シオンさまといっしょ3(じじぃといっしょ)

 

教皇の執務が一段落ついたシオンは、珍しく旧友と酒を酌み交わしていた。
二人合わせて500歳を超えてはいるが、見た目はぴちぴち18歳。酒量もすっかり若い頃にまで戻っていたのだった。

シオン「春麗ちゃんの作る料理は、ムウの次に美味しいのう。」

春麗「教皇さまったら、お世辞がお上手ですわ。」

春麗はお盆を持つ手を交差させ、頬を赤らめた。

シオン「世辞ではないぞ。春麗ちゃんはさぞかし良い嫁になるじゃろうて。春麗ちゃんさえ嫌でなければ余がいい男を紹介してやるぞ。」

童虎「待て、シオン。春麗の相手はもう決まっておる!」

シオン「なんじゃと?まさか、相手とはお主ではあるまいな?小さい頃から自分の好みに育てて、いい按配になったところを頂くという寸法か?この変態エロじじぃ!」

童虎「お主と一緒にするでない!春麗の相手はこの紫龍じゃ!」

童子は春麗の隣に座っている紫龍を指差した。

シオン「紫龍?・・・・・・・・・おぉ、ドラゴンか。そうか、そうか。相手は聖闘士か。」

シオンは春麗に酌をしてもらった酒を一気に飲み干した。

シオン「では、余が仲人をしてやろう、春麗ちゃん。」

春麗と紫龍は、黙ってうつむきながら顔を真っ赤にさせていた。

童虎「待て、シオン。春麗と紫龍の仲人はわしじゃ!」

シオン「なんじゃと?聖闘士の結婚じゃ、余が仲人をやる!!」

童虎「そうはいかん。春麗を拾ったときから、わしが仲人をやると決めておったのじゃ!」

シオン「童虎、お主は馬鹿か?春麗ちゃんの親同然であるお主が、仲人をできるわけがなかろう。大人しく春麗ちゃんとバージンロードを歩け!!」

童虎「なに?ばーじんろーどじゃと?」

シオン「おお、そうじゃ。春麗ちゃんとドラゴンは聖域で盛大な結婚式をあげるのじゃ。」

童虎「そうはいかんぞ。春麗と紫龍は中国の歴史に則った荘厳な結婚式をさせるのじゃ!」

シオン「だめじゃ。あんな線香臭い結婚式など、あげさせぬわ!」

童虎「春麗には、真っ赤な着物を着させて嫁にやると昔から決めておる。」

シオン「何をいうとる。結婚式は真っ白なウェディングドレスと決まっておる。春麗ちゃんはなかなかの美人だから似合おうと思うぞ。」

童虎「うるさい。春麗には綺麗な着物を着せて、輿に乗せ、この五老峰から嫁に出す。13年間死んでいたお主が口を挟むことではない!!」

シオン「聖闘士の頂点に立つこの余が言っておるのじゃ。お主、逆らう気か!?」

童虎「なんじゃ、お主はもうボケたのか?聖闘士の頂点に立つのは女神じゃ。思い上がるでない!」

紫龍「あ・・・あのぉ、老師。わたしと春麗はまだ・・・・。」

童虎「黙っておれ、紫龍!これはわしとシオンの問題じゃ。」

シオン「そうじゃ、おぬしは黙っておれ!」

童虎「いいか、シオン。春麗はわしの子じゃ。紫龍はわしの弟子じゃ。よって、結婚式はわしが全て取り仕切る!!」

シオン「そうはいかんと言っておるじゃろ。よい、これは女神命令じゃ。女神命令で春麗ちゃんには聖域で結婚式をあげささる!」

シオンは、どうださからえまい!と言わんばかりに踏ん反り返った。

童虎「なんじゃと??卑怯じゃぞ、シオン。」

シオン「春麗ちゃんには、真っ白のウェディングドレスじゃ。聖域で結婚式じゃ!!」

童虎「それはならん。春麗には真っ赤な着物と・・・・・。」

シオン「聖闘士のお主は、女神に逆らうというのか?」

童虎「んなもん、女神もくそあるか。春麗には中国で結婚式を挙げさせるのじゃ!」

シオン「なんじゃと、童虎。お主、女神を愚弄する気か?童虎、表にでろ!」

童虎「なんじゃ、シオン。お主、このわしとやろうというのか?後悔してもしらんぞ!」

シオン「それはこっちの台詞じゃ!!」

 

