1月家族会勉強会

     地域社会に一歩踏み出すには

               〜当事者体験談〜

                            講師:みつば会 石山 勲 さん


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【はじめに】

 私はセルフヘルプ・グループみつば会という当事者会の、代表ではありませんが中枢的なことをやっています。精神疾患になっても、その疑いがあっても医療機関に行きづらいとか、少しでも行きやすくならないかとか、あるいは精神疾患の社会的偏見が減るにはどのようにしたらいいのだろうかということがあります。今回いただいたタイトルは地域社会に一歩踏み出すためにということなので、それに関係するような話をしたいと思います。

【入院から退院までの体験】

 正直言って、この病気になる前は精神疾患には自分はならないだろうと、多くの方のように思っていました。私が発病したのは1987年です。保護室に何日間かいて、閉鎖病棟に2週間前後いて、反抗するとどうも退院が長引くだろうというのは察していたので僕が従順だったから、その後順調に治療が進んで、おかげで作戦通りに出られまして、それ以降の発症はありません。ただし通院治療は受けています。

<中略>

 発病したのが87年ですから精神医療も変わりつつあるという時代に入院したので、保護室も今みたいな近代的なものではなくてただの穴。部屋の中に穴があって、これどうやって使うんだろうと、よく考えたらトイレットペーパーとこれしかないと。あ、これトイレかと。まだ病院だと思っていなくて、違う施設と思っていたんです。だんだん、隣の患者さんはワーワー言ってますし、これは大変なことになってしまったと。とりあえずここで抵抗しているとどうしようもない、なるべく言うこと聞いていないと。口論になっただけでこういう所に放り込まれたので尋常じゃないということで、もう医療従事者にはへいこらしながら、あとで見てろと思ってたんですね。3ヶ月あまりで退院できました。

【退院後、復職】

 これが私の入院経過です。そのとき生命保険に入っていたので、診断書をもらったときに、自分が精神分裂病だということを初めて知って大変なショックを受けました。当時の辞書を見ると、「精神の調和をしない、人格の荒廃をきす」と書いてあったんですね。このままで行くと僕は人間じゃなくなってしまうのかという恐怖感がありました。

<中略>

 その後、授産施設や作業所に行きながら自分なりにやっていて、最初コンピューターのシステムエンジニアをやっていたのがいきなり袋貼りとかをやらなきゃいけなかったんで、わー、ここまで落ちたかと正直思ったんですよ。しばらく葛藤していましたが、とりあえずお金がないので家にいるよりもここから始めなきゃいけないのかなということで、約3、4年やっていたんですね。その間にそこの所長がわりと理解がある人で非常勤職員として採用してくれて、私は会計の知識があって、福祉職の人は幸い会計の知識がなかったものですから。主に施設の運営の会計やってて、作業所って大変なんだなと思って、伝票の入力整理をしながら。最初に行った所が、ご存知とは思いますが台東区にある全家連の施設だったんですね。

<中略>

【マスコミ報道】

 本来私たちを支持してくれるはずのマスコミまでが、結果として、現状では普通でも叩きにくい精神神経科の扉をさらに遠ざけてしまうかのように機能していると感じられてなりません。どうせやるなら、そこまで情報がわかっているならば治療を受けていたのか中断していたのかまで書けば、服薬していればそういう事件は起こらなかったという解釈も有り得るわけで、その辺はマスコミも工夫すれば、また偏見のあり方も変わってくるのではないかということで提案をしていますがなかなか。まあ、通院歴は若干いわなくなったところも出てきて、あとは重大性や責任能力という面に変わってきましたよね。少しずつ報道の仕方も変わりつつあるという気がします。やはりマスコミの影響が大きいですし、そこが変わらないと僕らの病気もなかなか理解されない。

【最近の活動】

 最初どこから手をつけていいかわからなかったけれども、専門学校や大学で福祉関係の方が実習に来ますよね。その方たちに自分の体験とかこういう本を読んだほうがいいよという話をしていたんですが、毎回同じ話をしていたんです。これじゃ進歩がないのと、当時『幽閉』という本を自費出版していたんで、福祉の仕事に就く方については一般の方より理解があるだろうと思ったのがきっかけで、その辺から反対に学生さんの方に担当の先生に話を持ちかけて、あなたに説明したように学校でも説明したいんだけれどもどうだろうかという話をしはじめたのが2001年頃。初期教育が重要であるといってもいきなり学校に行くことは難しいのでとりあえず社会資源に来る実習生に話ができれば理解が広がるのではないかと考えて、地域生活支援センターや作業所の理解も得られ、だんだんあちこちに行く機会が増えたり、家族会や精神保健福祉センターから声がかかったりして。

【回復のポイント】

 ちょっとだけ統合失調症について説明したいと思うんですが。初期治療が早ければ治りも早いわけです。3、4年たたないとなかなか精神科に結びつかないんじゃないかと。うつ病の方は早めに行っているかもしれませんが統合失調症の場合は本人も家族も否定するから初期治療が遅れる。このあたりから始まってちょっと進行して、徐々に回復すると思いますが。少しずつ行ったりきたり。この中で私が一番大きく感じるのは、服薬の継続の重要性です。

<中略>

 次に、家族会でもよく言われるんですが、仲間作りも大切です。私は主治医が優秀だったものですから。それが僕がピアカン(ピアカウンセリング)の講座を受けない最大の理由なんですけれども。再発しなくてすんだのは、先生の治し方が徹底されていて、服薬はしなさいとか、副作用についていろいろ質問してもちゃんと答えてくれたので、僕にとっては相性のいい先生にめぐり合って今があるという感じです。

