聖闘士星矢大全 その1

 

その日、聖域に日本から小包が届けられた。差出人が城戸沙織のその荷持つの中身は、大量の聖闘士星矢大全だった。

その大全は、その日のうちに各宮に一冊ずつ配られる事になった。

 

白羊宮

ムウは、大全の自分のページとシオンのページを見比べて、首を捻った。シオンのパラメータは、完璧で全てにおいて最高の5が挙げられ、パーフェクトの25ポイントだ。

それに比べて、自分は全然少ない。

もちろん、自分がシオンよりも強いなどというおこがましい事を思ってはいない。しかし、「具」が5ポイントというのが納得いかない。

具というのは、道具を使った攻撃のことで、牡羊座の聖衣には武器と呼べるものなど一つも備わっていない。

しかし、シオンはポイント5である。

やはりこれは、「うろたえるな小僧!」が道具とみなされているだろうか・・・・、ムウは首を傾げた。

貴鬼「ムウさま、どうしたんですか?」

ムウ「少し、分からないことがあるのです。」

貴鬼「え゛っ!?ムウさまにでも、分からない事があるんですか!?」

ムウ「そりゃ・・・、私だって万能ではないから・・・。」

貴鬼「それで、分からないことって?」

ムウ「具です、具。シオンさまの具。牡羊座の聖衣には、道具はついてないのに・・・技には、そのような物はありませんし・・・・・。」

う〜〜〜〜〜ん。

牡羊座の師弟は腕を組んで、首を捻った。

そして、唸ること5分。

貴鬼「あっ!分かりました、ムウさま!」

ムウ「ほう・・・。」

貴鬼「道具って、ここですよ、ここ。」

貴鬼はぽんと手を鳴らし、わざとらしいしぐさを取ったあと、両手を肩に乗せて前に突き出した。

貴鬼の言う、「ここ」とは、牡羊座の聖衣の肩の部分の、あの浅草にあるアサ○ビールの建物に乗っているような、角のことである。

ムウ「どういうことだ、貴鬼?」

貴鬼「はい。現役当時のシオンさまは、きっとあの黄金の角を武器にしていたんです。敵めがけて片方の肩を突き出して光速で走っていって、相手を突き刺すんですよ。」

ムウ「ブスリと・・・・?」

貴鬼「はい。ブスリとです。」

ムウ「なるほど・・・。」

牡羊座の師弟は、18歳のシオンが聖衣を纏い、白いマントを靡かせて不適に笑いながら、肩の角の先端を光らせて光速で走ってくる姿を想像し、納得した。

あの男ならありえないこともなかった。

 

その夜。

夕飯を食べ終わったムウと貴鬼は、リビングで時代劇を見ているシオンに訊ねる事にした。

ムウ「シオンさまの具は、なぜ5ポイントなんでしょうか?」

シオン「ほう、大全のことか?」

ムウ「はい、そうです。私はシオンさまよりも、具のポイントが少ないのです。」

シオン「それはそうであろう。お前は余からみれば、まだまだヒヨコじゃ。たかが20年生きたお前と、250年生きている余とでは、違いは歴然であろう。余は250年間、使い込んだからのう、ポイント5など少ないほうじゃ!はっはっはっ!!」

ムウ「シオンさまっ!!その具ではありません!!」

ムウはシオンがいやらしく笑ったので、露骨に顔をゆがめた。

ムウ「お約束は結構です。、牡羊座の聖衣には武器や道具の類は備わっていないはずです。おそらく、このポイントには、聖衣を治す道具も含まれてるのかと思います。だから、ポイントがついているのかと・・・。
では、何故、私とシオン様ではポイントが違うのでしょうか?」

シオン「ムウや。余に同じ事を二度も言わせるでないぞ。余の技は250年間の生の賜物である。」

ムウ「シオンさまこそ、同じお約束は結構です。私は真剣にうかがっているのですが・・・・。」

シオン「ふむっ・・・・お前は何を勘違いしておるのじゃ?余が使い込んだからこそ・・・。」

ムウ「ですから、私はシオンさまの股間がポイント5以上な事くらいは存じております。その具ではなく、道具のことです、道具!!」

シオン「ムウや、お前はよほど余のモノが好きと見えるな。まぁよい、今すぐ余のポイント5の具の秘密を見せてやろう。来るのじゃ。」

ムウ「い、いやです・・・・。」

シオン「何を言うておる・・・・余の具の秘密が知りたいのであろう。」

貴鬼「オイラ知りたいです!!」

シオン「ほうほう、貴鬼も知りたいと申すか?」

貴鬼「そりゃもう。」

ムウ「やめなさい、貴鬼。早く逃げるのです。」

貴鬼「で、でも・・・ムウさま。」

シオン「よいではないか、ムウよ。二人で余の具の秘密をたっぷりと味わうがいい!!ムウや来るのじゃ!!」

ムウ「ぎゃーーーーーーーー!!」

ムウの悲鳴が白羊宮内に木霊した。

 

5分後。

白羊宮の通路に連れ出されたムウは、シオンから守るように貴鬼を抱き締めて震えていた。

しかも、こんな通路の中央で師弟共々シオンに・・・・。そう思うと、思わず貴鬼を抱き締める手に力が篭もる。

願わくば、サガやアイオロスがここを通過してくれますように・・・。

シオン「またせたのぅ〜♪」

シオンの言葉に、ムウはビクリと身体を震わせた。

シオン「ムウや、目を瞑っていては具をみる事も出来まい。」

ムウ「みたくありません。」

貴鬼「ムウさま、見えないよぉ。」

ムウは手の平で貴鬼の目を塞ぎ、自分は固く目を閉じていた。

シオン「しかしのぅ、余の強さの秘密を知りたがったのはお前ではないか。しかと己の目で確かめるがよい。」

アイオロス「あれ?、教皇。聖衣を着て、なにやってるんですか?」

ムウの願いは届き、タイミングよくアイオロスが現われた。

ムウは思わず目を開き、飛び込んできた光景に驚愕した。シオンが自分の聖衣を着て、立っているのだ。

その後ろには、アイオロス、シュラ、アイオリア、ミロが立っている。

シオン「ほう、お前達。ちょうどよいところに来たのぅ。ここに黙って立っているがよい。」

言われた通り、アイオロス達はシオンの目の前に横一列に並ぶ。

シオン「ムウや、これから余の強さの秘密を見せてやろう。」

ムウと貴鬼は黙って頷いた。

シオン「スターーーーーーーーーダストッ!!」

スターダストレボリューションか!

と、4人は咄嗟に身構え、小宇宙を燃やした。

ムウは、これなら自分も使えると思った次の瞬間、目が粒になった。

シオン「スターダストーーーーーーーーーーーーーーーーーーー・サンドッ!!

とたん、アイオロスはうめき声をあげながらシオンを罵り、

シュラは悲鳴をあげて顔面を押さえ、

アイオリアは悲鳴をあげて後退し、

ミロは悲鳴を上げて蹲った。

シオンは光速で懐から光る粉を取り出すと、4人の顔面めがけて投げたのだ。まさか粉が飛んでくるとは思わず、4人は不意を付かれた形となった。

シオン「はははははははっ、どうじゃ、ムウよ。」

シオンは豪快に笑いながら、ムウに向き直った。

ムウ「シオンさま。まさか、シオンさまの具というのは・・・・。」

シオン「そうじゃ、スターダストサンドでの目潰し攻撃じゃ。そしてのぅ、相手がひるんだ隙に、ハンマーと鑿を取り出して、相手の鎧を破壊するのじゃ。」

黄金のハンマーと鑿を取り出したシオンは、うずくまっているミロの頭頂部に鑿の先端をあてると、その背をハンマーで軽く叩いた。

ミロ「うおぉぉぉっ、なんで俺ばっかりぃ〜〜〜〜〜っ!!」

ムウ「なるほど・・・・。これがシオンさまの具が5の理由ですか。」

シオン「そうじゃ。余の師匠直伝の技じゃ。これでの、ガンマニウムとオリハルコンを極めればのぅ、具が5になるのじゃ。ふんっ、童虎になど負けるか!!。はっはっはっはっはっ・・・・・。」

シオンの笑い声は聖域中に響き渡った。

 

そして翌日から、白羊宮の通路で、目を輝かせて砂を撒く練習をしている牡羊座の師弟の姿が目撃されるようになったのは、言うまでもない。


ムウ「スタダストーーーーーーーーーーーーーーッ・サンド!」