Other site of 執務室(No.53 羊の毛刈り その1)

 

アイオロスは教皇の間を後にし、駆け足で人馬宮に戻った。
週に数回ではあるが人馬宮に連れこみ、いい時は泊まってさえくれるようになったサガが、アイオロスの為に昼食を作ってくれているのだ。
しかも最近は、サガの病気も大分落ちついている。

アイオロスは人馬宮の私室のドアを叩くと、出迎えたサガに問答無用でキスをした。

サガ「アイオロス、自分の家をノックして帰ってくる馬鹿が何処にいる・・・。」

アイオロス「ただいまぁ〜。この匂いはコロッケか?」

サガが自分の大好きなコロッケを作って帰りを待ってくれたと思いこんでいるアイオロスは、羽が生えたように浮かれている。サガの言葉を気にも留めず、アイオロスはダイニングにいそいそと駆け込んだ。が、途端、露骨に眉を潜めた。

ミロ「おっ、おかえり!!」

カノン「てめぇ、人に飯作らせておいて、帰ってくんのおっせーんだよっ!!」

アイオロス「・・・・・、なんでお前達がいる?」

ミロ「え?何?俺達がいちゃ駄目なの?」

サガ「アイオロス、意地悪なことを言うな。皆で食事をしたほうが美味しいだろう?」

アイオロス「・・・・・・・・。」

もちろん食事の後は風呂でも入って、なし崩しにサガを襲おうと思っていたが、目論見が見事に外れたアイオロスは、渋々と席について昼食を食べることにした。

 

サガ「ところで、アイオロス。毎週毎週、教皇さまの所に行って何をしてるんだ?」

アイオロス「ん?ボケ老人の相手だよ。ほら、誰かが話し相手になってやんないと、教皇がボケちゃうだろう?だからさ。
それより今日、楽しいを話を聞いてきたんだ。」

ミロ「楽しい話?」

アイオロス「ああ。ムウがな、毛を剃られちまったんだって。」

カノン「毛?」

アイオロス「ああ。陰毛だよ、陰毛。」

サガ・カノン・ミロ「ぶはっーーーーー!」

三人は思わず口の中のものを噴き出した。

サガ「ア、アイオロス!食事中にそういう話しをするんじゃない!!」

ミロ「それまじ!?」

アイオロス「さぁ?私は教皇の冗談だとは思うんだが・・・。しかし、毛を剃られたムウは鬱らしいから、本当かもしれないな。」

カノン「なんだと?あの羊が鬱?」

サガ「いい加減にしろ、アイオロス!」

ミロ「おい、愚弟!鬱羊を見に行くぞ。」

カノン「うおっ!!」

サガ「ミロ!そういうことはするんじゃないっ!」

アイオロス「(はよ、行ってこい!!)」

ミロ「ほいじゃ、行ってきまーーーす!!」

カノン「うおっ!だから引っぱるんじゃねぇ!」

サガが止めるのも聞かずにカノンの手を引っ張って、ミロは人馬宮を飛び出すと、アイオロスは小さくガッツポーズをした。

 

磨羯宮

二人が磨羯宮に行くと、ちょうどアフロディーテとシュラがお茶を飲んでいた。
ミロとカノンは、ウキウキで二人にムウのことを話す。

シュラ・アフロディーテ「ぶはぁぁぁっ!!」

ミロ「きったねぇな、コーヒー吹き出すなよ。」

シュラ「それは、本当なのかミロ?」

アフロディーテ「あのムウが鬱だって!?」

カノン「ああ。だから、からかいに行こうぜ。」

シュラ「行く、行く!!」

ミロ「俺、カミュ連れてくるわ!」

 

宝瓶宮

ミロ「おーーい、カミュゥ〜〜。」

カミュ「どうした、ミロ?」

ミロ「ツルツル羊を見に行こうぜ。」

カミュ「はぁ?ツルツル羊?」

ミロ「ああ。実はな・・・・・・・・・。」

カミュ「・・・・、そうか。お前がどうしても私と一緒に行きたいというなら仕方ない。」

ミロ「(行きたいなら、行きたいって素直にいえよ、カミュ。)」

ミロとカミュは光速で下に降りると、処女宮でカノン達と合流する。

 

処女宮

シャカ「なんだね?」

シュラ「お前、面白いもの見に行かないか?」

シャカ「興味ない。」

アフロディーテ「ふーーーーん、もったいない。」

シャカ「・・・・・・・・・。」

シュラ「お前、ムウが鬱なのを見たくないのか?」

シャカ「ムウ・・・・・。」

カノン「ジーサンに、陰毛ツルツルに剃られて鬱なんだと!」

シャカ「ふむ、面白い。」

シャカは蓮の台座から降りると立ち上がる。

ミロ「あっ!何!?シャカも行くのか?」

シュラ「そうこなくっちゃな!」

 

