5月 新宿区後援事業 新宿フレンズ講演会

  地域生活を支えるための取り組み
       〜病気を知る 薬を知る 対処法を知る〜

   講師 精神科医 肥田裕久先生 看護師 木村尚美さん 当事者2人の方

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◆「るえか式心理教育」木村尚美さん(ひだクリニック副院長)

 「るえか」はひだクリニックのデイケアの名前です。「かえる」の逆で、帰ってくる場所ではなく、ここを拠点として出て行く場所を意味しています。

私は看護師として精神科は14年目です。840床もある単科精神病院に勤務していました。その当時、驚いたのは、60床の病棟で、病名を知っている方が10名程度だったこと。鉄格子がはまり、服薬も10数錠入った分包を並んで口を開けさせて飲ませるような状況でした。

 1998年にリハビリテーションの場としてのデイケアを立ち上げたときに、精神科リハビリテーションに疑問を持ちました。例えば骨折の場合、回復してギプスが取れたら、リハビリテーションで痛くても患部を動かし、残っている力を最大限活用して普通の生活が出来るようにします。でも精神科では、リハビリテーション中に人間関係で問題も起こるのが痛い治療に相当するのに、周りは「いいよ、無理しなくて」といいます。痛くても続けないと絶対に良くならないのに…。そして肥田と出会い、一緒に「るえか式心理教育」を始めたのです。

【目標は「当たり前の生活」】

 「るえか式心理教育」とは、患者さんに「病名を伝え、病状や対処の仕方を説明し、薬について学んでもらう」ことで、今の回転ドアのような入退院状況を変えられるのではないかと考えて始めました。

 ひだクリニックは3年半目なので、ほとんどの患者さんは他院から来た方です。患者さんにアンケートで、「初めて診察を受けたときに病気の説明を受けて理解できましたか?」と質問したら、30.2%の方しか「はい」と答えていません。「薬を処方されて説明を受けたか?」は、たった26.2%。「薬に対する気持ち」は、50%が「嫌だった」と答えています。服薬の継続は重要ですが、病名も告げられずに薬を飲みたいとは思わないでしょう。

 患者さんたちの目標は、普通の生活、当たり前の生活をすることで、目標なしに病気や薬の勉強はできません。「自分を知り、自立し、人の役に立つ」の三段階を経て、初めて回復といえます。

【病気を知ること】

◇通じ合うには?:家族でも恋人でも一心同体はありえません。自分と相手の出す波長が違うので分かり合えない。話が通じるのは自分の頭の中で、相手の言語を自分の言葉に翻訳する人工衛星が作動しているからです。統合失調症の場合は、コミュニケーションの人工衛星が上手く作動しません。

◇ストレスの上手な放出を:精神科リハビリテーションとしてのデイケアでは、人間関係のトラブル等が、よく起きます。でも、トラブルが嫌だといって家の中ばかりにいたら何も変わりません。トラブルの傷が深ければちょっとだけ休んでまた始めていくのです。

◇新たな家のプランを:病気の経過で前兆期にあたるボヤに気づかないと、急性期という大火事になります。入院や薬をたくさん投与された消火後の家は真っ黒です。風邪と違って精神疾患の場合は、前兆期つまりボヤに気づかず、急性期で家が燃えたことを理解せず、真っ黒な家にそのまま住もうとします。

◇健康な部分を活かそう:健康な黄色いパンジーの中に病気という青い花が一輪あると、目立つのは青いパンジー、つまり病状です。本当は健康なところがたくさんあるのに、青いパンジーばかりに目が行くと、そこがだんだん大きく感じるために生活がしづらくなります。

【再発を防ぐ】

◇薬はバリア:再発しないためには「対処力」が必要です。「薬は回復する力を発揮するための道具」ですから、薬と友達になればいつでも助けてもらえます。薬は人間関係と同じで、副作用というちょっと嫌なところが見えても、相手を知ろうと努力をすることが必要です。薬は生活のしづらさを小さくしてくれるので、自分に合った薬を続けることが必要です。