その頃聖域では・・・・。

ムウと貴鬼、アルデバランは五老峰の方角から、巨大な小宇宙の爆発を感じ、食事をするのをやめた。ムウの額には冷や汗が流れている。
血相を変えたサガとデスマスクが跳びこんできた。

サガ「ムウ!今のを感じたか!?」

ムウ「ええ、感じました。五老峰の方角です。」

デスマスク「一体、五老峰で何が・・・・・。」

サガ「アルデバラン。皆を召集しろ。私達は五老峰へ行ってくる。」

アルデバラン「はい。」

サガはアルデバランの返事を聞く前に、ムウとデスマスクを連れて五老峰へとテレポートした。

 

再び五老峰。

ムウ達は五老峰につくと、その光景に絶句した。大滝の爆音のが轟く中、シオンと童虎が、お互いに組んだ手を押しながら叫んでいた。

シオン「お主と余がこうなった以上、千日戦争は覚悟の上なのじゃろうな?」

童虎「あたりまえじゃ!春麗のためなら、千日でも200年でも戦ってやるわ!」

サガはそばで唖然としている紫龍に聞いた。

サガ「一体なにがあった?」

紫龍「そ・・・・・・それが・・・・・その・・・・・。」

紫龍は顔を真っ赤に染めてモジモジしている。

デスマスク「老師!!一体いかがされたのですか??」

童虎「おぉ、デスマスクか!シオンのとんちきがの、訳のわからんことを言っておってのぅ。しかし、加勢は無用じゃぞ。」

シオン「お主、蟹に加勢してもろうたらどうじゃ!?このままでは、滝の中へと落下するぞ!」

童虎「何を言うておる。加勢してくれる者もなおらんくせに!」

シオン「なんじゃと??余にはムウがおるわ!ムウ!」

ムウ「なんですか?」

シオン「余と童虎との闘い、手だしするでないぞ。」

ムウ「そんな気はさらさらございません。老師様、頑張ってくださいね。」

ムウが冷たく言うと、童虎がニヤリと笑った。

シオン「むむぅ・・・・・。ムウがおらんでも、余にはサガがおるわ!サガ!」

ムウ「サガでしたら、紫龍と春麗を連れて家に入りましたよ。」

ムウはそういうと、サガの後を追って童虎宅へと入っていった。

童虎「ほっほっほっ。お主、部下に見放されたようじゃのう?そんな奴に春麗の結婚式を取りしきる資格などないわ!」

シオン「おのれ、童虎。まだ言うか!春麗ちゃんには聖域で・・・・・。」

童虎「そんなに聖域で結婚式を挙げたいのであれば、ムウに嫁を取らせればよかろう!!」

シオン「ムウはだめじゃ。あれを嫁にやることは出来ん!」

童虎「嫁じゃと??お主、そうとうもうろくしおったな。それを言うなら婿にはやらん!じゃろ!」

シオン「うるさい!ムウは余のものじゃ!!あれは絶対に手放さん!一生飼い殺しじゃ!」

 

童虎宅。

紫龍「・・・・・・・・・・・・・という訳なのです。」

相変わらず紫龍と春麗は顔を真っ赤にさせ、サガとムウに事情を説明した。サガは思わず頭を抱えた。

デスマスク「おい、ムウ!今度はお前のことで喧嘩を始めたぞ!!」

デスマスクがドアを勢いよく開けて跳びこんできた。ムウは慌てて外へでる。

 

大滝の前。

童虎「デスマスクはならん!あれには隣村の村長の孫娘を娶らせるときめておるのじゃ!!」

シオン「勝手に決めるでない!!蟹には、器量よしのナイスバディの嫁をあてがって聖域で結婚式じゃ!」

童虎「そうはいかんぞ。デスマスクは中国の歴史に則った荘厳な結婚式をさせるのじゃ!」

シオン「だめじゃ。あんな線香臭い結婚式など、あげさせぬわ!」

 

童虎宅。

ムウが静かにドアを開けて入ってきた。

ムウ「デスマスク。今度は貴方の話しになってましたよ。」

デスマスク「なんだと?」

デスマスクは急いで外へ出た。

 

