみたいです。」

アイオロスは体育座りをしたまま、クマ○ーの風呂桶を抱えていた。

シオン「前の箱?・・・・・・・・・・、ちょっと待て。確か、サガ専用箱はもっと小さくはなかったか?余の記憶違いかのぅ、いかんのぅ、もうボケたかのぅ。」

アイオロス「ご安心ください、教皇。教皇はまだおボケになっておりません。小さい箱は、さっき私が入ろうとして、小さすぎて壊れちゃいました。」

シオン「お前という奴は、本当に・・・。」

シオンは額に手を当てると、首を左右に振った。

アイオロス「はい。私はサガ専用ですから。心も体も、股間もサガ専用です!」

シオン「ほうほう、分かった、分かった。」

シオンはアイオロスの箱の前に座ると、超能力でマジックを取り出した。

アイオロス「教皇、駄目ですよ。この箱は、もう私でいっぱいですから。」

シオン「見れば分かる。」

シオンは『サガ専用』のサガに二重線を引き、『シオン』と書いて、箱に入っているアイオロスの脇に手を差し入れて、持ち上げると小脇に抱えた。

 

白羊宮

ムウ「お帰りなさい、シオンさま。夕飯は・・・?」

シオン「夕飯はいらぬ。これを食う。」

アイオロス「きょ、教皇、食うって・・・食うって。私の今日の夕飯はサガなんです!!」

シオン「ほうっ、しかしのぅ、お前は『シオン専用』箱に入っていたではないか。余の夕飯はお前じゃ。」

アイオロス「は、放してください、教皇!!!私が入っていたのは『サガ専用』です!ごらぁ、ムウ!ボケッと見てないでなんとかしろ。」

ムウ「こうなってしまっては私の手には負えませんからね。ごゆっくりぃ〜。」

シオン「そういうことじゃ。次はどこの馬鹿が、箱に入るかのぅ。」

アイオロス「うおぉぉぉぉーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーっ!」


「また掘られちゃった・・・。サガ、薬塗って・・・(ぐすん)」