◇薬と親しむ:抗精神病薬には製薬会社のロゴマークがついています。セロクエルは羅針盤の先にsociety(社会)と書いてあって、その先に島が見えます。ルーランはみんながニコニコしている絵です。エビリファイは明るい空に向かうというメッセージ。リスパダールは群れから外れたかもめが群れに戻る、つまり社会復帰のイメージです。製薬会社のロゴマークで、薬の顔が見えてきます。つまり、どういう目的で製薬会社が薬を作っているのかを知ることも大切なのですが、こういった点はほとんど言われていません。

【自立する・地域で暮らす】

◇魚は釣るもの:例えば「魚が食べたい」といった人に、家族が魚をあげ続けていたら、家族がいなくなれば食べることができなくなります。つまり当事者の要求を家族が叶えていては、本人は自立できません。釣竿を与えて、使い方、釣り方、釣れる場所、魚の調理を教えることです。

◇体に合う服を選ぶ:週に3日しか働く力がないのに5日の仕事を選んでくるのは、以前は毎日働いていたからです。病気で痩せたのに、ブカブカの服を選んでいるようなものです。それでは何度も転んでしまって、働くのをあきらめる要因になってしまいます。


地域生活を支えるための取り組み 

            肥田裕久先生(ひだクリニック院長)

 前半の木村の話をまとめながら進めていきます。ひだクリニックは4階建ての地下1階がデイケア、1階が診察部門、3〜4階がデイケアとナイトケアです。2階の部屋の1つが“クラブハウス・マリーの部屋”という、患者さんが独自で使う場所になっています。鍵もメンバーが管理しており、自由で何も制約を設けておりませんが、唯一の禁止規則は喫煙くらいです。

南流山駅からすぐの住宅地にあるガラス張りのビルなので、道を通る人も様子を伺えます。「こんなに明るかったら患者さん来ないよ」といわれましたが、むしろ地域に理解して貰えるように、こちらから情報公開して理解を促そうということです。

 先ほど木村から心理教育が土台という話がありました。リハビリテーションは、メンバーの回復度合いにより、個別的なアプローチが多いのですか、1人暮らしや就労を勧めたり、講演をしたりと、結構、負荷が加わるリハビリテーションを行っています。

私の話は「地域で暮らす」というテーマに沿ってお話をしていきます。

つまり、「地域で暮らす」とは、

 しき
 りょう
 のあうなかま
 あい
 すり
いしこう
 むところ こういう語呂あわせなのですが、この順ですすめていきます。
「未来志向」だけ2音目ですが、この言葉を1つずつ、具体的にどう実現しているかを話します。

知識 地域情報と暮らしの知恵を:障害年金は2ヵ月に1度ですから、もらう月の前の週はお金がありません。地域の情報で大事なのは、例えば安売り情報。こういう情報があると患者さんの経済状況が少しはよくなります。

医療 病気を知る・自分を知る:先ほどのスライドでの説明でもあったように窓ガラスが割れたら、メンタルの病気の場合は、その破片の片付けの方が問題です。大きさがバラバラなので早く片付く人となかなか片付かない人がいるし、小さいかけらが残って足を怪我をしたりと、人それぞれのペースがあります。
 つまり「もっといい自分の助け方があったら、リストカットはしなくてすむよね」ということを気付かせます。これは医者が変わらないといけませんが、それはなかなか難しい。私たちは当事者研究で有名な北海道・浦河の「べてるの家」とお付き合いしていて、医療では考えられなかった、当事者ならではのロジック(論理)を持ってこようとしています。「病気を知る」、「自分で自分のことが分かる」、「自分で自分を助けられる」、この3つを獲得すると、回復に向かいます。

