★双児家の食卓 〜裏技大発見!<カノン編>〜
早朝5時の人馬宮
5時ぴったりに起きたアイオロスは、隣の客間に下宿している星矢の部屋に向かった。
シーツにくるまり、枕を抱きしめて心地よい寝息をたてる星矢は、アイオロスが体をゆすっても起きる気配をまったくみせなかった。
するとアイオロスはなんの躊躇いもなく星矢の柔らかい頬をそれぞれつまみ、ベッドから引きずり下ろすようにしてひっぱった。
星矢「いでっーーーーーーーーーーー!」
アイオロス「おはよう、星矢。起きるのが遅いぞっ!」
アイオロスは真顔で床にコロコロ転がる星矢を見やり、まったく、とため息をついて部屋から出て行った。
星矢は真っ赤に腫れ上がった両頬をさすり、涙目になりながら、アイオロスのあとを追いかけると、洗面と着替えをすませ、すでにそれらを終えて人馬宮の前で待つアイオロスと合流した。
星矢「アイオロス。もっとやさしく起こしてくれよ」
アイオロス「甘えるな。お前は私の所に遊びに来ているわけじゃないだろう?」
星矢「だからって、毎朝あんな起こし方しなくたっていいじゃないか。あれじゃ魔鈴さんと生活してるのと変わらないよ」
アイオロス「起床は5時。寝坊するほうが悪い。文句があるならアイオリアのところで生活しろ!」
星矢「えぇ!! アイオリアは真面目すぎて、つまらないからイヤだよ」
アイオロス「だったら文句をいうんじゃない!」
星矢「ちぇっ……。やっぱサガのところに下宿して、訓練してもらおうかなぁ」
アイオロス「なんだって?」
星矢「いで、いででででっ」
耳を引っ張られた星矢は悲鳴をあげた。
アイオロス「サガに面倒をかけるなといっただろう? アイツはカノンの面倒で手一杯でまともな状態じゃないんだから」
星矢「そんなこといって、本当はオレがサガと仲良くするのが嫌なんだろう?、アイオロス。子供にヤキモチやくなよ!」
ニヤリと笑って肘で小突く星矢をにらみつけ、アイオロスは階下に向かって走り出した。
獅子宮
星矢をつれて獅子宮までおりたアイオロスは、立派な眉毛を寄せた。普段なら、アイオロスが降りてくるのを待っているアイオリアが、どこにもいないのである。
アイオロス「……ったく、あいつまで寝坊か。たるんでる!」
星矢「アイオリアが寝坊? 珍しいね。俺に示しがつかないじゃん!」
アイオロス「まったくだ」
アイオロスはニヤニヤする星矢を一瞥すると、私室へと入っていった。
そして寝室に勝手に入った二人が見たのは、幸せそうな顔をしてグッスリ夢の中にいるアイオリアであった。星矢は今朝、自分がされたことをアイオリアがされるのかと思い、それを今か今かと期待に胸を膨らませてまっていた。だがしかし、次の瞬間、星矢は目が点になった。
アイオロス「アイオリアッ、起きろ!!」
バチンとアイオリアの頬が音をたてた。アイオロスが平手打ちをしたのである。ただの平手打ちではない。腕を後ろに大きく振り上げてからの平手打ちだ。
アイオリア「ん……うぅん……もうちょっと」
アイオロス「ったく。またミロ達と朝まで酒を飲んでいたのか?」
むにゃむにゃとまどろむアイオリアの酒臭い息に顔をしかめつつ、アイオロスはアイオリアに馬乗りになって今度はグーで両頬をなぐりつけた。
アイオリア「んがっ……ぐぅ〜〜っ」
今度は鼾までかきはじめたアイオリアを、アイオロスは真顔で見下ろすと、次に拳を腹に狙いをさだめた。
星矢「やめろよ、アイオロス。いくらなんでも、アイオリアが死んじまうよっ!」
アイオロス「私の弟を舐めるな。そんなことくらいでは、アイオリアは死にはせんし、起きもしない」