獅子宮

ミロ「おい、アイオリア!白羊宮に行くぞっ!!」

アイオリア「えっ!?」

ミロ「いいから、いいから。いいもの見せてやるからさ。お前、たまってるんだろう!」

アイオリア「ちょっと待ってくれよ、ミロォ!」

アイオリアは問答無用でミロに手を引っ張られた。

 

巨蟹宮

自宮の顔のオブジェを磨いていたデスマスクは、上からぞろぞろとおりてくる仲間達に、只ならぬ楽しそうな気配を感じて浮き足立った。

デスマスク「おうっ!アホ面揃えてどこへいくんだ?」

シュラ「白羊宮だ、白羊宮!」

デスマスク「はぁ?お前ら、あんなところに行くなんて物好きだな。」

ミロ「実はさ・・・・。」

デスマスクはミロから話を聞いて、オブジェを握りつぶしそうになった。

デスマスク「行く!俺も行く!あのスカした野郎の鬱っぷり、冥土の土産に見てみてぇーーーーー!」

 

こうして、カノン、ミロ、カミュ、シュラ、アフロディーテ、シャカ、リア、デスマスクの8人は白羊宮へと向かった。

 

 

白羊宮

仲間達が大挙して押しよせてくるとも知らずに、ムウはがっくりと肩を落とし、茫洋と宙を見つめたままダイニングで「とらや」の羊羹を食っていた。しっかり口だけは動いている辺り、さすがムウである。

ミロ「おーい、ムッウゥゥーーーーー♪」

ムウ「・・・・・・・・・・・・・。」

カノン「あっ、本当に鬱でやがる。」

呼ばれても振り向きもしないムウの様子を見て、話が真実であったことを全員が心の中で確信し、喜んだ。
こんなムウはめったに見ることができない。

ミロ「ムウ?生きてるか?」

ムウ「・・・・・・・・・・・・・・なにか?もう昼食なら終わりましたよ。」

カノン「おう、旦那は!?」

貴鬼「アルデバランなら、今日はブラジル出張でいないよ。」

シュラ「そうか。」

ムウ「・・・・・・・・・ふぅ。シャカやデスマスクまで来るとは、なにかあったのですか?」

ミロ「おうよっ!!お前、下の毛ないんだってな!」

ムウ「・・・・・・・・・・、だ、誰に聞いたんです!?」

カノン「サガ、サガって鳴く鶏からだ!」

ミロ「教皇から聞いたって言ってたぜ。」

シュラ「で、お前、本当に毛が無いのか?」

ムウ「さぁ?貴方達には関係ありません。」

ミロ「またまたぁ〜、すっとぼけるなよ、ムウちゃん♪」

ムウ「ちゃ・・・・ちゃん?」

カノン「毛の無い、お子様ムウちゃん。」

ムウ「お、おこさま!?」

シュラ「本当にないのかよ?」

ムウ「ふぅ・・・・・・。関係ないといってるでしょう。そんなくだらぬ用なら、出て行ってください。」

ミロ「そうはいくか、見せろよ!」

アフロディーテ「いいじゃない、減るものじゃないし。」

貴鬼「ムウさまツルツルなの?」

ムウ「つ、つるつる・・・・・。」

貴鬼「でも、なんでツルツルは駄目なの、ムウさま?」

カノン「そうだ、そうだ。」

ミロ「おう、皆、ムウと貴鬼を取り押さえろぉーーーーっ、記念撮影だ、記念撮影!!」

ミロの合図と共に、全員がムウに襲い掛かった。

シュラ「ふっふっふっ、お前の鬱の理由、本当かどうか確かめさせてもらうぞ。」

ミロ「早くしろ、シュラ!」

デスマスク「シュラ、お前何か勘違いしてるんじゃねか!?」

シュラ「大丈夫だ。今回は見るだけだ、見るだけ。」

カノン「いいぞ、いっきに引きずりおろせ!!」

アイオリア「や、やめろよ、お前ら。」

ミロ「今更、いい子ぶってんじゃねぇぞ、アイオリア!」

シャカ「早くするのだ、シュラ!」

シュラ「では、拝見させていただきますっ!」

仁王立ちにムウの前に立つと、シュラは舌なめずりをしそのズボンに手をかける。
その場にいた全員が息を飲んだ。


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