気の合う仲間 支えあう:私たちスタッフは白衣を着ません。患者の皆さんと一緒に食事を取ることを大切にしています。仲間は英語でcompanion、「一緒にパンを食べる」という意味です。日本語でも「同じ釜の飯を食う」と言いますが、食事を通して仲間になるのもいい方法でしょう。作業所などでバーベキューをすることもありますが、これも同じことなんです。

出会い 交流の機会を作る:どの患者さんも必ず、クリニックの真ん中に設けた受付を通ります。そこでしぜんに人間関係が広がります。また、近隣医療機関と連携して病院の患者同士の交流会やフットサルなどのスポーツの会を頻繁に行っています。

 理解し易い言葉で説明:寛解を保つためには最少限の薬をのむ必要があります。薬が余る人は50%。飲み忘れ、飲む回数や量の調整、症状がないときはのまない、薬をのむこと自体がいやだ等、自分の判断で飲まない人も多いのは問題です。
 薬物療法に必要なことは、病名告知、疾患への理解、薬剤への知識、薬剤への信頼、薬剤の安全性、薬剤を選択できる環境だということを理解してもらいます。

未来志向 積極的に地域に発信:私どものクリニックは住宅地域にあるので、よく、「周りの人に何か言われたりしない?」と聞かれますが、幸い目立ったものはありません。そこで逆に、こちらから情報公開をしていこうと考えました。病気であっても住人としてできる地域貢献はないかと、地域懇話会を開催して、コンビニや不動産屋、飲食店、民生委員の方々を招きました。

住むところ 1人暮らしに踏み切る:経済的に余裕があるご家族は当事者さんを家庭で見ることができるでしょうが、定年になると不動産屋はとたんに部屋を貸してくれることにしぶくなります。ですから経済的に余裕があるうちに、アルバイトをしたり、障害年金で補って1人暮らしをすることは大切です。

【おわりに】 

 この半年で3つの薬の発売がありました。エビリファイのオレンジ味の内用液、クロザピンは血液専門医師の下で使用可能になりました。リスパダールの持効性注射剤のコンスタも出ました。薬を選べる環境は喜ばしいことです。

 一方で、最後に必要なのは、発想を変える覚悟です。当人が本当に治りたい気持ちを持ちながら、前向きにやっていく必要があります。それをしっかりサポートするのが家族や医療者であろうと思います。


ひだクリックホームページ
http://www.hida-c.com/index.html

                                                

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        



新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 東京も梅雨に入った。これから約一か月、うっとうしい日が続く。

 そんな中、フレンズ会員からぜひ講師に、とご提案をいただいたのが今月のひだクリニックの講師陣だった。そのご提案の通りのお話が聞けた。

 木村さん、肥田院長先生のお話は我々が常識として見過ごしている部分を、これまでと違った角度から見て、掘り起こし、改善へと導いてくれたし、当事者のお話もよかった。

 木村さん、肥田先生の説明においては他の社会現象とでも言える例えを用いた判り易い説明も心地よかった。

 家庭菜園の土壌作り、人工衛星と相手の波長との関係、ダムの貯水量とストレス許容量、さらには家の火事のボヤを前駆期とみるなど、ポンポンと引き合いを持ってくる。

 そして、ちょうどこちらが考えていたこととぴったり一致したことを言われた。

 「日本語でも『同じ釜の飯を食う』と言いますが、食事を通して仲間になるのもいい方法でしょう」これは私が常々感じていたことである。六月新宿フレンズ例会の翌日、当会の近年初めての試み「韓国料理を食べながらのコミュニケーション懇親会」を催す。家族と当事者が一堂に集って、韓国料理を突っつきながら、日頃の四方山話に花を咲かせようという企画である。

 木村さんの言う「食べることを通した仲間意識」は人間が最も楽しく、また安心できる場となる。そこに家族と当事者との新たな心のつながりが生まれるのではないか。そんな期待を込めて懇親会は開かれる。    

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp