掲載: 2000.7.2

日本経済新聞 首都圏経済・群馬 2000年6月29日付
「我がまち ここがポイント 松井田町」

 峠の町、群馬県松井田町。急勾配の碓氷峠など古くからの交通の要衝として知られている。「めがね橋」、れんがづくりの変電所など名勝も多い。長野新幹線の開業に伴う信越線横川ー軽井沢間の廃線が暗い影を落としたが、鉄道を売り物にしたテーマパークの誕生で、町は再び活気を取り戻そうとしている。
 鉄道を売り物にした「碓氷峠鉄道文化むら」(愛称・碓氷峠ポッポタウン)がオープンしたのが、昨年4月。横川の釜飯(かまめし)などで有名な信越線・横川ー軽井沢間の廃止後、地盤沈下がささやかれていた中での開業だった。「(廃止は)残念なことではあるが、松井田町のアピール材料はやはり鉄道」(内田武夫町長)と町の大きな期待を背負っている。
 敷地面積約45,000平方b、総事業費は約20億円の大型プロジェクトで、主な施設は碓氷峠のジオラマや運転体験コーナーのある「鉄道資料館」、碓氷峠専用の機関車を展示する「鉄道展示館」など。屋外では蒸気機関車「あぷとくん」が園内を周遊する。
 最大の目玉は電気機関車の体験運転で、学科講習を受けた後、指導者とともに運転できる。構内数百bとはいえ、”ゲーム”では味わうことのできない本物を体験できるのはここだけだ。
 内田町長が「全国にはこんなに鉄道ファンが多いのかと驚いた」と語る通り、開業1年目で早くも予想の3倍にも上る約30万人が訪れた。現在、同町は鉄道文化むらを含めた横川駅周辺の整備事業に取り組んでいる。駅前再開発、宿場町復元、くつろぎの郷、ハイウェイオアシスなど大きく4周辺地域で計画が進められており、文化むらを起爆剤に集客の町への変身を進めている。狙いは隣の一大観光地、軽井沢からの入り込みだ。
 内田町長は「まちづくりの基本は、そこに住む人、訪れた人が楽しめること」と語る。観光資源を生かし、トロッコを利用した観光列車の運行なども夢に描いている。目指すは「関東のまほろば」という。
 一方で内田町長は「派手なことばかりでなく、地道な施策も町には不可欠」と強調する。特に力を入れているのが、介護認定漏れの受け皿整備で今秋にも小学校校舎や警察待機寮などを改修して高齢者向け多目的施設に活用する考えだ。
 介護問題を含め、財政、インフラ整備などの長中期的な課題は近隣自治体との連携だ。しかし、「まず合併ありきとの議論には反対」(内田町長)で、町民のコンセンサスを得ながら、「手を結ぶべきところは結び、きめ細かく意見を吸い上げていきたい」と話している。




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