新宿区後援・9月新宿フレンズ講演会

        保健センターの家族相談と

              医療・福祉の連携

    講師 新宿区四谷保健センター 鈴木多恵子保健師・尾石武美保健師

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鈴木:今日は保健センターの仕事と、精神障害者の方が利用できるさまざまな社会資源について、事例を通してできるだけわかりやすくお話しさせていただきます。

本日お配りした冊子『知っておきたい心の病気』は、保健センター・保健予防課等の窓口にあるほか、ホームページからもダウンロードもできるようになっています。

http://www.city.shinjuku.lg.jp/content/000135413.pdf

【保健センターの仕事】

 まずは自己紹介も兼ねて、保健センターの仕事についてお話しします。新宿区には、1つの保健所と、4つの保健センターがあります。

 保健センターは、四谷、牛込、落合、東新宿(もと西新宿保健センター、2014年6月新宿7丁目に移転)にあります。

 保健センターには、保健師、栄養士、歯科衛生士、事務職がおり、地域の方々の健康な生活を支援するために、健康相談、保健指導、各種健診など、さまざまな保健サービスを提供し、子どもから高齢者まで幅広い年代の方からのご相談をお受けしています。

 各保健センターにいる保健師は地区担当制で、各地域を担当する保健師が相談に乗っています。

 保健センターでは健康相談のほかに、母子向けには3〜4か月児、1歳6か月児の健康診断や育児相談、離乳食の講習会などを行っています。本日はちょうど午前中に、これから出産を迎えるご夫婦に、赤ちゃんをお風呂に入れる体験をしていただく、両親学級を行ってきたところです。その他、成人向けには、骨粗しょう症検診や健康教育など、さまざまな事業を行っています。

 本日の話の中心となる、精神保健の分野では、保健師が随時受ける「こころの相談」、精神科医師が相談にのる「精神保健相談」(予約制)、「うつ専門相談」(予約制)、精神障害者の方の社会復帰支援としてのデイケア事業などがあります。また、窓口業務としては、精神障害者通院医療費助成や精神保健福祉手帳の申請受け付けなどを行うほか、さまざまなサービスへのつなぎを行っています。詳しくは後述の事例紹介の中でお話ししたいと思います。

 その他、家族向けには「家族教室」(年1回)があります。新宿区民限定ですが、毎年、5日制で実施しています。例えば今年は、初回の10月10日は春日武彦医師(成仁病院)の「統合失調症の理解」の講義、2回目はSST(Social?Skills Training:社会生活技能訓練)の高森信子先生で「家族の接し方〜本人の気持ちを知るために」、3回目は就労支援施設についてで、利用者の話もあり、4回目の家族の立場からのメッセージでは新宿フレンズの会長さんもお話しします。最後は今村弥生医師(都立松沢病院)のSSTで「本人と家族の対応の仕方」の講座です。毎年、この家族教室に参加して、医療や社会資源につながる方々がたくさんいますので、是非ご参加ください。

 新宿区内にはたくさんの利用できる医療・福祉の社会資源があり、そういうサービスを使って夢や希望に向かって行動している人がいること、保健センターの保健師が、皆さんと社会資源をどのようにつないでいるかを、具体的事例を通して知っていただきたいと思っています。

【社会資源を使って自立】

尾石:社会資源を上手に使って、自立した生活を送っておられる事例をご紹介します。

 Aさんは30歳の男性です。家族は3人で、ご両親と本人です。高校卒業後、正社員として働きましたが2年後、社内でのトラブルに悩み、発症し統合失調症と診断されました。

 幻聴なども強く、服薬しながら近くのクリニックで治療して勤めを続けましたが、辛くなり6か月後に退職しました。その後アルバイトをするなど就職にチャレンジしましたが、なかなか続きませんでした。そして病院に行く以外は出かけなくなり、Aさんのお母さんが新宿区の家族教室に参加して、地区担当保健師に相談しました。

 Aさんは閉じこもりがちだったので、主治医からは保健センターのデイケアに通ったらといわれました。しかしすぐには行動に移せず、保健師は家庭訪問しながら相談を重ねて、病院の受診にも同行し、ようやく10か月目にAさんはデイケアに通うことを決心しました。

 初めはなじめず、行ったり行かなかったりでしたが、次第に知り合いもできて、通所するようになりました。半年経過した頃、作業所にも興味を持ち見学に行き、通う気も起きて、作業所への通所も始まり、最初は週1回、だんだん週3〜4回になりました。

 当事者の活動を支援する場は幾つかありますが、デイケアは、最初に地域へ出る場として多く選ばれ、利用されています。統合失調症は急性期を過ぎても幻聴などが続くことがあります。また、陰性症状が出て意欲の低下、社会機能の低下などにより人付き合いが難しくなり、生活のしづらさが残ることもあります。そうなると家の中に閉じこもりがちですが、毎日を家族のみで過ごすのでは、当人も家族も煮詰まってしまいます。

 社会機能の低下に対してはリハビリテーションが大切で、日中活動の場がまさにリハビリテーションの場になります。デイケアは退院後、地域生活になじむための最初のきっかけになる場です。大きな病院の中にもありますが、新宿区の四谷・牛込・東新宿の各保健センターではデイケアを行っています。

 デイケアには嘱託の精神科医が毎月1回来ています。初めてデイケアに参加する人には必ず保健師がついて、安心して参加できるように寄り添います。

 プログラムは、身体を動かす運動や、音楽、七宝焼き、書道もしています。テラスで園芸も楽しみ、今は夏野菜の唐辛子、落花生、ピーマン、茄子、プチトマトなどを作っています。料理のプログラムもあり、収穫した野菜を使い調理します。外出プログラムでは、昨年はスカイツリーに行きました。近くの散策もしています。

 作業所については就労支援A、Bなどいろんなタイプがありますし、作業所に通うには申請手続きが必要ですので、利用を希望される場合は保健センターで相談していただければと思います。

 Aさんの話に戻ります。デイケアを卒業して作業所に行っていましたが、お父さんの「障害者枠で仕事を」という強い勧めで、会社に勤め始めました。しかし半年で疲れてしまい、会社も作業所も辞めることになりました。

 家族の中では緊張状態が続いて、Aさんには辛い状況となりました。そこで、本人・両親・主治医・作業所職員・保健師が集まって話し合いを持ち、「自立してみよう」ということになりました。Aさんは1回も家を出たことがない為、まずはグループホームを利用してはどうかということになり、1人暮らしの練習をすることになりました。そのためにはお金も必要で、1人暮らし開始と同時に家族が生活費を捻出できなくなったため、生活保護を申請し、経済的にも自立することができました。

*申請後は、生活保護のケースワーカーがつきます(どこの地区に所属するかによって、地区担当のワーカーが決まります)。

 その後、Aさんはグループホームに移り、作業所にも復帰し、やがてアパートも見つかったため、1人暮らしを始めました。しかし次第に「料理をするのが負担になり、痩せてしまった」ため、周囲が心配し、本人、作業所職員、保健師、主治医と相談の上、ホームヘルパーに週1回食事と掃除をしてもらうことになりました。また土・日曜は、地域活動センターで過ごすようにしました。その結果、体力も快復して安定した生活ができるようになりました。

 いま就職を考えていますが、いきなり働くというよりも、保健師や作業所のスタッフ、ハローワークの障害者枠の相談員とも相談しながら、体力にあった就労の仕方を考えているところです。

Aさんについてもう一度整理してみます。

1)病院とつながった。

2)本人と家族と病院の関係から、母親が家族教室を申し込み、保健センターの保健師とつながった。

3)保健師は主治医と連絡をとりつつ家族と話し合い、本人はデイケアへ。

4)作業所とつながった

5)自立を目指してグループホームを利用

6)経済面から生活保護を受給

7)地域活動センターの利用

8)ホームヘルパーの利用

9)ハローワークの障害者枠相談員の利

 本人を支援するネットワークがこれだけ広がりました。これらは初めから準備していたわけではありません。少しずつ相談しつつ作り上げたものです。

 大切なのは「どうしたいか」という本人の気持ちです。社会資源を利用するのが目的ではなく、本人がどうしたいか、その気持ちに添うには、どの社会資源をどう利用していくか、それを話し合う過程がとても重要なのです。本人の気持ちを大事に聞きながら、周りも一緒に良い方法を考えていくのです。

 「話し合う」ことで、本人が家族とうまく話せるようになることもあります。保健センターの保健師や、社会福祉士、精神保健福祉士(PSW)、作業所の職員など、家族と本人だけでなく第三者が入って話し合うことで、本人もいつもと少し違う話ができて、客観的に自分を見ることができて来る場合もあります。支援者を周りに持つことが大事です。

 本人は独りで抱え込むことが多いため、本人からの相談はあまりありません。ですから保家族が健センターに相談してくださると、支援のネットワークが広がる糸口になります。

 SSTの高森信子さんは、「生きているだけで立派」と言われました。精神疾患があると社会で生きていくのも、はじめは背負う障害が大きすぎて大変ですが、リハビリテーションを利用することで、その荷を小さくすることもできます。ご家族は焦らずに、本人の気持ちを大切にしつつ、社会資源の利用を進めていただければと思います。

【最近の精神保健の動向】

鈴木:最後に、新宿区の精神保健に関する最近の動きについて紹介します。

アウトリーチ支援モデル事業

 在宅で生活している精神障害者の生活を、医療を含む多職種チームによる訪問で支えていく事業です。多職種チームとは、精神科医、訪問看護師、保健センター地区担当保健師、ヘルパーなどです。

 ご家族やご近所の方が、保健センターにご相談に来ていただくところから始まります。対象は、精神医療の治療を中断している人、未治療の人(引きこもりを含む)、医療につながっているが適切に内服できていないことなどにより病状が不安定な人です。

 新宿区では、今年からモデル事業として始めており、来年度から本格実施していく予定です。

障害者生活支援センターの新規開設

 精神障害者の方が地域の中で安定した生活を送れるように支援するための施設で、地域で生活している人はもちろん、入院中の精神障害者の方が、退院して生活を始めようとするときにも利用できる施設です。平成27年7月に開設予定で、場所は百人町4丁目の高田馬場福祉作業所の跡地になります。今開設準備中です。施設の中身は準備が整い次第、新宿区報等でお知らせしますので、もう少しお待ちください。

ヘルプカードの配布

 今日持って来たヘルプカードは、障害者が普段から身に着けておくことで、緊急災害時や困ったときに、周囲の配慮・手助けを受けやすくするためのものです。中身は緊急時に連絡してほしい人の名前、連絡先、ご自身の名前、住所、病名、通院先を書くようになっていて、セットの赤い携帯ケースに入れて使用します。新宿区役所の障害福祉課、保健センター、保健予防課などに置いてありますので、ぜひご利用ください。
                                             〜了〜

平成17年4月からの新宿フレンズホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿フレンズでは4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿フレンズ会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        

 
新宿フレンズへのお誘い 

 新宿フレンズでは毎月第2土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記
 木曾節に歌われた御嶽山。のんびりとした歌の調子からは、この度のような災害など、全く予想などできなかったであろう。有史以来、最も死者を多く出した惨事となった。きっと、亡くなった参拝者は幸せを願い、人生を全うすることを願ったであろうに。

 話は変わって今月は久々に新宿区四谷保健センターから保健師二名が講演してくれた。パワーポイントを使い、事例をもとに保健センター、特に精神保健に関しての説明はわかりやすかった。

 そして、こう言った。「大切なのは『どうしたいか』という本人の気持ちです。」色々保健センターの役割というものを説明してきたけれど、要するところ、本人がこうしたい、こうありたいと願望を出すこと。保健センターがいくら準備や設備を整えても、それが本人に納得して利用できないとしたら、それは、症状を和らげるどころか、むしろ害になる可能性さえあるということだろう。

 さらに、それを話し合いの中で決めていくという。話し合うということは、それだけで社会参加の道程の中にいることで、素晴らしいことだと思う。

 今月からHuman Wikipedia を設けた。第1回は呉秀三氏。明治の時代にすでに表題の言葉を表している。それが今の時代でも通用するというか、同じ問題として今日につながっている。逆に言えば、これは人間の性癖とでもいうべき結果なのか。要するところ、一種の人種差別であろう。人種差別は海外特産であるとみていたが、日本では精神障碍者と健常者(だと思っている)との差別ではないか。しかし、いつか逆転する日がきっと来るに違いない。    

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新宿家族会 E-mail: frenz@big.or.jp