大滝の前。

童虎「サガはならん!あれには隣村の村長の姉の孫娘を娶らせるときめておるのじゃ!!」

シオン「勝手に決めるでない!!サガには、看護婦のような精神面もケアできる娘を娶らせるのじゃ!!そして、聖域で結婚式じゃ!」

童虎「そうはいかんぞ。サガは中国の歴史に則った荘厳な結婚式をさせるのじゃ!」

シオン「だめじゃ。あんな線香臭い結婚式など、あげさせぬわ!」

 

童虎宅。

デスマスクは再び勢いよくドアを開いた。

デスマスク「おい、サガ!!今度はお前の話になってたぞ!!」

サガ「はぁ・・・・・。」

サガはうな垂れたまま外へ出た。サガは数秒で戻ってきた。

サガ「今度は、ミロの話しをしておられた・・・・。」

ムウ「さて、そろそろ帰るとしますか。」

サガ「そうだな・・・・。」

デスマスク「ちっ、くだらねぇー。」

3人は立ち上がり、外へと向かった。

紫龍「ちょ・・・・ちょっと待ってください。」

ムウ「紫龍。そのうち飽きますから放っておきなさい。」

ムウ、サガ、デスマスクは再び聖域へと戻っていった。

 

大滝前。

童虎「アステリオンはならん!あれには隣村の村長の妹の孫娘を娶らせるときめておるのじゃ!!」

シオン「勝手に決めるでない!!あれには、聖域の娘を娶らせるのじゃ!!そして、聖域で結婚式じゃ!」

童虎「そうはいかんぞ。アステリオンには中国の歴史に則った荘厳な結婚式をさせるのじゃ!」

シオン「だめじゃ。あんな線香臭い結婚式など、あげさせぬわ!」

現存する聖闘士全てが終わると、童虎がさらにシオンにくってかかった。

童虎「そもそも、お主が結婚式を執り行うと必ず失敗するではないか!」

シオン「なんじゃと??」

童虎「忘れもせんぞ。あれは157年前じゃ。あの時も聖域で結婚式じゃ!と騒いでおきながら、花婿を寝とって大変なことになったではないか!」

シオン「あれは、たまたまじゃ!!」

童虎「たまたまじゃと??143年前の時もそうであったぞ!!」

春麗「お取り込み中のところ申し訳ありません。」

春麗が蚊の泣くような声で二人に話し掛けた。

童虎「なんじゃ、春麗。」

春麗「老師様、そろそろ8時ですが・・・・。」

童虎「なに?8時じゃと?うむ、水戸黄門の時間じゃ。シオン、一時休戦にするぞ!」

シオン「8時・・・・・。おぉ、そういえば、今夜は国営放送でウィーン少年合唱団をやるのじゃ!!」

童虎「シオン、この続きはまた明日じゃ!!よいな!!」

シオン「望むところだ!!」

こうして、シオンは聖域へと帰っていった。

 

翌朝。

シオン「童虎はおるか!!」

童虎、春麗、紫龍の3人で朝食を食べていると、シオンが現れた。

シオン「昨晩の続きをするぞ、童虎!」

童虎「続き??はて、なんじゃったかのう?」

童虎は箸を片手に首をかしげた。

シオン「おぬし、やはりボケたのか??結婚式じゃ!結婚式!」

童虎「おぉ、おぉ。そうじゃった!そうじゃった!!すっかり忘れておったわ!」

シオン「昨晩は124年前の天馬の話までしたのじゃ。このボケ老人め!」

童虎「なんじゃと!!おぬしにボケ老人呼ばわりされたくないわ!」

紫龍「あの・・・・・・・・。」

シオン「なんじゃ!」

紫龍「124年前のペガサスの話は3つ前の話です。昨晩は123年前のベアの話で終わられてました。」

紫龍の話を聞いた童虎がにニヤリと笑った。

童虎「ほっほっほっほっーーーー。お主、やはりもうろくしたのぅ!!ボケ老人が!」

シオン「おのれ、童虎。この余を馬鹿にする気か!もう許さんぞ、表にでろ!」

童虎「なんじゃ、シオン。お主、このわしとやろうというのか?後悔してもしらんぞ!」

シオン「それはこっちの台詞じゃ!!」

 

今日も五老峰にジジイ達(見た目18歳)の小宇宙が爆発する。


End