<中略>

【精神保健についての初期教育】

 今、私がやっているのは精神保健についての初期教育です。まだそこまでいっていませんが。福祉職になる学生さんとか、初任者研修といって新たに精神保健の道に入った福祉職が学校や研修機関ではわかりにくい当事者の声を聞くことが今増えているんです。僕は「心の病」という言い方はあまり好きではありません。「脳の神経伝達物質の異常」と言ってほしい。というのは、心が病んでいると言われると人格自体が否定されている気がするわけです。周りからすればやわらかく感じるんでしょうが、心が病んでいるといわれるとうれしいとも悲しいとも感じられない印象もあるのであまり好きではないというのを学生に伝えています。いろいろな状況で病気になるのだということも話しています。

<中略>

 これからは精神疾患が理解されるためにということと、初期治療によって逆に精神疾患の理解が得られるということと。接する機会がないんですよね。だから家族は家族会、当事者は当事者会とまとまっていないで、地域との交流で、普通と変わりないんだ、ちょっと動きが鈍いだけだとわかってもらうだけでも少しイメージが変わると思うんです。何せ怖いと思われているわけですから。

 それよりも今の状態でだんだん詳しく話せる状態になれば、薬をのんでいるからここまでしかできません、ということになると理解度が変わるので就労機会も増えるだろうということで、地域社会に一歩踏み出すことにつながると思います。まず、今のところ話せる当事者が少ないということもありますけど、なるべく私どももしゃべれる人間を増やしていきたい。初めから僕もこんなにしゃべれたわけではなくて、つっかえながらでも言いたいことを言って、だんだん整理ができて。多くの体験と病院のひどさは『幽閉』で書きましたけれども。あと学生さんが何を考えているか、その感想の中で、イメージが変わったとまで書いてくれて、私たちもこれから頑張っていきたい、人権問題も重要だという認識に変わってくれた人もいたので、少しずつでもこういう機会を生かしながら。この本も、僕は売るというよりは普及させたいんです。こういう話がいっぱい入っているわけです。一応肝心なことはこれでお話したのかな。質疑では、精神科医が答えるべきことと僕が答えるべきこと、薬剤師さんが答えることは違うので、正直に申し上げて、知っていても薬などの問題についてはお答えできませんのでその上で質問をしていただければと思います。

(紙面の都合でここで終わります)


石山 勲さんのCDができました

 新宿フレンズの定番となった 当事者講演シリーズ「第5弾」

 「地域社会に一歩踏み出すには」

 ¥1,000(消費税なし、送料200円)

 お申込は、例会時は受付まで。それ以外は新宿フレンズ事務局まで。

 新宿フレンズ事務局 03-3987-9788 E-mail:frenz@big.or.jp


書籍案内 「脳内汚染」 岡田尊司(1960年生 精神科医、医学博士)
                文芸春秋 ¥1680

 本書は、日本が直面している社会現象、すなわち、キレやすい子供、不登校、学級崩壊、引きこもり、家庭内暴力、突発的殺人、動物虐待、大人の幼児化、ロリコンなど反社会的変態性欲者の増大、オタク、二ートなどあらゆるネガティヴな現象を作りだした犯人が誰であるかをかなりの精度で突き止めたと信じるからだ。では、医療少年院勤務の精神科医という苛酷な現実の最前線に立つ著者が、犯人と名指ししたのは誰なのか?結論から先に言おう、コンピューター・ゲームとインターネット(とりわけネット・ゲーム)である。

(毎日新聞・今週の本棚 鹿島 茂評より 部分)


平成17年4月からの新宿家族会ホームページ「勉強会」の表示形式について

 新宿家族会では4月から「勉強会」ホームページの表示について、概略掲載とすることになりました。そして、「フレンズ」(新宿家族会会報紙)ではいままで同様、あるいはより内容を充実させて発行することにしました。これまで同様に勉強会抄録をお読みくださる方は、賛助会員になっていただけますと「フレンズ」紙面版が送られますので、そちらでお読みできます。
どうぞ、この機会に是非賛助会員になっていただけますよう、お願い申し上げます。

賛助会員になる方法        



新宿家族会へのお誘い 

 新宿家族会では毎月第3土曜日、12時半から新宿区立障害者福祉センターに集まって、お互いの情報交換や、外部からの情報交換を行い、2時からは勉強会で講師の先生をお招きして家族が精神障害の医学的知識や社会福祉制度を学び、患者さんの将来に向けて学習しています。
入会方法 


編集後記

 地球温暖化で地球がどんどん暖かくなってきているといわれている。しかし、今年の寒さはそんな言葉が疑りたくなるような寒さだ。北陸・新潟地方では大雪に見舞われている。本当に自然の成すことは我々人間の力の遠く及ばないこととしみじみ思い知らされる。

 石山さんの言葉に「僕が思っていたよりも精神疾患って悪いものじゃない、ひどくないっていうのがあったんですね。」というくだりがあった。これは意外と感じられた方も多いのではないだろうか。

 我々親たちは毎日、この忌まわしい病気からどう逃げるか、どう対処するかと躍起になっている。しかし、石山さんは悪いものじゃない、という。そのズレは何のだろうか。ちょうど、それは消えた火事場にひとりバケツで水をかけている人に似て、手当が余計なお世話になっている様子である。

 これに似たようなこの病気の対処がしばしば見受けられる場合がある。主治医が右といったから全て右。左といったから左。しかし、患者本人は「病気も悪くない」といった感じを持つまで回復している場合がある。問われるのは親の対応であろう。このズレをいち早く察知して、患者本人がどんな状態にいるのか、何を望んでいるのか、あるいは何が余計なことなのか。その辺の理解ができるようになることが家族会勉強会のポイントかも知れない。      

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