星矢「え?」
アイオロス「まったく。こいつを誰だと思っているんだ? これでも黄金聖闘士で、しかもこの射手座アイオロスの弟だ」
星矢「だからって、それはやりすぎなんじゃないの?」
アイオロス「バカをいうな。こいつは小さい頃から私がこうやって起こしても、起きないんだ。これくらい屁でもないだろう」
星矢「アイオリアって、以外に寝起き悪いんだね」
アイオロス「普段はちゃんと起きてるみたいだがな。たまに、寝坊すると性質が悪い」
言いながら、アイオリアの筋肉で硬くなった腹を殴った。アイオロスの言うとおり、アイオリアの息が衝撃で一瞬止まっただけで、次には心地よい寝顔に戻っていた。
アイオロス「年々性質がわるくなってくる。慣れといやつだな」
星矢「シーツひっぺがして引きずりだせば?」
アイオロス「無理だ。酒が入ってるからな……普通にやっても起きんだろう」
普通というのは、殴ったり、けったり、引っ張ったりである。
星矢「あっ、オレ、絶対アイオリアが起きる方法知ってる!」
アイオロス「ほう?」
アイオロスは瞳を輝かせる星矢に興味深げに首をかしげた。
双児宮
昼を過ぎた頃、訓練でヘロヘロになった星矢を連れてアイオロスとアイオリアが休憩と称して双児宮にきていた。
アイオロスは今朝の出来事をサガに語っていた。
アイオロス「……というわけだ」
サガ「それで?」
アイオロス「ああ、星矢の言ったとおりにやったら、完璧だった」
サガ「ということは、アイオリアは1回で目をさましたのか?」
アイオロス「ああ、それはもう」
サガ「本当か? あのアイオリアが!?」
アイオリアを幼い時から知っているサガは、驚いて目を丸くしながらアイオリアを見つめた。
アイオリア「もう、あんな起こし方しないでくれよ……」
アイオロス「起きないお前が悪い!」
アイオリア「そりゃそうだけどさぁ。昨日は朝までミロ達と飲んでいたんだから、仕方ないだろう?」
アイオロス「昨日に限ったことじゃないだろう。お前が寝坊をするときの寝起きは昔から良くなかった」
星矢「そうだよ。殴られたり、けられたりするよりましだろ?」
アイオリア「ったく、お前も余計な知恵を兄さんに与えるなよっ!」
星矢「いてっ! 殴ることないだろうっ!!」
アイオロス「しかし、まさかあんなに簡単な方法で起きるとはなぁ〜〜」
しみじみとするアイオロスに、星矢は誇らしげに胸をそらした。
サガ「それで、星矢。その方法というのは?」
サガは興味深げに星矢の話に耳を傾けた。
翌朝
6時ぴったりに起床したサガは、軽く、といっても1時間ほどの入浴を済ませて、コーヒーをいれた。そして、時計を見てから、まだ起きてくる気配のないカノンにため息をつき、彼の部屋に向かう。
昨日、星矢に教えてもらった「一発で起床する方法」を試すためである。
カノンは寝起きが悪いどころか、ほうっておけば昼過ぎまで寝ているため、サガはいつも頭を悩ませていたのであった。
サガ「カノン、起きろ!」
カノン「……」
サガ「起きんか、ばか者!」
カノン「……るっせーー!」
サガ「起きないのか?」
カノン「……」
サガ「起きんのだな」
カノン「……」
ベッドの上で蓑虫状態のカノンはまったく起きる気配はない。サガはニヤリと笑うと、さっそく星矢の言ったとおりの行動をとることにした。
サガ「そうか。そうだな、たまにはそうやって寝坊するのもいいだろう」
サガはカノンの毛布の端を引っ張り持ち上げると、カノンのベッドに侵入した。そして、ぴったりとその背中に体をくっつけた。
サガ「そうだ、兄さんもカノンと一緒に寝ようかなぁ!」
棒読みのせりふを吐きながら、サガがチラリとカノンを伺うと、カノンはびっくりして振り返り、寝ぼけ眼を瞬かせた。
サガ「たまには一緒に寝るのもいいなっ、カノン」
カノン「お前、なにしてんの?」
サガ「カノンと一緒に寝るのだ。たまにはよかろう」
カノン「正気か?」
サガ「ああ。お前が起きない理由も分かる、朝眠いのはしかたないからな。だから、私も一緒に寝る」
カノンの瞳が大きく見開かれ、ガバッと体を起こしたのを見て、サガはほくそえんだ。
星矢の言ったとおり、起きないカノンのベッドに忍び込んで、わざと大きな声で一緒に寝ることを宣言したのだ。そしたら見事、カノンの目はパッチリ目を覚ましたのだ。
サガ「目が覚めたか?、カノン」
カノン「キショイ真似すんじゃねぇよ!……と、まてよ」
サガ「ん?」
カノンは眉間に何本もの皺をよせ、ベッドに横たわるサガを見下ろし、ジロジロと眺めた。
カノン「そうか、これは夢か?」
カノンは頭をぼりぼりと掻きながら首をかしげ、安堵のため息を漏らし、そしてニヤリと笑った。
カノン「そうか。いつもの夢か。なんだ……びっくりさせやがって」
サガ「????」
サガはベッドから体を起こそうとした。だが、その肩をカノンは掴むと一気に身体を元の位置へと押し倒した。
サガ「えっ!?」
カノン「遠慮なく頂きます!」
サガ「は?」
カノン「俺と一緒に寝るんだろう?、サガ」
サガ「はい?」
カノン「ふっ、可愛い奴だな。さすが夢、素直でよろしいっ!!」
ビリッっ!
カノンはサガの上着に手をかけて、一気に引き裂いた。
サガ「ぎゃッ!!」
カノン「もっと色っぽくしろよ、サガ」
サガ「やめろ、お前、私と誰を勘違いして……」
カノン「自分から誘っておいて、うるさい奴だな。今日のサガは誘い受けか? ったく、少し大人しくしてろ」
カノンは唇と舌でサガの口腔を塞ぐと、手でサガの下肢を擦り上げ、強くもみこんだ。サガの身体が苦痛と快感に飛び跳ねる。
カノンのそれは既にトランクスの布越しでもはっりと形が分かるほど怒張しており、カノンは愛撫もそこそこにサガの身体を捻った。
そしてトランクスを下ろすと、自身の屹立したそれにたっぷりと唾液をつけ、四つんばいで高く持ち上げられたサガの尻を掴んでそのまま貫いた。
サガが大きな悲鳴を上げた。カノン「なんか、今日はいつもより生々しいな……」
サガ「やっ、カノンッ。いたっ、痛い!! やめ……っ」
カノン「っせーな。いつもみたく、しっかり喘げよ」
サガ「ひぃっ……あっ、あっ」
カノンは腰の動きを速めると、それに合わせてサガが苦悶と喜悦が入り混じった悲鳴をあげた。
体温、香、触れる感触と、そして自身を締め付ける感覚は、普段の夢にくらべて数倍生々しく、カノンは一気に腰を入れて突き上げ、そして放出した。
それは、家族や肉親が添い寝をすることによって、気恥ずかしさや驚きでどんなに寝起きが悪くても一発で起きてしまうという、テレビ番組で実証された裏技だという。
実際に、アイオリアはそれでしっかり目を覚ましたのだ。
だが、カノンはそうはいかなかった。
まさか寝ぼけたカノンに、恋人と間違われるとは夢にも思っていなかったサガである。
サガは恋人と間違えられたと信じて疑っていなかった。サガ「もう、二度と起こしてやるものか……(グスン)」
痛む尻と腰、体液で濡れた下肢をかばいながら、サガは隣で股間丸出しでぐっすり眠るカノンに恨みの視線を向け、涙をちょちょぎらせたのであった。